起業家が今知っておくべきベンチャーイグジット最前線 M&A編

起業家が今知っておくべきベンチャーイグジット最前線 M&A編

記事更新日: 2019/05/21

執筆: 編集部

スタートアップのイグジットと言えばIPOを想像する人が多いのではないでしょうか?

ところが、いまやアメリカではスタートアップのイグジット戦略はM&Aが中心になっています。

日本でもその波は来るのでしょうか?

その波が来る前に起業家・経営者は何を準備すべきでしょうか?

今回は、5月21日にM&A実績20件以上、クロスボーダーディールの実績もある株式会社 investment hub代表の田中響平氏を迎えて行われた、今後のスタートアップのベンチャーイグジット、そしてスタートアップ視点のM&Aについての勉強会の模様をレポートします。

なお、田中氏は監査法人、外資証券の投資銀行部門、PEファンドなどを経て2018年に独立。現在は、多くのM&Aの実績・経験を活かし、M&Aアドバイザーや上場会社・ベンチャー企業の戦略顧問として活躍されています。

田中響平 プロフィール

10年以上、M&A及び投資銀行業務に従事。シティグループ証券/日興シティグループ証券の投資銀行本部に在籍し、大型M&A案件、経営統合、クロスボーダー案件、MBOなど、大小20件を超える複雑なM&A案件をリーダーとして遂行。
プライベート・エクイティ業界に5年弱在籍し、国内の小売・流通・ヘルスケア・食品製造業への投資・バリューアップ・売却に携わる。それ以前は、大手監査法人のあずさ監査法人・KPMG国際部に3年間在籍し、会計監査・SOX法コンサルティング業務等に従事。
ビジネスの道具としてM&Aを戦略的に使いこなすという視点でアドバイスしている。

 

勉強会の主な内容

今回の勉強会では、以下のような内容を学びました。

  • なぜ今、スタートアップの経営者がM&Aを学ぶべきなのか
  • 売却プロセスを学んでも会社は売れない
  • M&Aで売れる会社とは?
  • M&Aにおける売り主の誤解
  • M&Aを成功させるための最低限の準備

特に「どんな会社がM&Aで売れるのか」あるいは「自分の会社を買ってくれるのはどんな会社なのか」という内容については、ビジネス構造の基本的な考え方までさかのぼって、かなり丁寧に解説いただきました。

この記事では、冒頭の内容、

  • なぜ今、スタートアップの経営者がM&Aを学ぶべきなのか
  • 売却プロセスを学んでも会社は売れない

について、簡単に内容をご紹介します。

なぜ今、スタートアップの経営者がM&Aを学ぶべきなのか

なぜ今、スタートアップの経営者がM&Aを学ぶべきなのか。それはベンチャー業界を含む金融業界ではアメリカのトレンドが20年程度遅れて日本にもやってくると考えられるからです。

下の図はアメリカにおける、ベンチャー企業のイグジットに占めるM&AとIPOの割合の推移ですが、近年M&Aが急速にメジャーになったことが分かります。

米国におけるベンチャー企業Exit件数の推移

なぜアメリカでは、ここまでM&Aが急速に活発になったのか。その背景には、買い手におけるM&Aの一般化と同時に、売り手のベンチャーにおける優先株式とデュアル・トラック・プロセスの浸透が進んだことがあげられます。

優先株式には、M&Aイグジットにおける株主間の利害調整がしやすくなるというメリットがあります。

また「デュアル・トラック・プロセス」とはM&AとIPOを並走させるイグジットプロセスですが、これにより売り手の交渉力が強まり、売り手にとってのM&Aイグジットの魅力が高まります。

すでに優先株式については日本でも浸透してきていますが、浸透し始めたのは2010代から徐々に最近にかけてです。アメリカで優先株式が浸透したのは1987年〜1994年ごろの期間ですから、やはりアメリカに20年程度遅れて日本に浸透したといえます。

もしこのままのペースでいけば、これからデュアル・トラックの浸透が日本でも徐々に始まり、2025年ごろにM&Aによるイグジットが本格化すると予測できます。

M&Aのイグジットの準備は計画的に進めておく必要があります。近い将来、M&Aでのイグジットが当たり前になる未来に向けて、今こそスタートアップ経営者はM&Aを学ぶべきなのです。

売却プロセスを学んでも会社は売れない

M&AセミナーやM&Aについての書籍など、世の中調べてみると意外とM&Aについて学ぶ機会があります。しかし、そういったセミナーや書籍で解説される内容のほとんどがM&Aの"プロセス"についてです。

しかし、売却プロセスを学べば会社が売れるというわけではありません。

なぜなら「会社を売る」というのは売却プロセスの理解に加え、売れる会社とは何かという理解が不可欠だからです。

M&Aのプロセスについては、アドバイザーに聞けばだいたい教えてくれます。しかし、ビジネスについてきちんと答えられるアドバイザーは残念ながら多くありません。

したがって、事業とは何か、その事業にはどのような買い手がいるのか、そして値段はいくらになるのか、こういったことは経営者自身が正しく理解し、自分で考えられるようになっておく必要があるのです。

M&Aの成功において「売却プロセス」はあくまで必要条件です。「会社が売りモノになっていること」「欲しがる買い手にアプローチすること」「値段をつけてもらうこと」が十分条件です。

このことを特にベンチャー・スタートアップの経営者は心に留めておく必要があります。

M&Aにおいて、値段は買い手が決めます。資金調達のときのバリュエーションのロジックは通用しません。

買い手は、何年で買収費用を回収できるかという観点で考えるため、一般的に利益が出ていない会社は売りづらいです。

多くの利益の出ていないベンチャーがM&Aによるエグジットを成功させるために、ビジネス構造を理解し、「売れる会社とは何か」「誰が欲しがるのか」を考えることが欠かせないのです。

まとめ

このあと、

  • M&Aで売れる会社とは?
  • M&Aにおける売り主の誤解
  • M&Aを成功させるための最低限の準備

について解説いただきました。

参考までに、参加者の感想を紹介します。

 

具体と抽象の話の配分がよく、とてもわかり易かったです。印象に残ったのはビジネスモデルとマーケティングの話でした。シリーズごとの売り方・売りやすさをマトリクスで整理いただいていたので、概念を理解しやすかったです。

 

そもそもM&Aの知識がゼロだったので、講義の幅と深度、いずれも大満足でした。会社の戦略を考えるのに、とてもためになりました。

 

ビジネスモデルとマーケティングの二軸での分類はわかりやすかったですが、例示される内容の中でこの二軸に分類される理由がより明確だと理解しやすいかと思いました。買い手側の実態はもう少し複雑になると思うので、パズルのピース探しなのだろうと理解しました。


今回好評だったため、再度M&A勉強会の開催を予定しております。

弊社Facebookページ起業ログTwitterアカウントにて次回開催時の周知を行う予定ですので、興味を持った方はフォローをよろしくお願いします。

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