個人事業主の開業にかかる費用 | 開業後に経費にできるものも徹底解説

個人事業主の開業にかかる費用 | 開業後に経費にできるものも徹底解説

記事更新日: 2021/10/26

執筆: 小石原誠

働き方改革の広まりにより、フリーランスなどの個人事業主になろうとする方、実際になったという方が増えています。

そういった方がまず気にするのが、個人事業主になるのにどれだけの費用がかかるのか、個人事業主が経費にできる費目はどのようなものか、といったことです。

今回は、個人事業主の費用に関して気になる疑問を解決していきます。

個人事業主の開業に必要な手続きと費用

個人事業の開業・廃業等届出書の提出

個人事業主になるための手続きとして必要なのは、「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類の提出のみです。

個人事業主になる場合は、事業開始から1か月以内に、管轄する税務署にこれを提出する旨が、所得税法により定められています。

個人事業の開業・廃業等届出書の提出にあたっては手数料が不要となっています。つまりは個人事業主の開業の手続き自体は0円でできるのです。

実際のところ、個人事業の開業・廃業等届出書が未提出であってもそれを罰則する規定がないため、未提出のまま個人事業主として活動を始めてしまう人もいます。

とはいえ先述のとおり一応は法律で定められている義務であること、そして手数料が不要であることから、個人事業の開業・廃業等届出書の提出は欠かさず行なっておくべきでしょう。

所得税の青色申告承認申請書の提出

個人事業主の開業の際に行う手続きとして、「所得税の青色申告承認申請書」という書類の提出も挙げられます。

こちらは個人事業の開業・廃業等届出書とは異なり絶対に必要な手続きではありません。しかし、節税効果があるので提出しておくことをおすすめします。

所得税の青色申告承認申請書について簡単に説明すると、まず個人事業主は所得税の確定申告を行う際に「白色申告」と「青色申告」のどちらかの方法を採ります。

白色申告は、事業にかかる会計計算が簡単である一方で、節税効果が小さいです。その一方で、青色申告は会計計算がやや複雑ですが、節税効果が大きいです。

そして、青色申告を行いたい場合には、前もって申告しておく必要があります。そのための手続きが、所得税の青色申告承認申請書の提出、という訳です。

なお、こちらも手数料は0円です。白色申告のままでいくか、青色申告を行うかは、個人事業主それぞれがメリットとデメリットとを天秤にかけて判断すべきものですが、近年は青色申告を行う人の割合が徐々に増えてきているようです。

個人事業主の設備・備品にかかる費用


個人事業主の開業や事業運営に際しては、主に設備や備品の準備にお金がかかります。ここでいう設備や備品は業種によって必要となるものが変わります。

しかし、次のとおり基本的にはどの業種にも必要となる設備や備品もあります。

  • パーソナルコンピュータ:数万円から10数万円ほど
  • プリンター:数千円から数万円ほど
  • 会計ソフト:パッケージの場合は数万円、クラウドの場合は月額数千円ほど
  • 作業机と椅子:数千円から数万円ほど
  • 名刺:数千円ほど
  • その他の雑貨等:コピー用紙、封筒、ファイル、バインダー等 数千円ほど

これら全てを新品で準備するのであれば、数10万円ほどの費用がかかることもあります。

しかし実際には、個人事業主になる以前から使用していたものをそのまま使うことも多いために、最初から大きなお金が絶対に必要、というわけではありません

最初は必要最低限の設備・備品を用意し、個人事業主として働いていく中で、作業環境をより良くしたい場合などに設備・備品を買い足していくのが良いでしょう。

個人事業主が経費にできる費目

費用のすべてを経費にできる費目

個人事業主が経費にできる費目には、ざっくり分けて、その全てを経費にできるものと、一部を按分して経費にできるものとがあります。

まず、個人事業主がすべてを経費にできる費目としては、以下のような費目が挙げられます。

  • 旅費交通費
  • 通信費(切手、はがきなど)
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費
  • 消耗品費
  • 雑費
  • 租税公課の一部費目

これらは、後述する「按分して経費にできる費目」と比べて、すべてを事業に使用したことが説明しやすい費目です。

例えば、取引先との打ち合わせのために使用した電車代やタクシー代などの「旅費交通費」はそっくりそのまま経費にできますし、取引先に書類等を送付するための切手代などの「通信費」も同じです。

飲食店の代金についての考え方

個人事業主が経費にできるか否かで悩むのが、取引先との打ち合わせやノマドワークなどで使用した飲食店の代金でしょう。

これらについては「事業に必要な費用」として説明できれば、接待交際費や雑費として経費にすることができます。

取引先との打ち合わせや接待で使ったお金については、比較的「事業に必要な費用」として説明しやすいですが、例えばカフェでノマドワークをした際にコーヒーとサンドイッチを注文した場合はどうでしょうか?

この場合の一つの解釈例として、コーヒー代のみ経費とする、という考え方があります。

これは、飲み物代は業務のための場所を確保するための費用として説明できる一方で、サンドイッチについては必ずしも必要な費用とはいえないためです。

費用を按分して経費にできる費目

費用を按分して経費にできる費目とは、すなわち「その一部を事業のために使っている」費目といえます。具体的には、以下のような費目が挙げられます。

  • 地代家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費(携帯電話、インターネットなど)
  • 租税公課の一部費目

「地代家賃」には、例えばアパートやマンションの家賃が当てはまります。

しかし、アパートやマンションの部屋は事業だけではなく個人としての生活にも使っていますので、全てを経費とすることができません。

そのため、1日に占める業務の時間や、業務をするスペースの割合などの合理的な理由により按分率を決めて、その分だけを経費とする必要があります。

携帯電話やインターネットなどの通信費もこれは同様です。携帯電話の場合にはプライベート用と業務用とで分けていれば、業務用の方の通信費を経費とできます。

インターネットの場合は、プライベートと業務とでわざわざ分けていることは少ないでしょうから、インターネットを使っている時間のうち何割を業務の時間で使用しているかを按分率として決める必要があります。

まとめ

今回は、個人事業主のお金にまつわる話について、開業の手続きにかかる費用、設備・備品にかかる費用、経費にできる費目の3つの視点から解説していきました。

特に設備・備品にかかる費用については業種によって差があるなど、個人事業主として実際に動いてみないと見えない部分も大きいのが実状です。

一方で、開業の手続き自体は不要であるため、まずは開業してから手探りでやってみる、というやり方もないわけではありません。

いずれにしろ重要なのは、自分の事業や生活にかかっている費用をすべて把握しておくことです。

なぜならば、特に確定申告に際しては「何にいくらのお金を使ったのか」を合理的に説明できることが必要だからです。

その点が会社員時代と比べて大きな違いになりますから、しっかりと意識しておきましょう。

画像出典元:Unsplash、Pixabay、O-DAN

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