TOP > Jumpstart > 【起業ログ×Jumpstart共同連載】第2弾:「回復力」が成長の鍵 不況知らずのスタートアップを
アジアのスタートアップについての情報を日々発信している香港発のJumpstartと起業ログが共同でアジアのスタートアップ情報を定期的に発信していくこの企画。
第二弾は、AI駆動のアンケートツール「Yought」の共同創設者のリチャード・リュウ。
スタートアップ企業は不況で勝ち残れないと言われることが多いが、果たして本当にそうなのか。リチャード・リュウが不況をチャンスに変えるための「回復力」について語った。
プロフィール
Richard Liu (リチャード・リュウ)
ここ数か月間、新型コロナウイルスはスタートアップ企業の収益構造に大打撃を与えてきた。記事執筆時には既に全世界で385万件以上の症例が確認されており、新型コロナは医療制度に限らず世界経済にも壊滅的な影響を及ぼしている。
スタートアップ企業も、新型コロナの影響で従業員の解雇や店舗の閉鎖など数々の困難に直面してきた。一般的に、不景気はスタートアップ企業に悪影響を及ぼすと考えられており、こうした不確実な状況下での起業は避けられやすい。しかし、必ずしもそうとは言い切れないものだ。
前回不況期、そして2007~2009年にかけての世界的な金融危機下でも、多くのスタートアップ企業が製品の発売に成功し、今日の最大手テクノロジー企業に発展していったことを忘れてはならない。
これらの企業にはシェアリングエコノミーのプラットフォームであるAirbnbやUber、そしてソフトウェアやハードウェア製品を提供するNutanizxやBeats(その後Appleが買収)が含まれている。
こうしたスタートアップ企業は、不況を利用して市場機会を探り優れた製品を開発したため、市場が回復するとすぐに規模を拡大することができた。2008年Airbnbは、単純にお金を稼ぐ必要性から「思い切って家を貸し出しても良い」という人々の思いを上手く利用した。同様にして、失業者や副業を探していた人々も自ら進んでUberの運転手になろうと考えたのだ。
Y Combinatorの共同創業者であるポール・グレアム氏は、「度重なるスタートアップ企業への資金提供から学んだことがあるとすれば、それは創業者の資質によって成功か失敗かが決まるということだ」と言う。
グレアム氏は、景気が好調なときには得られない機会が手に入り得るという意味で、経済が不調なときこそが起業に適した時期だとも述べている。
さらに重要なことに、彼は経済状況よりも創業者の回復力の方がスタートアップの成功を決定づける大きな要因になるという。市場は暴落したとしても、必ず回復するということを忘れてはならない。従って、回復力とはスタートアップ企業が不況の波を乗り切るチャンスなのだ。
初期段階において、スタートアップ企業はブートストラップ(注:ビジネス上のアイデアをなるべく低い予算で本格的なビジネスに変えること)を行うべきだ。安定したキャッシュフローを維持することは、下落傾向にある市場で確実に生き残るための最初の一歩と言える。さらに、最も重要なことは、新たなチャンスに資本を投入することだ。
まず、不況期には競争の緩和が起きる。その間は初期段階の競争が緩和されるだけでなく、現存の競争相手も窮地に追い込まれる。その結果、競合の誰もがコストを削減しようと躍起になるため、需要が減少しマーケティング予算も少なくなる。また新規顧客獲得コストが通常よりも低価格で済むため、顧客にリーチし新規顧客層を獲得しやすくなるだろう(もちろん、価格つり上げのような不徳義な商法を除けばの話だが)。
重要なのは、不況下においてもなおスタートアップ企業は資金調達ができることだ。通常よりも案件の規模が小さくなる可能性はあるものの、適当な投資家を見つけられる可能性は十分にある。エンジェル投資家やシード投資家はそのために存在するようなものだ。キャッシュフローが良好であれば有利にはなるが、つまるところ、こうした投資家たちに初期段階のスタートアップ企業を売り込む決め手は、企業のビジョンそのものだろう。
多くのスタートアップ企業が不況時に失敗するのは確かだ。
しかし、不況という巨大な壁が立ちはだかる中でそのビジネスモデルが証明してきたように、回復力さえあれば、市場が回復した際に生き残ったスタートアップ企業は必ず成功できるのだ。
出典:JumpStart(https://www.jumpstartmag.com/jumpstart-magazine-issue-30-the-lockdown-issue/)
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