The Model(ザ・モデル)は、営業プロセスを各部門で分業するフレームワークです。
その仕組みは現代のビジネススタイルにマッチしているといわれ、導入を検討する企業も少なくありません。
ここでは、The Modelの特徴や仕組み、メリットや注意点などを紹介します。
このページの目次
The Modelとは、「現代ビジネスの教科書」ともいわれる書籍『The Model』の中で示されたビジネススタイルです。
著者は米Saleforce.comで日本市場のオペレーションを担当した「福田康隆」氏。
本の中で紹介されているThe Modelは、彼がSaleforce社で働いていたときに仲間達と考案した営業手法です。
現在は「株式会社マルケト」代表取締役社長として腕をふるう福田氏ですが、彼が提唱するThe Modelとは、一体どのようなものなのでしょうか。
概要と特徴について見ていきましょう。
The Model とは、顧客の獲得から育成、定着や拡大までのあらゆる営業活動を細分化し、企業内で分業するフレームワークのことです。
日本の営業スタイルといえば、これまでは営業担当1人が1社を受け持って獲得、育成、成約までを取り仕切るのが一般的でした。
しかし近年、このやり方では担当にかかる負担が大きくなりすぎて、効率的な営業活動が難しくなっています。
現在のビジネス市場では1人の担当が一気通貫で営業活動を行うよりも、分業してフェーズの精度を高めた方が、さらなる売上拡大や企業成長につながりやすくなっています。
The Modelによる営業スタイルの特徴は、「営業活動で得た情報を数値化して可視化する」「各部門が密に連携する」ことです。
1人の担当が一つの企業を受け持っていた場合、必要な情報は担当者が分かっていればどうにかなります。
しかし、顧客のステージに合わせて担当が変わるThe Modelのフレームワークでは、必要な情報は全ての部門で共有されねばなりません。
顧客へのアクションは誰が見ても分かるように記録を残し、数値化できるものは数値で可視化することが求められます。
これがこれまでの営業とは大きく異なるポイントです。
また、せっかく情報を数値化・可視化しても各部門の連携がとれていなければ意味がありません。
担当が変わったことで顧客が不便を感じたり不利益を被ったりすれば、顧客は離れてしまいます。
The Modelでは、各部門が個々にやりたいことをやるのではなく、常に横との連携を重視しながら営業活動を展開させていかねばなりません。
こちらは、長崎県長崎市の不動産総合サービスと福祉サービスを提供する企業。従来型の営業体系を「SalesCloud」を活用して分業化することで、生産性を10%向上することができました。
新型コロナで業績が落ち込む企業が多い中、業績は前年比106%を達成しています。
株式会社サンブリッジは、クラウドソリューション事業などを手掛ける企業です。2015年にSalesforceのMAツールを導入して、営業システムを分業化させました。
この結果、3年間でマーケティング起点での受注社数は約10倍アップしたそうです。
2019年1月にその手法が発表されて以降、The Modelを積極的に取り入れる企業が増えています。
これはThe Modelのフレームワークが現在の市場モデルにぴったりとはまっているためと言われますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
多くの企業が「御用聞き営業」をやめThe Modelの「分業スタイル」を選択する背景を考察します。
近年のBtoB商材の傾向として、新規に獲得した顧客がそのまま商品購入に進むのはまれです。
名前をもらっても「しばらく検討する」という企業がほとんどで、見込み顧客の半数以上が「具体的にいつ購入するかは分からない顧客」になりがちです。
このケースの場合、重要なのは「見込み顧客をいかに育てていくか」ということになります。
ところが、従来型の営業では、顧客の育成よりも新規顧客の獲得が重視されがちです。
営業担当は月ごとの目標に追われ、顧客になるかどうか分からない相手に割く時間はありません。育てていけば顧客になり得る相手でも「塩漬け」されてしまいます。
ところがThe Modelの分業スタイルなら、こうした中長期的な顧客にも漏れなくアプローチすることが可能です。
相手と密なコミュニケーションを図りやすく、「ここぞ」というタイミングで売り込みをかけられます。
新規顧客の獲得が難しい現在、塩漬けした中長期的な見込み顧客の価値を見直す動きが強まっています。
これらの顧客に効率的にアプローチできるThe Modelが注目を集めるのは、当然といえるでしょう。
2012年に「シリウス・ディシジョン」が発表した調査データにおいて、「報収集、比較検討、意思決定といった購買プロセスのうち、前半の67%は営業担当者が接触する前に終わっている」という結果が出たのは、よく知られた話です。
近年は何ごともWeb上で済ませるのが主体となっており、企業担当者がわざわざ営業担当に会わずとも、だいたいの情報は得られるようになっています。
つまり、現在の顧客の購買行動に適切にアプローチするには、前述の「67%」の段階で見込み顧客と適切な関係を築く必要があるといえます。
具体的なアプローチ方法としては、MAの活用やインサイドセールス活動が不可欠です。顧客のステージに合わせて専門性を高め、顧客を満足させることが顧客獲得につながります。
浅く広くの営業パターンでは、相手が望むコミュニケーションを取ることは難しくなっているのです。
The Modelは営業プロセスを分業化してそれぞれの深度を深めていくプラクティスモデルです。
従来の営業スタイルとは全く異なるといわれますが、実際のところどのような仕組みなのでしょうか。
The Modelの仕組みについてより具体的に紹介します。
The Modelでは、まず営業のプロセスを4段階に分けて設定します。
1. 「マーケティング」:見込み顧客の獲得
2. 「インサイドセールス」:案件・商談の獲得
3. 「外勤営業」:「受注」の獲得
4. 「カスタマーサクセス」:既存顧客の契約継続や単価UP
さらにそれぞれの段階で
という明確なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定します。
ただしこのとき注目したいのが、各プロセスのゴールが次の段階の母数になる点です。The Modelでは横の連携が重要となるため、KPIによる数値目標も連動させる必要があります。
マーケティングプロセスは、The Modelのスタート地点となる重要な部門です。ここでどのような見込み顧客を獲得するかで、今後の営業の方向性が決まります。
見込み顧客獲得の施策例としては、次のようなものが考えられるでしょう。
また、KPIは次のように数値化します。
リード数=訪問者数×獲得率
インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得した見込み顧客にアプローチして、より具体的な商談に進めて行くための部門です。
次の外勤営業に渡せるよう、見込み顧客を案件化することが目標とされます。
具体的な施策としては、次のようなものがあります。
また、KPIは次のように数値化します。
件数=リード数×案件化率
外勤営業(フィールドセールス、アウトサイドセールス)では、インサイドセールス部門が案件化した顧客に具体的な提案を行います。自社のサービスや商品を顧客にアプローチし、クロージングまでを担当します。
「量」が求められるマーケティング部門とは異なり、「質」が重視される部門です。
具体的な施策は次のようになります。
また、KPIは次のように数値化します。
受注数=案件数×受注率
カスタマーサクセスは、顧客のアフターフォローを請け負う部門です。近年、企業の収益性を高める方法として重視されているのが既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めることです。
商談が成立した顧客を適切にフォローできれば、それが継続的な契約更新や新しい商品受注につながります。
具体的な施策としては、次のようなものがあります。
またKPIは次のように設定します。
契約更新数=受注数×契約更新率
従来の一気通貫型の営業とは全く異なる分業型のThe Model。現代のビジネスモデルによくはまるといわれますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
The Modelの導入によって得られる効果について見ていきましょう。
営業の各フェーズを分業化することにより、各人が自身のオペレーションに集中しやすくなります。一つ一つの段階の専門性を高め、深化させることが可能です。
これにより期待できる効果としては、以下のようなものがあります。
上記のポイントが実現できれば、受注率のアップ、解約リスクの低減、機会損失の回避などが見込めます。
部門ごとにKPIを設けることで、プロセスの工程を徹底的に数値化できます。これにより、契約数や受注数の増減の原因がどこにあるのかが特定しやすくなるはずです。
例えば月間の成約数が大幅に減少したときは、各部門の数値を並べて検証できます。原因の特定がスピーディかつスムーズに行われれば、早急な改善が可能です。
個別に業務を深化させることで、データの取りこぼしや塩漬けが低減されます。
従来の一気通貫型の営業は、1人でカバーすべきところが多すぎました。せっかく顧客名簿を手に入れても十分にアプローチしきれず、育成に失敗するケースが多かったはずです。
これは、本来顧客となり得たはずの客を取りこぼす可能性があります。あるいは、アプローチのタイミングが間に合わず顧客を逃すこともあるでしょう。
しかし、分業型なら即決しない中長期の顧客も丁寧に追いかけることが可能です。従来型の営業体系よりも
というメリットがあります。
The Modelも、正しく導入しなければ望む効果を得られません。導入の方法を誤れば、業績がアップするどころか低下する恐れもあるでしょう。
The Modelの導入において、注意したい点や導入のポイントを紹介します。
まず重要なのが、部門のKPIのみを追うのではなく、全体の利益を考えて行動することです。分業化はうまく機能すれば効率化が進みますが、各部門が分断してしまっては意味がありません。
分断化によって情報の共有が遅れたりなかったりすれば、業績はすぐに悪化するでしょう。
分業化を導入する場合は、以下のポイントに注意することが大切です。
各部門の担当者は、自分の担当だけではなく営業プロセス全体の効率化を目指す必要があります。
分業化するときにルール化しておきたいのが、見込み顧客をどのタイミングで次の部門に引き渡すかという点です。
担当がそれぞれ好きなタイミングで顧客を次の部門に引き渡すと、顧客の「粒」がそろいません。
引き渡された部門は「育成が行き届いた顧客」「まだまだの顧客」などにそれぞれ対応する必要があり、分業化による効率アップにはつながらないでしょう。
移行基準の決め方は企業内部でしっかり話し合えばよいですが、ポイントは
を明確に定めることです。
さまざまな状況を予測してそれに対する振る舞い方を明確にしておけば、営業活動はより一層効率アップします。
イレギュラーなこと、不都合なことは都度修正を繰り返していけば、自社に最適なかたちのスタイルが見つかるはずです。
営業活動の分業化・可視化に大きな威力を発揮するのが営業支援を行うデジタルツールです。The Modelを導入する際活用したいのは、「MA」「SFA」「CRM」といったものがあります。
MAは、マーケティング活動を自動化するツールです。見込み顧客自から収集したさまざまな情報の一元管理、見込み顧客の育成、さらには購買意欲の高い見込み客の絞り込みまでを自動的(効率的)に行います。
営業プロセスでは、次のフェーズをカバーします。
SFAは、営業活動で得たさまざまな情報をデータベース化するツールです。
具体的には、次のような機能があります。
SFAを活用することで、個人任せの営業からの脱却が容易となります。
また、営業プロセスでは、次のフェーズをカバーします。
CRMは、既存顧客と良好な関係をキープしていくために有益なツールです。ほかの2つと異なり、「クロージングの後」、顧客のフォローアップに活用されます。
CRMで管理するデータは、主につぎのようなものです。
The Modelの運用を考えているなら、MAツールの導入についても検討するのがおすすめです。
MAツールなら、マーケティング活動に必要な種々のオペレーションを自動化し、顧客に最適なタイミングでアプローチを仕掛けることができます。
情報は全ての部門と共有できるため、業務全般の効率化にもつながるはずです。
ここからは、数あるMAツールの中から特におすすめのものを紹介します。
画像出典元:「Pardot」公式HP
初期費用 | Growth | Plus | Advanced | 無料お試し |
0円 | 150,000円/月 | 300,000円/月 | 480,000円/月 | × |
マーケティングチームと営業チームの効果的な連携を実現できるSalesforce Engage for Pardotを利用する場合は、月6,000円/1ユーザーが必要です。
利用方法などのドキュメントやナレッジが多くあるため、割とすんなりと利用できました。たまにレスポンスが悪いことがあります。(IT関連:従業員500人以上)
大量のデータを管理できる点は便利です。貴重な顧客データを個人スタッフが管理するリスクから解放されます。ただ、ルールが多いので、使いこなすまでに時間がかかります。
詳細はこちらの資料をご覧ください。
画像出典元:「b→dash」公式HP
初期費用 | 月額費用 | 無料お試し |
要問合せ | 300,000円 | × |
初期費用なしで月額5万円から利用できるb→dash Liteもあります。
長年蓄積した膨大なデータを活用すべく、 データマーケティングツールb→dashを導入した。今までできなかったOne to Oneマーケティングをスポーツ領域で実現できました。(球団)
非常に使いやすいです。ただ最初の設定に時間がかかります。(広告関連)
こちらの資料から詳細をご覧いただけます。
画像出典元:「MAJIN」公式HP
初期費用 | 月額費用 | 無料お試し |
100,000円 | 100,000円 | 30日 |
オンラインサポートは無料です。
導入時のサポートや導入後のコンサルティングには費用が発生します。
(スタートダッシュサポート:200,000円 コンサルティング:月1,000,000円)
稼働開始までの設定項目が少なく使いやすかったです。他のサービスとの連携ができないところが不満です。(製造業:従業員500人以上)
cookie状態の匿名顧客から、実名化した見込顧客までコミュニケーションでき、役立っています。ただ、ランディングページを作れないのが不便。キャンペーンなどでページを作りたい時もあるので、そこは改善してほしい。(製造業:従業員500人以上)
画像出典元:「List Finder」公式HP
初期費用 | ライト | スタンダード | プレミアム | 無料お試し |
100,000円 | 39,800円~/月 | 59,800円~/月 | 79,800円~/月 | 20日 |
PV数・顧客データ数に応じて、課金される従量課金制ですが、基本プランでも50,000PV・顧客数5,000件まで管理できるので、ほとんどの企業が39,800円で運用できています。
サポート費用は無料です。
メール配信業務を効率化したかった。また、Webサイトのリニューアルの時期が重なったので、アクセス分析が簡単に行えるList Finderを選びました。(経営コンサルティング:従業員約30人)
「使いやすさ」と「コスパ」が 乗り換えの決め手です。(システム開発:従業員約600人)
画像出典元:「Liny」公式HP
初期費用 | スタート | ベーシック | プレミアム | 無料お試し |
49,800円 | 5,000円/月 | 39,800円/月 | 69,800円/月 | 3ヵ月 |
1年間の最低契約期間があります。
顧客にあわせたオリジナルの画面を作成が簡単にできる。他ツールと比較してLinyに決めた理由は使いやすさ。(ブライダルプロデュース)
スタッフ1人でも設計・運用可能です。直感的に操作できるので、急に配信が必要になった時でも2時間でコンテンツを作成できました。(県庁担当者)
起業ログおすすめ5選の機能をまとめるとこのようになります。
Pardotやb→dashがフル機能装備なのに対し、MAJIN・List Finder・Linyは機能に制限があることがわかります。
自社に必要な機能を明確にした上で、ツールを選びましょう。
The Modelは、従来型の営業とは一線を画す分業型の営業システムです。このスタイルを参考に組織変革を図る企業も多く、今の時代にマッチした営業フレームワークといえます。
ただし、業務を分業化しただけでは望むような効果は得られません。
各部門のKPIを適切に設定したり、全ての部門が最終的なゴールをきちんと共有したりしておくことが必要です。
また、効率的な分業スタイルを確立する上で、デジタルツールの使用は欠かせません。
まずはこのたび紹介したMAツールの詳細を確認し、自社にマッチしそうなものを検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Pexels、Unsplash、Pixabay
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