「リモートワークでは心理的安全性を意識してマネジメントをすることで、チームメンバーのやる気・パフォーマンスを向上できる!」
そう語るのは、Fringe81株式会社のCOO室グループマーケティング室室長柳川小春さん。
従業員同士で感謝のメッセージとポイントを送り合うことで、社内の連携を強化するサービス「Unipos (ユニポス)」のマーケティング責任者を入社4年で任され、同サービスに関する中心人物だ。
2015年にGoogle社によって発表された「心理的安全性」という言葉。聞いたことはあっても実際にはどうマネジメントに活かしていくべきなのか分からない人も多いのではないだろうか。
そんなメンバーのやる気向上のカギである「心理的安全性」とは何なのか、またマネジャー層が実践できるチームメンバーの心理的安全性を高めていく方法について伺った。
このページの目次
プロフィール
柳川小春/ Fringe81株式会社
柳川さん:
私たちウェビナー(ウェブセミナー)を定期的に開催しているのですが、そこで取っているアンケートでよく挙がっている課題は主に2つあります。
1つ目が、部下の状況の不透明化。
リモートワークになったことにより、上司が部下の仕事ぶりを把握できなくなったことです。
2つ目が、立場を問わず信頼貯金を切り崩しながら過ごしている人が増えたということですね。信頼貯金というのは、お金のように人からの信頼を貯めたり使ったりできるという考え方です。
今まではオフィスでお互いのことが見えていたから、多少ミスをしても「この人頑張っているしな」と思ってもらえて信頼を維持する場面がありました。
でも今では、距離が離れたことで、そもそもお互いへの関心が薄れて、相手が今どれだけ大変な状況かということに思いをはせることも難しくなっています。そのためリアルな話、お願いされてもすぐに助けたくならない。
さらに、メンバーに頼るときも、「何でこの人仕事押し付けて来るのと思っているのではないか?」と思ってしまい、お願いをしづらくなる状況が生まれています。お願いをしづらくなったことで、今までオフィスで貯めてきた信頼を切り崩しながらお願いするようになってしまっています。
このように、「心理的安全性」(考えていることや思っていることを伝えても、周りから不信がられたり否定されたりしないと思える心理状態)が下がってきているというのがリモートワークの導入による大きな変化です。
柳川さん:
そうですね。この心理的安全性は、私もUniposカンパニー代表の斉藤も大事にしている価値基準です。心理的安全性は、メンバーのやる気をあげる土台であると考えています。
『心理的安全性のつくりかた』の著者で株式会社ZENTech 取締役の石井遼介氏によると、心理的安全性の構成要素は4つあります。
これら全てが揃うと、お客様に対して自分一人では提供できない価値が生み出せたりするので、プラスなことが自分に返ってくる。そうなると、モチベーションに繋がることが提唱されています。
柳川さん:
まず1点目の「話しやすさ」については、問題が起こったときにすぐに言えるかということです。
コロナ以前はチームの中で違和感を感じたらすぐに伝えやすかったですよね。でもリモートワークになってからは違和感をすぐに伝えづらくなってしまい、言われたらやるとか頼まれたらやるという受動的な行動が増えてしまいます。
このように自分起点でのアクションが減っていくと、何で自分は頑張っているのかがわかりづらくなり、結果やる気の低下に繋がってしまいます。
そこで話しやすさを保持するのに大事なのは、やはり対話をすることです。特に大切なのは、上司自身の気持ちを伝えることです。
仮にやる気のない社員がいたとして一番やってはいけないのが、「あなたはやる気がない!」と言うこと!(笑)
これを言ってしまえばもうそこで終了で、部下からの信頼貯金はゼロになります。
なぜならこの言葉自体、上司の主観だからです。
よくYouメッセージ、I (アイ)メッセージと言いますけど、「あなたはやる気がない!」と言ってしまうと相手は「いや、違います!」と否定ができてしまいます。
でも自分を主語にして「私はもっとやってほしい仕事がある」とか「私はこの進め方に問題点があると思っています」というように自分が問題意識を持っていることを伝えると、その意識を持っていることは事実なので、相手も認めるしかないのです。従って「ここに問題点があると感じている」という事実を受け止めやすくなるのです。
そうして上司自身の気持ちや考えをを部下にIメッセージで伝えて信頼を落とさないようにして違和感を共有しやすい環境を作ることが大切です。
柳川さん:
助け合いを高める方法について考えるときに、まず「絶対に助け合いたくないケースって何だろう?」と考えてみましょう。
おそらく、助けたら助けただけ損する環境ではないでしょうか?
従って大切なのは、ちゃんと助けている人にスポットライトが当たっている状態を作ることです。
例えば、ちょっと困っている人の手助けをしたり、トラブルが起きたときに何とかしたとか、そういう誰かを助けたことがきちんとみんなに届いていている状態が理想です。
その中で今まで助けてこなかった人も「私だけ助けてないのもなぁ。いっちょ一肌脱ぐか!」と思わせるような環境があると、チーム内での助け合いがだんだん当たり前になっていきます。
柳川さん:
まず挑戦に関しては、2つ大切なポイントがあります。
実際に弊社のとったデータがあるのですが、新しい挑戦に対して心理的ハードルを感じる理由の1位は、「失敗をして信頼を失い評価が落ちるのが怖いから」です。挑戦というのは普通10回やったら9回は失敗するものなんですけど、その9回の失敗に対して怒らないと伝えることは大切です。
ペナルティをつけてしまうのは一番良くないですね。アウトプットを出しづらくなり、やれと言われたことを限られた範囲の中だけでやるようになってしまいます。そうなると成長実感もなくなり、結果的にモチベーションも湧いてこなくなります。
さらに2位は、「今やっている仕事で認められている実感がないから」。逆に挑戦に対して心理的ハードルを感じない理由の2位は、「日々の仕事を認められている実感があるから」です。
新しい挑戦は、日々の小さな工夫から生まれます。その小さな日々の工夫に対しポジティブな言葉を掛けられたことがある人は、ない人に比べて挑戦している割合が27.6%も高い。従って、まずは今部下がやっている日々の仕事を見て、褒めることが大切です。
「Unipos」公式HP参照
いきなり新規事業立案コンテストをやって挑戦できる人は、元々できる人。でも大半の人はそうではないですよね。「私なんて、俺なんて」と思っている人を挑戦させたいのであれば、やっぱり普段の小さいところから認めてあげることが大切だと思います。
柳川さん:
まず「新奇歓迎」というのは、自分とは違う知見や考えを取り入れられる状態です。
例えば、部下がこれまでとは異なる意見を出したとき、上司が「今までの意見でいいんだ!」と拒否するとします。すると部下は「新しい意見は取り入れてもらえないんだ」と、意見を言うことができなくなり、心理的安全性はさがります。
新奇歓迎は、相手の挑戦を認め、たとえ失敗しても「挑戦したことそのもの」は歓迎し褒めることが大切です。これを繰り返すことで、心理的安全性が上がり、挑戦しやすい環境が生まれます。
さらに大事なのは、シンプルに部下と目を合わせて話すことです。結構当たり前に聞こえるのですが、これができていないマネージャーは結構います。そういう人はそもそも話しかけてもらいづらいですし、周囲からの色々な意見を吸い上げることができません。
柳川さん:
そうですね、やっぱり従業員のやる気低下というのは一部の原因を直せば直る「技術課題」ではなくて、部分的に直しても直らず、全体の仕組みや人間関係など複数の要素が絡み合った「適用課題」なので、すぐに直していくことは難しいです。
だからなんでもマネージャーや管理職の半径5メートル以内から変えていくしかないと私は思います。例えば、毎朝15分間自分たちの仕事が誰のために、なんのためにやっているのかを確認する時間を設けるところから始めるとか。一歩一歩スモールサクセスを積み重ねていれば心理的安全性も高まってくると思っています。
柳川さん:
Uniposは従業員同士で感謝を送り合うサービスです。この機能は特に、先ほど述べた心理的安全性の4要素の中の「助け合い」の習慣を作るのに優れています。
人事評価だと、大きなプロジェクトの大きなKPIやKGIとか、プロジェクトをやり切ったかどうかという基準でしか評価されませんよね。でも正直そのプロジェクトの背景にどれだけのドラマがあったのかと思っています。
例えば、「トラブルが起きたときに〇〇さんが解決した」とか、「困ったときに〇〇さんに助けてもらった」とか。そのKPIの達成を成り立たせている日々の助け合いの記録を残すのがUniposです。
社員同士の「ありがとう」が蓄積されていくことで、相談しやすく助けあう環境が生まれます。さらに1on1などの面談のときにもメンバーの仕事を把握するのにとても役に立ちます。個人のページを見ると、リモートワークでお互いが見えない状況でも「あっ、この人こんなときに助けていたんだ」という裏側の動きが見えます。
例えば、「マネージャー視点でこの人仕事サボってそうだな」と思うとします。でもUniposの記録を見ると、実はこの1週間他の部署で緊急プロジェクトが立ち上がってそちらの手助けをしていて時間を取られていたということがわかります。そうなると面談でも適切なフィードバックが出せるようになります。
また、投稿にはハッシュタグをつけることができます。
「Unipos」公式HP参照
企業ごとに独自のハッシュタグを設定したり、投稿のときにオリジナルのハッシュタグを作って投稿することが可能です。デフォルトで設定するハッシュタグには、企業理念や行動指針(バリュー)を設定する企業様が多くいます。ハッシュタグをクリックすれば、同じハッシュタグが付いた投稿を一覧で見ることもできます。
全社員で共有することで「こういう行動大事だったよね」といった社内で大切にしている行動指針を再確認するきっかけにもなります。普段なかなか意識することができない理念などを、Uniposの投稿を通じて再解釈することができるので、理念浸透にも役立つような設計になっています。
もちろん管理職も含めた多くの人から称讃されるとかなり嬉しいですし、さらに従業員のやる気アップにも繋がります。
柳川さん:
今回のアップデートでは、部署間や管理職も巻き込んだ組織づくりを意識しているところです。今までのUniposはシンプルに、感謝の言葉とポイントを従業員間で送り合うことで感謝の量を増やし、お互いに認め合うことを促進していました。
しかしリモートワークが広がり、人と人とが分断されている中で現状のUniposである従業員間のやりとりだけでは足りないと考えるようになりました。
そこで、管理職こそ感謝し合い認め合うことが大切だということで今回のアップデートに至りました。
柳川さん:
イチオシは、Uniposのオプションサービスとなる「組織コンディション事前察知レポート」です。
今まで送り合ってきたUniposの感謝の記録が蓄積されていて、それを元に今の組織のコンディションがわかるようになっています。
「Unipos」公式HP参照
例えば、あるマネージャーの人が部下に月に50回感謝を送っていたとします。でもある月突然10回しかしなくなってしまいました。
そうなると恐らく、二人の間で何かありましたよね (笑)。
そのマネージャーの人も、仕事で忙しくなってくると一人で抱え込んで周りが見えなくなるということがよくありますし、人事の人もあまり解像度高く各部署の状態を見ることができないことが多い。
従って、そういう「なにか起きているかも」というのを客観的に察知して可視化することで、問題化する前の早い段階でサポートに入ることができます。もしかしたら何も問題がない可能性もあるのですが、チームが上手くいっているのかを確認してもらえるだけでもマネージャーとしてはかなり気が楽になると思います。
逆に言うと、良いコミュニケーションができている部署もわかります。従ってそれを元に、その部署のマネージャーが普段どんなコミュニケーションを取っているのかを他部署にも共有することができれば、会社全体としての組織づくりの成功確度を上げることもできます。
柳川さん:
2020年はテレビ会議システムの普及とかオンライン化など、リモートワークインフラがかなり整いました。2021年からは、物理的に距離が離れている中でもいかに「心が近い状態で働けるか」に意識はシフトしていくと考えています。
我々Uniposの基本理念は「すべてのはたらく人にスポットライトを」。ビジョンは「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」です。
これからも、管理職と部下やメンバー同士の認め合いや信頼を増やすことに集中してサービスをブラッシュアップしていきます。そうすることで結果的にやる気が高まったり生産性を高めることにも繋がります。
2021年も企業内の心理的安全性をあげて一人ひとりの挑戦を増やしていくことで、組織課題解決に貢献していきたいと考えています!
“裸眼のVR”で新しいバーチャル表現で池袋のカルチャーとコラボレーションするkiwamiの取り組みとは
日本のHR市場がこれから目指すべき、TalentXが描く「タレント・アクイジション」の世界
TalentX代表 鈴木貴史氏
「上場=目的達成のための手段」Kaizen Platformの創業者が語る“上場”とは
ビジネス書大賞『売上最小化、利益最大化の法則』の作家に聞く 「利益率29%の⾼収益企業を作る方法」
資金調達に新しい選択肢を。ブリッジファイナンスとしてのファクタリングを「PAY TODAY」が解説
【令和の渋沢栄一になる】エンジェル投資で日本にイノベーションを
米国新興市場上場を経て10億円を調達 「代替肉」で社会課題に取り組むネクストミーツの歩み
海外で活躍する女性起業家の実態 〜2児のママがシンガポールで起業した理由とは?株式会社ハニーベアーズ〜
湊 雅之が見る欧米と日本のSaaS業界の違い | 注目海外SaaS 6選
BtoB/SaaSベンチャー投資家 湊 雅之
広告事業だったのにコロナ禍で売り上げ上昇! 〜売り上げ90%減からの巻き返し〜
代表取締役 羅 悠鴻