TOP > ビジネス基礎 > マーケティング用語 > 顧客ロイヤルティとは?顧客の信頼を得るマーケティング戦略・事例を解説
マーケティングの一つの指標として、顧客ロイヤルティが注目されています。顧客満足度とは異なった指標であり、企業がブランド戦略を立てるにあたり理解をしておかなければならないものです。
この記事では顧客満足度とは異なった指標である顧客ロイヤルティについてご説明します。また、顧客ロイヤルティを上げるメリットや顧客の信頼を得るマーケティング戦略・事例についてもご説明します。
このページの目次
まずは顧客ロイヤルティの概要について理解をしなければなりません。以下では顧客ロイヤルティの概要とこれを評価する方法についてご説明します。
「顧客ロイヤルティ」とは顧客が自社のサービス・商品・ブランドに対して持つ信頼感や愛着感、親近感のことです。
自社ではなく他者に対して利用することもありますが、専ら自社の顧客に対して利用する言葉です。
最近になり顧客ロイヤルティが重要視されているのは、1回だけのマーケティングではなく継続的なマーケティングが意識されているからです。
今までは顧客が満足すれば商品は継続的に購入されると考えていました。
つまり、「顧客が満足する=継続的なマーケティング」だと考えられていたのです。
しかし、現在では顧客が満足しても継続的なマーケティングにはつながらないことが判明してきました。顧客の満足度ではなく顧客ロイヤルティを高めることが継続的なマーケティングにつながると判明したわけです。
なお、顧客ロイヤルティには「心理ロイヤルティ」と「行動ロイヤルティ」の2種類があります。これらの概要は以下のとおりです。
心理ロイヤルティ | 自社のサービス・商品・ブランドなどに対して持つプラスの感情 |
行動ロイヤルティ | 社のサービス・商品を繰り返し利用・購入するという行動 |
なお、これらは相互に関係するものではなく心理ロイヤルティの高まりが行動ロイヤルティに反映されるものです。
行動ロイヤルティが高まることで心理ロイヤルティも高まると考えてはいけません。まずは、心理ロイヤルティを中心に顧客ロイヤルティは考えなければならないのです。
顧客ロイヤルティを評価する方法として「NPS(Net Promoter Score)」が広く利用されています。
米国の有名コンサルティング会社である「ベイン・アンド・カンパニー」から広がった指標であり、グローバルスタンダードの評価方法です。欧米の有名企業でも多くが取り入れている指標なのです。
NPSの評価方法は簡単なものであり、顧客に対して「あなたは私の企業(商品・ブランドなど)を友人・知人に勧める可能性がどの程度あるのか」を0~10の11段階で回答してもらうというものです。
そしてこの回答された数値を元に以下の3種類に分類します。
推奨者 | 9,10と回答した人で他者へと紹介する可能性も高い人 |
中立者 | 7,8と回答した人でサービスには満足しているものの、他者へと紹介する可能性は低い人 |
批判者 | 0~6と回答した人でサービスに満足しておらず、悪評を広める可能性すらある人 |
NPSはこれらの分類のうち推薦者の割合から批判者の割合を引くことで算出できます。
例えば批判者が100%であればNPSは-100です。逆に推薦者が100%であればNPSは100です。他にも批判者と推薦者がそれぞれ50%であればNPSは0となります。
顧客ロイヤルティと間違えられやすいものに「顧客満足度」があります。同じように考えられているのですが、これらは評価する内容が異なっています。
それぞれの特徴を簡単にまとめると以下のとおりです。
顧客ロイヤルティ | 顧客がサービスや商品などに対して持つプラスやマイナスの感情面の評価(長期的な評価) |
顧客満足度 | 顧客がサービスや商品に対して持つ期待値を満たしているかどうかの評価(1回あたりの評価) |
顧客ロイヤルティはサービスや商品の全体に対して持つ感情を指しています。1回だけの商品購入を指しているのではなく、長い目で評価されていると考えるべきでしょう。
それに対して顧客満足度は1回あたりの期待値を表しています。顧客が期待していたもの以上のサービスや商品が提供されれば高まりますので、長い目での評価されているとは考えられません。
顧客ロイヤルティと顧客満足度は評価の期間が異なると考えられます。混同されることもありますが、別々のものとして捉えたマーケティングが必要です。
顧客ロイヤルティが高まることで3つのメリットを生み出します。具体的にどのようなメリットを生み出すのかを以下ではご説明します。
顧客単価が上がりやすくなるメリットがあります。1回あたりの支払金額が上がりますので、顧客ロイヤルティの高い顧客に対してピンポイントなマーケティングができます。
業種によって上がり幅は異なりますが、商品の販売では1回あたりの支払金額が1.2倍や1.3倍になるケースが確認されています。
また、サービスの提供では1.5倍など大きく顧客単価が上がっているケースも確認されています。
顧客ロイヤルティを上げれば必ずしも顧客単価が上がると言い切れるわけではありません。ただ、相関関係が見られるという点ではメリットです。
顧客ロイヤルティが高い顧客は、他者に対してサービスや商品を積極的に勧めることが確認されています。
つまり、顧客ロイヤルティを高めることで口コミによるブランド名の拡散が期待できます。
口コミでブランドの拡散をしてもらえるのであれば、企業は広告費用などを削減できる可能性があります。
また、広告を出稿した際には良い反応を得られる可能性があります。つまり、マーケティング面でメリットを感じられます。
リピート率が高い顧客は顧客満足度の高い人ではなく顧客ロイヤルティの高い人であるとされています。
つまり、顧客ロイヤルティの高まりはリピート率が高まりやすくなるというメリットを生み出します。
業種によっては顧客ロイヤルティが高い顧客と低い顧客とでは年間のリピート率が1.5倍~2.0倍程度違うことがあるようです。
毎回の支払金額が同等であると仮定すると、リピート率の違いによって年間の顧客単価も1.5倍~2倍になります。
企業は顧客ロイヤルティを高めるために様々なことをやらなければなりません。
今回はそれらの活動の中でも最低限意識しておきたい2つのことをソニー損保とチューリッヒグループの事例を紹介しながらご説明します。
ソニー損保では全社的に顧客ロイヤルティを評価するNPSを導入しています。そしてこの数値が低い顧客に対してフォローする体制を整えています。
また、NPSを高めるための行動として顧客が求める一歩先の行動を意識しています。例えば以下のケースです。
これらは企業側からすると支出の増加する部分であり可能であれば隠しておきたい部分でしょう。しかし、ソニー損保ではこれらは「顧客が求める一歩先」と捉え、あえて告知する方針を取りました。
ソニー損保は顧客ロイヤルティを高めるために顧客が求める一歩先を意識しています。また、これに関連して支出が増えることにも臆していません。
顧客のことを第一に考えて一歩先のサービスを提供することが重要です。
生命保険などを多く取り扱っているチューリッヒグループでは、カスタマーエクスペリエンスを向上させることで顧客ロイヤルティを高めました。
チューリッヒグループでも評価の手法としてNPSが採用されています。こちらの数値を高める取り組みを通じて全体的な顧客ロイヤルティを高める方針を採ったのです。
ただ、ソニー損保と異なるのはカスタマーエクスペリエンスを中心に考えたことです。顧客の期待を超えたサービス (体験)を提供することで、顧客満足度と顧客ロイヤルティを高めたのです。
顧客満足度と顧客ロイヤルティは異なったものであることは前述したとおりです。
しかし、継続的にカスタマーエクスペリエンスを向上させるように、継続的に顧客満足度を高めることは、結果として顧客ロイヤルティの向上にもつながっています。
顧客はサービスや商品に対して一定の「期待」を持っています。これを上回るカスタマーエクスペリエンスを実現することが、顧客ロイヤルティを高めるためには求められています。
顧客ロイヤルティは顧客満足度とは異なり長期的な目線での企業やブランドへの評価です。新しいマーケティングの手法ですので、企業のブランド戦略などのために理解しておかなければなりません。
顧客ロイヤルティは一般的にNPSと呼ばれる指標で評価されます。世界的に利用されている指標ですので、まずはこの求め方を理解しましょう。また、NPSを求めるためのサンプルデータも集めなければなりません。
一般的に顧客ロイヤルティの高い顧客はリピート率が高まったり顧客単価が高まったりするなどのメリットを生み出します。企業にとって重要な顧客の一人です。企業としては顧客ロイヤルティを高めることを意識し、他社と差別化できるようにならなければなりません。
画像出典元:Burst、Unsplash
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