Vertical SaaS(業界特化型SaaS)とは|Horizontal SaaSとの違いも解説

Vertical SaaS(業界特化型SaaS)とは|Horizontal SaaSとの違いも解説

記事更新日: 2020/05/12

執筆: 編集部

「SaaS」とだけ言われると、聞き慣れない方も多いでしょう。『Software as a Service』を略した用語で、インターネット経由で利用できるサービスのことを指します。

例えば、『Gmail』は、皆さんにとって最も身近な「SaaS」であると言えます。一昔前であれば、PCにソフトをインストールして利用するサービスが主流でした。そんな旧式のシステムに取って代わって、「SaaS」は市場規模を急速に拡大しています。

中でも注目されているのが「Vertical SaaS」と呼ばれる、ピンポイントの業界に特化したサービス。本記事では、この「Vertical SaaS」の意味や特徴、メリットについて解説をしていきます。

あなたが今利用しているサービスの中にも、実は「SaaS」は浸透しているのです。

Vertical SaaSとは?

「Vertical」は直訳すると"垂直"という意味。つまり、ビジネスシーンに対して「垂直に入り込んでくるサービス」というイメージです。

別名「業界特化型SaaS」、業界の救世主!

「Vertical SaaS」は「業界特化型SaaS」と呼ばれ、ひとつの業界にとって深い価値がある「SaaS」のことを指します。

前述した、『Gmail』などの「どんな業界の人でも業務で使うサービス」のことは「水平展開型SaaS」と呼び、区別します。

業界特有の課題を解くテクノロジー

例えば、メールサービスを使わない企業はありませんよね?しかし、食品の管理業務というのは、食品業界にしか発生しない特定の業務です。このような、特定の業界に喜ばれるサービスが「Vertical SaaS」。

誰しもが利用する「水平展開型SaaS」に比べ、知名度は低いですが、今までITとかけ離れていた業界の専門的な問題を解決することで重宝され始めている、全く新たな形態のサービスなのです。

業界に関わらなければ、おそらく知る機会の少ないVertical SaaS。現在導入されているVertical SaaSを一覧にまとめました。

Vertical SaaSのサービス事例

事例1【コドモン】

「コドモン」は、保育業界をカバーするために生まれた「Vertical SaaS」。例えば、園児個人の日報の作成、保護者への連絡をクラウド上で行えるというものです。登園、降園を管理することもできるため、人手不足が叫ばれる保育業界の業務負担を減らせることから注目を集めています。

保護者用アプリ、保育士用アプリを連携させてやりとりができるので、かつて手書きの『連絡帳』という方法でしかコミュニケーションをはかれなかった、保護者と保育士にとって画期的なサービスですよね。

事例2【KAMINASHI(カミナシ)】

「KAMINASHI(カミナシ)」は、食品の製造現場における『ペーパレス』を目的とした「Vertical SaaS」です。在庫管理や従業員のシフトなど、あらゆる管理が"紙"で行われがちな食品製造業界。これは、現場に年齢層の高い従業員が多いことに起因していました。「パソコンなんてめんどくさい!」という世代の方が多数というわけですね。

しかし「KAMINASHI(カミナシ)」では、操作性のカンタンさを徹底的に追求していて、PC慣れしていない従業員でも、問題なく活用できるように工夫がされています。

Horizontal SaaSの特徴とサービス事例

先ほど、チラチラとひきあいに出した、「水平展開型SaaS」についてもさらに解説していきましょう。「Horizontal」の直訳は"水平"。これは、いずれの業界にも「広く浅く必要とされるサービス」のことを指します。

別名「水平展開型SaaS」、特化するのは"業務"

「Horizontal SaaS」は「水平展開型SaaS」と呼ばれ、「どこの企業でも必要な業務」のために作られたサービスのこと。

もちろん、「SaaS」ですからソフトをインストールすることなく、クラウド上で活用することができます。

企業以外の個人でも一定のニーズがある

皆さんにとって「Horizontal SaaS」として挙げられるのが『Google Drive』。『Google Drive』の用途といえば、「テキストの資料を管理」することです。テキストの管理というのは大方、どこの企業も必要な作業であると言えるでしょう。

業種はもちろん、個人事業主やビジネス以外にも活用できるシステムが多く、「SaaS」といえば「Horizontal SaaS」という感覚は一般的です。

特定の"業務"に特化している

つまり、「Horizontal SaaS」がカバーしているのは"業種"ではなく"業務"。どんな企業であっても、特定の職種の方が使用する「SaaS」のことを指しています。

実はSaaSであると知らずに活用していることの多いHorizontal SaaS。一般的に普及しているHorizontal SaaSを一覧にまとめました。「これもSaaSだったのか!」という驚きがあるかもしれません。

Vertical SaaSの機能面でのメリット

導入費用が格安!もしくはかからない

多くの企業がソフトをインストールするタイプのサービスではなく「SaaS」を活用しています。これは、導入の際の初期費用がソフト購入に比べて格段に押さえられるというメリットによるところが大きいでしょう。

特に「Vertical SaaS」のような、業種に特化したサービスの場合「本当に便利なの?」と導入に二の足を踏んでしまう経営者の方は少なくないはずです。

しかし、「SaaS」のような低コストであれば気軽に採用しやすく、またSaaS提供側も「試用期間」を設けるなどのキャンペーンを打ち出しやすいのです。

どのデバイスからでも利用できる

「Vertical SaaS」はネットを通じたソフトウェア上でデータを管理します。そのため、ログインさえできれば、どのデバイスからも利用することができます。

これにより、外出先での業務報告や取引先との情報共有が、今までよりも格段にスムーズに行えるようになるのです。

新機能のアップデートがされる

前述したように、ネットを介したサービスである「Vertical SaaS」。もちろんバージョンのアップデートもリアルタイムで行われます。

便利な新機能の更新も逃すことなく、いつでも最新版の「SaaS」を利用できるのはメリットといえるでしょう。

かゆいところに手が届く機能性

「Vertical SaaS」のような業界特化型のサービスがない頃は、広い用途で使用できるシステムを活用して専門的な業務を行なっていた業界がほとんどでした。

例を挙げれば、エクセルを使って顧客情報を管理したり……。しかしあと一歩、たとえば「顧客の利用状況、傾向を知りたい」と考えた時には、また新たなシステムを導入しなければなりませんでした。これではどんどん管理するツールが増える一方。

このような「効率化の手順」「成長のために必要な情報」は、業界ごとに全く異なります。そこで、重宝されているのが「Vertical SaaS」。

業界ごとの「ここを可視化したいんだよね」というマイナーな部分に特化することで、なくてはならない存在として受け入れられているのです。

Vertical SaaSの今後

これからの「SaaS」は"サブスクリプション方式"

例えば「Microsoft Office」。少し前までは、ライセンス料を払うことで利用権を『買い取る』タイプの販売方法でした。しかし「Office 365」の登場で、月額や年額の利用料を支払う方法にシフトしていきましたよね。

このように「SaaS」も、買いきりではない"サブスクリプション方式"が主流になっていくと考えられます。この場合、前述した導入のしやすさはもちろん、乗り換えやすさもメリットのひとつになってきますね。

頻繁にアップデートされ社会に浸透していく

前章でお伝えした"サブスクリプション方式"。これがさらに主流になれば、顧客が離れないように頻繁なサービス向上、アップデートが行われるようになるはずです。顧客からのフィードバックも届きやすい状態になるでしょう。

「Vertical SaaS」がもっとも大切にするべきなのが「現場の声」。「KAMINASHI(カミナシ)」の例でも挙げましたが、使い手の痒い所に手が届くサービスが勝ち残っていくことでしょう。

こうしてブラッシュアップされ続けた「Vertical SaaS」は、より自然に社会に浸透していくことが予想されます。

まとめ

「Vertical SaaS」を提供するIT企業と、利便性を求める業種(または個人)のマッチングが、SaaS市場の拡大に繋がっています。現在でもクラウドサービスを利用する機会はかなり多いですが、ますます増え、今後主軸になっていくでしょう。

単純業務の効率化自体は、ITが一般に普及しだした当初からずっと期待されてきました。しかし今後『業界特化型』として「Vertical SaaS」が普及することで、また社会の流れが変わってくるかもしれませんね。

画像出典元:Unsplash

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