費用対効果をベースにした意思決定はビジネスにおける基本です。
この記事では費用対効果に関する基本知識のおさらいから計算方法、それを高める方法、ROI(投資利益率)との違いまでを詳しくご紹介します。
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同義として用いられることが多い「ROI」と「費用対効果」。
いずれも、「どのくらい投資して、どのくらい利益を得ることができたか」という成果を測る指標として、多くのシーンで活用されています。
ROIと費用対効果は、同一の評価基軸として認知されがちですが、実は異なる点が一つ、それは単位です。
単位 | |
ROI(投資利益率) | %(投じた資金とそれを生んだ利益を「比率」で表す) |
費用対効果 | 円(費用と効果の差額を表す) |
「投資利益率」または「投下資本利益率」とも呼ばれるROI(Return On Investment)は、名前が意味する通り、投じた資金とそれが生んだ利益を「比率」で表します。つまり、単位は「%」となります。
対して、費用対効果は費用と効果の「差額」に視点を置くため、単位には「円」が用いられます。
いずれも、数値が高い方が費用を効果的に活用できていることを意味します。
一般的に「費用」と言うと、「金銭的費用」が先行的にイメージされがちですが、広義では「人的費用(労力)」や「時間的費用(かけた時間)」といったリソース全般に適用されます。
費用対効果の費用については、「コスト」と言う概念で捉えた方が的確に活用できるでしょう。
着目される主な費用には以下のようなものが挙げられます。
・システム導入コスト
・制作コスト
・販管コスト(販売費、一般管理費など)
・人件費
・マンパワー
など
費用対効果は「B/C(ビーバイシー)」とも呼ばれます。その語源「Benefit By Cost」を紐とくと、「効果」とはコストによって得た「利益・成果(Benefit)」であることがわかります。
例えば、新規のメール配信サービスを導入した場合、その費用対効果における利益・成果とは、配信メールが誘因となった商談の数や売上ということになるでしょう。
展示会に出展した場合の利益・成果は、展示会場で獲得した名刺の数や成約数、そこから生まれた売上などが考えられます。
すべての企業が経営活動の先に見据えているものは、まぎれもなく「利益の拡大」でしょう。
企業は利益の最大化という最終目標のために、日々さまざまな施策を勘案し、継続・修正・中断という意思決定を繰り返しています。
そして、収益性を正確かつシンプルに数値化する費用対効果とROIは、マーケティングにおいて欠かせない必須指標として、主に以下のような目的に活用されています。
・事業や施策の効果の検証
・導入するツールやシステムの比較・検討
・規模の垣根を越えた収益性の比較(例:100億円企業と1億円企業の比較)
費用対効果とROIを使う際は「調査する」や「評価する」という言葉を添え、程度を表す場合は「高い/低い」「見込める/見込めない」「期待できる/期待できない」などを用います。
企業は費用対効果やROIを調査し、数値が高い事業に費用を投じることで自社の発展を目指すことが可能になります。
費用対効果の計算方法はとてもシンプルです。
費用対効果 = 効果 -費用
例えば、Aというプロジェクトが500万円分の費用をかけて1,000万円分の効果を得た場合、費用対効果は500万円です。
1,000万円 ー 500万円 = 500万円 ← 費用対効果
一方、Bというプロジェクトが1億円分の効果を得たものの、費用が9,900万円分までかさんでしまったとしましょう。その場合の費用対効果はわずか100万円です。
1億円ー9,900万円 = 100万円 ← 費用対効果
プロジェクトAの効果の規模はプロジェクトBの10分の1ですが、費用対効果は5倍ということが分かります。
先の章でお伝えした通り、ROIは利益と投資費用の比率を「%」を用いて表されます。よって、計算式は以下のようになります。
ROI=利益(効果)÷ 投資額 × 100
前出のプロジェクトAとプロジェクトBにおけるROIを計算してみましょう。
利益・効果:1,000万円
費用:500万円
1,000万円 ÷ 500万円 × 100 = 200% ← ROI
利益・効果:1億円
費用: 9,900万円
1億円 ÷ 9,900万円 × 100 = 101% ← ROI
ROIが200%のプロジェクトAは、収益性が高く今後も継続すべき事業ということが分かります。
一方で、プロジェクトBのROIは101%。この数値から分かることは、1円の利益を得るために100円分のコストがかかっているということ。一般的には「赤字傾向」と判断されるでしょう。
しかし、企業の方針や戦略など、捉える視座によってその数値の意味合いは異なるため、意思決定の際は数値の背景にも目を向けることが重要と言えるでしょう。
このように、規模の異なる複数のプロジェクトについてROIや費用対効果を算出することで、プロジェクトの淘汰やリソースの的確な運用が可能になります。
一般的には、飲食業のROIは高く、小売業のROIは低くなる傾向にあるようです。
システムの導入や広告への投資など、新しい施策を会社の上司やチームに提案する際、費用対効果は有用な説得材料となります。ここではその具体例をご紹介します。
費用対効果を計算する際は、どこからどこまでを効果・利益、そして費用と区分するのかがポイントとなります。
システム投資について勘案する際に抑えておくべきことは、システムというもの自体が利益の源泉なのではなく、利益の産出を補佐するものだということ。つまり、「効果=利益」ではなく、「効果=利益への支援効果」ということです。
例として、システムの導入目的を「受注率の向上」と「業務の効率化」と設定し、それぞれの効果を利益に換算してみましょう。
導入前と導入後のデータはそれぞれ以下のとおりとします。
導入後は受注率が10%増加し、月当たりの受注件数は50件増える見込みとなっています。
ここで平均受注単価を20万円とした場合、「受注率向上」という導入効果が生み出す利益は、月間で1,000万円(20万円 × 50件)、年間では1億2,000万円(1,000万円 × 12ヶ月)ということになります。
同様に、2つ目の導入効果「業務の効率化」についても金額(利益)に換算してみましょう。
データを見ると、作業時間は1人につき20時間/月の短縮が可能になるようです。
これは、営業担当者を5人、1時間当たりの人件費を3,000円/人とした場合、月間で30万円(3,000円×20時間×5人)、年間では360万円(30万円×12ヶ月)の利益が間接的に生み出されるということを意味します。
そして、「受注率向上による利益」と「業務の効率化による利益」を合算すると「システム導入による利益」が数値化されます。
1億2,000万円(受注増額)+360万円(削減された人件費)=1億2,360万円(導入利益)
この利益から、導入初年度にかかる費用2,200万円(1,000万円+1,200万円)を差し引くと、費用対効果が算出されます。
1億2,360万円(利益)ー2,200万円(費用)=1億160万円(費用対効果)
システム導入初年度から大きなリターンを得られることが数値によって証明されました。自信を持って上司やチームを説得することができるでしょう。
広告掲載については、その「貢献度」を費用対効果に置き換えることで、有力な説得材料を手に入れることができます。
クリック課金型広告の掲載目標(コンバージョン)を「見込み顧客の獲得」と設定した場合について考えてみましょう。
この場合、費用対効果の効果は「見込み顧客の獲得」、費用は「広告費」ということになります。それぞれの想定額は以下のとおりとします。
見込み客50人のうち購入にいたるのは5人、客単価は2,000円なので、1ヶ月当たりの収益は10,000円です。
50人(見込み客)× 0.1(コンバージョン率)×2,000円(単価)= 10,000円(収益)
また、1クリックにつき100円の広告費がかかるので、1ヶ月当たりに必要な費用は5,000円ということになります。
100円(広告費/クリック)×50人(コンバージョン数)=5,000円(費用)
ROIを算出してみましょう。
10,000円(収益)÷ 5,000円(費用)× 100 = 200% ← ROI
このクリック課金型広告のROIは200%なので、1円の投資につき2円の利益が生まれるということになります。
このように費用に対する効果を数値化し、採算性を分かりやすく提示することで、提案案件の推進力を高めることができるでしょう。
社員に対しどのような投資を行えば高いリターンを得ることができるのか、これは全ての経営者が抱える課題です。
社員のパフォーマンス向上についてはさまざま方法が挙げられていますが、最近特に注目を集めているのが「睡眠資本」という考え方です。
睡眠は、労働を含めたライフサイクル全般にとって欠かせない資本です。メンタルの不調やパフォーマンスの低下など、睡眠不足が引き起こす多くの弊害については世間に認知され「働き方改革」なども行われるようになりました。
最近では、睡眠時間の確保に加え、「クロノタイプ」という遺伝子レベルで区分する睡眠のタイプ(時間帯)を考慮した新しい働き方が提唱されるようになっています。
これは、人には朝型・夜型・中間型という遺伝子のタイプが存在し、時間帯によって発揮できる能力が変動するので、勤務時間もフレキシブルにしようという考え方です。
社員は人的資源です。職場環境やシステムの快適性を上げることは、質の高い人材の確保や社員の育成推進へとつながります。
人件費における費用対効果を上げるには、社員に寄り添った経営体制を築くことが有効な一手と言えるでしょう。
近年におけるテクノロジーの急速な発展は、企業の生産性を大幅に向上することを実現しました。「マーケティングオートメーション」もその一つです。
マーケティングオートメーションとは、費用対効果の最適化を促進する有用ツールとして、多くの企業が導入を進めている自動マーケティングシステムです。
見込み顧客に対し、一元的な情報管理と的確なタイミングでのコンテンツ配信を担ってくれるため、営業は育成された見込み顧客に向けて質の高いアプローチを行うことができます。
このように、高機能なマーケティングソフトは、安価なものから高品質なものまで非常に手に入りやすい世の中になりました。ぜひ積極的に試用してみましょう。
投じた費用に対する効果を測る「費用対効果」と「投資対効果」ですが、その違いは一言でいうと「効果の波及時間」です。
例えば広告費を投じる場合、「新商品をいち早く広めたい」という短期的効果を求めるのであれば、それは費用対効果。
一方、「ブランドイメージの向上」という中長期的な効果を目標とするのであれば、それは投資対効果ということになります。
ちなみに、ROIに関しては両者の意味合いを内包しているため、効果の波及時間に関係なく利用することができます。
ビジネスは意思決定の連続です。そして、それを支える重要な評価基軸が費用対効果やROIであり、この指標なくして健全な経営は存在しないとも言えるでしょう。
「どんな費用がかかるのか」「どこまでを効果とするのか」を明確に捉え、正しい物差しで積極的な活用を行いましょう。
画像出典元:O-DAN
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