Salesforce は、情報の一括管理や分析、自動化などの優れた機能によって、営業活動や顧客対応を効率化してくれるクラウド型サービスです。
自社にあわせてカスタマイズができることも魅力の一つですが、その分「導入が難しい」「使いこなせない」などの声も少なからず聞かれます。
この記事では、Salesforceの具体的な導入ステップや気になる費用について解説します。
また、導入を成功させるポイントや失敗事例も紹介しますので、導入検討の参考にご活用ください。
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Salesforceとは、顧客管理・営業支援を効率化したい企業向けのクラウドサービスです。
アメリカのSalesforce.com社が手掛けるサービスで、世界、日本国内ともにシェアNo.1、日本郵政などの大企業からスタートアップまで幅広い規模の企業に導入されています。
機能豊富でカスタマイズ性も高いことから、導入が難しいと思われがちですが、使いこなすことさえできれば、必ずや情報活用・業務推進のスピードにおいて競合他社に一歩秀でることができます。
”できること”をまず詳しく知りたい方は、以下もご覧ください。
では、導入を成功させるためには、どんな点に注意すればよいのでしょうか? 具体的な流れやポイントを解説していきます。
Salesforceの導入から定着までには、3~6カ月程度かかります。導入計画が適当だと、運用がスムーズにいきません。
現場社員がSalesforceを効率的に活用できるよう、しっかり計画と見通しを立てて進めましょう。
導入計画のプロセスは、次の流れを参考にしてみてください。
効率化といっても企業によって解決したいポイントは異なります。自社の課題を明確にして、なぜ、何のためにSalesforceを導入するのかを整理しましょう。
導入目的が整理できたら、それで本当に「Salesforceを導入する必要があるのか」をきちんと社内の意思決定者とともに判断しましょう。
解決したい課題をもとに、「どんな機能が必要か」を整理し、どのシステムをどうやって設定・構築して使うべきかを整理します。
検討段階が終わったら、実際に導入推進するチームを編成します。システム開発担当だけでなく利用部門からのメンバーも数名招集した混合チームとするのが望ましいでしょう。
要件定義に基づいてシステム構築が完了したら、まずは導入担当チームが動作確認をして、使い方のマニュアルや注意点を整理します。
現場の従業員に利用を開始してもらうには、マニュアルで丸投げではなく、必ず導入トレーニングを実施しましょう。
必要な人員にアカウントとトレーニングが行きわたったら、定着化のフェーズです。
実際に利用しているかどうか、使ってみて不具合はないかを細かくヒアリング、フォローしながら定着を進めていきましょう。
Salesforce専門家 奥村直人
実際に導入プロジェクトを進める場合は、計画通りには進まないこともあります。事前の計画の綿密さと、柔軟に計画を練り直す臨機応変さのバランスが重要になります。ビジネス価値を最大化するために何が最適なのか考えながら導入プロジェクトを進めるようにしましょう。
Salesforceは導入をしてから定着するまでが、一番の肝で難しいポイントです。
スムーズに導入を進め、定着化と活用が行うためには、次の4ステップをしっかり行いましょう。
「マニュアルはこちらです」と案内しただけでは、導入と活用は進みません。
運用ルールをしっかり決め、使う人たちに丁寧に説明する必要があります。運用ルールとは、次の2点を決めることです。
(1)担当と時間のルール 誰がいつ、何のタイミングで入力するのか
(2)入力のルール 具体的にどんな情報・項目を入力するのか
ルールのポイントは、システム管理者の側が「こうして欲しい」と一方的に決めないことです。
システムを知っている人の都合だけで決めずに、現場の意見を取り入れて、これまでの現場フローと齟齬なく・負担少なく移行できるようなルールを作ることが、定着化の近道になります。
導入時から全てのデータを取り込むのではなく、まずは、最低限のデータを投入してフローを回し、成功体験を作ることが大切です。
例えば営業支援のSales Cloudを使うのであれば、初期段階として、
・取引先企業名、顧客データ
・営業担当名
・商談状況
・行動スケジュール
だけを投入して、Salesforce上で過去履歴を参照して未来のTODOを立てるのがどれだけスムーズかを実感してもらいましょう。
現場の人に「こんないいことがあるんだ!」とわかってもらうには、ダッシュボードを案内して、見える化された世界を体感してもらいましょう。
これまで会議のためにエクセルやPPTで作成していたグラフなどが、Salesforce上で自動で表示され、一目で確認できるようになります。
部門の上長が、積極的にダッシュボードを使って成果を褒めたり、課題の共有をすることも大切です。
さらに、気になる所は自分たちで分析してみてOKと促し、データ活用文化を推進していきましょう。
<画像出典元:Salesforce公式HP>
Salesforceは使いこなせれば大変有益なツールですが、多くのサイトなどで言われるとおり「はじめは難しい」のが難点です。
この段階を克服するためには、丁寧なフォローとトレーニングを根気よく繰り返しましょう。
導入チームはすぐに解体せず、定着が進むまでは継続し、伴走トレーニングなども行いましょう。
なお、研修やトレーニングを主導するノウハウやSalesforceへの知識が自社内では足りない...と不安な場合は、軌道に乗るまで外部の専門家を活用するのも一手です。
それでは、Salesforceの導入には全体でどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
結論からいうと、中規模の一般企業が初導入する場合、年間100万円程~と想定すると良いでしょう。
Salesforceはクラウドサービスなので、どの製品を選んでも、月額利用料が課されます。
月額料金は1ユーザーあたりのライセンス費×人数で計算され、最安値は月額3,000円/ユーザーです。
30名利用で月額9万円、年間108万円、100名利用では月額30万円、年間360万円の計算です。
起業ログが実際の利用ユーザーに聞いた口コミでは、
・社内で利用するメンバーが限定されている企業 ・・・月額10万円台
・コンサルティング業界など多数のメンバーが利用するような環境下 ・・・月額150万円以上
といった例が聞かれました。
Salesforceのライセンス費は、エディションと呼ばれる階層によって金額テーブルが異なり、おすすめの企業規模やカスタマイズ・サポート体制も変わってきます。
一例として、Sales Cloudの料金表を見てみましょう。
エディションそれぞれの特徴は、
Essentials:ユーザー数10名までの中堅・中小企業向け
Professional:あらゆる規模の企業・チーム向け
Enterprise:自社にあわせたカスタマイズが可能
Unlimited:すべての機能とサポートが無制限
となっていますので、規模にあわせたものを選択しましょう。
なお、上記で表示されている月額最低料金は、年間契約の場合の1/12の月額なので注意しましょう。
Salesforceそのものには初期費用が無いので、自前導入ならば、月額料金以外のコストは不要です。
ただし、Salesforceの初期状態は、汎用的な入れ箱にしかなっていないので、ある程度の初期構築が必要ですし、導入後も更新やメンテナンスが必要です。
それらが自社内で行えない場合は、外部の導入サポート費用がかかります。
依頼内容や既存システムの状態にもよりますが、数十万円~数千万円までのレンジがあるので、自社の状況によってはそれも費用に盛り込んで検討を進めましょう。
Salesforce導入を成功させるには、次の5つのポイントが重要です。
導入を一気に全社的に進めてしまうと、問い合わせや不満も捌けず、部門特有の課題が一気に噴出して、対応できずに終わってしまいます。
そのため序盤は、数部門に絞って始めるのが得策です。
成功事例ができたらそれを横展開できるようなスケジューリングを組み立てていくと良いでしょう。
Salesforce専門家 奥村直人
最初から導入範囲を広げすぎると、導入しても設計が不十分であったり、現場フォローがうまくまわらないことがありますので注意が必要です。
Salesforceはクラウドシステムだから、と、システム管理部門にだけ担当を任せている企業は必ずといっていいほど失敗します。
Salesforceは業務の基幹システムであり、重要なのはその"使い方"なので、Salesforceに触れる各部門から1名~数名ずつの推進担当を集め「推進チーム」を作りましょう。
そうすることで、現場の声を吸い上げた初期構築が可能となり、各部門メンバーへの伝達や習熟も早くなります。
Salesforce専門家 奥村直人
関係者を明確に定義することはプロジェクト推進の中で非常に重要です。誰がいつまでに何をしなければならないかをプロジェクトの中で明確に決めてプロジェクト推進できるような体制をつくりましょう。
「導入ありき」で考えるのではなく、その前段階の「どんな課題を解決したいのか」「なぜSalesforceを導入するのか」をしっかり整理することが重要です。
途中のプロセスを見直し、効率化して、成約率=売上のアップにつなげたい課題や目的があるのであれば、Salesforceはとても向いているといえるでしょう。
しかしながら、例えば、取扱商品が少なかったり、プロセスがシンプルでそこに別段悩みがあるわけではなく、ただ単純に認知度アップを狙うといった課題にはマッチしているとはいえないでしょう。
Salesforceの資料・デモセンターには、実際のシステムの動きを体感できるものや、活用方法の説明など多数の動画があります。
どんなものか実感が湧かないという方は、まずそこから見てみるのが良いでしょう。
Salesforce無料オンライン学習サービスや外部のプロなども活用しながら、実際に手を動かして学んでいく機会を作ることが早期定着に繋がります。
Salesforce専門家 奥村直人
設計段階では納得していた業務でも、実際の画面を使って作業するとイメージと異なることがあります。本当に業務が楽になるのか、ほしい情報は満たされているのかについて実際に手を動かすことが重要になります。
Salesforceのサポートページには、初心者に向けたマニュアルなどが多数用意されています。
ただし、社内にSalesforceを触ったことがある人が一人もいない、という企業は、何から読んでよいのかがわからず時間を無駄に浪費していまいがちです。
その場合は、導入経験者やプロなどの外部の力を借りることも必要です。
外注コストはかかりますが、結果的には費用対効果はプラスの方向に向きますし、補助金などを利用することも可能ですので、ぜひ検討しましょう。
Salesforce専門家 奥村直人
Salesforceは様々なことができる反面、設計開発や導入の難易度が高いツールです。導入経験者やプロに聞くことで専門家の視点でのアドバイスや失敗しがちなポイントなどを教えてもらうのも手だといえます。
起業ログでは、Salesforceのサービス群10ツール以上の利用者から口コミをヒアリングしています。
その中には、「Salesforceのおかげで業務のスピードが早くなった」「売上見込みがわかりやすくなった」などのプラスの声も多数ありますが、一方で不満や失敗談も幾つか見られます。
この章では「失敗事例」をピックアップしてご紹介しますので、導入前にどのような点に気を付けたら良いかのご参考にしてみてください。
IT業界
1001人以上
ITリテラシーがないと難しい
私はITエンジニア出身だったので、このサービスの使い方は理解できましたが、他のマーケティング営業や上司が全く使いこなせず、平社員の私が部長の代わりにアクセスする仕事を割り当てられ、全部業務を行っていました。つまり、一定以上のITリテラシー多くの人が持っている会社でない限り、無駄金になってしまいます。
マスコミ
31人〜50人
学習コストが高くつく
そもそもが海外発祥のツールなので、サービスの概念や操作方法等が他サービスと異なり、学習コスト(教育コスト)が高くついてしまう。早く使いこなしたいときには、アレンジができる箇所が多い点がネックだった。ITツールに慣れていないパートさんに使い慣れてもらうために2ヶ月ほど期間がかかった。
2人〜10人
IT/通信/インターネット
設定が複雑すぎた
設定等が複雑すぎです。その複雑さは、salesforceの他の機能と連携しているから、ということもあるかと思いますが、中小企業などで詳細にマーケティングシナリオを望んでいないのであれば導入する必要はないと考えます。
メーカー
1001人以上
データ処理と予算に余裕がない場合は要注意
データ処理がしっかりできる余力、予算にも余裕がある会社であれば、導入してもいいと思います。ただし、使用人数が多い場合、データ量が多い場合などは、仕事が増えかねないので要注意です。
IT
1001人以上
自分でも情報収集する必要がある
活用するためにはITの知識や、Salesforce・Pardotの知識を自ら勉強していく必要があります。特に、初期設定などは公式のドキュメントを確認するだけではなくWeb上にある様々な情報を収集して一つ一つ丁寧に判断していく必要があります。初期設定を間違えるとその後大きな技術的負債を残すことになります。
IT/通信/インターネット
2人〜10人
社内・外部の専門家がいないと難しい
中小企業には向いていないと思います。社内に専属の部隊を養成できる、もしくは外部のITコンサルタントに運用してもらえるのであれば、大きな効果が期待できると感じました。
Salesforceを導入したという企業からヒアリングをすると、「自社人員だけで導入完了できた」という例はかなり少数であることに気付きます。
失敗を回避して、なるべく短期に定着・成功させたいのであれば、必ずしも自前にこだわらず、導入サポートの利用も考慮に入れるほうが得策でしょう。
ではもし、外部の導入サポートを利用するのであれば、どのように選べばよいのでしょうか。
Salesforceには、「Salesforceコンサルティングパートナー」という認証制度があります。
Salesforceについての豊富な専門知識や経験を持っていること、導入や運用支援サービスを提供することに対する公式な認定であり、240社超が登録されています。
信頼度の高い企業に依頼したいのであれば、「Salesforce コンサルティングパートナー一覧」から、この認定をまずチェックしましょう。
<画像出典元:Salesforce 公式HP>
また、公式のパートナー事例には導入例が多数載っているので、似たような課題の解決の経験があるかなども参考にしましょう。
会社の中に入ってもらって出張サポートをしてもらいたいのか、リモートで問い合わせに対応して欲しいのかなど、自社の希望する体制があるか確認しましょう。
必然的に前者のほうがコストはかかりますが、「しっかり伴走サポートして欲しい」という要望が出てきそうなのであれば、それに対応できない企業を選ぶと後で後悔します。
また、前章で紹介したパートナー一覧の紹介ページには、利用企業からの口コミと☆評価も掲載されているのでぜひ参考にしてみましょう。
<画像出典元:Salesforce 公式HPより一部編集>
最後にチェックすべきなのは、「自社業界との相性」です。
Salesforceは業務プロセスの効率化が肝となるシステムなので、業界特性や自社の業務フローについて知識があるパートナーに依頼しないと、会話が進みづらくプロに頼んだメリットが生かせません。
過去実績などを確認して、自社業界の力となってくれるパートナーを探しましょう。
なお、プロトスター株式会社の「SaaS導入支援サービス」では、起業ログの運営で得た、業界横断の多数の業界知識や口コミをベースに、多種多様な業界への導入支援が可能です。
この記事では、Salesforceの導入における手順や費用、注意点などをご紹介しました。
Salesforceを順調に定着化させていくため、つまづきやすいポイントや失敗事例も参考に、導入を進めていきましょう。
また、計画の立て方等に自信がない場合は、外部の支援を使うのも一手かと思いますので、ぜひ検討してみましょう。
※画像出典元:Salesforce公式HP、photoAC、イラストAC
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