財務会計と管理会計の違いを基本から解説|役割、概要、作成書類を解説

財務会計と管理会計の違いを基本から解説|役割、概要、作成書類を解説

記事更新日: 2020/08/07

執筆: TAK

「財務会計と管理会計という言葉は聞いたことあるけど、その違いはよくわらない」という方は結構多いのではないでしょうか?

そこで今回は、企業会計の基礎である財務会計と管理会計について、両者の違いを中心にそれぞれの役割や概要、作成書類や開示方法などをわかりやすく解説していきます。

財務会計と管理会計とは「企業会計」のひとつ

財務会計と管理会計の根本は「企業会計」

まず最初に、財務会計と管理会計の違いを説明する前に、両者の根本となる「企業会計」について簡単に触れておきたいと思います。

企業会計という言葉は、財務会計と管理会計を総称したものであり、企業が適切な決算報告をするにあたって大事な概念となります。

そして、「企業は具体的にどのような方法で会計処理をしていけばいいのか」といった根本ルールを定めたものが「企業会計原則」と言われる規定です。

企業会計原則の概要を把握することは、財務会計と管理会計の根本となる企業会計を理解することに繋がるので、まずは「企業会計原則」の概要を理解していきましょう。

企業会計原則の概要

企業会計原則とは、企業が従うべき会計ルールを定めた基準のことを言います。

どのような内容が記載されたルールなのかというと、大きくわけて「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」「注解」の4つから構成された基準となっています。

具体的な内容自体はかなり細かい内容になるので割愛しますが、中でも特に重要な考え方である「一般原則」について紹介しておきます。

「一般原則」は、企業会計における基本的かつ重要な方針をまとめたようなイメージであり、具体的には以下表のような内容が記載されています。

色々と原則が書かれていますが、一番目に記載してある「真実性の原則」が財務会計と管理会計に共通する重要な概念となります。

これは一言で言ってしまえば、企業会計をするにあたって本当のことだけを報告しなければならない、つまり粉飾や虚偽の記載をしてはいけないといった内容になります。

当たり前と思われる方も多いかもしれませんが、粉飾決算事例の多さから見ても、当たり前のことが出来てない企業が多いのが現実です。

企業会計原則はとても重要な考え方となりますが、実はどちらかというと「財務会計」に関するルールを定めた内容が多くなっています。これは、財務会計が「外部向け」の会計であるのに対して、管理会計が「内部向け」の会計であることに起因しています。

それでは実際に、両者の具体的な違いを見ていきましょう。

財務会計と管理会計の違いとは?

「外部目的」か「内部目的」

財務会計と管理会計の大きな違いは「目的」にあります。

先ほども紹介しましたが、財務会計は外部に報告することが目的であるのに対して、管理会計は内部に報告することが目的である点が大きく異なります。

目的の違いを理解することで、「どのような効果を生むか(効果)、誰に報告するか(報告先)、どのような書類を作成する必要があるか(報告書類)、どのくらいの頻度で報告する必要があるか(報告頻度)、どこで開示されているか(開示場所)」といった、より具体的な違いを把握することが可能になります。

わかりやすいように、財務会計と管理会計の主な違いをまとめた表が以下となります。

上記の違いについてはこの後細かく紹介していきますが、財務会計は「外部」への報告が目的となるので、報告先として「ステークホルダー(利害関係者)」が含まれていたり、報告書類や報告頻度がある程度法令で決まっている点が特徴的です。

対して、管理会計は「内部」への報告が目的となるため、報告先としては「経営者や管理層」となっています。

また、報告書類や報告頻度も会社自治に委ねられている点が、財務会計とは大きく異なっています。

これを踏まえた上で、両者の具体的な内容について紹介していきます。

財務会計とは?

財務会計とは「外部の利害関係者」に報告するもの

財務会計は「外部」に報告する目的と紹介しましたが、これは「誰に」報告するかを考えるとわかりやすいです。

財務会計で想定している外部の報告先は、利害関係者(ステークホルダー)と言われる人たちです。

利害関係者とは、会社に関係している人たち全般を指す総称であり、具体的には「株主や債権者、取引先、投資家」などを含みます。

外部の利害関係者に対して適切な情報開示がされることによって、株主は自分のお金が適切に使われているかどうかを確認出来ますし、銀行などの債権者も融資したお金を返済してもらえるかどうかを確認することが出来ます。

つまり、会社に関係している利害関係者に適切な開示をすることで、会社関係者たちの信頼を確保して健全な会社経営を続けていくことが出来るということです。

財務会計が果たす役割

財務会計を適切に行うことで、会社自身にとっても利害関係者にとってもプラスの役割があります。

そこで、財務会計が果たす役割や機能についても、簡単に紹介しておきます。

一般的に財務会計が果たす機能としては「情報提供機能」と「利害調整機能」の2つがあると言われています。

情報提供機能は、株主や債権者などの利害関係者に対して必要な情報を提供する役割を果たすものです。

この機能が働くことによって、先ほどの例のように利害関係者は安心して出資や資金の貸付等を行えるようになります。

利害調整機能は、利害が対立しがちな「経営者と株主」と「株主と債権者」の調整を果たす役割を持ったものです。

経営者と株主がわかりやすいですが、上場会社を前提とした場合、会社に出資をしているのは株主ですが、実際に経営をしているのはプロの経営者です。

株主は自分が出資したお金をより効率良く運営して、自身に還元して欲しいと考えますが、経営者は事業拡大のために必要な投資を優先させたり、場合によっては業務と関連がない私用にお金を使うこともあります。

そのような行き過ぎた経営を正すような役割を持っているのが利害調整機能です。

開示方法の概要

それでは、財務会計における開示方法について紹介していきます。

まず、外部の利害関係者(ステークホルダー)に対して報告する書類は「決算書(財務諸表)」となります。詳細はこの後紹介しますが、主に貸借対照表や損益計算書が該当します。

次に、報告頻度としては上場会社であれば四半期ごとの報告が求められ、非上場会社であれば年に一度の報告が求められます。

上場会社の報告頻度が高いのは、株式が上場している以上、会社に投資しようと考えている方向けに、投資者保護の観点からよりリアルタイムで適正な情報を提供する必要性が高いためです。

そして、どのような場所で書類が開示されているかというと、上場企業の場合にはその会社のホームページや金融庁が運営するEDINETで開示されています。

対して、非上場企業の場合には、基本的に株主や債権者を除いて開示されていません。これも、上場企業は株式の流通性が高く、多くの人が会社との関係を持つことからの配慮になっていると言えますね。

開示書類①:貸借対照表

ここでは、財務会計で開示が求められる具体的な書類について見ていきます。

具体的な開示書類の一つ目は、「貸借対照表」です。

これは、企業の決算時点における財政状態を示す情報で、企業がどのような方法で資金を調達し、どのような資産を持っているかなどを示している決算資料です。

貸借対照表を見ることで、その企業がある一定時点で現金預金をどの程度保有しているか、借金はどの程度あるかなどを把握出来るため、利害関係者にとっても有用な情報となります。

開示書類②:損益計算書

続いて二つ目に求められる開示書類は「損益計算書」です。

これは、企業の決算期間(通常一年)における経営成績を示す情報で、一定期間でどの程度収益を生み出し、どの程度費用が発生しているかを確認出来る決算資料となります。

過去から現在までの損益計算書の情報を比べることで、企業の売上や利益の推移を把握することも可能となるので、貸借対照表と同様に有用な情報となります。

主要な開示書類は上記のような決算書となりますが、この他にも資産や負債の明細を記した「個別注記表」や、一定期間の収入と支出の増減を示す「キャッシュフロー計算書」などの開示が企業によっては求められるケースがあります。

管理会計とは?

管理会計とは「経営者の意思決定」に役立てるもの

続いて、管理会計について詳しく見ていきましょう。

管理会計は「内部」に報告する目的と紹介しましたが、ここでいう「内部」とは主に会社の経営者や管理者を指します。

「財務会計があるから管理会計は不要ではないの?」と思われる方もいるでしょうが、財務会計では公表していないような、機密情報を含んだ企業の意思決定に関わる情報を扱うのが管理会計となるため、非常に重要や役割を持つことになります。

管理会計が果たす役割

このように、管理会計を適切に行うことで経営者の意思決定に役立てるといった重要な役割を果たすことが可能となります。

どのように意思決定に役立てるのかと言うと、具体的には「予算管理」や「原価管理」を通じて、より良い企業戦略の策定や実行に繋げるのが一般的です。

「予算管理」の観点からは、年次や月次での予算と実績の比較を通して、何が良くて何が悪かったかを分析することで、改善点を企業戦略に反映させることが可能となります。

また、「原価管理」の観点からは、製品を構成する原価を把握・管理することで、より安くて品質の良い製品を生み出すきっかけにすることも可能となります。

作成方法の概要

では、管理会計ではどのような書類を作成し、どの程度の頻度での報告が求められるのでしょうか?

管理会計は財務会計とは異なり、「内部」向けの会計である以上、会社内部のルールに従う必要があります。

そのため、作成する書類は決まっておらず、会社により異なっています。また、作成資料の報告頻度も週次・月次など、会社の必要性によって変わる点が特徴的です。

加えて、財務会計では書類が自社ホームページや金融庁で開示されるケースがありましたが、管理会計は企業機密情報も扱うため、非開示となっています。

作成書類の具体例

最後に、管理会計で作成される書類の具体例を見ていきたいと思います。

先ほど紹介したように、企業によって必要となる書類が異なるのが現状ですが、実務上、毎年の予算と実績を比較出来る「予実分析表」を作成している会社は多いです。

また、メーカーであれば製品原価の内訳が管理出来るような「原価管理表」や、固定費を回収する目安となる「損益分岐点明細」を作成することが多いです。

このように、企業や業種によって必要となる書類は異なるので、自社にとって必要な情報は何かを考えて作成するようにしてみてください

まとめ

いかがだったでしょうか?今回は、企業会計を支える「財務会計」と「管理会計」の違いを中心に、概要や具体的な役割について紹介してきました。

企業内部の管理会計を充実させ、企業外部への適切な財務会計を果たすことが、企業にとって重要な意味を持つことになるので、この機会に両者の意味と必要性を今一度見直すきっかけにしてみてください。

画像出典元:Shutterstock

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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