男女差別にどう対応するか。女性起業家たちの考え方

男女差別にどう対応するか。女性起業家たちの考え方

記事更新日: 2019/02/14

翻訳: 篠田侑李

テクノロジー企業とスタートアップに見られる男女差別にどう向き合うか。

女性として気をつけたいことや、性別の垣根を超えた次元で考えることの大切さを、女性起業家ジョエル・パン氏(シンガポール)と、Wantedly CEOの仲暁子氏(日本)に聞きました。

プロフィール

Joelle Pang (ジョエル・パン)

eコマース黎明期にDressabelleというファッションベンチャーを設立。以後eコマースやビッグデータなど様々なテクノロジー系スタートアップで経験を積む。現在SPH Digitalと、FastJobsというリクルーティングプラットホームを開設中。

Akiko Naka (仲暁子)
プロフェッショナルネットワーキングサービスを展開するWantedlyを2012年に設立。同社は月間約150万のアクティブユーザーと30,000の登録企業を誇り、2017年に東証マザース市場に上場。Wantedly設立前はゴールドマンサックスやFacebookで営業やマーケティングに従事。また、漫画家を目指していた時期もある。

 

スタートアップの男女差別問題 byジョエル・パン

多様性はイノベーションにおいて必須だ。

経営陣にジェンダーの多様性が見られる方が、ビジネスにおいてより多くの利益が得られ、会社は上手く回る。

スタートアップとテック業界は、現状を打破してイノベーションを起こし、成長するために新たな方法をどんどん取り入れようとしている。しかし皮肉なことに、この業界のほとんどは男性主導で、女性に優しい環境ではない。

グーグルやフェイスブックなどのテック企業の従業員10人のうち、女性は3人しかいない。女性が率いるテック系スタートアップは、スタートアップ全体のうち5%しかないという。

イノベーションが起きる一方で、男女差別は健在

テクノロジー分野の起業家として、女性として、無意識的なものも含む性差別の影響は受けてきた。そして男女差別が、プロフェッショナルとして働く女性の生き方や昇給にどう影響するのかも見てきた。

女性は、同僚としても投資家としても、男性と違うように扱われ、性差別やセクシャルハラスメントに日夜悩まされる。

全く同じ会社で全く同じ仕事をする男性と比較した場合、63%もの女性は男性に比べ低給である。その不平等について給与交渉を申し込まない女性は全体の3割にものぼる。

世の中には、女性と男性が生物学的に違うから、女性はテック業界にそぐわないと考える男性がいる。彼らはその偏見を広め、男性優位なテック業界の現状維持に努めている。

彼らも問題だが、同時に、我々女性もこの男女差別問題の一因となっていることから目を背けてはならない。

我々女性は自分自身に重荷を課し過ぎて、女性の地位向上を抑止してしまっていることがある。

男性はやりたい職・ポジションに、応募資格の6割しか満たなくても応募するが、女性は100%でないと応募しないという。その大きな理由として、失敗や拒否されることへの恐れがあげられる。

女性が起こせる活動とは

私はFacebookのCOOであるシャーリー・サンドバーグが立ち上げた、LeanIn.Orgのシンガポール事業に積極的に参加している。このウェブサイトは、夢を叶えたい女性を応援するものだ。

この事業では、女性のビジネスコネクションを増やす活動をしたり、専門家による無料のレクチャーなど様々な機会を女性に提供している。参加した女性たちが活動を通して得られたものを他の女性に還元し、みんながやりたいことにイエス!と言えるようなプラットホーム作りをしている。また、私はWomen In Tech Chapterにも積極的に貢献している。

偏見や男女差別をなくすには

性差別問題を職場で話題に挙げるのは良いが、本当の変化が得られるのは、我々(女性も男性も)が立ち上がって既存の壁を壊し、次に男女差別に直面した時に立ち向かえた時だ。

以下にその方法を幾つか紹介する。

相手に、詳しく説明してもらう

この方法は、人に問題意識を持たせるのに簡単な方法だ。もし相手がジェンダーに関して際どい発言をしたら、「どういうこと?」と聞こう。相手に話させて、あなたを納得させるか、自己矛盾を露呈させよう。

あなたの見解が重要だと信じよう

あなたのスキル、アイデア、そして経験が会社の事業戦略や損益に影響を与えている。自分の想いを話すか黙っているかの二択に迫られたのなら、話す方を選ぼう。

個人レベルで努力しよう

失敗への恐れや不安から離れるために、まず最初の一歩を踏み出そう。あなたのプロフェッショナルゴールに近づくために、出来そうなことを1つ考えよう。一人でするか、誰かとするか、何をするか、どこでそれをするか想像し、実践しよう。

最近はテック界隈での男女不平等や差別の摘発が多く、今がジェンダーギャップをなくすチャンスだと思う。

偏見やステレオタイプへの問題意識を上げるような議論は今までになく盛んになっている。女性たち自身も、支援コミュニティーの輪を迅速に広げており、問題に直面した時にアドバイスをもらいやすい環境になってきている。

より平等なテックとスタートアップ環境を作るのに、それぞれが役割を持って立ち上がり、問題解決に向けて取り組むことで、人々は今よりさらに多くのことを成し遂げられるようになるだろう。

仲暁子氏の考える問題点

女性であることを売りにする、日本女性起業家の矛盾

一番問題なのは、女性起業家や会社員が、女性であるということに対し自意識過剰になっていることだと思う。女性たちは、自意識に縛られ、地位の向上を主張する余裕もなく、大体において社会的に影響力のある事業ができない。

日本には女性起業家と名乗る人々や、それにスポットライトを当てたメディアやイベントが沢山あるが、それらから影響力のあるサービスや商品が生み出されるのを私は見たことがない。

「影響力のある」というのは、何百万もの顧客やリピーターと、拡大可能な利益を作る力があることだ。日本ではよくジェンダー問題に結び付けて、女性向けの起業学校などが作られるが、これらは規模の拡大を図れるものではない。

毎回この女性向け起業コミュニティーの人々がメディアに出るたび思うのは、彼女らのセールスポイントは女性であることであって、ビジネスとしてみると根本は空っぽだということだ。

洗脳、常識、そしてカテゴリー分けされた人工的な世界に気づこう

人間は皆、より平等な世界を次世代に作るため貢献しなければならないと思う。そしてもちろん、我々の先代がマイノリティーの人権や平等のために戦ったこと、そして今の社会に住む人全員がその恩恵にあやかっていることを、私たちは認識しなければいけない。

一方で、マイノリティーの人たちは、自分たちがマイノリティーだということを意識し過ぎていると思う。

エイリアンからすれば、地球の老若男女、そして違う人種も皆ほぼ同じに見えるだろう。地球上に境界線を引いたり、カテゴリー分けしてこの世界を分かりやすくしようとしているのは、我々人類だ。

人間の脳は、カテゴリー分けをすることでこの世界を簡単に理解できる。しかし、一度自分自身もカテゴリー分けの対象にしてしまえば、自分の可能性を制限することになるということを忘れてはならない。

常識とは、18歳までに積み上げたあらゆる偏見のことだ。 

ーアルバート・アインシュタイン

私はこの意見に大賛成だ。

人類は皆、他の動物と違って社会的であるので、成長の過程で洗脳される。よって我々が成長すると、私たちの行動は「常識」によって制限される。

人々は、この世界をかたどっている「常識」など殆どの概念が人工的であることに気づかない。例えば、通貨、国家、人種などは、あなたと同程度の知能を持つ人間によって作られたものに過ぎない。しかしそのような概念が、私たちの物の見方や、アイデンティティーに影響を与えているのだ。

“本当に重要なこと”にフォーカスするには、見聞を広げ、物事の相対性を理解しよう

我々はこの人工的なカテゴリーの概念を捨て、自分たちを柵から解放するべきだと思う。

私の言う「本当に重要なことにフォーカスする」とは、人類を次のレベルへ飛躍させるような、素晴らしいサービスや商品を生み出すことにフォーカスする、ということだ。そのためには、ジェンダー問題についてだけではなく、他のマイノリティーと言われる人種や国家などについても考えることも重要だ。

柵からの解放の鍵を握るのは、相対性への理解だ。

広い観点を持っていると、物事をより相対的に捉えられる。

あなたが狭いコミュニティーの中だけで生きていて、外の世界を見たことがなかったり、異なる価値観の人と関わりがなかったり、この地球の過去や未来について学んだことがないとする。するとあなたは「今」と「ここ」にしか存在できず、狭く、絶対的な観点しか持つことができなくい人になってしまう。

自分の見方と異なる文化や人に触れ、それらから学ぶ時、あなたは自分が持っていた“常識”の概念が人工的なものに過ぎないとわかるだろう。

相対的な観点を得て自分たちを柵から解放するために、若い人たちには旅行や読書を通じて自分の視点を広げて欲しい。そして他の土地に住む人々のことや、過去、そして未来のことを学んでもらいたいと思っている。

【原文】Jumpstart Magazine Issue 18, pp.34-35(翻訳:篠田 侑李)

画像出典元:unsplash

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