老朽化したレガシーシステムが鎮座し、SaaSが乱立して煩雑となった作業にコストとリソースを削られていませんか?
オンプレミスはもちろん、個別のアプリケーションなどのソフトウェア間を繋ぐ架け橋であるiPaaSを導入し、企業のクラウド化を検討してみてはいかがでしょうか。
2025年問題に対応するためにも、業務を効率化・最適化できるiPaaSは非常に有効と言えます。2011年にガートナーがiPaaSを定義して以来、iPaaS市場は拡大し続けています。
待ちに待った国産iPaaSの登場と、2025年問題解決への焦りが、企業のクラウド化を後押しすると予想されます。
iPaaSとはどのようなものなのか、なぜ今注目されているのか、メリットやデメリットなどをしっかり知っておきましょう。
このページの目次
最近話題のiPaaSとは一体どのようなものでしょうか。基本的な情報を解説していきます。
iPaaS(アイパース)とは、個別のアプリケーションなどのソフトウェア間を繋ぐ架け橋として、業務を効率化・最適化するシステムのことです。
構想自体は20年ほど前からあり、米国ではすでにiPaaSに特化した企業やサービスが数多くあります。
iPaaSは(integration Platform as a Service)の略語で、「クラウド統合プラットフォーム」と訳されます。「aaS」はクラウドコンピューティング用語で、大きく分けて3つです。
1つ目は、私たちにとって一番身近なGmailなどのソフトウェアをクラウド上で提供するSaaS(Software as a Service)「サース」です。
2つ目は、クラウド上で開発基盤・プラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service)「パース」。
そして3つ目は、サーバ・インフラを提供する最も自由度の高いIaaS(Infrastructure as a Service)「アイアース/イアース」です。
IT部門のビジネスパーソンでなければ、後者2つはあまり聞きなじみのないものかもしれませんね。
ひと昔前までは専用のサーバを自社内に設置し、勤怠管理システム、契約締結システム、経理システムなど、それぞれのシステムを構築・運用していました。
自社内完結型で企業ごとに構築したシステムはオンプレミスと呼ばれ、一つ作るのにとてつもないコストと工数をかけていました。
このころ、各種ソフトウェアをクラウド上で利用することができるSaaSというサービスが登場します。
Gmailなどのフリーメールサービス、ストレージサービスのDropboxなどは、使ったことがある人も多いのではないでしょうか。
一つの企業が導入したSaaSの数は10サービスは当たり前、平均20サービスとも言われるほどです。SaaSは、今なお増加し続けています。
独立するSaaSやオンプレミスごとに管理されるデータの点在が問題視され始めます。
サービスAでは契約書作成管理、サービスBでは与信情報管理、そして顧客情報管理はオンプレミスシステム、といった状況が頻発し、非効率な作業の実態が浮き彫りになったのです。
データが連携していないため、いちいち目視でデータを付き合わせなければならず、SaaS同士のデータ連携が叫ばれ始めました。
しかし、増加し続けるSaaSはそれぞれ独立したシステムで、SaaS同士の連携は困難を極めました。
膨大なコストと工数をかけて、独自のプログラムを組み、連携システムを構築するしかなかったのです。
多くの企業が開発を諦め、手動で煩雑な業務に対応していた時、ついに登場したのがiPaaSです。
独立したSaaS同士、さらにはオンプレミスのサービスとも連携が取れるシステムの登場に人々は歓喜しました。
しかもiPaaSは、SaaSが公開するAPI(※)を使用することによって、低コスト・ノーコード(またはコードレス/ローコード)でその連携を可能にしたのです。
※API:(Application Programming Interfaceの略語でアプリケーションをプログラミングするためのインターフェース)
ワークフローの自動化という点で混同しやすいサービスに、RPA(Robotic Process Automation)「アールピーエー」があります。
デスクトップ上で人間がマウスを操作して取り組んでいた作業を代わりにやってくれるのがRPAです。それに対し、iPaaSはクラウド上でAPIを操作します。
実行環境がデスクトップ上なのか、クラウド上なのかという点が、最も大きな違いです。
RPAは、PCの前にロボットを座らせるようなイメージで、「書類Aの顧客名と住所をコピーし、顧客リストにペーストして更新する」といった単純動作を自動化します。
反復的なルーティンワークをRPAに担ってもらうことで、人間はより創造的な仕事に専念できるのです。
しかし、UI、つまりユーザインターフェース(画面上のボタンの位置など)が変更されやすい作業では、RPAを使うことはあまりおすすめできません。
検索エンジンのホーム画面を思い出してみてください。背景はもちろん、ボタンの位置や大きさが頻繁に変更されています。
そういったUIの変更に弱いRPAを導入してしまうと、UIの変更があるたびに作業が停止してしまう恐れがあります。
米国で10年以上も前から盛り上がっているiPaaSですが、なぜ日本では「今」注目されているのでしょうか。その理由を見ていきます。
SaaS間の連携を求めて、既出の米国iPaaSの導入を検討された企業も少なくないでしょう。しかし、どのiPaaSも、システムが日本語に対応していない、説明書もサポートデスクも全て他言語、日本特有のSaaSは連携対象外、という状態です。
多くの日本企業が導入を躊躇したのも想像に難くありません。米国iPaaSが日本語、および日本のSaaSに対応する日をいまかいまかと待ち続けていたのです。
しかし、2019年、なんと完全クラウド型の国産iPaaSを提供する日本企業が現れました。
奇しくも、翌年は新型コロナウィルスの蔓延で在宅勤務を余儀なくされた企業は多く、国産iPaaSは一気に認知されるに至ります。
遠隔会議システムなどのSaaSを導入したはいいものの、ほかのSaaSやオンプレミスとの連携が取れずに頭を抱えた経営者にとっては渡りに船。
需要は伸びに伸びて、登場以来、成長は右肩あがりです。米国iPaaSが対応していなかった日本のSaaSにも順次対応を進めており、今後も成長していくのは明らかでしょう。
経済産業省は、DXレポート~ITシステム「2025年の壁」克服とDXの本格的な展開~で迅速にデジタルへと移行しなければ、大きな経済的損失となることを示唆しています。
事実、最新クラウドコンピューティングシステムでの運用と比較すると、老朽化したレガシーシステムでは運用は、低パフォーマンスでしょう。
先を見据えて企業はさまざまなワークフローをデジタル化していく必要があるのです。
さらに、2025年頃には第一線で働いていた団塊の世代などの有識者たちが一斉に退職することによる、リソース不足・知識不足も危惧されています。
レガシーシステムの老朽化、デジタルの波に乗り遅れることによる経済的損失、そして有識者の一斉退職は、同時並行で考える問題なのです。
そして、「2025年問題」は、SAP ERP基幹系システムの保守終了のデッドラインが2025年であるに由来します。
SAP ERPはきめ細やかな対応で、非常に実績のあるシステムとして有名です。しかし、システムは追加や変更を重ねて肥大し過ぎており、リアルタイム性保持のためにシステムを刷新する必要があったのです。
日本では2,000以上もの企業がSAP ERPを導入しており、保守終了への対応に追われています。
基幹系のシステムですので、蓄積されているデータなどの新システムへの移行には膨大なコストと時間、そしてリソースを要します。
どちらの問題も、コスト・時間、リソースの確保が大きな問題であり、デジタルへの移行は急務と言えます。
それゆえ、一部の業務を自動化・最適化し、データ移行の助けとなり得るiPaaSが注目されているのです。
iPaaSを導入することで得られるメリットとデメリットを見ていきましょう。
効率的に業務を行えるようになり、業務フロー(全て、または一部)を自動化することでコスト削減になります。
例えば、サービスAで契約書を作成する時は、一度オンプレミスサービスで顧客情報を手動で調べて確認し、サービスBで与信情報を探して照らし合わせる必要があったとします。
これが、サービスAで契約書を作成したら、顧客情報をオンプレミスサービスから自動的に引き出し、サービスBから与信情報を入手し表示する、といった具合にiPaaSがサポートしてくれるのです。
iPaaS作動のトリガー(発動条件)は商習慣に合わせて個々に設定が可能ですので、固定の業務フローを順次iPaaSで自動化すると、その恩恵は大きいものになるでしょう。
SaaSの公開APIに依存している点が、iPaaSの最大の弱点でしょう。
つまり、SaaS側でAPIが変更されたり、異常が発生した場合は、影響を受けることになるのです。
また、自社内完結型のオンプレミスとは違い、インターネットに接続することが条件になりますので、サイバー攻撃への対応などセキュリティー面での対策が必須となります。
SaaS間(またはオンプレミスと)のデータ連携をとりたい場合は、APIが公開されているのであればiPaaSに軍配があがります。
しかし、APIが公開されていない、またはオンプレミスのレガシーシステム内などで、単純作業を高速化したい場合はRPAのほうが向いているでしょう。
日本ではiPaaS浸透までの時間がかかり、RPAを導入した企業も多いはずです。
どちらか一方を優れていると判断して、他方を切り離すよりも、一方の弱点を他方が補う形で使い分け、組み合わせることで業務の最適化を進めていくことをおすすめします。
iPaaSに特化した製品は、増加し続けています。知っておいて損はないiPaaSの種類と、製品・企業をご紹介しますので、導入検討中であれば是非ご一読ください。
iPaaSの種類は大きく分けて4つです。
オンプレミスの時代から使用されてきた概念であるEAI型、ETL型、ESB型のクラウド版、クラウドEAI型、クラウドETL型、クラウドESB型に加えて、現場のニーズに合わせて構築できるレシピ型の4種類があります。
クラウドEAI型は、Enterprise Application Integrationの略で、データの収集や集約を高速で処理できるのが特徴です。
強みである、データの抽出(Extract)、変換( Transform)、そして格納( Load)の頭文字をとってクラウドETL型とも呼ばれます。
クラウドESB型は、Enterpprise Srivice Busの略で、データ連携のためのミドルウェアです。
レシピ型は、テンプレートを使用してソフトウェアやオンプレミスと簡単に連携することができるのが特徴です。2010年以降はこのレシピ型を提供するiPaaS企業が多くみられます。
ガートナーがiPaaS市場のリーダーとして認定した、誰もが知っているInformaticaなどの老舗iPaaS企業を除いて、ここ10年ではどのようなiPaaS製品が出ているのでしょうか。
近年、多くのiPaaS企業で提供されているレシピ型の製品を国外はアメリカから3つ、国内からは2つ紹介します。
アメリカ初のタスク自動化ツール、Zapier。
言わずと知れた大手中の大手。リリース時は25種類だった対象サービスは、現在2,000を超えます。iPaaS時代を牽引してきたリーダーの一角です。
IFTTTはアメリカ発の連携ツールです。
名前の由来は、「If This Then That(もしコレをしたら、ああする)」というシンプルなコンセプトで成長してきた企業です。
アメリカのWarkato社が開発するiPasS、Warkato。
既存のレシピ数は22万通りもある、エンタープライズ向けのiPaaSを提供します。2020年に入り、日本企業であるBlueMemeが業務提携を結び一躍話題となりました。
日本国内初完全クラウド型iPaaS「Anyflow」。日本初のハンズオンキャピタル企業であるグロービズ・キャピタル・パートナーズなどから2.2億円を調達し、勢いに乗る期待の新星です。
ActRecipeはもともとRPAを扱っていましたが、2019年から財務会計領域に特化したiPaaSをリリースしました。日本企業アスタリスク社の製品です。
国産iPaaSは、徐々に増加してきていますから、日本ではこれから10年のうちに、企業のクラウド化、デジタル化は急ピッチで推し進められるでしょう。
2011年にIT分野の調査会社であるガートナーが定義してから10年が経とうとしています。
IT先進諸国に遅ればせながら、日本にもiPaaSの波が来ていると言っていいでしょう。
現在のワークフローの最適化はもちろん、2025年問題にも対応すべく、戦略的にiPaaS導入を検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Pixabay
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