よくある失敗パターン!スタートアップが資金調達前後に気をつけたいこと

よくある失敗パターン!スタートアップが資金調達前後に気をつけたいこと

記事更新日: 2018/07/24

監修: 栗島祐介

資金調達が成功したらあとはその資金で事業拡大するだけ!そう思ってませんか? 今回は資金調達前後にベンチャーが陥りがちな失敗について、実際の事例を交えながら解説します。これから出資を受けようと思っている起業家、経営者の方は必見です!

投資を受ける時に気をつけたい失敗

資金調達の時の契約内容などによっては、取り返しのつかない失敗をしてしまうこともあります。VCやエンジェル投資家からの資金調達時に気をつけておきたい4パターンを解説します。

初期に株を放出し過ぎてしまうパターン

 

株式のこととかはよくわからないので信頼できる投資家の人のアドバイス通り投資を受けた!(大学生 Aさん)

結果

気づくとその投資家が大多数の株式を保有し、Aさんは数%の株式しか貰えないという状態になっていた。
さらに実質の経営や事業はAさんに丸投げで、その投資家はアドバイス程度しか労力を割かなかったためAさんは雇われ社長状態に。Aさんも納得がいかず、結局その会社を辞めることに。

金融知識や事業経験が少ない場合は騙されやすい

初期に株式を放出しすぎてしまった場合、Aさんのように雇われ社長状態にはならないまでも、経営者の持ち株比率が低いことを理由に投資しないVCなどもいますので、その後の資金調達にも影響が出てきます。

投資を持ちかけてくる人全員が悪い人というわけではないですが、中にはそういう人もいます。いくらあなたの思いややりたいことを応援してくれていそうでも信用しきってしまってはいけません。耳障りのいい言葉に騙されて不利な条件での資金調達にならないように、事前に勉強するのはもちろん、先輩の起業家などにセカンドオピニオン的に相談をしてみたりしましょう。

現在のスタートアップ領域の資金調達相場については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

 

投資契約書の内容を理解していなかったパターン

 

資金調達の相場も確認し、投資契約書の内容も確認したので大丈夫!(不動産系スタートアップ Bさん)

結果

複数のVC・CVCから出資を受けていたBさん。調達した資金を元に仮説検証の結果事業のピボットを行おうとしたところ、「事業計画の修正」の際には投資家からの承認を得る必要があるという事前承認条項が投資契約書に盛り込まれていたため、早速3社に承認を得ようと動きました。しかし、3社とも思惑が異なり「このままの事業でいけばいい」「自社とのシナジーが...」などなど三者三様の意見で、話がまとまったのは3ヶ月後。経営陣は疲弊し、事業策定のタイミングも逃したことで現場は混乱、最後にはサービス終了となってしまいました。

契約書には思いもよらない落とし穴がある

事業経験が浅い場合は契約書の内容だけを見ても、どういった場合にどのような自体に陥る可能性があるのかは意外とわからないものです。特に、スタートアップは外部環境や自社のリソースなどの状況が短期間で変わっていってしまうため、生き残りには素早い意思決定が求められるもの。経営上の自由度を奪ったり、判断のスピードを低下させてしまうような条項の設定には特に慎重になるべきです。信頼できる弁護士や先輩起業家に相談して、リスクの検証を行いましょう。

投資家のファンド償還期限が来てしまうパターン

 

5年目の投資ファンドを運用するVCから出資を受けました。(ヘルスケア系スタートアップ Cさん)

結果

Cさんが取り組むのは、事業の立ち上げに時間のかかるヘルスケア系の領域。5年ほどかけて足場を固め、そろそろ事業拡大していくぞ!となっていたところ、急にとある投資家から「ファンドの償還期限が迫っており、IPOできないのであれば事業売却するか、株式の買取先を見つけてほしい(=お金を回収したい)」と言われてしまいました。その後は株式買取の資金をつくるための事業に注力し、元本分を返済。消耗したCさんは事業を閉めてしまいました。

ファンドのお金にも期限がある

投資を受ける際にファンドの償還期限を気にするべきというのは中々聞かないのではないでしょうか。VCなどが運営するファンドは、金融機関などの機関投資家や個人投資家から集めた資金を起業家に投資をして、満期時(通常10年程度)に利益(リターン)をつけて資金を返す仕組みです。つまり償還期限が到来した場合には、元本と利益を出資元の金融機関などに返さなければいけないため、ファンドを運営する投資家(VC)は持っている株式を現金化しようとします。

ファンドからの投資を受けるのであれば、そのファンドの償還期限までにIPOまたはM&Aといったエグジットの実現を求められているということを理解しましょう。最初から元本分の買い取りのことに言及してくる投資家には注意をしたほうがいいですが、場合によっては株式の買い取りを求められる可能性もあるということは念頭に置きましょう。

一方、最近1号目のファンドを組成したような設立間もないVCであれば支援が手厚かったりもしますので、そういう観点からもファンドの組成年と償還期限は気にしておいてもいいかもしれません。

金融商品取引法にひっかかってしまうパターン

 

資金調達マッチングサービスを使ってWEB上で投資家を募った(教育系スタートアップ Dさん)

結果

WEBサービス上で誰でも見れる形で投資家募集をしていたDさん。そのサービスでは良い投資家は見つけられなかったものの、知り合い経由で出会った別の投資家から投資を受けることになりました。 めでたしめでたしと思いきや、日本では金融商品取引法において「発行開示規制」という規制が存在しており、実は不特定多数が見られるWEBサービスでの投資家募集はその規制に違反してしまっていたことが判明。

そのサービスで見つけた投資家でなくとも、半年以内に資金調達した場合対象となってしまうので急いで対応を行いました。結果、資金調達の金額が比較的少額だったというのと、開示規制について詳しい人物がたまたま知り合いにいたため事なきを得ました。

多くの起業家が知らない、金融商品取引法の規制

投資家保護の観点から、日本では一般に広く資金調達を「募集」する場合は有価証券届出書や通知書を財務局に提出する必要があります。調達の金額によっては有価証券届出書を財務局に提出したり、有価証券報告書の継続開示も必須となります。これは時間も資金もないスタートアップには事実上不可能な対応です。これらに違反した場合は最悪金融商品取引法違反となり、まず上場は無理だと言われています(大手監査法人パートナーに確認済み)。

最近は起業家向けに様々な資金調達のウェブサービスがリリースされていますが、こういった説明はされていないことが多いです。実際に筆者の周りでも知らないうちに金商法にひっかかっていたという起業家が出てきています。こういった状況を避けるためには、募集行為にならない「私募」形式で、VCなどのプロの投資家向けに資金調達活動を行いましょう。

※起業ログの運営会社であるプロトスターが運営するStartupListは「私募」形式での募集となるように配慮されたサービスです。

【参考リンク】
・規制に関する詳しい説明はこちらの記事を参照(クレア法律事務所)
・必要な対応についてはこちらの記事を参照(関東財務局 有価証券通知書)

資金調達後に陥りがちな失敗

資金を手に入れたらとりあえず人を増やして、今までお金がなくてできなかった施策を行って、どんどん事業規模を拡大しようという発想をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし、そこにこそ落とし穴があります。せっかく手に入れた資金を無駄なことに投下してしまわないために、失敗のパターンを把握しましょう。

人を増やす=業績が伸びると勘違いしてしまうパターン

 

ガッツがありそうな人材を沢山採用して業績を上げよう!(ITメディア系スタートアップ  Eさん)

結果

人数と業績は比例するはずなので「がんばります!」と言ってくれる人材を手当たり採用!彼らが成長していい感じに業績を上げてくれるはず、と思っていたがそんなことはなく、チームの人数が増えただけでほぼ業績が伸びなかった...

採用そのものではなく、必要性のある人材が重要

ベンチャーで働くなら自分で仕事をつくって、スキルも自分で必要に応じて身につけて、みんな忙しく頑張ってくれるだろう、だからやる気がある人をドンドン採用していこうと思う起業家も多いかもしれません。しかし、その時の状況に応じて必要な人材を採用するというごく当たり前のことをしないと、業績は伸びません。

人を増やせば業績が伸びるという考えや、人が増えて会社の規模が拡大している事自体が企業の成長であるという考えなどは捨てて、採用人数ばかりを追わずに採用戦略を練っていきましょう。

お金をかければいい人材が獲得できると思ってしまうパターン

 

今まで資金がなくて使えなかった人材紹介サービスを使っていい人材獲得しよう!(流通系スタートアップ Fさん)

結果

人材紹介サービスを使って今までよりも良い人材を、良いオファー金額(年収)で獲得したFさん。しかし、入社後数ヶ月で「思っていたのと違った」という理由で辞めてしまう人や、手を動かしたり現場を見ることはせずに数字だけを見て管理の仕事だけをしようとするお荷物的な人が出てきたりと社内は大混乱。落ち着くまでにしばらく時間がかかってしまい、事業の成長が一時停滞してしまいました。

年収や採用にかけるお金は会社の成長フェーズに合わせる

高い年収を提示したり、人材紹介サービスにお金を使っても必ずしも「良い」人材が獲得できるわけではありません。本当に必要なのは自社のビジョン、ミッションを言語化し、その時の自社にとっての良い人材とは何かということを示す評価軸を作り込んだうえで採用することです。初期はスキルの高さよりも、ビジョンへの共感やポテンシャルを重視して採用すべきと言われています。採用に絶対ということはないですが、メンバーが10人程度であればまだ社内の人間の人的ネットワークを使って、ビジョンへ共感してくれるような人材を「類友」的な形で獲得するのが早道かもしれません。

逆に、あなたの会社がもうある程度の規模で仕組みもしっかりしており、ポテンシャルではなくスキルでの採用をすべきタイミングなら広くリーチできる人材紹介サービスなどの活用も視野に入れていきましょう。会社の成長フェーズに合わせて採用にお金をかけるかどうか判断することが重要です。

広告にお金をかけるタイミングを間違えてしまうパターン

 

これからはウェブ広告などにお金を使ってどんどん数字を上げよう(D2Cスタートアップ Gさん)

結果

自社サイトでの商品販売数を伸ばそうと、今までかけられるお金が無かったウェブ広告などの広告を強化することにしたD2CスタートアップのGさん。しかし、思ったようには売上は伸びず、かけた広告費は無駄になってしまいました。

プロダクトの作り込みが甘い段階では広告も無意味

Gさんのようにプロモーションにお金をかけていいタイミングかどうかの判断を誤ると、せっかく資金調達で手に入れたお金を完全に無駄遣いすることになってしまいます。良いプロダクト、良いサービスでない限り、いくらお金をかけて人を呼び込んでもユーザー数の増加や売上の増加には繋がりません。

ユーザーヒアリングとプロダクトのブラッシュアップ、仮説検証などをしっかりして、プロダクト・サービスを作り込んでからプロモーションを行うという当たり前のことを行っていきましょう。

安易に固定費を増やしてしまうパターン

 

せっかく資金調達ができてイケてる感じなので、イケてる感じのオフィスに移転だ!(Hさん)

結果

従業員も増えるし、せっかくなのでアクセスが良くてきれいなオフィスに移転をすることにしたHさん。人件費や固定費などを考慮し次の資金調達が必要な時期は計算していたものの、しばらくしてから次の資金調達に動きはじめたところ思っていたより難航、中々資金調達が決まらないまま毎月のオフィスの固定費がボディーブローのように重くのしかかりました

なんとかキャッシュがショートするまでには資金調達をすることができたものの、次のオフィス移転時には安易に「良いオフィス」への投資はしないで他のことに資金を投下しようとHさんは心に決めました。

資金の使い方の優先順位付けを慎重に

固定費は安く!というのは当たり前のことだと感じている方も多いとは思いますが、一度に大きなお金が入ってくるとどうしても優先順位付けが甘くなりがちなもの。特に一回目の資金調達の場合は要注意です。

しかもオフィスなどであれば切り替えにもお金や時間のコストがかかってしまいますので、一度の判断ミスが後々効いてきます。先輩の起業家などに相談したり投資家に相談したりしながら、人件費や固定費などどのくらいまでなら許容範囲か相場観を身に着けましょう。

資金調達方法の選択は合ってる?

今回の記事では、エクイティファイナンスを行うことを前提に話を進めましたが、資金調達の方法は他にもたくさんあります。

以下の記事を読んで、本当にエクイティファイナンスをする必要があるのかを検討してみることをおすすめします。

 

監修者プロフィール

栗島祐介

プロトスター株式会社代表取締役CCO (Chief Community Officer) 早稲田大学商学部卒。アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、当社を設立。HardTech領域の起業家支援コミュニティ「StarBurst」の運営総括、起業家・投資家の情報検索サービス「StartupList」の運営を行う。

参考URL:「イケイケ風」ベンチャーが資金調達をしてから犯した3つの失敗

画像出典元:Unsplash

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