イベントマーケティングとは、種々のイベントを通して展開されるマーケティング手法です。
オフラインでのマーケティング手法となるため、近年主流となっているデジタルマーケティングと比較すると「アナログ式」の手法といえます。
デジタル時代に「アナログ式?」と思う人もいるかもしれません。しかし、近年になってその有効性を見直す企業は少なくありません。
デジタルマーケティングではカバーしきれない部分については、イベントマーケティングを活用することで補いやすくなるといわれています。
本記事では、イベントマーケティングの概要やメリット・デメリット、実施の上での注意点や実施の流れなどを紹介します。
イベントマーケティングの有益性をさらに高めるMAツールも紹介するので、併せてこちらも確認してください。
このページの目次
スマホなどのデジタルデバイスが広く普及している昨今、マーケティングの主流はデジタルマーケティングだと考える人は多いのではないでしょうか。
しかし、実は、近年になってアナログ式のイベントマーケティングを再評価する動きが高まっています。
イベントマーケティングとはそもそもどのようなものなのか、そしてなぜ今再び注目を集めているのかを見てみましょう。
イベントマーケティングとは、イベントを活用して商品やサービスの販売につなげるマーケティング手法です。
イベントの参加者に「直接」モノやサービスを体験してもらい、購買活動を促します。
一方、近年主流といわれるデジタルマーケティングは、デジタルデータを活用して有益な情報を拡散するマーケティング手法です。
最適な場所やタイミングで顧客とつながることができますが、「その先」の顧客行動に影響を与えるのは難しいと考えられます。
膨大な情報も、リアルな体験にはかないません。
一方向的になりがちなデジタルマーケティングと比較すると、イベントマーケティングは顧客とよりインタラクティブなやりとりができるのが魅力です。
イベントマーケティングが見直されているのにはどのような理由があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
近年になってアナログ式のマーケティング手法が見直されているのは、デジタルマーケティングのみでは効率至上主義に偏りすぎるきらいがあるためと考えられます。
デジタルマーケティングのメリットの一つは、顧客が求める情報をダイレクトに届けることができるという点です。
Web上での顧客の行動に合わせて必要な情報を届ければ、購買につながる確率は高いでしょう。
しかし、この手法だと「興味があるかどうかさえ分からない顧客」は完全に蚊帳の外になってしまいます。
販促活動が限定的になり、全ての顧客と接点を保てません。これはマーケティング上マイナスに働くことが多々あります。
デジタル化が進んでいる昨今、あらゆるパターンのWeb広告が見られます。
これを「邪魔だ」「うっとうしい」と感じている人は少なくはなく、Web広告を何とか排除しようとする動きも高まっています。
例えば、次世代高速ブラウザとして注目される「BRAVA」は、「広告ブロック機能」が標準装備されています。
トラッキングによりバッテリーが無駄に消費される、広告のせいで読み込みに時間がかかる、といったことがなく、利用者は広告に煩わされることがありません。
今後このようなブラウザが普及していけば、Web広告を主体とするデジタルマーケティングがやりにくくなる恐れがあります。
あまりにもデジタルマーケティングに偏る戦略は、避けた方が良いと言えるでしょう。
デジタル世代にとっては、デジタル広告よりもアナログ広告の方が新鮮に映ることがあります。
生まれた時からデジタルに慣れ親しんでいる世代にとって、Webを使ったマーケティングに新鮮味はありません。
少々趣向を凝らしても、気にも留められずスルーされてしまうことは多いでしょう。
このような「デジタルネイティブ」世代には、アナログ式のマーケティングの方が新鮮です。
彼らには「体験型」「対面式」など、「リアルなコミュニケーション」が取れるマーケティング手法の方が、「価値あるもの」として認識されやすいといえます。
イベントマーケティングは顧客とリアルにつながるマーケティング手法です。
デジタルマーケティングにはないメリットがあるといわれますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。イベントマーケティングのメリットを見ていきましょう。
イベントマーケティングでは、顧客に商品やサービスを実際に体験してもらえるのがメリットです。
イベントにまで足を運ぶ顧客は、自ら情報を収集して「スペックや特徴などは把握済み」ということが少なくありません。
そのような顧客にとっては、「リアルな体験」こそが販売行動を促進するポイントとなります。
実際のところ、デジタルマーケティングだけでは、商品やサービスの魅力は伝えきれません。
特にスペックで見分けにくい商品やサービスについては、「AとBとで決め手がなくて迷っている」というような顧客も多いでしょう。そのような人には、実体験の提供こそが購買行動につながるはずです。
イベントマーケティングなら、購買意欲の高い顧客が自ら足を運んでくれます。短い期間でも優良な見込み顧客にアプローチできるため、効率的な販促活動が容易です。
たとえそのとき購買行動につながらなくても、購買意欲の高い見込み顧客は簡単には離れません。
その後の活動次第で「見込み顧客」から「顧客」に転換する可能性は高いといえます。
インタラクティブなやりとりが可能なイベントマーケティングは、人々の記憶に残りやすいものです。来場者に「楽しかった」と思わせられれば、二次的な宣伝効果も期待できます。
イベントを楽しんだ人々の中には、会場の様子や商品・サービスについての情報をSNSで拡散する人も少なくありません。宣伝費をかけなくても情報は多方面に広がるため、高いPR効果を狙えます。
加えてイベント自体が話題となれば、メディアにも取り上げられかもしれません。これは全く興味のない人・そもそも知らない人にも商品やサービスをアピールするチャンスです。
とはいえ、イベントマーケティングが万全というわけではありません。
イベントマーケティングにおいては、どのようなことが「課題」と言われているのでしょうか。イベントマーケティングのデメリットともいえる点を紹介します。
イベントマーケティングでは、来場者数がそのまま収益に比例します。収益目標を高く設定するなら、来場者を多く集めねばなりません。
万が一来場者が少ない場合は、「大幅な赤字」ということも考えられるでしょう。これを防ぐには、必然的に事前のイベント告知・宣伝に注力する必要があります。
まずはよりマーケティング効果が上がるよう、ターゲット層を厳密に絞って戦略を立てねばなりません。ここで絞り込みを誤ると、イベントの集客に大きく響く恐れがあるでしょう。
加えて、魅力あるイベントにするにはそれなりの「仕掛け」「目玉」も必要です。
集客のための広告にかかるコスト・時間は、デジタルマーケティングのそれと比較すると、かなり膨大になるはずです。
マーケティングに有益とはいえ、イベントを開催すること自体大変な手間とコストが必要です。イベントの種類にもよりますが、次のような準備が必要でしょう。
企業規模が小さい場合はスタッフや専門知識、ノウハウの不足が懸念されます。専門家に外注する部分が多ければ、そのコストも必要です。
加えて機材などを調達する時間・手間もかかり、会社のリソースが多く消費されます。
一口にイベントマーケティングといっても、種類はさまざまあります。
イベントマーケティングの効果を十分に享受したいなら、まずはターゲットを見極め、適切なイベントを選択することが大切です。
イベントマーケティングにはどのようなものがあるのか、具体的に紹介します。
まず多いのが、「セミナー形式のイベント」「勉強会スタイルのイベント」などの会議系イベントです。イベントマーケティングの手法としてはごく一般的なものといわれます。
主に自社が開催する自社セミナーと、他社と共同で開催する共催セミナーの2種類があり、具体的な課題やニーズを持った顧客が集まる傾向にあります。
ただし、近年は社会情勢に併せて、Webを通じて開催する「ウェビナー」も隆盛です。
企業ごとにスタイルは違いますが、実際に触る・確かめることができるのが展示会です。
こちらも自社開催・他社開催があり、見込み顧客の誘導や育成、企業のブランディングに効果があるといわれます。
自社開発なら、短期間で多数の見込み顧客にアプローチできるのがメリット。一方、他社開催なら普段接点のない顧客を取り込みやすいのが魅力です。
商品やサービスを愛用する既存顧客が集まります。商品を販売するというよりは、企業や商品に愛着を持ってもらうことが目的です。
顧客をより強い「ファン」へと変えることで、企業イメージのアップや自社製品・サービスについての情報拡散を狙います。
既存顧客同士で集まるだけのもの、お互いに意見や情報を交わし合うものなど、さまざまな形式があります。
イベントの成否は、ほぼ企画の段階で決まるといっても過言ではありません。
イベントマーケティングを成功させるには、イベント実施に伴うさまざまなタスクを漏れなく適切に行えるよう準備しておく必要があります。
イベントを企画するとき、どのようなポイントを押さえるべきか見ていきましょう。
マーケティングでは、さまざまな場面で「6W2H」のフレームワークが使われます。イベントマーケティングでも、このフレームワークを意識してみましょう。
When: いつ | イベント開催に最適な時期、曜日、時間帯を適切に選ぶ |
Where: どこで | 見込み顧客が参加しやすく、商品の世界観を実現できる場所を選ぶ |
Who: だれが | 組織の誰が責任主体で、誰を関係者、協力者とするのか決める |
Whom: だれに | イベントのターゲットを決める |
What なにを | イベントでどのようなコンテンツを提供するか決める |
Why: なぜ | イベント実施の動機や背景をきちんと理解する |
How:どのように | 来場者を楽しませるにはどのようなイベント進行が望ましいか検討する |
How much:いくらで | イベント関連の予算を決める |
イベントマーケティングの効果を適切に測るためには、評価軸としてKGI(目標)・KPI(目的)をそれぞれ設定しておきましょう。
KGIは、「重要目標達成指標」と呼ばれる、企業が目指す最終的な定量目標(=数値目標)です。
何を数値目標とするかはさまざまですが、イベントマーケティングなら売上高や成約数、利益率などが多いのではないでしょうか。
例えば展示会を開催する場合は、
KGI(目標)=目標売上(円)
とすることが多いようです。
また、宣伝広告の成果を測る指標である「ROAS(Return On Advertising Spend)」、投資した資本に対する効果を見る指標「ROI(Return On Investment)」などと組み合わせると、より精度の高い目標を設定できます。
KPI(重要業績評価指標)も、イベント企画時点で設定しておくのがベターです。こちらはKGIを達成するために必要な工程を導き出す「中間指標」として使われます。
KGIの達成に向けて、部門ごとに「ここをクリアすればOK」というラインを設定しておきましょう。
各部門のKPIとしては以下のようなものが考えられます。
ただしアクション効果については、イベント終了から一定期間おかないと適切な結果を得られません。
イベント後の効果測定のタイミングについてもよく検討しておきましょう。
イベントマーケティングを実施すると決めたら、次のような流れでマーケティングを展開していくのが望ましいとされます。
1. イベント目的の明確化・目標の設定
2. イベント開催までの準備
3. イベント当日のオペレーション策定
4. イベント後のフォローアップの実施
5. イベントマーケティングの効果測定
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
イベントマーケティングを実施する目的としては主に次のようなものが考えられます。
企業の戦略やタイミングによって、このうちのどれに比重を置くかは違ってくるはずです。
関係者にイベントの趣旨を正しく周知し、狙い通りのマーケティング効果が得られるよう目的の明確化を行いましょう。
またイベント後は効果測定を行うため、具体的な目標値を定めておくことも大切です。
ただし、このうちの「認知の獲得」は数値化しにくいといわれます。これをメインの目標としてしまうと、最終的な効果測定は難しいかもしれません。
イベントの目標や目的が決まったら、当日に向けての準備を行います。必ずすべきこととしては、以下のようなものがあります。
いずれもイベントマーケティングには欠かせないものですが、特にコンテンツの準備はイベントの成否を左右します。
集客から申込、開催当日・開催後の事後フォローまでできるようなコンテンツを用意しておきましょう。
また、イベント直前にはリマインドメール、事後にはお礼メールができるよう配信準備しておくことも大切です。
当日のオペレーションを策定する上で特に必要なのは、以下の項目です。
まず、スタッフの人数や配置を決める上で必要なのが、来場者一人当たりの対応時間や対応スクリプトの設定です。
イベントの目的に合わせ、「来場者一人の対応にどのくらいの時間・スクリプトが必要か」を割り出しておきましょう。
一人あたりの対応時間が分かれば、「スタッフが何人必要か」が見えやすくなります。また、役割分担に適した動線を確保することも大切です。
イベントの核となる商品説明はベテラン社員が行い、新人や外部委託のスタッフは、通路などで呼び込みやノベルティ配布などの要員とします。
スムーズに来場者をブースに呼び込めるよう、流れを意識した人員配置が必要です。
イベント後は適切なフォローアップの実施が顧客獲得につながります。フォローアップで重視したいのは以下のような点です。
顧客対応については社員が素早く細やかな配慮で行う必要があります。
しかし、メール送信や優先順位付けは、作業量が膨大になるかもしれません。人力で行うよりもMAツールを活用した方が抜け漏れなく、適切に行えるでしょう。
イベント終了後は設定したKGI・KPIを元に効果を測定します。
上記のデータを元に正確な効果を図るには、やはりMAツールが必要です。
必要な情報の数値化が容易な上分析方法のバリエーションも豊富なため、さまざまな角度からイベントマーケティングの有効性を検証できます。
MAツールとは、マーケティングにおける集客や顧客管理・販売促進などの業務を効率化・自動化するツールです。
イベントマーケティングで得たデータも全て一元管理できるため、成果をより効果的なマーケティング・営業活動につなげやすくなります。
せっかくイベントマーケティングが成功裏に終わっても、そこで得た顧客情報やデータを活用しきれないのでは意味がありません。
ぜひ有益なMAツールを導入し、PDCAサイクルを円滑化させてください。
おすすめのMAツールを見ていきましょう。
画像出典元:「Pardot」公式HP
初期費用 | Growth | Plus | Advanced | 無料お試し |
0円 | 150,000円/月 | 300,000円/月 | 480,000円/月 | × |
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利用方法などのドキュメントやナレッジが多くあるため、割とすんなりと利用できました。たまにレスポンスが悪いことがあります。(IT関連:従業員500人以上)
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初期費用 | 月額費用 | 無料お試し |
要問合せ | 300,000円 | × |
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画像出典元:「MAJIN」公式HP
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cookie状態の匿名顧客から、実名化した見込顧客までコミュニケーションでき、役立っています。ただ、ランディングページを作れないのが不便。キャンペーンなどでページを作りたい時もあるので、そこは改善してほしい。(製造業:従業員500人以上)
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もっと他のMAツールを見てみたい!詳しく知りたい!と、言う方は下記記事を参考にしてください。
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画像出典元:Unsplash、Pixabay
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