請求書の電子化とは?メリットやデメリット、導入時のポイントを解説!

請求書の電子化とは?メリットやデメリット、導入時のポイントを解説!

記事更新日: 2024/09/03

執筆: 編集部

請求書を電子化することで、業務効率化やコスト削減を実現できます。

しかし、電子化には、いくつかの課題も存在します。

本記事では、請求書を電子化するメリット・デメリット、導入時のポイントを解説し、スムーズな移行をサポートします。

請求書の電子化に踏み切るべきかどうか迷っている企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

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請求書の電子化とは?

請求書の電子化とは、請求書のやり取りを紙から電子データに移行することをさします。

PDFなどで電子化された請求書は「電子請求書」「Web請求書」「電子インボイス」などと呼ばれ、メール添付やクラウド経由で請求書の発行・受領を行います。

請求書の電子化により、これまでの印刷や郵送といった手間が省けるなど、企業はさまざまなメリットを得られます。

請求書の電子化が進む背景

近年、請求書の電子化が急速に進んでいる背景には、大きく分けて以下の3つの要因が挙げられます。

  • 保存要件の緩和
  • インボイスの開始による負担増
  • 電子取引記録の保存が義務化

保存要件の緩和

従来の電子帳簿保存法では、データを電子的に保存するための保存要件がいくつも設けられており、請求書の電子化はとてもハードルが高いものでした。

しかし、2022年に電子帳簿保存法が改正された際に、多くの保存要件は廃止・緩和され、電子化が進めやすくなりました。

具体的には、税務署長の事前承認制度が廃止され、最低限の保存要件を満たす電子帳簿でも電子保存が可能となっています。

インボイスの開始による負担増

2023年10月から開始されたインボイス制度で、税務署長から登録を受けたインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)と取引を行う場合、より細かな情報を記載した請求書(インボイス)の発行が義務化されました。

この制度の導入により、請求書作成業務は複雑化し、事務処理の負担が増えたため、多くの企業がより効率的に請求書を作成・管理できる電子化に注目するようになったのです。

電子取引記録の保存が義務化

電子帳簿保存法の改正によって、2024年1月1日より電子取引のデータ保存が完全義務化されました。

対応が間に合わない場合は、2024年1月以降も電子取引データ保存について猶予措置が認められますが、すべての企業と個人事業主が対象のため、早急に対応を進める必要があります。

また、電子帳簿保存法の対象書類は、請求書に限らず取引に関するあらゆるデータの電子化を促すものであり、企業全体の業務の電子化を加速させています。

請求書を電子化するメリット【発行側】

請求書の電子化は、発行側にどのようなメリットがあるのでしょうか。

請求書を電子化すると得られる発行側のメリットを4つ紹介します。

  • 管理コストの削減
  • 事務負担の削減
  • 環境への配慮
  • 在宅勤務などのテレワーク促進

管理コストの削減

請求書を電子化すると、請求書を発行する時の紙やインク、郵送コストなどを削減できます。

また、紙での請求書発行がなくなるため、書類を収納するスペースの確保が不要になり、保管コストの削減にもつながります。

事務負担の削減

請求書を電子化すれば、ネット上でのやり取りや保管・検索が可能になり、事務負担の削減につながります。

また、請求書発行に関する業務削減も期待できますので、作業にかかわる人員の人件費を減らすことにもつながります。

環境への配慮

請求書を電子化することで、毎回「紙」を用いた請求書のやり取りが不要となるので、エコに配慮することもできるようになります。

間接的な影響ではありますが、環境への小さな配慮が企業のCSR活動にもつながるので、大切なメリットの一つといえます。

在宅勤務などのテレワーク促進

請求書を電子化すれば、場所を選ばずに請求書の作成や確認、承認が可能になるため、社員はオフィスに出社せずに業務を円滑に進められます。

新型コロナウイルス感染症の流行以降、働き方の多様化が求められる中、テレワークの推進は企業にとって重要な課題となっています。

電子請求書は、このような働き方の変化に対応するための有効な手段の一つといえます。

請求書を電子化するメリット【受取側】

請求書の電子化は、受取側にとっても多くのメリットをもたらします。

請求書を電子化すると得られる受け取り側のメリットを3つ紹介しましょう。

  • 発行当日に受け取りできる
  • 請求処理にかかる業務の効率化
  • データの共有がスムーズになる

発行当日に受け取りできる

請求書を電子化すれば、発行されたその日に確認できるため、迅速な処理が可能になります。

万が一、請求書に誤りがあっても、すぐに再発行してもらえます。

また、支払期日を過ぎた請求書が発生するリスクが減り、キャッシュフローの改善にもつながります。

請求処理にかかる業務の効率化

請求書を電子化すれば、紙の請求書を取引先ごとに仕分けてファイリングする手間もなくなります。 

また、電子請求書なら、キーワード検索や日付範囲指定など、さまざまな条件で迅速に請求書を探し出せます。

さらに、オフィスに出社しなくても、PCやスマートフォンなどのモバイル端末から場所を問わず請求処理ができる点も大きなメリットといえます。 

データの共有がスムーズになる

請求書を電子化すると、複数の経理担当者で確認しやすくなります。

さらに、情報共有がスムーズになれば作業を分担でき、業務の属人化も防ぐことができます。


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請求書を電子化するデメリット

請求書を電子化すると、多くのメリットをもたらしますが、デメリットも存在します。

請求書を電子化する際の主なデメリットは、以下の3つです。

  • 導入の手間やコストが発生する
  • 業務フローの見直しが必要
  • 電子化に対応できない取引先もある

導入の手間やコストが発生する

請求書を電子化する際にシステム等を導入する場合は、導入費用がかかります。

また、すでに社内で使用しているほかのシステムとの連携に開発費用や時間がかかる場合もあります。

さらに、新しいシステムの操作方法を従業員に習得させる必要もあるため、導入する際は使い勝手や機能を確認し、自社の状況に合った最適なシステムを選ぶことが重要です。

業務フローの見直しが必要

請求書を電子化するとなると、新たな管理ルールの制定や業務フローの見直しが必要になります。

また、従業員や部署によって管理方法の違いが発生しないよう、経理部門だけでなく関係する部門間の連携を強化しましょう。

電子化に対応できない取引先もある

取引先の業務ルール上、どうしても対応できない取引先もあります。

「業務フローを変えたくない」「セキュリティ面に不安を感じる」などの理由から、請求書の電子化を拒否するケースも考えられます。

請求書を電子化できない取引先には、これまでどおり紙の請求書で対応し、電子化のメリットを伝えるなどして請求書の電子化を促すことをおすすめします。

請求書を電子化する際の注意点

請求書を電子化する際、スムーズな導入のための注意点を3つ紹介します。

  • 取引先へ事前に周知する
  • 紙の請求書の対応にも備えておく
  • 現状の業務フローで対応できるか確認しておく

取引先へ事前に周知する

請求書の電子化は、受領側と発行側のどちらにも影響があるため、事前に取引先へ周知しておく必要があります。

取引先の合意が得られなかった場合は、該当する企業のみ、紙で請求書を発行するといった柔軟な対応が求められます。

取引先へ案内する際は、請求書の電子化によって取引先が得られるメリットもあわせて周知すると、受け入れてもらいやすくなります。

紙の請求書の対応にも備えておく

請求書を電子化したとしても、これまでどおり紙でのやり取りを希望する取引先が残るケースも考えられます。

そのような場合、電子請求書でやり取りする取引先と、紙の請求書でやり取りする取引先の両方に対応する必要があります。

このようなケースに対応するためにも、請求書発行システムを導入する際は、郵送作業を効率化できるサービスを検討しましょう。

現状の業務フローで対応できるか確認しておく

請求書を電子化することで、これまでの業務フローは大きく変わります。

例えば、請求書発行システムを利用することで、請求書の作成や発行が自動化されたり、承認プロセスが効率化されます。

このような変化に現状の業務フローで対応できない場合、運用における負担やミスが増えてしまう恐れがあるため、十分に注意しましょう。

電子化した請求書の送付方法

電子化した請求書の送付方法を確認し、取引先とのやり取りを効率化しましょう。

請求書発行システムを利用する

請求書発行システムを導入すれば、請求書の作成から送付、支払状況の確認まで、一連の処理を自動化できます。

また、請求書発行システムにはセキュリティ対策が施されているため、情報漏えいのリスクを低減できるほか、承認プロセス、リマインダー機能など、さまざまな機能が搭載されているものがあります。

メールに添付して送付する

PDFなどで電子化した請求書をメールに添付して送付する方法は、すぐに導入でき、追加の費用もほとんどかかりません。

ただし、請求書の発行や送付、支払状況の確認など、すべて手動で行う必要があるほか、一度に多くの請求書を送付する場合は誤配信のリスクがあるのが注意点です。

請求書発行システムの選び方

請求書発行システムの導入は、適切なシステムを選ばなければ、かえって手間が増えてしまう可能性もあります。

スムーズな導入と運用のため、事前に以下の5つのポイントについてしっかりと確認しておきましょう。

  • システムの機能や対応範囲を確認する
  • 運用中のシステムと連携できるか
  • 改正後の電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているか
  • セキュリティ体制や安全性
  • サポート体制

システムの機能や対応範囲を確認する

請求書の作成・送信・承認・支払管理など、少なくとも必要な機能がそろっているか確認しましょう。

また、経費精算システムとの連携や分析機能など、自社の課題や業務に役立つ追加機能があるか検討しましょう。

さらに、自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズできるかを事前に確認しておくと安心です。

運用中のシステムと連携できるか

すでに社内で利用しているシステムとの連携が可能かどうか確認しましょう。

例えば、会計ソフトと連携できるシステムの場合、自動入力や自動仕訳などで請求データをスムーズに取り込めます。

より効率的に連携したい企業は、システム間の連携にAPIが利用できるか確認しましょう。

改正後の電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているか

2023年10月より施行されたインボイス制度や、2024年1月1日から本格的にスタートした改正電子帳簿保存法は、対応必須となる制度です。

電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックするJIIMA認証」を取得している請求書発行システムを選ぶと安心です。

セキュリティ体制や安全性

万が一、請求書発行システムのセキュリティ対策が甘く、情報漏えいが起きてしまうと取引先の信頼を失うことにつながりかねません。

請求書発行システムのセキュリティ対策が万全かどうか、以下を確認しましょう。

  • SSL暗号化やパスワードがかけられているか
  • アクセス制限やログ管理がされているか
  • 十分な監視体制があるか

 サポート体制

何かトラブルが発生した場合に、迅速な対応が受けられるか確認しましょう。

メールやチャット、オンライン、電話などの通信方法や、回答の返信にかかる時間、有償か無償かどうかなど、サポート内容はサービスによって異なるため、自社にとって利用しやすいシステムを選びましょう。

さらに、操作マニュアルが充実していたり、システム導入後のトレーニングが受けられるかどうか確認しておくと安心です。

まとめ

今回は、「請求書の電子化」をテーマとして概要から関連する法律、メリットデメリット、導入時のポイントまで幅広く解説してきました。

会社規模が大きくなってきたスタートアップの会社や、取引規模が増えて本業以外に時間を取られつつある個人事業主の方にとっては、「請求書の電子化」という方法を用いるだけでバックオフィス業務の軽減化と効率化を図れます。

請求書の電子化に悩まれている方は、これを機に請求書発行サービス導入を検討してみましょう。

画像出典元:Shutterstock、Unsplash、Pixabay

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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