この記事では「建設業に従事する一人親方」の確定申告について解説します。
確定申告が必要な一人親方に該当するかの判断はどうするのでしょうか?
一人親方が確定申告の注意点「外注費と給与」「棚卸と経費」の区別をわかりやすくまとめています。
確定申告をしない事はデメリットしかありません。
この記事を読めば、一人親方の確定申告の概要と提出までの流れが分かります。
このページの目次
一人親方(ひとりおやかた)とは、建設業などで労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主のこと。
一人親方という名前から「建設業」のイメージがありますが、本来は「短期や家族以外の雇用者を持たない個人事業主」全般を指す言葉です。
この記事では「建設業に従事する一人親方」の確定申告を取り上げます。
確定申告が必要な一人親方とは「年末調整を行っていない」個人事業主が該当します。
請負契約 | 雇用契約 |
取引先が一人親方への報酬を「外注費」としている ↓ 一人親方自身が確定申告をする |
取引先が一人親方を「従業員」としている ↓ 給与に該当 ↓ 取引先の会社が年末調整をする ↓ 源泉徴収票を受け取る ↓ 確定申告不要 |
取引先に受け取っている報酬が「外注費」「給与」どちらになっているかを確認しましょう。
一人親方自身が法人を設立している場合は、自身の法人から年末調整・所得申告を行うため確定申告は不要です。
また「年収が38万円」以下の場合も確定申告は不要です。
一人親方が確定申告を行う場合は、下記の届出を確認しましょう。
確定申告自体は、開廃業等届出書(正式名:個人事業の開業・廃業等届出書)を提出していなくても行えます。
ただし、開廃業等届出書を提出していないと青色申告を受けることは出来ません。
白色申告と青色申告では、青色申告の方が税制上の優遇措置(節税)が受けられます。
開廃業等届出書は、開業後1か月以内に管轄税務署に提出しましょう。
個人事業主の確定申告には、白色申告と青色申告があります。
開廃業等届出書を税務署に提出したら、同時に青色申告承認申請書を提出します。
青色申告承認申請書は、事業開始年の3月15日までか、1月16日以降に事業を始めた場合は、事業開始から2か月以内が提出期限です。
青色申告は、帳簿を複式簿記など白色申告より提出書類が多いので余裕を持って準備をしましょう。
など
一人親方の業務を家族や親族に手伝ってもらい、青色申告する場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出も必要です。
提出期限は、青色申告承認申請書と同じです。
一人親方が確定申告する場合は、上記3点の提出を確認しましょう。
青色申告の詳細は下記で確認できます。
収入がある以上、一人親方であれ、フリーランスであれ「無申告」は罰則の対象です。
確定申告しないのは「納税の義務」の違反になります。
通常の罰則に加えて、一人親方の業務に影響する2つのデメリットがあります。
一人親方経験が5年以上になると、建設業許可の「営業経験5年」という要件を満たします。
建設業の許可を伴う大きな仕事を目指す建設会社からの事業を受ける資格ができます。
一人親方の経験5年以上を証明するのが確定申告書です。
確定申告をしていないと「一人親方の経験5年以上」を証明できず、収入アップや大きな建設関係の事業を受けることが出来ません。
建設業の受注できる体制・信用・事業拡大のためにも、確定申告は必ず行いましょう。
事業でもプライベートでも、一人親方の所得証明は「確定申告」です。
所得が証明出来なければ、住宅ローンや融資が組めない、給付金を受け取れない、子供を保育園に預けられない、などのデメリットがあります。
一人親方でなくても、確定申告しない事はデメリットしかありません。
もし一人親方になってから確定申告をしていなかったと分かったら、時期に関わらず気付いた時点で早急に申告します。
確定申告は過去5年間はさかのぼって申告可能です。
この場合は、期限後申告として取り扱われます。
期限後申告であっても、いくつかの要件を全て満たす場合には無申告加算税は課されません。
要件の詳細はこちらから確認できます。
一人親方が確定申告する場合は「棚卸」と「経費」の区別を理解しましょう。
一人親方の確定申告の特徴は「棚卸」です。
年度の途中で購入した未使用の資材等が残っている場合、未使用の資材を経費に計上はできません。
棚卸作業で資材の残っている個数や金額の集計が必要です。
棚卸で計算した資材は経費ではなく「貸借対照表」に計上しますので注意しましょう。
仕掛品とは「販売を目的とした製品の製造途中品」の事です。
建設を請負中
↓
建設未完成
↓
まだ報酬を受け取っていない(売上になっていない)
↓
仕掛品の棚卸計上が必要
「仕掛品」は、棚卸資産として貸借対照表に計上が必要です。
注意すべき点は仕掛品の場合は経費と違い「材料・資材以外にも外注費や人件費も含まれる」事です。
経費ではなく棚卸資産として貸借対照表に計上するべき仕掛品があるかを確認しましょう。
一人親方の経費は「個人事業主」と同じ仕訳です。
経費のポイントは「仕事の売上のために必要な出費」だったことの証明です。
証明として1年間(1月から12月まで)のレシートや領収書をまとめて保管します。
など
※1:家賃や光熱費は自宅面積のうち事業で使用している割合分を経費にできます。
※2:免税事業者のみ
所得税・健康保険料・国民年金保険料は「社会保険料控除」として扱われるため経費ではありません。
一人親方の確定申告の方法は「通常の個人事業主」と同じです。
求める金額名 | 計算式 |
1、所得 | 所得 = 収入(報酬)-必要経費 |
2、課税所得金額 | 課税所得金額 =所得- 所得控除 |
3、所得税額 | 所得税額 = 課税所得金額 × 所得税率 - 税額控除 |
上記3つの金額を求めて、申告書に記入しましょう。
一人親方の確定申告は、白色申告でも青色申告でも「申告書B」に記入・提出します。
確定申告の提出方法は3つです。
1. 申告書類一式を税務署へ郵送する(令和3年4月15日(木)消印有効)
2. 申告書類一式を税務署の窓口に持参・提出する
3. e-Taxを使ってオンライン上で確定申告を完了する
2021年の確定申告はパソコンだけでなく、スマホからも申告が可能です。
おすすめは、1の「申告書類一式をe-Taxで作成・印刷し、税務署へ郵送」です。
通常は「2月15日から3月15日まで」の間に確定申告をします。
2021年提出の確定申告は「令和3年4月15日(木)」が提出期限です。
2021年の確定申告の提出期限は、コロナの影響で流動的になっています。
税務署のホームページ等で確認をしましょう。
一人で確定申告が難しいと思ったら、サポートを検討しましょう。
クラウド型会計ソフトとは、インターネットを介して利用する会計ソフトサービスのことです。
会計ソフトも様々な種類が提供されていますが、実際に利用する場合はクラウド会計ソフトをおすすめしています。
データの自動取り込みという非常に便利な機能を使えるだけではなく、比較的安価にかつ簡単に使うことができるので、確定申告初心者〜経験者まで幅広い人におすすめできる選択肢の1つです。
クラウド会計ソフトはいくつかありますが、中でも「freee」は有名かつシェアも大きいのでおすすめです。
会計ソフトを使うことで比較的にラクに確定申告をすることはできますが、やはり自分の時間をつかうのは事実。
税理士に依頼をすることで、より楽に、そして確実に確定申告を終わらせることができます。
ただ税理士に依頼するのは費用も必要になってきます...税理士に依頼すべきかどうか、は以下の図を参考にしていただくと一目瞭然です。
売り上げが1,000万円を超えている場合については、税理士を検討してみてもいいかもしれません!
では、税理士にどうやって依頼するか?
知り合いや知り合いのつてで税理士に出会える方はそれに越したことはないと思います。
では知り合いに税理士がいない場合はどうすればいいのか?そんな方におすすめしているのが税理士紹介サービスを利用することです。
税理士紹介サービスは、豊富な税理士ネットワークからあなたに合った税理士を無料で紹介してもらえるサービスのことです。
税理士ドットコムは登録税理士が多いだけではなく、何人でも無料で紹介をしてもらえるため、税理士を検討する際にはぜひ使っていただきたいサービスです。
一人親方の確定申告について解説しました。
一人親方の確定申告の基本は「個人事業主」と同じです。
注意すべきは、自身の報酬が「外注費か給与か」を確認し、「棚卸資産と経費」の区別です。
細かい計算などもありますが、確定申告をしない事はデメリットしかありません。
難しいと感じたら税理士や税務署への相談、会計ソフトや経費精算システムの導入を検討しましょう。
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