ROIは、「Return On Investment」の略語で、「投資利益率」や「投資対効果」と訳されます。
経営や投資の世界ではこのROIがよく使われますので、知っておいて損はありません。
ROIの意味や計算方法、具体例を用いた活用方法のほか、ROIを高める方法やメリット、ROASとの違いを知って、ROIに強くなりましょう。
このページの目次
ROIの基本情報を知り、ROIがどのようなものかしっかり確認しておきましょう。
ROIは、Return On Investmentの略語で、「アール・オー・アイ」や「ロイ」と呼ばれます。
「投資利益率」や「投資対効果」と訳され、投資した費用に対してどのくらい利益が出たかを測る指標として使われます。
ROIが高いほど、投資効率(運用効率)が良い、有益であると考えられます。
「費用対効果」と訳されることもあります。費用対効果といえば、類似の言葉で「コストパフォーマンス」を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、あまりに広義の意味で使われすぎており、マーケティングや営業、マネジメントの用語としては誤解を生みかねません。
投資の話だと認識しやすいように、「コスパ」ではなく「費用対効果」や「投資収益率」、または「投資対効果」を使うほうがいいでしょう。
マーケティング先進国のアメリカや欧米では、「ROIを算出せずに新しい事業・投資を始めることはない」と言っても過言ではありません。
事業計画を数値に基づいて立案し、予算立てて実行、その後数値に基づいて検証することを重要視しているのです。
そこで使えるのがROIです。
ROIを算出する目的は、「自社が使った投資金額は利益に対して見合っているか」を判断するためです。
例えば「投資金額を50万円出して、利益が100万円」としたらどうでしょう。
これは使った投資金額に対して、利益が50万円プラスで出ているため「投資に対してしっかり効果が出ている」ということが数字で把握できます。
反対に「投資金額を100万円出して、利益が50万円」としたらどうでしょうか。
この場合は使った営業コストに対して利益がマイナスになっているため「投資に対してしっかり効果が出ていない」ということになります。
ROIは、
・投資金額は多すぎるのか少ないのか
・本当にこの分野に投資して意味があるのか
などを判断する上でも非常に重要な指標となりえるのです。
ROIを学び、使いこなせれば、利益が出やすい投資に予算を分配する判断の一助となるでしょう。
それでは重要な計算方法について説明します。公式は簡単ですので、実例を見ながら算出してみましょう。
利益 ÷ 投資額です。そしてパーセンテージで表すために100をかけます。
利益は、粗利から投資額を差し引いたものです。粗利(売上総利益)は、売上から売上原価(売上にかかった仕入などの金額)を引いて算出します。
上の等式を分解すると、次のようになります。
粗利という言葉が分かりにくい場合は、「売上 - 売上原価」に置き換えて計算しましょう。同じ意味ですので、どちらで計算しても問題ありません。
状況を想定しながら実例を見てみましょう。
投資額:50万
売上:500万
売上原価:350万
粗利 = 500万 - 350万 = 150万
ROI(%) = (150万 - 50万) ÷ 50万 × 100 = 200%
100%がプラスマイナスゼロのラインですから、それよりも上であれば、プラスです。200%なら十分に良好だと判断できます。
計算方法を理解したところで、活用方法を見てみましょう。
インターネット広告の中で、Googleなどで検索したワードに連動して広告が表示されるリスティング広告というものがあります。
リスティング広告はクリックされて初めて料金が発生する広告タイプです。
表示した広告をターゲットがクリックすれば、広告として効果があったと判断できます。さらに、クリックしたターゲットのうち、どのくらいが次の段階(購入、登録など)に進むのか(コンバージョン数)が、すべて数値として現れます。
例えば、ワンクリック100円のリスティング広告で、新規立ち上げの通販化粧品会社が2,500円の新商品を売るとします。クリックした10人に1人が購入し、合計100個売れたと仮定します。
例)
クリック数:1,000回
広告費:100円 × クリック数 = 10万
売上:2,500円 × 100個 = 25万
売上原価:500円 × 100個 = 5万
粗利 = 25万 - 5万 = 20万
ROI(%) = (20万 - 10万) ÷ 10万 × 100 = 100%
売上が25万、利益が20万で、ROIは100%です。つまりプラスマイナスゼロの状態と計算できます。
売上を伸ばしたいならば
などの改善例が挙げられます。
ここで宣伝方法を、中吊り広告(7日間)に変更したとします。
JR3線群(京浜東北線群・中央線群・山手線群)の中づり広告約8,100枚に7日間広告を掲載し、結果商品が3,900個売れたと仮定します。
例)
広告費:750万
売上:2,500円 × 3,900個 = 975万
売上原価:500円 × 3,900個 = 195万
粗利 = 975万 - 195万 = 780万
ROI(%) = (780万 - 750万) ÷ 10万 × 100 = 300%
ROIが300%に到達しました。電車の中吊り広告は成功したと言っていいでしょう。
さて、なぜここまでの違いが現れたのか考察する必要があります。
考え得る理由は、不特定大多数の人に「新規立ち上げ」の通販化粧品会社名を知って貰う機会として中吊り広告が非常に有効だったと想定されます。その中で興味関心を持った人がウェブで調べて爆発的な大ブレークを達成したわけです。
このように、広告によって、効果の出方が違うのです。ROIを活用することで、どちらの宣伝方法が効果的なのか判断することができます。
ここでは、リスティング広告と中吊り広告を例に挙げ比較しましたが、今回の新型コロナの影響により、一時期中吊り広告が姿を消したことがありました。
人に見てもらわなければ宣伝効果が得られないため、ネット広告の方にシフトしたと推察されます。
企業は投資金額に見合った収益を確保しなければなりませんので、ROIを活用しデータを蓄積し、変化し続ける情勢を注視しながら投資を行うことが不可欠です。
不動産投資におけるROIでは、投資した金額をどのくらいの期間で回収することができるか、を算出できます。
ROIを計算する時に重要なポイントがあります。それは、ローンの返済額を差し引くことです。年間の家賃収入から維持管理費とローン返済額を差し引き、大家としての手残り(年間キャッシュフロー)を計算します。
例)
物件価格:3,000万円
自己資金:200万円
ローン額:2,800万円(金利2.50%、返済期間20年)
年間のローン返済額は以下のようになります。
3,000万 × 1.025 ÷ 20 = 153.75万
年間の家賃収入 - 維持管理費 - ローン返済額 = 大家としての手残り
576万円 - 115.2万 - 153.75万 = 307.05万
ROI(%) = 年間キャッシュフロー ÷ 自己資本額 × 100
ROI(%) = 307.05万 ÷ 200万 × 100 = 153.525%
ROIは約153%、つまり、1年かけずに投資した金額を回収することができると算出されました。となると、上記の設定での不動産投資はかなり良い条件だと言えるでしょう。続けて、自己資金が2,000万円の場合、ROIに差が出るかを見てみましょう。
例)
物件価格:3,000万円
自己資金:2,000万円
ローン額:1,000万円(金利2.50%、返済期間5年)
この場合、年間のローン返済額は以下のようになります。
1,000万 × 1.025 ÷ 5 = 205万
年間の家賃収入 - 維持管理費 - ローン返済額 = 大家としての手残り
576万 - 115.2万 - 205万 = 255.8万
ROI(%) = 年間キャッシュフロー ÷ 自己投資額 × 100
ROI(%) = 255.8万 ÷ 2,000万 × 100 = 12.79%
ROIは約13%、つまり、約7年半かけて投資した金額を回収することができると算出されました。ROIとしては自己資金200万円のほうが高いのです。
これは、少ない自己資金で、より多くの融資をひき、現金を手元に残しながら投資ができる不動産投資の特徴と言えるでしょう。
もちろん、ローン額が大きいということは、リスクも大きいということを忘れてはいけません。資産全体の状況を判断するためにROA(総資産利益率)や土地によって違う住民税なども考慮に入れて試算する必要があります。
人口密集地ではアパートやマンション等の不動産投資を検討する人も多いですが、都会の喧騒から離れると、話は別です。
アパートで投資しても、空き室率が高ければ投資としては失敗となるでしょう。
そこで検討対象になるのが、太陽光発電です。ここ10年で、遊休地や山間部の土地を活用したソーラーパネルはかなり増えました。
どのくらいで元が取れるのでしょうか。ROIを算出してみましょう。
例)
初期投資費用:1,500万円
年間売電収入:140万円
年間支出(メンテナンス):30万円
年間の売電収入 - 年間支出 = 手残り
140万 - 30万 = 110万
ROI(%) = 年間キャッシュフロー(手残り) ÷ 自己投資額 × 100
ROI(%) = 110万 ÷ 1,500万 × 100 = 7.33...%
ROIは約7.3%、つまり、約14年で元が取れる計算になります。
固定価格買取制度は20年なので、6年を残して自己資金の回収が済むわけです。6年間での売電収入は140万円 × 6 ですから、840万円の収益が見込めるわけです。
アパートを建設したり、駐車場にしても人が来ないかもしれない、という遠隔地の土地活用で人気なのが、太陽光発電です。
遊休地があり、日照時間が長く、晴天率が高い土地であれば、太陽光発電で投資を検討してみるのもいいかもしれません。固定価格買い取り制度は2021年にも改定される予定です。しっかりと確認して、損のないような投資を検討しましょう。
ROIを高める方法としては、基本的に「売上原価を抑える」「売上を伸ばす」「投資額を減らす」という3つの方法が考えられます。
売り上げた商品の仕入や、製造にかかった費用を「売上原価」と言います。500円で商品を売っても、売上原価が500円であればプラスマイナスゼロ、利益はありません。売上原価が300円であれば、粗利は200円です。売上原価が50円であれば、粗利は450円です。
このように、売上原価を抑えると、利益が増えるのが分かります。そして結果的にROIが高まります。
売上原価を抑える方法としては、商品の製造なら安い素材を探したり、外注の人件費を削減することで達成できるでしょう。
しかし、品質を維持しながら売上原価を抑える必要がありますので、慎重に検討しましょう。
商品の売上数が伸びれば、必然的にROIは高まります。商品が1個売れるよりも10個、10個売れるよりも100個、さらに1,000個と、売れれば売れるほど利益は大きくなります。
売上を伸ばす方法には、宣伝方法を変える、販売形態を増やす、インフルエンサーの協力を得る、などがあります。
新聞の折り込み広告だけだったものを、web広告を取り入れてみるのもいいでしょう。店舗でのみ販売していたものを、ネットショップを構えるのもいいでしょう。最近うなぎ上りに人気が出てきたモデルさんに試しに使ってもらってSNSで発信してもらうのもいいでしょう。
先日、棋聖としての最年少記録を打ち立てた将棋の藤井聡太棋聖が、さりげなくつけていた涼やかなマスクをご存知でしょうか。藤井棋聖が個人的に購入して使用していたマスクなのですが、一気に検索急上昇し、数日の対局でしたが同マスクの注文が数万件に登ったのだとか。
寝耳に水の店主は、状況に気持ちが追いつかない日々が続いたようですが、人の持つ影響力というのは計り知れない良い例でしょう。
100万円投資しようが、1,000万円投資しようが、同額の売上であれば、それはプラスマイナスゼロで利益無しです。それゆえ、投資額を減らすというのも一つの選択肢です。
ある商品を売り出すために、広告にかなり投資をしていると仮定します。そういった状況で有名な俳優を起用してTVCMを打ち出せば、かなりの費用が飛んでいくでしょう。
逆に新進気鋭の若手俳優を起用することで、少しですがCM費用(投資額)の減額が予想されます。イナバ物置のように、社長・社員でCMを作成すると、より費用が抑えられるでしょう。
ROIを算出して経営戦略を立てていくことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。メリットを確認し、これから先の投資に生かしましょう。
「〇〇だと思う」、「そういう風に見える」といった感覚的な判断ではなく、数値として現れると、判断が容易になります。
効果的な投資において、定期的に検証していくことは必須です。
最初に算出したROIをそのまま長期的に使用するのではなく、仮説・実行・検証を繰り返すことで、より戦略的な投資を可能にします。
投資対効果をパーセンテージで算出するため、違う課や部の投資対効果を比較することができます。
こちらの分野はROIが高いから投資を増額しよう、こちらの分野はROIが低いから撤退しよう、といった経営判断の一助となります。
もちろん、ROIは万能ではありませんから、多角的な判断が必要となりますが、ROI思考を身につけることで最善手を見つけやすくなるでしょう。
ROIは、個々の部門や業務を対象に算出する場合もあります。
営業への投資額に対して、どれぐらいの利益が出たのか知りたい場合は「営業ROI」、マーケティングへの投資額に対しては「マーケティングROI」と呼びます。どの部分を対象とするかによって計算式も少し変わります。
例えばマーケティングROIを算出するのであれば、
となります。
ここで注意すべきポイントがあります。
単なる全体的なROIとは違い、分子となる利益は、粗利からマーケティング投資額と「販管費」を差し引いた額にする必要があります。
基本的なROIを学んだあとは、各方面で活用していきましょう。
似たようなイニシャルシリーズで、「ROAS」があります。ROIと何が違うのか理解することが必要です。
ROASは、Return On Advertising Spendの略語です。
広告回収率・広告対効果と訳され、広告費用に対してどのくらい売上が伸びたかを測る指標として使われます。
利益ベースのROIと違い、ROASは売上ベースの考え方です。
ROIと同様、ROASもその数値が高いほど、投資効率(運用効率)が良いということになります。
売上を広告費で除して算出します。つまり、売上 ÷ 広告費です。これに100(%)を掛けることでパーセンテージを算出します。
例えば、「広告費が50万、売上が500万」という状況であれば、
ROAS(%) = 500万 ÷ 50万 × 100 = 1000%
となります。ROASが800~1000%であれば、非常に良好だと言っていいでしょう。
広告費と売上の金額がイコールであるとき、ROASは100%です。プラスマイナスゼロの状態ですね。その10倍のリターンがあったわけですから、「上記の例の広告は成功」とこのROASからは判断できます。
イニシャルシリーズには、ROIのような指標がいくつもあります。ROIの計算方法を身につけると、ほかの指標の計算方法を覚えやすくなるでしょう。
当ページで紹介したROI・ROASのほかに、よく使う類似指標は下図のようなものがあります。
ROIを学んだあとですから、なんとなく分かりやすいのではないでしょうか。
ROIについて、いかがでしたでしょうか。
上司に「この前のアレ、ROIどうだった?」と言われても、答えられるようになりましたか?
経営や投資の話でなくとも、社員同士でROIの話ができると数段やり手になった気分になるかもしれませんね。
画像出典元:Pixabay
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