TOP > ベンチャー > ベンチャー・スタートアップ > ベンチャービジネスとは?意味や定義、仕組みや特徴、役割を解説
ベンチャービジネスという言葉は、いろいろな文脈で使用されることがありますが、厳密にはどのような意味なのでしょうか。
また、ベンチャービジネスはどのように定義されているのでしょうか。
ベンチャービジネスの仕組みや特徴、リスクやデメリット、ビジネスシーンにおける役割、有名なベンチャー企業とあわせて解説します。
このページの目次
ベンチャービジネスとは、「新技術や高度な知識を軸に、大企業では実施しにくい創造的・革新的な経営を展開する小企業」(引用元:三省堂 大辞林)のことです。
では、具体的には、どのような企業がベンチャービジネスに該当するのでしょうか。
そこを詳しく解説します。
多くの人がベンチャービジネスをとらえているイメージとしては、大企業に対比する小企業というイメージがあるのではないでしょうか。
たとえば、「就職するなら大企業を選ぶべきか、ベンチャービジネスを選ぶべきか」のように、大企業に対比する小企業として語られます。
一方で、メガベンチャーは、ベンチャーから出発し、成長を遂げ大企業になった企業のことを指します。
それでは、ベンチャービジネスと中小企業の違いは何なのでしょうか?
実は、中小企業は、法律により明確に定義が決まっています。
「中小企業基本法」では、中小企業者と小規模企業者を資本金の額、従業員の数、業種によって次の表のように分けています。
業種 | 中小企業者 | 小規模企業者 | |
資本金の額 | 常時使用する従業員の数 | 常時使用する従業員の数 | |
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
この表に該当する「中小企業者」と「小規模企業者」をあわせて「中小企業」と呼び、この表に該当しない大きさの企業を「大企業」と呼びます。
ただし、すべての中小企業がベンチャービジネスに該当するわけではありません。
ベンチャービジネスとは、革新性や創造性をもって新たな市場を開拓している企業を指します。
ですので、上記の表のような形でベンチャービジネスを区分けすることはできません。
ベンチャービジネスがよくビジネスシーンで使われる文脈に「革新性」があります。
「革新性」とは、イノベーション(innovation)という意味です。
イノベーションという言葉は、経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって定義されています。
イノベーションとは、「経済活動の中で、生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」とされています。
シュンペーターによると、既存の生産方法や労働力によらず、新しいやり方で生産したり、画期的な新商品を開発したり、新しいマーケットを開拓したりと、既存の価値観を破壊して、新しい価値を創造していくことがイノベーションであり、この「創造的破壊」こそが経済成長の源泉であるとしているのです。
そういう意味で、ベンチャービジネスとは、既存の価値観にとらわれず、新しい価値観を生み出し、その創造的破壊によってまったく新しいビジネスシーンを創り出している企業によく使われる言葉でもあるのです。
古い慣習的価値観にとらわれて身動きができない大企業や市場に対して、まったく違う方向から新しい価値観を持ってきて、市場を活性化する企業というのは常に生まれてきます。
市場を破壊し、新しい価値観を生み出す革新性を持った企業を、よくベンチャービジネスといいます。
ベンチャービジネスと同じような言葉にスタートアップや起業という言葉があります。
どう違うのでしょうか。
スタートアップは、辞書によると次のような意味があります。
1. 始めること。立ち上げること。
2. 新設会社。新規事業。また、ベンチャー企業のこと。
3. コンピューターなどを起動すること。
引用元:デジタル大辞泉
これを見るとスタートアップにはベンチャー企業の意味も含まれており、同じ意味になります。
また世間的にも同じ意味で使われていることが多くあります。
まったく同じ企業が、ある文脈ではベンチャービジネスと言われ、ある文脈ではスタートアップと言われることがよくあります。
ただし、スタートアップは、立ち上げの意味合いも強く、事業を起こすこと自体や、事業を起こした新しい企業に対しても使われることが多いようです。
事業を起こすという意味では、起業という言葉もあるのですが、起業は、一人や個人で法人を作る場合などにも使われることがあり、ベンチャービジネスやスタートアップと比べると規模が小さい会社にも使われることが多い印象です。
ベンチャービジネスは、大企業に対抗していく革新的企業に使われることが多く、上場も視野に入れた規模感で成長していく企業が一番イメージに近いのではないでしょうか。
では、どのような企業がベンチャービジネスと言われるのか、ベンチャービジネスの特徴を紹介します。
ベンチャービジネスの一番の特徴は、革新性にあります。
実は、「中小企業基本法」では、「経営の革新」という言葉が定義されており、それによると経営の革新とは、以下の事業活動を行うことによって、経営の向上を図ることをいいます。
(1)新商品の開発、または生産
(2)新役務の開発、または提供
(3)商品の新たな生産、または販売の方式の導入
(4)役務の新たな提供の方式の導入
(5)新たな経営管理方法の導入
(6)その他の新たな事業活動
新商品の開発や新しいサービスの開発など、または新しい生産方式やサービスの新しい提供方式、新しい経営管理方法など、今までにない新しい形を導入することを経営の革新としています。
経営の革新をすることで、競合他社から見た差別化が明確になり、市場に受入れられる企業となるのです。
ベンチャービジネスは、市場に新しい風を起こすことで、市場全体が常に成長していくような役割も担っているのです。
ベンチャービジネスのもう一つの特徴として、創造的な事業活動を展開しているというのがあります。
創造的な事業活動とは、「中小企業基本法」によると、著しい新規性を有する技術、または著しく創造的な経営管理方法を活用して事業活動をしていることを言います。
ここで重要なことは、「著しい新規性」や「著しく創造的」であるということです。
同業他社よりほんの少し安くしただけ、という場合や、ほんの少し価値をプラスしただけというような商品は巷にたくさんあふれています。
もちろんそれらも競争力の源泉となります。
ですが、多くの場合、消費者は、それほどの違いを感じていません。
ところが、「著しい新規性」や「著しく創造的」である場合、消費者ははっきりと違いを感じ取ることができ、そこに魅力を感じます。
消費者に明確に理解できるということがとても重要で、ここに新たな市場が形成され、経済が活性化されていくのです。
経済を活性化させるというのも、ベンチャービジネスの役割として期待されている部分です。
ベンチャービジネスの3つ目の特徴として、成長性の速さがあります。
ベンチャービジネスと言われる企業には、成長速度の速い企業が多くあります。
それは、新しい市場を形成し、新しい顧客を創造することで、市場に多くの価値を創り出すことができているからです。
ベンチャービジネスは成長速度が速いため、たくさんの投資家が資金提供をしたがります。ベンチャービジネスに資金提供をする投資家のことをベンチャーキャピタルといいます。
ベンチャーキャピタルに資金提供を受けることは、通常の銀行から融資を受けることとは違います。
政府系金融機関や銀行からの融資は、借り入れです。ですので、利息とともに元本を返済する必要があります。
ベンチャーキャピタルは、別名投資ファンドといったりするのですが、資金提供はあくまでも投資です。
ベンチャーキャピタルは、未上場のベンチャー企業の株式を購入することで、ベンチャー企業に資金提供をします。もし投資したベンチャー企業が上場すれば、購入していた株式から莫大な利益を得ることができます。
購入した株式の価値があがり、株式を売ったときに出る利益のことをキャピタルゲインといいます。ベンチャーキャピタルは、キャピタルゲインを目的としてベンチャービジネスに投資をするのです。
それは、ベンチャービジネスの成長性のスピードが速いからにほかなりません。
投資家は、上場までに何十年もかかる企業に投資するよりも、創業から数年で上場できる企業に投資したいと思っています。
そんな成長性のスピードを持っている企業がベンチャービジネスで、まさに投資家から見るとうってつけの投資先となるのです。
では、ベンチャービジネスにリスクはないのでしょうか。
また、ベンチャービジネスで働きたいと思ったとき、どんなデメリットがあるのでしょうか。
メリットもあわせて紹介します。
ベンチャービジネスのリスクは、まさに倒産のリスクです。
ベンチャービジネスは成長速度がとても速いのが特徴です。ですが、企業にとって、成長速度の速さは同時にリスクも背負うことになります。
成長速度が速いということは売上の拡大速度も速いのですが、同時に経費の拡大速度も速くなります。
新たに雇い入れる人件費もそうですし、人が増えるごとに場所も必要になります。販売しているものが商品であれば、在庫も増えますし、生産から販売までの在庫調整や管理費用も必要になってきます。
成長速度が速いと固定費も同じようなスピードで増えていきますので、ほんのちょっとした躓きでいっきに資金繰りが苦しくなってしまうということもよくあります。
ベンチャービジネスの特徴の一つであるスピード性が逆にベンチャービジネスの最もリスクとなる部分でもあるのです。
働く会社を選ぶ際に、大手企業にするのか、ベンチャービジネスにするのかで悩まれる方も多くいます。
ベンチャービジネスで働く場合のデメリットとしては、終身雇用されるかどうかが分からないという部分にあります。
ベンチャービジネスは、大手企業に比べて倒産のリスクが高いです。日本の雇用制度の特徴は、終身雇用制度にあり、一度その会社で働くと生涯面倒を見てもらえるという部分にあります。
もちろん、ベンチャービジネスが成功し、上場して大企業になることもまれではありません。ベンチャービジネスが大企業になると、メガベンチャーと言われたりします。
ベンチャービジネスが、メガベンチャーになってしまえば、大企業と同じようなメリットを味わうこともできるでしょう。ですが、大企業になる前のベンチャービジネスでは、一寸先は闇です。
雇用の安定と保証がないという部分がベンチャービジネスで働く際のデメリットかもしれません。
では、ベンチャービジネスで働く場合のメリットはあるのでしょうか。
ベンチャービジネスで働くと、次のようなメリットがあることも事実です。
大企業では、ビジネスの内容も個人が携われる部分も細分化されていて、全体図が見えないことがよくあります。
また、自分一人ではなく組織として動いているので、個人の力を試す場はあまり多くありません。
これに対し、ベンチャービジネスの場合は、全体図が明確ですし、個人の力に頼る場面も多くあります。
個人が実際にビジネスを動かしている面白さを味わえるのは、ベンチャービジネスで働く醍醐味かもしれません。
ベンチャービジネスの場合、働き方にも新しさがある企業が多くあります。
今までにない給与体系や報酬体型、年俸制、フレックス制やリモートワーク等、既存の価値観にとらわれない働き方を模索しているのもベンチャービジネスの特徴です。
もちろん、新しい働き方にはメリットもデメリットもあります。
ですが、既存の価値観に縛られたくない労働者にとっては、新しい働き方はメリットと言えるのではないでしょうか。
ストックオプション制度というのは、会社の株式を、会社の役員や従業員があらかじめ決められた価格で購入することができる権利です。
この権利を給与の一部として支給するベンチャービジネスも多くあります。
この場合、ベンチャービジネスが成功し、株式の価格が上がると、株式を売却することで利益を得ることができます。
また、未上場のときにもらった株式が上場すると、個人の給与では手に入れることができないほどの金額を手に入れることができたりします。
ベンチャービジネスで働き、ストックオプション制度を利用することは、ちょっとした夢を買う行為なのかもしれませんね。
ベンチャービジネスで名前があがる企業は、アメリカなどが有名ですが、日本でもベンチャービジネスが育つ土壌が育ってきました。
では、日本では、どのような環境が整備されているのでしょうか。
ベンチャービジネスの一つの目標として、上場があります。ベンチャービジネスの上場として、よく利用される証券取引所にマザーズ証券取引所があります。
マザーズ証券取引所は、東京証券取引所が開設している株式市場で、近い将来の第一部上場へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場とされています。
マザーズ証券取引所へ上場を目指す会社の条件としては、「高い成長可能性」が求められています。
マザーズ証券取引所では、多くの成長企業に資金調達の場を提供するという観点から、規模や業種などによる制限を設けていません。
ベンチャービジネスでも上場を目指せる土壌があり、証券取引所も整備されています。
ベンチャービジネスをする企業向けの融資制度もあります。
日本政策金融公庫では、高い成長性が見込まれる新たな事業を行う中小やベンチャー企業に対して、特別貸付として「新事業育成資金」に積極的に取り組んでいます。
事業化後7年以内であり、成長新事業育成審査会の認定を受けることで特別な融資条件で借り入れを行うことができます。
審査には、新規性や成長性などベンチャー企業にふさわしいかどうかが判断材料となります。
また、株式公開を目指している会社に対しては、新株予約権付融資制度というものがあります。新株予約権とは、発行時に定められた価額で、所定の株数の株式を所定の期間内に取得することができる権利です。
この権利を日本政策金融公庫が取得することで、無担保で融資を受けることができます。
新規事業者が苦労するのは資金繰りですが、国の政策としてもベンチャービジネスを支える仕組みがあります。
国の政策として、融資以外にあるのが、補助金です。
経済産業省が提供する補助金には、経営革新の投資に対して補助される「ものづくり補助金」があります。
「ものづくり補助金」は、新商品の開発や新たな生産方式の導入など経営革新のための設備投資等に使える補助金です。
最大で1000万円まで、補助率1/2~2/3(規模による)という補助金の中でも高額な補助金が用意されています。
「ものづくり補助金」は、審査があり、経営の革新性や成長性、課題解決の優位性などが問われます。
補助金は、融資とは違い返す必要のないお金ですので、創業時の企業にとってはとても魅力的なものになります。
経営の革新性を目指すベンチャービジネスにとっては、うってつけの補助金となります。
では、最後に米国と日本で有名なベンチャー企業をいくつか見ていきましょう。
Uber(ウーバー)は、2009年3月設立のアメリカを代表するベンチャー企業です。
「自動車配車アプリ」を提供し、一般人が自分の車を使って、他人を運ぶ仕組みを構築しています。
通常、どの国でも他人に車で運んでもらうためにはタクシーを利用するのが一般的ですが、ウーバーは、その市場に一般人が空き時間を使って運ぶという新たな概念を導入することで、新たな市場を創造しました。
ただし、日本国内においては、法律や規制の関係もあり、アメリカのような形での導入には至っていないのが現状です。(2020年6月時点)
ですが、日本では配車アプリを応用したサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の方が有名ですね。
ウーバーイーツは、個人が飲食店の料理を個人宅へ配達するという仕組みを構築しています。
それまでは、料理の配達は、飲食店が人員を抱える必要があったのですが、ウーバーイーツでは、飲食店が配達人員を抱える必要がないことから、様々な飲食店が登録することで、新たな市場を生み出しました。
今や町を歩いていると、ウーバーイーツのバッグを背負って自転車で走っている人を必ず見かけるようにまでなりました。
そういう意味で、ウーバーはアメリカでも日本でも新たな市場を創り出したベンチャー企業を代表する企業と言えるでしょう。
ウィーワーク(WeWork)は、2008年アメリカで設立された起業家向けのコワーキングスペースを提供するベンチャー企業です。
スタートアップなどの起業家に対してオフィスやワークスペースを提供し、会員をコミュニティ化することで、急速に成長しました。
2017年に日本のソフトバンククループが出資したことで、日本でも名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ウィーワーク自体は、2018年に日本にも拠点を開設しています。
2019年に上場申請をしたものの、不正会計などの問題もあり、撤回しています。
メルカリは、2013年設立の日本を代表するベンチャー企業です。
フリマアプリを用いて、フリーマーケットのような個人間で商品のやり取りをスマホで簡単にできるようにしたところが特徴です。
スマホから商品の写真を撮るだけで、簡単に出品できることから、急速に広がり、ユーザーが増えていきました。
2018年に東証マザーズ市場に上場もしています。
それまでも、ヤフオクなど個人間で商品をやり取りできるサービスはあったのですが、「スマホで簡単に」という革新性が新たな市場を創り出しました。
設立から5年での上場というスピードも、まさにベンチャービジネスの特徴を体現しています。メルカリは、まさに日本を代表するベンチャービジネスなのです。
freee(フリー)は、2012年創業の日本のベンチャー企業です。
クラウド会計ソフトfreeeを開発し、個人事業や小企業の会計や事務管理を効率化する仕組みを構築しています。
起業家やフリーランスなどのスモールビジネスがメインのターゲットとして、面倒で煩雑な書類作成の代行や事務管理などを提供することで人気となり急速に成長しています。
こちらも2019年にマザーズ証券取引所に上場しています。
創業から7年での上場というのもやはりベンチャー企業らしいスピード感ですね。
他にも、大型の資金調達をするなど、注目のベンチャー企業は多くあります。
下記のサイトで求人・企業情報がまとめられていますので、ぜひ参考にしてみてください!
ベンチャービジネスについて、解説してきました。
ベンチャービジネスは、革新性、創造性、成長性を兼ね備えた新しい市場を創出する企業のことです。
そのスピード感から、リスクもはらんでいますが、市場の創造は、経済成長にとって欠かせないものであることから、常にイノベーションを起こすベンチャービジネスは、経済的にもとても大切な役割を持った存在です。
ベンチャービジネスと言えば、アメリカに代表されるようなところもありますが、日本でもたくさんのベンチャービジネスが創業されているんですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
画像出典元:Pixabay
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