設置型社食をはじめとする食事補助は、従業員にとって大切な福利厚生の一つです。
ただし、食事補助には一定の法的ルールが定められており、その範囲を超えると所得とみなされて給与課税の対象になる恐れがあります。
本記事では、福利厚生の食事補助が非課税になる条件、食事補助のメリット、種類、導入手順について解説します。
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まず、食事補助を福利厚生として提供する場合、非課税になる条件について解説します。
所得税法において、食事補助が非課税となる要件は、以下の3点です。
これらの要件について、それぞれ詳しく解説します。
一つ目の条件は、役員や従業員が食事の価額の50%以上を負担していることです。
なお、価額はすべて税抜で計算します。
ただし、たとえこの要件を満たしていても、以下の【要件2】を満たしていなければ課税対象となります。
1ヶ月あたりの企業負担額が3,500円(税抜)以下であることも、非課税の条件となります。
つまり、月20日出勤の場合は、3,500円÷20日=175円となり、企業が1日175円(税抜)以下の負担をしている場合は、非課税になります。
例えば、400円(税抜)の外部業者の弁当を250円(税抜)で販売する場合、企業負担は150円のため、非課税です。
しかし、同じ400円の弁当を200円で販売すると、企業負担は200円となるため、課税対象になります。
ちなみに社員食堂の場合は、食事の調理にかかった食材費や調味料費の合計で計算します。
現金以外の現物支給(社員食堂・弁当・食券など)であることも、非課税の条件となります。
ただし、深夜勤務を行う従業員に対しては、勤務場所の周囲に食事ができる施設がないなど、現物支給が困難な場合があります。
このようなケースに限り、1食につき300円(税抜)以下であれば現金支給でも非課税となります。
企業が福利厚生として食事補助を導入するメリットは、以下の4点です。
それぞれについて解説します。
社員食堂や社内での弁当提供があると、従業員が一緒に食事をする機会が増えます。
これにより、社内の人間関係が円滑になり、従業員はよりスムーズに仕事を進められるようになります。
企業側も業務効率の向上や業績アップが期待できます。
食事補助によって、従業員は栄養バランスの取れたメニューを選択できるようになり、健康維持・増進が期待できます。
従業員の健康は企業にとって貴重な財産です。
健康な従業員が増えれば、企業の競争力や生産性の向上にもつながり、結果として売上アップも望めます。
食事補助は、従業員にとって単に安価で栄養価の高い食事が摂れるだけでなく、食事のための移動の手間を省くことにもつながります。
特に社員食堂の場合、一時的に仕事から離れることでオンオフの切り替えができ、他の従業員との交流を通じて気分転換や人間関係を深める機会も生まれます。
こうしたメリットが、結果として従業員の満足度向上に大きく貢献します。
従業員の満足度が向上すれば、離職率の低下が期待できます。
近年、慢性的な人手不足が深刻化しているため、企業にとって人材の定着は重要な課題です。
食事補助は、この課題を解決するための有効な手段となるでしょう。
企業が提供できる食事補助は、以下の4種類です。
それぞれのメリット・デメリット、向いている企業、費用相場について解説します。
食品棚、冷蔵庫、冷凍庫などを社内に設置して、従業員が好きなものを好きな時に食べられるサービスです。
メリット |
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デメリット |
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向いている企業 |
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費用相場 |
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提携している飲食店やコンビニで、従業員が好きなメニューを選んで食事ができるサービスです。
メリット |
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デメリット |
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向いている企業 |
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費用相場 |
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決まった時間に、オフィス内で移動式社員食堂(ビュッフェ形式)や、弁当を提供できるサービスです。
メリット |
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デメリット |
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向いている企業 |
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費用相場 |
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休憩時間に合わせて、弁当や惣菜がオフィスに届けられるサービスです。
メリット |
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デメリット |
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向いている企業 |
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費用相場 |
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食事補助サービスを導入するにあたっては、以下の3つの手順を踏む必要があります。
各ステップについて解説します。
食事補助は、従業員にとって満足度の高い福利厚生でなければ導入する意味がありません。
そのためには、導入前にアンケートやヒアリングを行い、従業員のニーズを把握する必要があります。
確認すべき主な項目は以下の通りです。
同じ企業でも、支店やエリアによって従業員のニーズは大きく異なる可能性があります。
従業員の年齢層や担当業務によっても、アンケート結果に違いが出るかもしれません。
これらを考慮して、総合的にもっとも適した制度を設計する必要があります。
例えば、従業員の食事や休憩時間にばらつきがある場合は、提供型やデリバリー型より設置型社食がよいと考えられます。
希望するメニューが多種多様で、近所にチェーン店が豊富な場合は、代行型が喜ばれるかもしれません。
食事補助は、一旦導入すると頻繁に変更できるものではありません。
中長期的な目線で、自社にとっての最適解を見つけることが大切です。
食事補助は、サービスの種類によってコスト構造が異なります。
初期費用やランニングコストの見積もりはもちろん、運用に必要なスペースや設備の確認も不可欠です。
例えば、デリバリー型は弁当や惣菜の受け取りのみですが、設置型社食の場合は冷蔵庫や冷凍庫の設置スペースと電気代が必要です。
提供型は、食事場所を含めかなりのスペースを要します。
いずれの形式を選ぶにしても、運用方法の検討が重要です。
従業員が一旦全額を負担した後で精算するのか、食券を配布するのか、あるいは月ごとの利用上限額をアプリなどで管理するのかなど、従業員と企業双方にとって負担が少ない方法を選択しましょう。
福利厚生の一環として食事補助を導入すると、従業員同士のコミュニケーション活性化、健康増進、人材定着の促進といった大きなメリットをもたらします。
ただし、食事補助にはさまざまな方法があり、従業員のニーズに合わなければ導入する意味がありません。
従業員の意見によく耳を傾け、細かな見積もりと自社に適した制度設計のもと、失敗のない形で導入してください。
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