起業を考えるとき、どこで起業するか、どんなビジネスで起業するかが重要です。
東京には、情報・資金・人材が集まるため、起業しやすい環境が整っています。しかし、一方で、競合が多い、コストがかかるなど、起業を阻む課題も多く存在します。
そこで、地方に目を向けてみてはいかがでしょうか?
わが国では人口減少が問題となっています。特に、地方でその傾向が顕著で、地方創生を推進し、発展させるための支援制度が充実しています。こういった状況で、地方で起業することに注目が集まっています。
今回は、地方で起業することによるメリットとデメリット、地方で起業するのに適しているビジネスなどについて解説します。
このページの目次
起業にはもちろんメリットもあればデメリットもあります。ここでは、地方で起業する際のメリットについて考えてみましょう。
地方で起業する最大のメリットは、コストを抑えることができる点です。
1.物件のコスト削減
まず、オフィスや店舗などの物件を借りるときの家賃は、大都市部と地方では大きな差があります。
例えば、東京都千代田区では、オフィスを借りるのに平均14,000円/坪(TAKE OFFICE調べ)かかります。
これに対して、徳島県徳島市では、平均4,000円/坪(HOME’S調べ)でオフィスを借りることができます。坪単価で1/3以下ということです。
たとえ少ない予算でも、地方であれば大都市部では考えられないような物件を借りることができる可能性があります。
つまり、同じ予算でも大都市部でオフィスや店舗を借りるよりも、地方の方がより条件が良い物件を借りることができるのです。
2.人件費のコスト削減
また、地方で起業すれば、従業員に対する人件費も抑えることができます。
厚生労働省が定める最低賃金時間額(最低時給)は、大都市部と地方では差があります。例えば、東京都内の最低時給は958円であるのに対して、高知県など8県は737円です。
会社の規模や、雇用するスタッフの数によっては、大都市部と地方では、人件費にかかるコストが大きく異なります。
こういった点から、少ない資本で起業する場合には地方は起業しやすい環境と言えます。
近年、地方では過疎化が進む地域も多く、地方創生が叫ばれています。それにともない、国の施策に沿って起業を支援する地方自治体も増えています。
各地域では、それぞれの地方に特化した優遇・支援制度が準備されています。補助金や助成金など、資金面で優遇・支援する地方もあれば、創業を支援するための情報提供や、創業セミナー、コンテストの開催を行う地方もあります。
長野県庁 HP
例えば、長野県では「日本一創業しやすい県づくり」を宣言し、注目を集めています。
【参考】長野県で創業する方を応援します!
長野県では、経済産業省が主催する「地域創造的起業補助金」の他に独自に「信州特化型ビジネス創業応援事業補助金」を運営しています。
この信州特化型ビジネス創業応援事業補助金では、信州ベンチャーコンテストにエントリーした起業家を対象に、クラウドファンディングで調達した資金に対して長野県が上限200万円の上乗せ助成を行っています。
税制面では「創業等応援減税」が設立されています。これは、資本金1,000万円以下の法人が長野県内で新しく起業した場合、法人事業税を3年間全額免除する制度です。3年目以降も、4年目は3分の2を、5年目は3分の1をそれぞれ免除します。
【参考】創業等応援減税のご案内
さらに、公益財団法人である長野県中小企業振興センターが「ながの創業サポートオフィス」を運営しており、なんと起業前から創業・ベンチャー推進員がサポートを行ってくれます。
【参考】創業サポートオフィス
この他にも長野県中小企業振興センターは起業に関する疑問や悩みに対して相談できる環境を整えるため、必要に応じて専門家の紹介や、支援機関の紹介を行っています。
長野県のように、起業家を優遇・支援する態勢が整っている地方が多く存在します。出身地はもちろん、ゆかりのある地方や興味がある地方がある方は、その地方にどのような創業・起業支援の制度があるのかチェックしてみることをおすすめします。
地方のメリットとして見過ごせないのが、口コミのパワーです。
大都市部と比較すると、テレビや雑誌、ネットでの情報が少ないため、友人や知人などリアルの人間関係で広がる口コミに大きな影響力があります。
口コミで広がるような、商品やサービスがあれば、多額の宣伝費を使わなくても、口コミで広がり人気になる可能性があります。
地方で起業するメリットがあるのに対して、もちろんデメリットもあります。ここでは、地方で起業する際のデメリットと対応策について考えてみましょう。
多くの地方は、人口減少が進んでいます。中には、数十年後に消滅する可能性があると言われている市町村があります。そのため、大都市部と比較すれば、地方の市場規模は大きくありません。
例えば、コンビニエンスストアの経営では、大都市部と同じような出店方針、品揃えでは、地方の小さな市場では失敗する可能性があります。
地方では人口が少ない。そして、これからも人口は減少していくという現実を踏まえて事業戦略を立て、実行する必要があります。
しかし考え方を変えれば、市場が小さく、大手資本が参入しないからこそチャンスがあるとも考えられます。
また、起業する現地で行うビジネスに加えて、ネットを利用した全国展開も考えることで、小さい市場にとどまらない可能性を広げることも可能です。
地方では人口減少が進んでいます。そしてさらに問題なのは、高齢化が進んでいるということです。地方では労働力を確保するのが非常に困難です。
労働力不足は大都市部でも問題となっていますが、地方では深刻度がさらに高い状態です。また、例えばプログラミングスキルなど、特定のスキルを持つ人材を確保したい場合はその難しさはさらに高まります。
起業して新たに従業員が必要な場合、この問題を踏まえた経営戦略を行う必要があります。
例えば、特別なスキルを必要としない人材を確保したい場合は、フルタイムで雇用するのではなく、子育て中の人や定年後の人などをパートタイムで雇用することも考えられます。少ない労働人口の中でも、比較的確保しやすい労働力を活用すると良いでしょう。
また、特別なスキルをもつ人材が必要な場合は、リモートワークやクラウドソーシングなどを活用して仕事を行ってもらうことも考えられます。必ずしも同じ場所やオフィスに居て働いてもらう必要はありません。必要なスキルを、全国各地から確保することを考えましょう。
地方で起業するには、メリットとデメリットがあるということを解説してきました。それらを踏まえて、地方での起業でおすすめするビジネス例を紹介します。
地方で起業するとき最もおすすめなのが、その地方の産業や特徴を活かす起業です。各地の特産品や伝統工芸品や、その地方ならではの特徴を活かしたビジネスを行ってみてはいかがでしょうか?
東京や大阪では、地方のアンテナショップが増えていてどの店も混雑しています。各地の特産品や伝統工芸品などを返礼品としてもらうことができるふるさと納税も大人気です。
特産品や伝統工芸品は地方それぞれの特色を伝えることができるため、自治体として独自のブランディングがしやすく、地方自治体はそれぞれ力を入れています。そのためそういったことに関連した事業で起業する場合は、該当の自治体の優遇や支援を受けやすくなります。
画像出典元:まるごと宮崎
地方の特産品で注目すべきものに「太陽のタマゴ」があります。太陽のタマゴは宮崎産の完熟マンゴーで、1つ1万円以上する高級品です。高級品ですが、大ヒットして知名度が向上しまし、いまでも高い人気を維持しています。
太陽のタマゴがこれほど大ヒットしたのには、宮崎県のマーケティング戦略、ブランディング戦略に勝因があります。
太陽のタマゴはまず宮崎県内で販売をはじめ、県内での認知度を高めました。その後、宮崎の人がギフトとして太陽のタマゴを購入するようになり、全国的な認知度が高まりました。
この背景には、太陽のタマゴの生産・販売をする組織や団体が宮崎県の強力なサポートを受けることができていたということがあります。
宮崎県以外でも、地方の特産品を活かすための優遇・支援が広がっています。またこれらの優遇・支援は、UターンやIターンで起業する人も対象になります。
その他に、地元の特徴を活かしたビジネス例としては岡山県西粟倉村の自然体験ツアーがあります。
西粟倉村は鳥取県・兵庫県に接する村で、村の面積の95%が山林です。そんな西粟倉村の特徴は「山」です。山をテーマにした自然体験ツアーが人気なのです。
画像出典元:西粟倉村公式HP
西粟倉村での自然体験ツアーは、大都市部では絶対に経験することができません。その地方ならではの特徴を活かしたビジネスが人気を集める勝因となりました。
地方で起業する場合はぜひ、特産品、伝統工芸品、その土地の特徴を活かしたビジネスを考えてみましょう。
最近、地方で起業するIT企業が増えています。その理由の一つは、通信回線や技術の進化により大都市部でなくても仕事ができる環境が整ってきたからです。
ITビジネスには、インターネット環境があればどこでも行うことができるものも多くあります。ですから、家賃や人件費がかかる大都市部を避けて、地方で起業する人が増えています。
また、ITビジネスでの起業に対して強いサポートをする自治体が増えています。過疎化対策の一環で、積極的にITベンチャーの誘致を行っているのです。
そんななかで注目を集めているのが徳島県神山町です。神山町は山間地域で、スーパーなどがある街に行くには1時間に1本しかないバスを利用しなければいけません。
しかし、神山町には高速の光ファイバー網が整備されています。現在ではITベンチャーが9社がサテライトオフィスを神山町に構えています。
交通の便は悪く、大都市部からも離れているので、物理的なアクセスという観点で、神山町は非常に不便な場所です。一方で、ITビジネスを展開するという観点では日本国内でもトップクラスの環境が整っています。
さらに、神山町には自然があふれていて、大都市部では感じることができないような新鮮な空気を感じることができます。満員電車の中通勤する必要もありません。ストレスから解放される環境で心の余裕が生まれ、新しいビジネスが生まれる可能性もあります。
地方で起業するには、ITビジネスでの起業がおすすめです。
地方で起業するには、大都市部にはないメリットとデメリットがあります。地方に目を向けて、成功した起業も多くいます。
あなたがどこで起業するのか、どんなビジネスで起業するのか、で悩んでいるならば、ぜひ地方での起業を1つの案として考えることをおすすめします。
画像出典元:Unsplash
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