働き方改革の中でも触れられている生産性の向上ですが、その生産性を評価するための基準のひとつが「人時生産性」です。
この言葉を聞いたことが合ってもその意味や計測の仕方を説明するのは難しいという方もおられるでしょう。
この記事では人時生産性の意味、計測の方法、生産性を向上させる方法などを紹介します。この記事を読めば、生産性向上のためのポイントが理解していただけるでしょう。
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人時生産性(にんじせいさんせい)は、従業員1人が1時間あたりでどれくらいの粗利を稼いだかを示す数字です。この数値が高ければ、従業員1人あたりで稼ぐ1時間あたりの粗利益高が高いということになります。それだけ生産性や業務効率の高い企業や店舗ということです。
(従業員全員による粗利益高)÷(従業員全員の総労働時間)により、その企業もしくは店舗の平均的な人時生産性を計算します。
人時生産性の計算に関する具体例を紹介します。AとBという競合店がありそれぞれの店舗で同じ20人の従業員が仕事をし、1週間で以下のような労働時間・売上高・粗利益高になったと仮定しましょう。
従業員 | 従業員1人当たりの労働時間 | 売上高 | 粗利益高 | |
A | 20人 | 20時間 | 300万円 | 240万円 |
B | 20人 | 40時間 | 400万円 | 300万円 |
Bの方がAよりも従業員1人当たりの労働時間が多く、売上高と粗利益高も金額が高いです。次に、それぞれの人時生産性を計算します。
計算式 | 人時生産性 | |
A | 240万円÷400時間(20人×20時間) | 6,000円 |
B | 300万円÷800時間(20人×40時間) | 3,750円 |
人時生産性は、Aの方がBよりも高い結果となりました。これによりAの方が人時生産性が高く、生産性や業務効率にすぐれているといえます。
先ほどの例で紹介したB店のように、粗利益高が増加しても、そのためにたくさんの労働時間が必要であるならば、人時生産性は伸びません。
反対に、A店のように売上高や粗利益が競合他社より低くても、労働時間が削減できているのであれば、人時生産性は上がります。
経営者・従業員の区別なしに働く人すべてが人時生産性に興味を持つべき理由があります。その理由として次の2つが挙げられます。
働き方改革により、これまでの長時間労働を見直し、労働時間を抑えて効率的に働くことが時代の流れとなっています。
労働時間を減少させながらも、企業は生産性を維持もしくは向上させなければいけません。企業の生産性を測る指標ともなる人時生産性に注目すべき理由がこれです。
少子高齢化が進む中で、企業の人材不足が深刻化しています。働く人が不足している状況にありながら、同時に企業は従業員の働く時間の削減にも取り組まなければなりません。
こうした問題を解決するために、定型業務をRPAツールで自動化する、作業にロボットやAIを導入するなどの取り組みがなされています。
人材不足に対応するこうした取り組みは、労働時間の削減、効率的な働き方につながります。こうした方法で人時生産性の数値の向上を期待できるでしょう。
こうした働く環境の変化も人時生産性と深く関わってきます。
定型作業を自働化し業務効率化を実現できるRPAツールについては関連記事を参考にしてください。
次に、人時生産性を向上させるためのコツを紹介します。ポイントは以下の2点に注目することです。
どちらかを実現できれば、人時生産性の数字は上がります。それで、次に粗利益高を増やしたり、総労働時間を減らすための具体的な施策を紹介します。
従業員それぞれの得意分野や適性を把握し、それぞれのポジションにふさわしい人材を配置すれば、業務効率が向上し粗利益高の増加を期待できます。
すぐれた能力を秘めているのに、それが見いだされずに、不得意な分野での仕事を続けているというようなケースもあるでしょう。
従業員の潜在能力を見出し、それを活用することで生産性が向上するでしょう。
以下の記事では適材適所の人材配置に役立つサービスを紹介しています。
生産性のアップにも役立つ従業員のモチベーション管理システムについてのリンクです。
業務の中にムリ・ムダ・ムラがあれば、人時生産性は向上しません。
こなすのに無理があるスケジュールで仕事を割り当てられれば、残業などで労働時間が増加します。本来必要のない無駄な作業が工程に含まれていればそれは時間のムダです。
また、特定の部署や従業員だけに大きな負担が強いられているという、仕事の割当にムラのある状況も生産性の低下につながります。
業務の中にムリ・ムダ・ムラがないかをチェックすれば、業務が効率化され粗利益高が上がる可能性があります。さらに、無駄を省き労働時間が短縮できれば、それも人時生産性の向上につながるでしょう。
業務の中に含まれるムリ・ムダ・ムラを見つけ業務効率化を成功させる方法についてはこちらの記事をご覧ください。
人件費を削減できれば粗利益高が増加します。また働く人数や時間を削減できれば、人時生産性の計算式の分母の部分、つまり総労働時間も削減できるでしょう。
しかし注意が必要です。やみくもに人件費を削減すれば、会社の待遇に不満を感じ優秀な人材が会社を去る可能性があるからです。
人件費や労働時間の削減は、RPAツールや業務効率化ツールの導入、人事評価制度や賃金制度の見直しなどの方法で対応できるでしょう。
人時生産性とは、従業員1人が1時間あたりでどれくらいの粗利を稼いだかを示す数字でした。この数字が高ければ、その企業や店舗は生産性や業務効率の高いといえます。
人時生産性は(従業員全員による粗利益高)÷(従業員全員の総労働時間)という計算式で計算できました。
従来の長時間残業をともなう労働時間体制を見直し、労働時間を削減しながら、企業としてある程度の生産性を維持・向上させるには、この人時生産性の数値を計測し、その推移に注目する必要があります。
企業は、ムダな業務を洗い出し業務効率化に取り組めば、人時生産性の向上ができるでしょう。それぞの企業の特徴に応じた方法で、人時生産性の向上を目標にすれば、生産性が高くかつ働きやすい企業として成長できるでしょう。
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