【ELLE JAPON 坂井編集長】女性×起業は次のファッショントレンドへ 起業=自己表現の時代とは

【ELLE JAPON 坂井編集長】女性×起業は次のファッショントレンドへ 起業=自己表現の時代とは

記事更新日: 2019/07/10

執筆: 篠田侑李

ファッションにおいても、起業においても大切な「トレンド」を読む力。

今回は、創刊当時から自立した女性を応援し続けているファッション雑誌「ELLE 」の日本版編集長である坂井佳奈子氏に、女性の起業についてお話を伺いました。
"ジェンダーレス"や"ジェンダーフルーイド"なファッションやモデルが世に多く送り出されている現在、性別という既成観念を超えて活躍する人が増えています。

女性にとって起業することが“トレンディー”になる未来は来るのでしょうか。

起業を志す女性たち

ー「女性起業家」は、それ自体がまだパワーワードのようにメディアで取り上げられています。坂井様は、世の中の女性起業家への見識についてどう考えられますか?

ELLEはファッションメディアとしては珍しく、創刊当時からグローバルな視点で女性の働き方にフォーカスを当てた情報を発信しています。その為、編集部にも読者にも新たな女性の在り方、生き方に寛容かつ意欲的な方が多いです。

一方で日本全体を見ると、例えば「ジェンダー・ギャップ指数」(2018年度 調べ)で日本は110位と、G7の中でもダントツの最下位。まだまだ日本女性の生きづらい現実があるかと思います。

ただ、数字以外に視野を広げれば、日本の男女格差は年々改善されると共に、女性の起業家も増えてきていると私は思います。

例えば、ELLEでは2014年から「ELLE WOMEN in SOCIETY」という働く女性向けのイベントを開催しています。
昨年は、女性の起業を応援するセミナーを実施したところ、参加者の中で 既に起業している方は1割ほど 、今後起業を目指している方は8割以上にものぼりました。この起業に対する意識の高さには編集部も大変驚かされました。

より起業される方が増える中で、世の中の「女性起業家」への意識に加え、女性側の意識も変わってきていると思います。 

「美しさ」の定義の変化とSNSの力

私はこの「意識の変化」には2つほど要因があると思っていて、1つ目は、ファッションの観点でみての「ダイバーシティー化」。2つ目は「SNSの普及」です。

昔はモデルといえば「金髪、青い目、8頭身、細身」が定型で、それが世の中に発信される美の定義でした。

しかし3、4年位前から、トップブランドのファッションショーに出演するモデルに多様化が見られています。
背が低い人、アジア人、黒人、プラスサイズモデルなど、これまでには見られなかったような方がランウェイを歩く機会が増えました。

ファッションショーというトレンドを打ち出す場に、多様な女性がモデルとして出る事で、「人は人、そのままの自分でいい」というメッセージをファッションメディアが発信しています。

世界のトップブランドがこのような姿勢を見せ、女性をエンパワーメントすることが、起業をするなど自分のやりたい道を進む女性の肯定に繋がっていると思います。

そしてSNSの普及も、女性の意識に大きな変化をもたらしていると思います。

今は個人もメディアになる時代です。
今まで言い出しづらかったことも、SNSを利用することで自分の「声」として世の中に打ち出すことができ、共感を得られれば一大ムーブメントになります。
最近ではセクハラを告発する#MeTooなどが記憶に新しいと思います。

また、SNSを利用したビジネスもキャリアの選択肢の中で一つになっており、身近な起業オプションとされています。

SNSは女性のキャリアの多様化を促すと共に、意見を世の中に届けやすくする存在になっています。より我が道を進む女性が多くなることで、ガラスの天井は以前よりも割りやすい時代になっているのではないでしょうか。

ー最近「ジェンダーレス系」モデルやファッションを目にする機会が増えています。こういったトレンドは、「女性らしさ」を尊ぶ価値観からの脱却や、女性の自立を捉えているのでしょうか?

それはあるように思います。ファッションは人の心を豊かにするものであり、時代の鑑です。更に、人々が洋服を身に着けて感じたことは世相にも反映されます。

より自立した女性が増えてきたこと、多様な価値観が各種メディアを通して人々に届けられることが、ジェンダーレスのトレンドにも繋がっていると思います。

目に見える形としては、モード紙の表紙をトランスジェンダーモデルが飾ったり、ジェンダーフルーイドとして男性が女性物を着たりすることはここ数年で多くなりました。抑圧されていた人、モノ、意見が表面に出て、より多様な人、価値観が尊ばれるようになっていくのだと思います。

ただ、一つ忘れてはいけないのは、ファッションには元々ジェンダーという境界線がないということです

海外のトップブランドのデザイナーや、メイクアップアーティストなど、独自の世界観を表す職業にはセクシャルマイノリティーの方が多いです。
ジェンダーや人種を超えて協力し、一つのクリエイティブな作業をするので、そもそもがジェンダーレスな価値観の元、出来上がっている業界なのです。

起業をすることへのハードルは下がった

我々のファッション、ファッションデジタルメディア業界から見たときに、若い人で優秀な人は就職しない傾向が出てきていますね大学を卒業してすぐに起業した彼女ら・彼らのノウハウをこちらが聞きにいくこともあります。

なので、起業をすることのハードルは下がっているのかなという印象は受けます。

ーなるほど。弊社は「レガシー産業」と呼ばれる不動産や建築業界に置ける起業家を重点的に支援しているのですが、そういった分野ではまだ起業家、特に女性は、他の分野と比べると少ないのが現状です。

もちろん、そういった分野では性別に関わらず、人脈や投資家へのプレゼンなど、我々の業界とはちがうテクニックが要るかと思います。例えば、出資してもらうにも、世の中の不動産のトレンドが分かった上でプレゼンをしないと首を縦に振ってもらうことは難しいでしょう。
そういった分野を切り崩していこうと思う母数が少ないので、女性の数がそもそも少ないのかもしれません。

「ジェンダーフリー」「ボーダーレス」を唱える社会になっても、人間だから個々で得意不得意はあり、男性の多い職業と女性の多い職業も出てくると思います。

その中で一つ平均値が取れれば、世の中としてうまく回っていくと思いますし、あえてそこを切り崩す女性を、彼女たちの性別にフォーカスして見るよりは、スキルや人脈等といった、ジェンダーと関係ない物差しで見る必要があると思います。

ー今のお話を伺って、Wantedlyの仲暁子さんが「ジェンダーにフォーカスしている時点で遅い」とビジネス雑誌への寄稿文に書かれていたことを思い出しました。

その通りだと思います。

例えば「サステナビリティー」(持続可能性)の重要性が取り沙汰されているので、世界的なトレンドとして、サステナブルな取り組みをしていない企業には投資家はお金を出しません。

同様に、日本でも無意味な男女格差の残るような会社には出資しないといったトレンドができ、それがスタンダードになると嬉しいですね。

自己表現・解放としての起業

ーファッションは世相を映す鑑であり自己表現の手法でもある、とのことでしたが、「起業」も自己表現のツールとしてファッショントレンドになっていくと思われますか?

はい。

私は、個々が苦しまなくていい時代が来るのではないか、と思っています。

SNSもあるので、得意なことや「これおもしろい」と思ったこと一つで起業できたりするような時代です。

令和という新たな時代を迎えてみんなが前向きになっていると思いますし、あえて自分の苦手なところを根性で直そうと”昭和な”頑張りをするのではなく、自分の得意ジャンルを伸ばし、起業というオプションを取りやすい世の中になると思います。

更に、最近では副業解禁や働き方改革によって、働き方の選択肢が増えました。

このような時代の流れを柔軟に受け止めることは一つのファッションセンスです。この「個々が才能を発揮しやすい」トレンドに乗って起業し、自分を表現する人は増えていくのではないでしょうか。

フォーカスを女性に絞るとするならば、女性には男性とは違う才能があり、起業して活躍できる業種はたくさんあるはずです。

「男性を倒す!」ではなく、女性が特有の観点を活かして能力を発揮できるような仕事を見つけるかどうかがキーになると思います。今はニッチな仕事と言われるかもしれませんが、AIなど改新されていく新たな技術の恩恵もあり、仕事の業種は数年単位で大きく変わっています。今までニッチだったものがスタンダードになる可能性は十分にあります。

ジェンダーに関わらず、視野を広げ、自分の能力を表現できる場所を見つけることが、これからの時代、自分を活かしていく突破口になると思います。

 

 

篠田侑李

この記事を書いたライター

篠田侑李

テキサス大学オースティン校で映画・メディア・インテリアデザインを学ぶ。趣味は旅行、そぞろ歩き、都内のアンテナショップ巡り。テーマパークの創り手側につくのが夢。

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