男女差別にどう対応するか。女性起業家たちの考え方

男女差別にどう対応するか。女性起業家たちの考え方

記事更新日: 2024/05/29

翻訳: 篠田侑李

テクノロジー企業とスタートアップに見られる男女差別にどう向き合うか。

女性として気をつけたいことや、性別の垣根を超えた次元で考えることの大切さを、Wantedly CEOの仲暁子氏(日本)と女性起業家ジョエル・パン氏(シンガポール)に聞きました。

(この記事は転載・翻訳記事です)

プロフィール

Akiko Naka (仲暁子)
プロフェッショナルネットワーキングサービスを展開するWantedlyを2012年に設立。同社は2017年に東証マザース市場に上場。Wantedly設立前はゴールドマンサックスやFacebookで営業やマーケティングに従事。
 
Joelle Pang (ジョエル・パン)
eコマース黎明期にDressabelleというファッションベンチャーを設立。以後eコマースやビッグデータなど様々なテクノロジー系スタートアップで経験を積む。現在SPH Digitalと、FastJobsというリクルーティングプラットホームを開設中。

仲暁子氏の考える、女性起業家の問題点

女性であることを売りにする、日本女性起業家の矛盾

私は、一番問題なのは女性起業家や会社員が、女性であるということに対し自意識過剰になっていることだと思っています。

女性たちの多くは、自意識に縛られたまま、自分の地位の向上を主張する余裕もないため、社会的に影響力のある事業ができていません。

日本には女性起業家と名乗る人々や、それにスポットライトを当てたメディアやイベントが沢山ありますが、これらのものから何百万もの顧客やリピーターを作り、拡大可能な利益を確保するような、影響力のあるサービスや商品が生み出されるのを私は見たことがありません。

日本ではよくジェンダー問題に結び付けて、女性向けの起業学校などが作られるますが、私はこれらの規模は拡大できるものではないと思います。

毎回「女性向け起業コミュニティー」の人々がメディアに出るたび思うのは、彼女らのセールスポイントは女性であることであって、ビジネスの根本は空っぽだということです。

洗脳、常識、そしてカテゴリー分けされた人工的な世界に気づこう

私は、人間は皆より平等な世界を次世代に作るために、貢献していかなければならないと考えています。

我々の先代がマイノリティーの人権や平等のために戦ったこと、そして今の社会に住む人全員がその恩恵にあやかっていることを、認識しなければならなりません。

一方で、マイノリティーの人たちは、自分たちがマイノリティーだということを意識し過ぎているとも思うのです。

エイリアンからすれば、地球の老若男女、そして違う人種も皆ほぼ同じに見えるでしょう。
なぜなら、地球上に境界線を引いたり、カテゴリー分けしてこの世界を分かりやすくしようとしているのは、我々人類なのですから。

人間の脳は、カテゴリー分けをすることによってこの世界を簡単に理解しようとします。

しかし一度自分自身もその「カテゴリー分け」の対象にしてしまえば、自分の可能性を制限することになるということを忘れてはいけません。

常識とは、18歳までに積み上げたあらゆる偏見のことだ。 

ーアルバート・アインシュタイン

私はこのアインシュタインの意見に大賛成です。

人類は皆、他の動物と違って社会的であるので、成長の過程で洗脳されます。従って、我々が成長すると、私たちの行動は「常識」によって制限されるようになるのです。

そしてみんな、この世界をかたどっている「常識」といった殆どの概念が"人工的"であることに気づきません。

例えば、通貨、国家、人種などのフレームワークは、読者のあなたと同じ知能レベルの人間によって作られたものに過ぎません。
しかしそのような概念が、私たちの物の見方や、アイデンティティーに影響を与えているのです。

“本当に重要なこと”にフォーカスするには、見聞を広げ、物事の相対性を理解しよう

私たちはこの人工的なカテゴリーの概念を捨て、自分たちを柵から解放するべきだと、私は思います。

「本当に重要なことにフォーカスする」とは、人類を次のレベルへ飛躍させるような、素晴らしいサービスや商品を生み出すことにフォーカスするということです。

そのためには、ジェンダー問題についてだけではなく、他のマイノリティーと言われる人種や国家などについても考えることも重要です。

柵から解放されるには、相対性への理解が必要です

なぜなら、広い観点を持っていると、物事をより相対的に捉えられるから。

あなたが狭いコミュニティーの中だけで生きていて、外の世界を見たことがなかったり、異なる価値観の人と関わりがなかったり、この地球の過去や未来について学んだことがないとしましょう。
するとあなたは「今」と「ここ」にしか存在できないので、絶対的な観点と、狭い視野しか持つことができません。

一方で、自分の見方と異なる文化や人に触れて学ぶ時、あなたは自分が持っていた“常識”の概念が人工的なものに過ぎないとわかるはずです。

そこで、若い人たちには旅行や読書を通じて自分の視野を広げ、他の土地に住む人々のことや、過去、そして未来のことを学んでもらいたいと思っています。そうすることで、相対的な視点を得て、自分たちを閉じ込める柵から解放していって欲しいです。

スタートアップの男女差別問題 byジョエル・パン

多様性はイノベーションにおいて必須です。

経営陣にジェンダーの多様性が見られる方が、ビジネスにおいてより多くの利益が得られ、会社は上手く回ります。

スタートアップとテック業界は、現状を打破してイノベーションを起こし、成長するために新たな方法をどんどん取り入れようとしています。しかし皮肉なことに、この業界のほとんどは男性主導で、女性に優しい環境ではありません。

グーグルやフェイスブックなどのテック企業の従業員10人のうち、女性は3人しかいなく、女性が率いるテック系スタートアップは、スタートアップ全体のうち5%しかないといいます。

イノベーションが起きる一方で、男女差別は健在

私はテクノロジー分野の起業家として、女性として、意図的でないものも含めてむ性差別の影響は受けてきました。そして男女差別が、プロフェッショナルとして働く女性の生き方や昇給にどう影響するのかも見てきました。

女性は、同僚としても投資家としても男性と違うように扱われ、性差別やセクシャルハラスメントに日夜悩まされています。

全く同じ会社で全く同じ仕事をする男性と比較した場合、63%もの女性は男性に比べ低給であり、その不平等について給与交渉を申し込まない女性は全体の3割にものぼります。

世の中には、「女性と男性が生物学的に違うから、女性はテック業界にそぐわない」と考える男性がいます。
彼らはその偏見を広め、男性優位なテック業界の現状を維持しようとしています。

彼らが問題なのは明らかですが、我々女性も男女差別問題の一因となっていることは忘れてはいけません。

女性は自分自身に重荷を課し過ぎて、地位の向上を抑止してしまっていることがあるのです。

男性は希望職・ポジションに応募資格の6割しか満たしていなくても応募するが、女性は100%でないと応募しないといいます。その大きな理由として、失敗や拒否されることへの恐れが挙げられるようです。

女性が起こせる活動とは

私はFacebookのCOOであるシャーリー・サンドバーグが立ち上げた、LeanIn.Orgのシンガポール事業に積極的に参加しています。このウェブサイトは、夢を叶えたい女性を応援するものです。

この事業では、ビジネスネットワーキングや専門家による無料のレクチャーなど、様々な機会を女性に提供しています。参加した女性たちが活動を通して得られたものを他の女性に還元し、みんながやりたいことに「イエス!」と言えるようなプラットホーム作りをしています。また、私はWomen In Techにも積極的に貢献しています。

偏見や男女差別をなくすには

性差別問題を職場で議論するのは良いことですが、本当の変化は、女性も男性も共にジェンダーの壁を壊し、今度男女差別に直面した時に一緒になって立ち向かえた時にしか起こりません

以下に方法を幾つか紹介します。

相手に、詳しく説明してもらう

この方法は、相手に問題意識を持たせるのに簡単な方法です。もし相手がジェンダーに関して際どい発言をしたら、「どういうこと?」と聞いてみましょう。相手にあなたを納得させるか、自己矛盾を露呈させましょう。

あなたの見解が重要だと信じよう

あなたのスキル、アイデア、そして経験が会社の事業戦略や損益に影響を与えており、あなたは大切な存在です。自分の想いを話すか黙っているかの二択に迫られたのなら、話す方を選びましょう。

個人レベルで努力しよう

失敗への恐れや不安から離れるために、まず最初の一歩を踏み出しましょう。あなたのキャリアゴールに近づくために、出来そうなことを1つ考え、それを一人でこなすか、誰かと一緒にやるか、そしてそれはどんな場所か、想像して実践しましょう。

最近はテック界隈での男女不平等や差別の摘発が多く、私は今がジェンダーギャップをなくすチャンスだと思っています。

偏見やステレオタイプへの問題意識を上げるような議論は今までになく盛んになってきています。女性たち自身も、支援コミュニティーの輪を急速に広げており、問題に直面した時にアドバイスをもらいやすい環境になってきていると思います。

より平等なテックとスタートアップ環境を作るのに、それぞれが役割を持って立ち上がり、問題解決に向けて取り組むことで、私は皆が今よりさらに多くのことを成し遂げられるようになると信じています。

【原文】Jumpstart Magazine Issue 18, pp.34-35(翻訳:篠田 侑李)

画像出典元:unsplash

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