ライブマイグレーションは、仮想マシンをスムーズに運用する上で欠かすことのできない機能です。
リソースの有効活用やホストコンピューターの負荷調整に有益といわれますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ライブマイグレーションの意味や仕組み、さらにはメリットや注意点など紹介します。
このページの目次
ライブマイグレーションは、仮想コンピュータの普及に大きな役割を果たしたといわれる技術です。ライブマイグレーションの詳細についてみてみましょう。
ライブマイグレーション( live migration ):ライブ移行
ライブマイグレーション(live migration)とは、ホストOSで実行中の仮想マシンを停止させずに別のホストに移動させる技術です。
そもそもマイグレーションとは、移行・移転などを指す言葉。IT分野ではデータやシステムを別の環境に移す場合に使われます。
ライブマイグレーションは、この移行をシステムを稼働させたままで行います。
たとえばホストOSのハードウェアを増やしたり保守運用のためのパーツを加えたりなどする場合、通常なら一旦システムを止めなければなりません。
しかし、ライブマイグレーションで仮想マシンを他のホストに移行させておけば、サーバーを稼働させたままで移行作業することが可能となります。
ライブマイグレーションについて知るには、仮想マシンについての理解も必要です。そもそも仮想マシンとはどのようなものなのでしょうか。
仮想マシンとは、コンピュータを仮想化して運用したもの。1つの物理サーバーを複数に分割して仮想サーバーを作り、稼働させます。
仮想化によりCPUなど余ったリソースを最大限活用することができ、PC本来の性能を無駄なく利用することが可能です。
また、違う種類のオペレーションシステムを混在させることもできるため、Windows上でLinuxやBSDを稼働することもできます。
仮想環境は、ソフトを使用して作ります。主な仮想化ソフトは次の2種類です。
まずホスト型とは、OSに仮想化ソフトをインストールし、その上で仮想マシンを動かすというものです。もともとのソフトが「ホストOS」となり、仮想マシン上のソフトが「ゲストOS」と呼ばれて区別されます。
代表的な仮想化ソフトとしては、「VMware Workstation Player」「VMware Fusion」など挙げられるでしょう。
とくにVMware FusionはMacにも対応する数少ないソフトの一つなので、Macユーザーにはおすすめです。
一方、ハイパーバイザー型とは、ホストOSを使用せずサーバーに直接仮想化ソフトをインストールし、仮想化環境を構築するものです。
物理サーバーのリソースを最大限活用することを目的に開発されたため、ホスト型よりも性能の面では勝るといわれます。
ソフトの種類としては「VMware ESX」「Hyper-V」などがあります。
企業が使うサーバーなど大がかりなものは、信頼性と機能性に優れたハイパーバイザー型が主流です。
ただし個人のPCに仮想化環境を構築する場合などは、ホスト型で特に不便はないでしょう。
ハードの構成には余裕を持たせる
サーバーの仮想化において、重要なのがハードウェアの構成です。CPU、ストレージ、メモリなどは十分に余裕のある構成が望ましいでしょう。
余裕を持たせておけば、突発的にサーバーに負荷が多くかかった場合でも、サーバーダウンしにくくなります。
また、複数台の仮想ホストサーバーを運用している場合、余裕があれば予備リソースとして活用できます。
万が一1つの仮想サーバーに故障が発生しても、運用中の仮想マシンは予備リソースにライブマイグレーションを行って避難させることができます。
ライブマイグレーションを行うには、どのような準備・手順が必要なのでしょうか。ここからは、ライブマイグレーションを行う手順や、実施に必要な環境など紹介します。
ライブマイグレーションを行う上で、必要となるものは次のとおりです。
ただし、上記の環境を整えても、データ量などによってはスムーズにいかないこともあります。
処理スピードはOSやストレージに左右されるため、個々の状況に即した環境を測る必要があるでしょう。
ライブマイグレーションの仕組みは、次のとおりです。
この方法でライブマイグレーションを行った場合、ダウンタイムは最終的に残った部分のコピー時間のみ。
ほとんどの場合稼働停止時間は1秒以下となり、業務にはほとんど影響を与えないでしょう。
仮想マシンを移行させる方法には、クイックマイグレーションと呼ばれるものもあります。
これは、稼働中の仮想マシンを稼働状態のまま停止させ、別のホストPCに移動させる方法です。
移行の際「仮想マシンを停止させる」という点が、ライブマイグレーションとは大きく異なります。
OSのシャットダウンや再起動は不要なため、ソフトの実行状態を維持したまま移行できますが、メモリーイメージの転送には数十秒~数分かかります。
ライブマイグレーションが「ホットマイグレーション」と呼ばれる一方で、クイックマイグレーションは「コールドマイグレーション」と呼ばれます。
ライブマイグレーションを導入することにより、どのような効果が見込めるのでしょうか。ライブマイグレーションの導入効果について考察します。
仮想化すると、余ったハードウェアリソースを効率的に使えるようになります。
しかし一方で、予測できない負荷の増大に見舞われるとCPU率が100%を超え、サーバーがダウンしてしまう可能性もあります。
そこで有益となるのがライブマイグレーションです。仮想ホストに負荷がかかる状況を察知した時点で、余裕のある仮想ホストにライブマイグレーションを行います。
こうして仮想ホスト間のバランス調整を図れば、負荷が一極に集中するのは避けられるでしょう。
近年は、仮想マシンにかかる負荷を監視する「System Center Virtual Machine Manager」などの管理ソフトもあります。
これを活用すれば、負荷の監視だけではなく、ライブマイグレーションの必要性の示唆や自動処理なども可能です。
ホストOSを使用していると、定期的にパッチがリリースされます。
これは不具合の改善や機能性向上のためには必要な処理ですが、そのたびにホストを停止させるのは面倒なうえ、非効率的です。
しかし、ライブマイグレーションを活用すれば、管理者は稼働している仮想マシンをほかのホストに逃がすことができます。
パッチ処理中も機能は停止しないので、夜間や休日を待たずとも、管理者の都合に合わせたメンテナンスが可能となるのです。
ライブマイグレーションを行う上で、注意しておきたい点がいくつかあります。ライブマイグレーションの課題とともに確認しておきましょう。
まず重要なのは、ライブマイグレーションでは高速なネットワークを使うことです。
ライブマイグレーション中に受信したデータは、そのままメモリに書き込まれます。
つまりシステム稼働中は絶えずメモリの内容が変化することになるため、状況によっては多量なメモリを書き換えることになるかもしれません。
このとき低速のネットワークを使っていると、次々と書き換わるメモリに追いつけず、移転処理が終わらない可能性があります。
これを避けるためにも、ライブマイグレーションを行う際は、ネットワークの帯域を広めにとることが大切です。
ネットワークの推奨要件としては1Gbits/sですが、安定したライブマイグレーションを行うなら2Gbits/sはあると心強いでしょう。
ライブマイグレーションには複雑な処理を伴うため、なるべく短時間で終わらせるのがベターです。
スムーズにライブマイグレーションを行うなら、業務用のネットワークとライブマイグレーション用のネットワークを分けておくことがおすすめです。
こうすることでお互いの稼働が影響しにくくなり、トラブル発生の可能性が低下します。
ライブマイグレーションを行う際は、ライブマイグレーション用にネットワークを確保しておきましょう。
こうすれば、一つのネットワークでライブマイグレーションのデータのみを移転することができます。
ライブマイグレーションを実行する上での課題の一つが、導入の環境を構築するのに手間がかかるという点です。
たとえば、ライブマイグレーションではすべてのサーバーからアクセスできる「共有ストレージ」が必要です。
これは使用している仮想化システムに対応していなければならないため、古い世代のストレージなど使用していると移転がうまくいかないことがあります。
さらに、ストレージの接続方法はさまざまあるため、コストと性能のバランスを見極めて選択する必要があります。
このほかプロセッサなども要件を考慮して慎重に選ぶことが必須。
ライブマイグレーションを知識ゼロの人が手探りで行う場合、必要な環境を構築するのは非常に困難な作業となるでしょう。
仮想マシン導入のハードルを一気に下げたといわれるのがライブマイグレーションの技術です。
ライブマイグレーションを行えば、仮想化の「負荷状況のバランス調整」や「定期的なメンテナンス」にもスムーズに対応できるでしょう。
ただし、ライブマイグレーションをトラブルなく行うには、適切な環境の構築と綿密な計画が必須です。
使用している仮想化システムに適合する環境を見極めたうえで、仮想マシンの移転に取り組んでください。
画像出典元:Unsplash
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