働き方改革推進が全国に浸透していくとともに、「ジタハラ」という新たなハラスメントが注目を浴びるようになっています。
ジタハラを防止するためには、その原因を理解し、企業全体で抜本的な対策を講じていくことが大切です。
この記事では、ジタハラの広まった背景や原因、問題点や実際のジタハラ事例などについて解説いたします。
また、ジタハラの防止策・対策も解説しますので、ぜひともご覧ください。
このページの目次
ジタハラとは「時短ハラスメント」の略であり、長時間労働解消のために具体的な解決策もなく早期終業・退社を強要するハラスメントです。
ジタハラが広まった背景には、働き方改革の推進があります。
2015年末にメディアで多く取り上げられた電通社員の過労自殺事件をきっかけとして、全国的に長時間労働是正の機運が高まりました。
そして長時間労働が常態化していた業種において、労働時間是正のための取り組みを無理にに進めようとした結果、ジタハラが広まったと考えられているのです。
ジタハラに繋がってしまう原因は主に、企業側が具体的な対応策を打ち出すこともなく、従業員に対して勤務時間削減を強要していることです。
業務時間内に終わらない業務を一体誰がどうするのかがハッキリしなければ、労働者はいずれ追い詰められてしまいます。
しかしこれとといった具体策を示すことなく、ただ単に残業や休日出勤の禁止を命じることで長時間労働を是正しようすれば、ジタハラにつながってしまうのです。
・残業を減らさなくてはいけない
・業務量は減らない
・業務の品質も下げてはいけない
上記のような状況に従業員が追い込まれてしまえば、企業にとっても従業員にとっても、様々な問題が発生してしまいます。
ただ単に労働時間を減らすことで表面的な働き方改革を推進した結果、まず危惧されるのは業務品質の低下です。
より短時間で同じ業務量をこなそうとすれば、本来必要なはずだった業務プロセスや従業員間のコミュニケーションが削減される可能性があります。
短期的な目で見れば、多少品質を下げたとしても業務は回っていくのかもしれません。
しかし長期的な目で見ると、徐々に全体の品質が下がっていくことで顧客からの信頼を喪失してしまい、結果として売上減少につながっていってしまう可能性もあるのです。
業務量が減らない中で残業時間の削減を強要されれば、結果としてサービス残業の強要につながる恐れもあります。
終業時間内に終わらなかった仕事を誰かが引き受けてくれる訳でないのであれば、結局は労働者本人が自分でやるしかありません。
結果として、いわゆるサービス残業を従業員に強要することにつながってしまうのです。
こういった体制では公に残業時間を短縮できたとしても、本質的には何の改善にもつながっていません。
むしろ以前よりも残業実態が目に見えなくなり、このままでは更なる企業の健全性悪化につながる恐れすらあるのです。
サービス残業が常態化してしまえば、従業員のモチベーション低下も危惧されます。
急な時短施策によって業務時間内に終わらなくなった業務をなんとか消化していくため、中間管理職を始めとする一部社員に不当な業務負担が強いられることも考えられます。
具体的な業務効率化策が無いまま部下を早く帰らせることが求められると、これまでと同じ量の業務を部下にお願いすることができません。
結果として上司は消化できない業務を自分で抱えることになってしまい、自分は遅くまで働いたり、休日も休まず働いたりしなければならなくなります。
このように、具体的な解決策・改善策が無いままに無理に働き方改革を推進しようとするとどこかに必ずしわ寄せがきてしまい、誰かが被害を被ることになるのです。
ジタハラを発生させ放置することのリスクは、企業側にももちろんあります。
ジタハラそのものを規制する法律は存在しないものの、2019年5月に成立した改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)に抵触する可能性があるのです。
パワハラ防止法では以下のような行為をパワハラと定め、職場でのハラスメント対策を企業に義務付けています。
・同じ職場で働く者に対して
・職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に
・業務の適正な範囲を超えて
・精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
パワハラ防止法に抵触しても罰則規定がある訳ではありませんが、賠償を求めた訴訟提起を受ける可能性は十分に考えられるでしょう。
ジタハラ関係の訴訟を提起されたとなれば、企業の社会的イメージ悪化にもつながります。
ジタハラで実際にある事例としてまず挙げられるのが、終わらない仕事を自宅に持ち帰って行うケースです。
いくら退社時間を早めたとしても、自宅でさらに仕事をしなくてはならないのであれば勤務実態が改善したとは言えません。
実際にある自動車販売会社では、仕事を抱え込んでしまった店長が日常的に仕事を持ち帰るなど長時間労働を強いられて、最終的にうつ病となり懲戒解雇されたケースもありました。
形だけの働きかた改革推進を図ったために従業員が自分のプライベートを犠牲にして働くことになってしまっては、全く意味がありません。
また、長時間労働是正を急激に進めたところで社員一人一人のスキルがすぐに上がる訳ではないため、終業時間内に業務が終わらず追い詰められるケースもあります。
業務時間内に業務を終わらせることができなければ少しずつイラ立ちは溜まっていき、業務が思うようにすすまないことから上司に叱責される可能性があるでしょう。
このような状態が常態化してしまえば、精神的なバランスを崩してしまうことも考えられるのです。
従業員一人一人の業務レベルを把握・考慮せずに一律の早期終業命令をすると、こういった事態につながる可能性があります。
そして非常に多くみられるケースが、サービス残業や休日出勤の状態化です。
終業時間後も休日も関係なく働かなくてはならなくなり、それに見合った対価ももらえない。
そのまま無理をして働いて疲労やストレスが蓄積して身体的にも精神的にも調子を崩してしまえば、さらに仕事が溜まってしまうという悪循環にもつながります。
生産性向上への取り組みは、従業員任せにせず企業としても当事者意識を持って取り組む必要があるでしょう。
従業員の勤務状態や時間の使い方を見直し、特に長時間勤務是正が上手くいっている従業員や他企業などの事例を参考にすることで、業務効率化に取組みます。
文書管理の方法や理想的なオフィスレイアウトなど、企業側としても取り組める具体策は多くあるのです。
長期的な目で企業の業務全体を見通し、試行錯誤を繰り返して改善していく姿勢が求められるでしょう。
また適切な業務仕分けを行うことも、非常に大切な対策です。
各部署・社員の業務内容と量を整理し、業務の偏りや無駄な業務が無いかを見直します。
優先順位を付けて改善できる点から順次改善を実施していき、着実に全体の業務量を適正化していく姿勢が求められるでしょう。
長時間労働の是正はあくまでも企業全体の問題であると認識し、従業員任せにしないことも大切です。
ジタハラの有効な解消策としては、労働力を増やすことも挙げられるでしょう。
現在の従業員数ではどうしても時間内に業務が終わらないのであれば、働き手の数を増やすことも検討しなければいけません。
そうは言っても正社員の雇用が難しいことも多々あるため、業務委託などを活用して自社社員がやらなくても良い業務をアウトソーシングすることも一つの手と言えます。
現在ではアウトソーシングの選択肢も充実してきているため、「自社の社員でしかできない仕事」以外は外注し、コア業務に集中できる体制を整えましょう。
ジタハラの背景には、働き方改革への対応を迫られた企業が具体策も無いままに労働時間短縮を進めようとしたことで、現場にしわ寄せが来たことにあります。
長時間労働の是正は従業員の意識改革はもちろん、企業側も当事者意識を持ち労使一体となって取り組むことが大切でしょう。
実際のジタハラ事例なども参考にしつつ、ジタハラの問題点を整理して対策を打っていく必要があります。
画像出典元:Burst
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