エクセルでの契約書管理は使い慣れている社員も多いため、現場への導入から運用までをスムーズに実行できます。
本記事では、エクセルで契約書管理を行う方法やメリット・手順、さらにはすぐに使えるテンプレートをまとめました。
エクセルでの契約書管理が適さない企業にはエクセル以外の方法も紹介しているので、非効率な契約書管理が負担になっている担当者はぜひチェックしてみてください。
このページの目次
契約書管理台帳とは、契約書の検索性・一覧性を確保するための台帳です。
台帳には企業が取り交わした契約書の重要な内容がまとめられており、契約書を取り出さなくても必要な情報を確認できるよう作成されています。
きちんと整理・管理された契約書管理台帳があれば、契約に関する業務がスムーズになり、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
契約書管理台帳によって契約書の内容をすぐに確認できるようにしておくことは、取引先との紛争防止・社会的信頼喪失の抑止につながります。
万が一、契約書の紛失・確認漏れ・対応ミスなどが発生した場合、企業には以下のようなリスクが想定されます。
そもそも契約書は、取引における当事者間の合意内容を明文化した、法的拘束力を持つ文書です。
法律によって適切な保存が義務付けられており、法令遵守の観点からも契約書管理台帳を作成して適切に管理する必要があります。
なお、契約書の保存期間は、会社法では「10年間」、法人税法では「7年間」です。
参考:会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百三十二条|e-Gov 法令検索
参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
エクセルを活用すれば、簡単に契約書管理台帳の運用ができます。
エクセルで契約書管理台帳を作成するステップは、以下の通りです。
また、以下のポイントに注意すると、エクセルでの契約書の管理・活用がスムーズになります。
特定の条件に合致するセルの背景色を自動で変えられる「条件付き書式」を設定すれば、終了・更新が近づいている契約書の見落としを抑制できます。
また、作成した契約書管理台帳をテンプレートとして保存しておくと、新しい契約書管理台帳を作成する際の手間が省けます。
ここでは、契約書管理にエクセルを使う主なメリットを5つご紹介します。
エクセルにはフィルタリング機能があり、特定の条件に基づく検索が可能です。
項目にフィルターを設定しておけば、契約相手や契約期限・契約種類などの情報をスムーズに絞り込めます。
エクセルでは、シート上で契約の締結日、有効期限、更新日などの重要な情報を一覧化できます。
フィルター機能を使えば有効期限別に契約書を抜き出せるので、契約更新時期の確認が容易な点もメリットです。
契約更新業務の抜け漏れ対策をより強化したい場合は、「条件付き書式」機能によって視覚的なアラートを設定できます。
エクセルで契約管理台帳を作成する場合、決まったフォーマットはありません。
自社の業務に合わせて必要な項目を設定できるので、契約書情報の入力や契約書の検索が容易になります。
すでにエクセルを導入している企業なら、追加のコストは不要で契約書管理を始められます。
また、エクセルは多くの従業員が日常的に使用しているため、特別なトレーニングも必要ありません。
研修や教育にかかるコストを抑えられるのも、エクセルを利用するメリットといえます。
契約書の情報がエクセル上で一元管理されれば、担当者は必要な情報へのアクセスが容易になります。
さらにMicrosoft社が提供するクラウドベースサービスを利用すれば、エクセルで作った契約書管理台帳を複数の社員で共有することも可能です。
異なる部署間での情報共有がスムーズになれば、契約書管理の業務負担が減り、全社的な生産性の向上につながります。
エクセルは便利なツールですが、機能に不足を感じるケースもあります。
エクセルで契約書管理を行う際の主なデメリットを見ていきましょう。
エクセルはカスタマイズ性に優れており、作成者が項目や仕様・機能を自由に変更できます。
しかし、作成者が自分の使いやすさを重視して台帳を作成すると、第三者には分かりづらい仕様になり、管理の質が低下する恐れがあります。
また、ほかの社員が必要な情報にアクセスしにくくなることで、特定の担当者に依存してしまい、契約書管理が滞る可能性も出てきます。
エクセルで利用できるアラート機能は、「条件付き書式を使う」「数式を使う」などが一般的です。
しかし、視覚的なアラートだけでは契約終了日や契約更新日を見逃す恐れがあります。
重要な情報をメール通知などでアラートしたい場合は、Microsoft Power Automateなどの外部ツールとの連携や、VBA(Visual Basic for Applications)の活用が必要です。
エクセルには、以下のようなセキュリティの脆弱性があります。
エクセルは、複雑な権限設定やユーザー管理には対応していないため、意図しない情報漏えいが発生しやすくなります。
また、エクセルの契約書管理では、複数の担当者が手入力でデータを管理するため、誤って重要な契約情報を削除したり、書き換えてしまったりするリスクがあります。
さらに、自動バックアップや変更履歴の管理機能が十分でないため、復元に手間と時間がかかることも少なくありません。
エクセルは、大量のデータ処理には不向きです。
契約書管理台帳のデータ量が増えると、処理速度が遅くなる傾向があります。
管理する契約書数が少ない場合でも、条件付き書式や関数・数式を多用すると、操作性や処理速度の低下は避けられません。
その結果、契約書の検索や集計、分析業務にかかる時間が長くなり、担当者の業務効率が低下してしまいます。
エクセルを使用して効率的に契約書管理を行うには、ルールや入力方法を明確にしておきましょう。
エクセルで契約書管理を行う手順は、以下の7ステップです。
契約書管理業務には、複数の部署・部門が関わります。
まずは契約書管理全般の責任者を選定し、適切な管理体制を構築しましょう。
契約書管理責任者の業務は、契約書の作成から保存・更新・廃棄までの管理・監督です。
契約書管理における全てのプロセスが適切に管理されることで、入力漏れや更新手続きの対応漏れ・誤った廃棄によるトラブル・法令違反などのリスクを低減できます。
契約書の種類は多岐にわたるため、事業形態や企業規模によっては契約書の一元管理が難しいかもしれません。
契約書の重要度や優先度を精査し、管理対象とする契約書を決めてください。
例えば以下のような契約書は、契約書管理台帳を作成して優先的な管理が必要です。
契約書管理を行うために必要な項目を決め、エクセルで契約書管理台帳を作成します。
契約書名、契約相手、契約締結日などの管理したい情報を洗い出し、エクセルシートの1行目に列の見出しとして入力しましょう。
視認性を確保したい場合は、罫線を整えたりセルの色を変えたりするのがおすすめです。
なお、インターネット上には、無料で使えるエクセル版の契約書管理台帳テンプレートがさまざま公開されています。
作成の手間をかけたくない場合は、テンプレートを活用するのも一つの方法です。
管理対象となる契約書の情報を、項目にしたがって入力していきましょう。
契約書の入力処理をそれぞれの担当部門に一任する場合は、入力例があると入力ミスを防げます。
契約書管理台帳について、「どのタイミングで」「誰が」「どのように入力するのか」を明確にしましょう。
アクセス権の設定についても明確にし、情報漏えいリスクを抑制することが大切です。
また、担当者が独自の基準で情報を入力すると、フィルタリングやソートが難しくなります。
データ入力の際は、「yyyy/mm/dd 形式」「円マーク」「カンマ区切り」で入力するなどの具体的なルールを設けましょう。
契約書管理台帳の使用方法やルールを周知したら、各部門・部署の担当者に入力してもらいます。
運用開始直後は、契約書管理についてのトラブルや質問が頻発するかもしれません。
現場の状況に合わせ、エクセルの仕様や運用ルールを改善してください。
契約書管理業務は、常に同じフロー・内容で進むとは限りません。
市場の変化や法改正により、常に新しいニーズが発生する可能性があります。
作成した契約書管理台帳は定期的に点検し、現状に合わせて最適化することが重要です。
また、契約書管理台帳を点検するときは、以下のポイントをチェックしてください。
ミーティングやレビューで定期的に担当者の声を集めれば、契約書管理台帳の運用品質が向上するはずです。
契約書管理台帳の項目は、自社のニーズに合わせて設定できます。
契約書管理に必要な基本項目を押さえつつ、必要な項目をプラスしましょう。
ここでは、エクセルで契約書管理台帳を作成するとき、必要な項目をご紹介します。
契約年月日、契約金額、契約相手は必ず管理項目に含めておきましょう。
国税関係に関わる契約書は、電子帳簿保存法で定められた検索性要件を満たす必要があります。
参考:電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください
業界によって、管理が必要な項目は異なります。
例えば以下の業界の企業では、管理項目の追加を検討しましょう。
2018年の著作権法改正により、著作権侵害に対する罰則が強化されました。
例えば、IT企業ではソフトウェアのライセンス管理をより厳格に行う必要があり、契約書管理ではより細かい項目の設定がおすすめです。
不動産業界では、2020年の民法改正で賃貸借契約に関する規定が変更されたため、新旧の契約条件を適切に管理することが重要です。
このほか金融業や製造業は、契約時の条件を明確に管理することが契約トラブルの抑止につながります。
エクセルで契約書を管理するときは、管理項目の設定や管理方法を自社の業務フローに最適化することが重要です。
エクセルでの契約書管理について、注意すべき4つのポイントをご紹介します。
契約書管理台帳の管理項目が多すぎると、データ入力や更新作業の負担が大きくなります。
過剰な項目設定が業務効率の低下・ヒューマンエラーの増加につながらないよう、管理項目を精査・最適化しましょう。
このほか管理項目を最小限に絞ることで、以下のようなメリットもあります。
契約書が部門や部署ごとに分散していると、業務の属人化や契約書の紛失リスクが高まります。
特に、契約の更新期限や重要な条件の見落としは、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼし、法的トラブルに発展する場合もあります。
契約書を一元管理することで、契約書の検索や閲覧がスムーズになり、必要な情報にすぐアクセスできるようになれば、更新期限の管理がしやすくなり、契約書の紛失リスクを低減することが可能です。
契約に合わせた対応ができるよう、契約書管理台帳で契約書の期限を定期的に確認してください。
契約書には、自動更新されるもの・期限がくると失効するものがあります。
また、契約書は会社法や法人税法などの法律によって保存期間が定められています。
期間内の紛失・廃棄が起こらないよう、各契約書の保存期間をチェックしましょう。
エクセルで契約書を管理するときは、アクセス権限の設定を行いましょう。
契約書には、機密性の高い情報が含まれています。
情報漏えいのリスクを低減するなら、契約書管理台帳の閲覧・編集を特定の社員に限定することが重要です。
また、エクセルでの契約書管理は、データ消失・破損のリスクがあります。
ファイルの破損や消失に備え、クラウドストレージや外部のドライブにバックアップを取っておくことも必須です。
エクセルでの契約書管理は簡易的なものであり、機密性の高い契約書・大量の契約書管理には不向きです。
エクセルでの契約書管理をおすすめできない4つのケースをご紹介します。
契約書の種類や量が多岐にわたる場合、以下のリスクがあります。
エクセルは、基本的に小規模なデータセットに適したソフトです。
大量の契約書情報や複雑な関係を管理するには、限界があります。
エクセルでの契約書管理台帳は、以下のようなセキュリティの課題があります。
機密性の高い契約書を扱う場合は、高度なデータの暗号化、アクセス制御、バージョン管理などを備えた契約書管理専用のツールがおすすめです。
複数のユーザーが同時にエクセルファイルを編集する場合、リアルタイムでの同期は困難です。
変更が適切に反映されず、契約書データの整合性が失われる恐れがあります。
また、エクセルはバージョン管理が難しく、複数人が同じファイルを編集すると「どれが最新バージョンなのか」の把握も困難です。
古いバージョンで更新が繰り返された場合、契約書管理台帳の正確性が損なわれます。
エクセルは基本的な変更履歴機能を備えているものの、「誰が」「いつ」「何を変更したか」という詳細なログまでは確認できません。
手動操作が多いことから変更履歴の正確な記録も難しく、ログの正確性と一貫性を確保するのが困難です。
管理ログの信頼性が低いと、契約内容に関する問題が発生した際に証拠を探すのが難しくなります。
不正操作や法令違反のリスクを最小限に抑えたい企業には、エクセルによる契約書管理はおすすめできません。
エクセル以外で契約書を管理する方法として、「契約書管理システムを利用する」「電子契約を導入する」の2つがあります。
それぞれについて、詳しくご紹介します。
契約書管理システムとは、契約書管理に関わる業務を自動化できるシステムです。
契約書管理システムには、主に以下のような機能があります。
契約書管理システムはエクセルよりも高度な機能が搭載されており、契約書のライフサイクル全体を包括的に管理できます。
契約書管理業務のセキュリティ、効率、透明性を高いレベルで維持したい企業におすすめです。
電子契約とは、契約書の作成から締結までのプロセスをデジタル化することです。
紙の契約書に代わって電子的に契約を作成、署名、保存することで、契約書の管理が容易になります。
紙の契約書から電子契約に移行したい企業は、電子契約システムを導入しましょう。
電子署名法や電子帳簿保存法などの法的要件に基づいた契約書管理を実現でき、契約書の法的効力を確保しやすくなります。
エクセルで作成した契約書管理台帳には、低コストで導入できる、カスタマイズ性が高いなどのメリットがあります。
ただし、セキュリティ対策がしにくかったり、契約更新の作業が煩雑になったりするリスクもあり、全ての企業に適した管理方法とはいえません。
契約書は企業活動の基盤となる重要な書類であり、企業コンプライアンスにおいても不可欠な要素です。
エクセルでの契約書管理に不安がある場合は、より高度な契約書管理を実現できる契約書管理システムや電子契約の導入を検討しましょう。
画像出典元:O-DAN
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