資金調達金額の最新相場動向 - 2018年版

資金調達金額の最新相場動向 - 2018年版

記事更新日: 2018/10/24

執筆: 鈴木雄大

企業にとって資金とはまさにその企業体を継続して経営していく血液のようなものです。起業当初やまだ事業の規模が小さい間は資金を調達して成長を遂げていくことが欠かせません。

そこで今回はスタートアップの資金調達について、その傾向や資金調達の相場を見ていきます。

資金調達の傾向と背景

ベンチャー・スタートアップの世界において資金調達の難易度は企業の存続に直結します。

昨今のベンチャー業界は資金供給が増えており2017年に国内のベンチャーが調達した金額は総額で2,700億円に上り、一部では「資金調達ブーム」とすら呼ばれています。

資金調達ブームを支える背景にあるのがマイナス金利を伴う金融緩和です。

これにより既存の金融機関に預けておく以外のリスクある選択肢を取る必要が出た大企業などがファンドのLP(Limited Partner=ファンド資金の出本)を務めるなどファンド組成が活発化しました。

近年ではファンドへの出資を行う他にも、そうしたLP経験を元に自社単体でファンドを立ち上げるCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の組成が増加しています。


業界団体である日本ベンチャーキャピタル協会の登録会員*だけでも100を超えるVC/CVCのファンドが国内に存在し有望な企業に対して投資を行っています。

*協会会員ではないファンドも多数存在している為、あくまで一つの目安に過ぎません。

しかしながら、供給する側の資金が潤沢であるからといって全ての企業の調達が上手くいくようなことはありません。

むしろ資金調達を短期間で終わらせることができるような投資家家がぜひ投資したくなる企業と、資金調達に時間がかかる企業の二極化が顕著になっている印象です。
 

資金調達の方法

そもそもスタートアップが資金調達を行う場合にはどのような方法があるでしょうか。

一般的にスタートアップは二種類の方法で資金調達を検討します。

1つ目はエクイティファイナンスと呼ばれる株式譲渡を前提とした出資受け入れです。また2つ目がデットファイナンスと呼ばれる金融機関からの借り入れを行う方法です。

多くのベンチャーやスタートアップはエクイティファイナンスをメインとしながら、時折デットファイナンスを組み合わせることで、必要なタイミング毎に資金調達を実施しながら資金ショートを防いだままプロダクトの開発及び、当該プロダクトをマーケットに投入するタイミングを検討していきます。

ここで重要なことは、その時投資家が求めている条件に沿っている状態でないと投資判断が厳しくなる可能性が高いことです。これは各スタートアップのラウンドによっても左右されます。

1. エクイティファイナンスの場合

近年の動向

資金調達にはどのようなトレンドがあり、その金額にはどのような変化が見られるのでしょうか。

ここではジャパンベンチャーリサーチ社のサービス "entrepedia” で提供しているJapan Startup Finance 2017 FinTechレポートを元に資金調達に関する金額の変化を読み取っていきます。

エクイティ調達とはいわゆるファンドや個人投資家からの資金調達を意味します。この方法での資金調達の場合、資金を調達する代わりに投資家へは株式を譲渡します。

この時、企業価値をバリュエーションとして表現するのですが、未上場企業である場合この価値を何を元に算出するか常に明確なものさしがある訳ではありません。

しかしながらお金の出し手であるファンドの状況を追うことでどのくらいの資金がマーケットに流れようとしているのか掴むことができます。

(entrepedia発行「Japan Startup Finance 2017」より引用)

投資ファンドと呼ばれる本数がリーマンショック後より急増していることがわかります。

また総額も2017年は少し減少が見られたもののそれでも年間1,700億円を超える金額が投資ファンドに集まっていることがわかります。

では内訳はどのようになっているでしょうか。

(entrepedia発行「Japan Startup Finance 2017」より引用)

常に人気が集まっている分野はIT系に投資を行うファンドです。

とりわけ近年だとオールジャンルのIT分野に投資を行うのではなく、モノのインターネットIoT分野や、年齢が若い学生ー20代を対象にしたファンドなど各ファンドが独自色を打ち出してきています。

また特にこの分野のシード・アーリー期(製品を製作している過程であったり、小規模でその検証を行っている時期)に絞って投資を行うファンドも増えてきています。

エクイティ投資を受ける際には、ご自身の会社がどのラウンド(事業の進捗)に達しているのか、どんな投資家がその領域で投資をしているのかを十分に理解しておく必要があります。

なお、Startup Listという弊社が提供するサービスを用いることで起業家と投資家のマッチングプラットフォームとしてどのような分野に関心があるファンド・投資担当者なのかを一覧で確認することが可能です。  

さらにエクイティ・ファイナンスには落とし穴として、投資決定がなされるまでに時間を要するという点があります。ファンドの形式によって異なりますが投資決定までは最低数週間~数ヶ月かかることが一般的です。

また1億円を超えてくるような金額での資金調達を実施しようとする場合には半年間見積もって計画的に投資家周りを行う必要が出ます。

資金調達のラウンドと金額・相場

スタートアップは以下のラウンドに分類されます。それぞれのラウンドでどのくらいの調達が行われているかをまとめてみました。

Post Valuationとは、資金調達後の企業価値の評価額のことです。

この場合のトラクションとはそのベンチャーが提供するメインのサービスにおいて利用者数、DAUが追える数に増えてきており、その上で少しずつ売上が出てきていることを指しています。

シリーズA以降の調達までの期間は企業によって全く異なるので目安のみ載せてあります。

またPre-シリーズAや、エクスパンドシリーズAなど、メインとなるシリーズAの前後を含めて複数回に分けて調達を行うベンチャーも多いです。

これは交渉期間などから一度にまとめての調達が叶わない可能性がある為です。

大きい調達金額は何を意味するのか

エクイティファイナンスによる調達の場合、調達金額の大小だけでその調達が企業によって最良の調達であったか判断することはできません。

例えばメディアで5億円調達のベンチャー企業のニュースが出ていたとしましょう。このニュースを読んだ場合、考慮するべきは以下の点です。

1. この5億円にデットファイナンスが含まれるのか。

デットファイナンス(融資)を合わせて合計5億円調達のように記載している場合もありえますので、純粋に投資家からの調達分だけで5億円とはいえない可能性があります。

2. どのようなVC・投資家が名を連ねているか、リードVCは誰か。

ニュースの中にはリードのVC名を記載している箇所があります。こうしたニュースではどういった投資家がリードVCとしてこの調達に置いて中心的役割を果たして投資を実行したかを理解することが可能になります。

VCによってはリードは行わないなど、立場が明確なファンドもありますので参考になるはずです。

3. 前回のラウンドからどのくらいの期間・調達金額の差があるか。

前回のラウンドがプレシリーズAなのか、シードラウンドなのかによっても判断が異なります。

4. 同業態・同業種での同じラウンドと比較して調達金額に差異はあるか。

例えば、レシピ動画に関連するスタートアップの調達は以下の通りです。

  • Recipio 1,000万円(シードラウンド、2018年調達)
  • タベリー 5,600万円(シードラウンド、2018年調達)

比較は参考にはなるのですが、同じシードラウンドでも、プロトタイプの有無やトラクションの有無などの細かな違いがあり、それによって企業に対する評価額も大きく変わってきますので、一概に同じ状態だと思って比較するのは禁物です。

あくまで参考程度に留めておきましょう。

より多くの金額を調達する為に行うべきこと

エクイティ出資を受ける場合、投資家から魅力のある企業・事業である必要があります。ベンチャーであればプロダクトを販売していく市場の規模が問われます。

たとえば業務効率化のソリューションを提供するようなベンチャーであれば業種を問わず導入が期待でき、より大きな市場を狙えると投資家が判断できる訳です。

2. デットファイナンス(融資)の場合

株式を渡すエクイティ・ファイナンス対して、株主を増やさずに資金調達を行う方法があります。これがデットファイナンスです。

デットファイナンスとは即ち融資のことです。デットファイナンスはあくまで融資なので金融機関から調達した金額は返済を行う必要があります。

近年マイナス金利の影響もあり、デットファイナンスの分野においても資金調達の環境は良好になっている状況です。

なかでも創業時であれば政府系金融機関である日本政策金融公庫の新創業融資制度がおすすめです。

担保・保証人原則不要で最大3,000万円までの借り入れが可能であり創業時の資金としては十分に役に立つでしょう。

ただこれも計画性をもったファイナンスプランが必要な為、行政書士などと事前に確認をしておきましょう。

今は資金調達に適している?

企業が資金調達をしたいと考えた際に、その難易度が下がっていることは事実です。

ただ、どの企業に当てはまる訳でもなく、業種やラウンド(企業規模・実績)によって差があり、資金を出したいと思うファンドが連なる企業が出る一方で、資金調達に苦労している企業も数多くいます。

なぜでしょうか。1つ目の理由として起業家と投資家の接触頻度が多くないことが挙げられます。

例えば、地方創業の起業家だと一定エリア内の金融機関や投資会社としか接点がない場合がほとんどです。そのため接点のない投資家へのアプローチを行う際には、既に資金調達を行った起業家から紹介してもらったり、先ほど紹介したStartup Listにようなマッチングプラットフォームを利用するなどの方法がおすすめです。

2つ目は業界・領域が投資ファンドなどの支援対象外である場合です。

例えば、今でこそ環境が変わりましたが、教育分野への投資などは少し前までリスクが大きく、リターンが少ないと見られていた傾向が強くエクイティ投資が集まりにくい環境になっていました。その中でITと教育を組み合わせたベンチャーが伸びた事例が作られたことにより、EdTechという言葉が有名になり投資家も増えていきました。

投資家は複数のジャンルに跨って投資を検討することが多い為、資金調達を行うにしてもタイミングを掴んでおくことが重要なのです。

今後の資金調達環境

では、今後の資金調達環境はどのようになっていくのでしょうか。

エクイティ側ではまだまだ大企業を中心にしたファンドの組成・及びCVCによる投資活動が顕著になるものと推測されます。

現在はSeriesB付近に集まりがちなこれらの資金がよりシード・アーリー期に向いてくる可能性が高く、当面は資金調達環境自体は良い状態が続くのではないかと言われています。

デットファイナンス・補助金・助成金についても現在の政府の方針がマイナス金利を実施しての市場への資金の流入にありますので、とりわけ新産業を興したり、それに寄与するテクノロジーを持つベンチャーに対しての資金調達環境は現状と同じ良い状態が継続するのではないかと考えられています。

しかしながら世界全体での不景気や、突発的な景気循環を止める社会問題が発生するなど状況を変えてしまう要因が出てこないとも限りません。

ベンチャーの世界では数年来稀に見る資金調達環境ではないかとすら言われることもあり、現状のタイミングで資金調達を検討しておくことは良い判断であるといえるでしょう。

まとめ

ファイナンスはあくまで企業の成長や事業の継続に必要な資金を得る手段にすぎません

本質的には行っている事業の内容や成果(トラクション)などを総合的に判断された上で資金調達を果たすことができるようになるものです。

常に調達環境のことを考えておく必要はないかもしれませんが、必要なタイミングで最短で資金調達を行うのが理想的です。

また高額の資金調達を謳うあやしいサイトが多く出現しています。資金を得る際に重要なことは単に資金をまとまって出してくれるだけではなく、あなたの事業の応援をしてくれる支援者を見つける活動に他なりません。

この記事が、最適なタイミング・最適な支援者からの資金調達の実現の一助となれば幸いです。

以下の記事では、多くの実例をもとに、資金調達のリスク・注意点を解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。

画像出典元:Pexels

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