事業に使用する建物・機械など、固定資産の取得に要した費用を各事業年度に費用配分する手続きのことを減価償却といい、費用化された金額を減価償却費といいます。
一番身近なところで言えば、パソコンや車もこれに含まれますので、法人・個人、事業内容問わず、必ず出てくる勘定科目の一つではないでしょうか?
しかし、減価償却費については会計処理の中でも特に煩雑で深い知識を必要とします。法人税上は損金に算入されますので、正しく理解して計上すれば高い節税効果を上げられることもあります。
そこで今回は、経営者や経理担当者ならおさえておきたい減価償却の考え方、減価償却費の計算方法や仕訳方法の基礎知識を解説します。
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減価償却とは、事業に使用する建物・機械・車など、固定資産の取得に要した費用を各事業年度に費用配分する手続きのことです。
もう少し分かりやすくいうと、例えば、営業のために購入した車は、年数が経過するにつれエンジンが摩耗するなどして「価値が減少(減価)」していきます。
このような価値の減少(減価)を考慮し、購入代金を使用可能年数で各事業年度の費用として適切に配分することを「減価償却」といい、費用化された金額を「減価償却費」といいます。
しかし、購入した全ての固定資産を減価償却することはできません。
対象となる固定資産を税法では「減価償却資産」とし、「時間の経過または使用により価値が減少するもの及び事業の用に供されているものに限られる」、と定めています(法2ニ十三 令13)
減価償却費を計算するには次の3つの要素が必要です。
取得原価とは、資産の購入代金に付随費用を加算した金額のことです。
減価償却費の計算を行う基礎となる金額で、購入代金の他に付随する費用を加算します。
取得原価=購入代金+付随費用(引取運賃、運送保険料、関税、手数料…など)
ここで注意しなければならないのは、機械など減価償却資産を使用している途中で、破損したり腐蝕したりして修理や改良等を行った時です。
単に修繕したのであれば「修繕費」となりますが、1.使用可能期間が延びたり、2.固定資産の価値が増加 したりするような改良等に要した費用は、「資本的支出」として新たな取得原価、または既存の資産の取得原価に加算しなくてはいけません。
計算式は下記のとおり。
支出金額×(支出後の使用可能年数-支出しなかった場合の残存使用可能年数)÷支出後の使用可能年数
支出直後の価額-通常の管理や修理をしている場合において予測される支出直前の価額
上記いずれにも該当する場合は、多い方の金額が資本的支出となります。
耐用年数とは、資産の使用可能年数のことです。
前述のとおり、減価償却は購入代金を使用可能年数で各事業年度の費用として配分していきますが、資産の使用可能期間はモノや使用の仕方により異なります。
そこで公平を図る観点から税法では使用可能年数を「耐用年数」として「減価償却資産の耐用年数に関する省令」にて定めています(法定耐用年数)
残存価額とは、耐用年数の到来時における資産の処分予定価額のことです。
減価償却資産について取得原価の全額を費用として分配できるか?というと、必ずしもそうではありません。
例えば、車などはスクラップとして処分することにより、当初の取得原価の一部を回収することができるからです。
平成19年3月31日以前に取得した資産については、処分可能原価の相当額を差し引いた残額に対して減価償却を行います(償却可能限度額あり)
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産については、税制改正により残存原価が廃止され、取得原価の全額を減価償却費として認められるようになりました。
ただし、「取得原価から備忘価額の1円を引いた金額」となりますので注意が必要です。
減価償却費の計算方法はいくつかあるのですが、本記事では平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産の「定額法」と「定率法」について解説していきます。
定額法とは、取得原価に耐用年数に応じた償却率(※)を乗じて計算する方法です。
※法定耐用年数同様、費用として落す割合も税法で定められています(法定償却率)
【減価償却資産の償却率表】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
計算式と例示は下記のとおりです。
1年分の減価償却費=取得原価×定額法による償却率×(その年に使った月数÷12ヵ月)
期首に建物(償却率0.100)を1,000万円で取得した
1,000万円×0.100×12ヵ月/12ヵ月=100万円
1,000万円×0.100×12ヵ月/12ヵ月=100万円
1,000万円×0.100×12ヵ月/12ヵ月=100万円
例示の結果のとおり、定額法では毎期同じ額だけ減価償却費を計上します。
建物など耐用年数が比較的長い固定資産に適用されることが多いです。
定率法とは、資産の帳簿価額(取得原価から期首の減価償却累計額を差引いた残高)に償却率を乗じて計算する方法です。
帳簿価額は「未償却残高」や「帳簿残高」ともいいます。
計算式と例示は下記のとおりです。
1年分の減価償却費=帳簿価額×定率法による償却率×(その年に使った月数÷12ヵ月)
1,000万円×0.250×12ヵ月/12ヵ月=250万円
(1,000万円-250万円)×0.250×12ヵ月/12ヵ月=187.5万円
(1,000万円-250万円-187.5万円)×0.250×12ヵ月/12ヵ月=1,406,250円
例示の結果のとおり、定率法で計算した減価償却費は初年度に多く計上され年々減っていきます。
よって定率法は、耐用年数の長い固定資産ではなく、次々に新しいものが出てすぐに価値が下がってしまうパソコンのような固定資産に適用されます。
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産について、税法では前述した「定額法」「定率法」のほか、「生産高比例法」「リース期間定額法」の四つの計算方法を定めており、原則としていずれかの方法を選択することができます。
しかし、選定した方法は継続して適用しなければならず、変更する場合は変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、変更承認申請書を所轄の税務署長に提出する必要があります。
計算した減価償却費の仕訳方法には「間接法」と「直接法」の2つがあり、どちらかを選択することができます。変更しようとする場合は償却方法とは違い届出等は必要ありません。
直接法とは、減価償却費に相当する金額を固定資産の取得原価から直接控除する仕訳処理です。
例示で仕訳の流れをみていきます。
令和元年10月に100万円で取得した建物について減価償却を行う(決算年1回 決算日3月31日)償却方法は定額法、耐用年数10年。
建物 100万円/現金 100万円
100万円×0.100×6ヵ月/12ヵ月=50,000円
減価償却費 50,000円/ 建物 50,000円
最終的な貸借対照表(=決算書)において、建物は減価償却費50,000円を直接差引いた残高で表記します。
間接法とは、当期の減価償却費を「減価償却費」勘定(費用)の借方に記帳し、減価償却費相当額を固定資産勘定から直接マイナスせずに「減価償却累計額」勘定という資産のマイナス項目で間接的に表記する方法です。
直接法同様、例示で仕訳の流れをみていきます。
令和元年10月に100万円で取得した機械について減価償却を行う(決算年1回 決算日3月31日)償却方法は定額法、耐用年数10年。
機械 100万円/現金 100万円
100万円×0.100×6ヵ月/12ヵ月=50,000円
減価償却費 50,000円/ 減価償却累計額 50,000円
最終的な貸借対照表(=決算書)において、建物は取得時の100万円のまま、減価償却費を資産の減価償却累計額で表記します。
直接法と間接法、どちらで仕訳をしても結果は変わりません。
間接法で表記した場合は「固定資産の取得原価がいくらでどれくらい償却が進んでいるのか?」をすぐに読み解くことができますが、勘定科目が一つ増えますので直接法より知識を必要とします。
自社が所有する固定資産の規模、決算書を必要とする内部・外部の関係者が見て分かり易い方法を選択しましょう。
今回は減価償却・減価償却費について基礎となる考え方や計算方法、仕訳方法を解説しました。
実際の実務においては、減価償却資産の取得原価等により受けられる税法上の特典等も様々あり、経営者や経理担当者は会社の状況に応じ、固定資産に関連する節税対策を選択していくことになります。
まずはしっかりと基本の仕組みを理解しておきましょう。
【参考】
国税庁:第2節 減価償却資産の償却費の計算
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/houjin/pdf/05-2.pdf
No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
画像出典元:o-dan
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