社内外の問い合わせに対応する中でも、技術的なサポートを行うヘルプデスクは企業にとって欠かせない仕事の1つです。
本記事では、ヘルプデスクとは何か、役立つ主な資格と勉強方法、求められるスキルや知見について解説します。
ヘルプデスクのキャリアパス、AIと人の協働についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
このページの目次
ヘルプデスクとは、社内外からの問い合わせにおいて、技術的なサポートを行う部署やサービスのことです。
主に電話・メール・チャットを通して対応します。
社内ヘルプデスクは、従業員から寄せられる技術的な問い合わせに対応する仕事です。
社内システムの操作方法に関する質問・ITトラブル発生時の解決依頼・業務マニュアルの不明点といった問い合わせ内容に対して、必要に応じて調査を行い解決までサポートします。
社外ヘルプデスクは、顧客から製品やサービスに関する技術的な問い合わせがあった際に対応する仕事です。
ソフトウェアのバグ報告・システムの操作がわからない・アカウントのトラブルといった問い合わせ内容に対して、必要に応じて調査を行い解決までサポートします。
厚生労働省が公開している職業情報提供サイト「jobtag」によると、ヘルプデスクの平均年収は約558万円です。
ただし、求人や経験によって年収に大きな幅があります。
ヘルプデスク業務に必要な知識とスキルを身につけるため、資格取得は効果的な手段です。
ここでは、ヘルプデスクに役立つ主な資格と、その勉強方法について紹介します。
ヘルプデスクでは、社内・社外どちらからの問い合わせか、特定製品についての問い合わせかによって役立つ資格が異なります。
ここでは、どちらにも共通で求められる初心者向けの資格について解説していきます。
ITパスポートとは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催するITに関する基礎的な知識を問う国家試験です。
主に以下の3分野から構成されます。
ストラテジ系 | 経営戦略・システム戦略など |
マネジメント系 | プロジェクト管理・システム開発など |
テクノロジ系 | ITの基礎・セキュリティ・ネットワークなど |
IT企業ではITパスポートの取得を推奨している企業が多く、最も初歩的な資格といえます。
独学でも可能ですが、初心者であれば講座の利用がおすすめです。
時間が確保できない場合はオンライン講座も検討してみてください。
また、ITパスポート試験の公式サイトでは、過去問とその解答例を無料でダウンロードすることができます。
マイクロオフィススペシャリスト(MOS)とは、Microsoft Office製品の専門的な操作能力を証明する資格です。
一般レベル(アソシエイト / スペシャリスト)と、上位レベル(エキスパート)という2つのレベルがあります。
一般レベル | 上位レベル | |
Word |
|
|
Excel |
|
|
PowerPoint |
|
ー |
Access |
|
|
Outlook |
|
ー |
社内ヘルプデスクの場合は特に、Microsoft Office製品の問い合わせも多いため、取得することで理解が深まり、スムーズな対応をするのに役立つでしょう。
試験対策教材・オンライン講座の活用をしながらインプットし、実際に操作しながらアウトプットを行う勉強方法が有効です。
過去の試験問題は公開されていないため問題集はありませんが、勉強サイトやアプリを活用して模擬試験を解きながら身につけると良いでしょう。
CIW(Certified Internet Web Professional)とは、アメリカのCertification Partner社が主催するインターネットやWeb技術に関する知識を問う国際資格です。
主に、下記の4分野があります。
基礎 |
|
デザイン |
|
プログラミング技術 |
|
セキュリティ |
|
Web関連の知識を幅広く深めることができ、ヘルプデスクでもウェブベースのアプリケーションやサポートツールの使用が多いため役立ちます。
CIWは試験範囲が広いため、まずは各分野の基本をおさえることが大切です。
基礎的なインターネットやWeb技術については、オンライン教材や公式テキストを利用して理解を深めましょう。
さらに、Web開発やデザイン・セキュリティなどの専門分野については、実践的な演習を通じて学習してください。
過去問や模擬試験を活用し、試験形式に慣れることも重要です。
中級者向けの資格は、基本的なIT知識を持ち、さらに専門性を高めていきたい人に適しています。
ITIL®ファンデーション(Information Technology Infrastructure Library)とは、イギリス政府と投資会社が作った合弁会社AXELOS(現在はPeopleCertの子会社)が主催する資格です。
ITサービス管理におけるベストプラクティス(成功事例)に関するフレームワークがまとめられています。
ヘルプデスクにおける運用改善や初期設計といった効率的な管理について学ぶことができるため、マネージャーなどの管理職を目指す場合に役立ちます。
参考書やWebサイトを活用した独学で勉強する方法、スクールを利用する方法があります。
まず、黄色本と呼ばれる「IT Service Management教科書 ITIL ファンデーション シラバス」を読み込んで全体の概要を掴みます。
その後、試験対策の書籍や「Ping-t」というWebサイトで学習する方法がおすすめです。
効率良く最短距離で資格取得を目指したい場合には、スクールを利用する方法も検討してみてください。
基本情報処理技術試験は、IT業界で広く認知されており、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験です。
ITの基礎知識を問う科目A試験(旧午前試験)と、実践的なITスキルを問う科目B試験(旧午後試験)の2つで構成されています。
科目A試験(旧午前試験) |
|
科目B試験(旧午後試験) |
|
科目A試験(旧午前試験)は、分野ごとに差はあるものの、過去問からの出題傾向が高いため、過去問を中心に勉強する方法がおすすめです。
過去問を活用して学習することは、科目B試験(旧午後試験)の理解度を向上させることにも繋がります。
また、オンラインの模擬試験や講座なども活用し、実際の試験に向けた対策を行うと効果的です。
情報セキュリティマネジメント試験は、企業内での情報セキュリティの管理能力を問う試験であり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験です。
基礎的な知識を問う科目A試験(旧午前試験)と、実務的な応用力を問う科目B試験(旧午後試験)があります。
科目A試験(旧午前試験) |
|
科目B試験(旧午後試験) |
|
ヘルプデスクでは、個人情報や機密情報を取り扱うことが多く、情報セキュリティの確保が必要不可欠であることから取得を推奨する企業が増加しています。
科目A試験(旧午前試験)は、参考書や問題集を活用しながら基礎知識をしっかりと身につけましょう。
科目B試験(旧午後試験)は、実務的な課題解決能力が問われます。
実務経験を活かした思考力や問題解決力が必要となりますが、過去問題集や模擬試験などを活用して実践的な思考を鍛え、論理的に説明できるようにすることが大切です。
HDI認定資格は、アメリカのHDIが主催し、日本ではシンクサービス株式会社(HDI-JAPAN)が運営しています。
ITサポートサービスにおける国際資格であるため、ヘルプデスクのプロフェッショナルとして求められる知識や効率的な運営、問題解決能力を問われます。
ヘルプデスク自体が受けられる認証もありますが、個人として受けられる認定試験は下記の7つです。
カスタマサービスリプレゼンタティブ(CSR)国際認定コース | 顧客対応スキル・問題解決能力・サービス品質向上を目指すカスタマーサービス担当者向け |
サポートセンターアナリスト(SCA)国際認定コース | サポートセンターのパフォーマンス評価・業務分析を行い、プロセスの改善に貢献するための知識とスキルを習得 |
サポートセンターチームリーダー(SCTL)国際認定コース | サポートセンターのチーム管理・リーダーシップスキルを習得する |
サポートセンターマネージャ(SCM)国際認定 | サポートセンター全体を管理し、運営を最適化するための高度な知識を証明する |
KCSファウンデーション(KCSF)国際認定コース | 知識中心サポート(KCS)の基本概念と実践方法を学ぶ |
KCSプリンシプル(KCSP) | 知識中心サポート(KCS)の高度な実践方法を学ぶ |
Eサポート・ベストプラクティス(日本限定) | 日本市場におけるオンラインサポートのベストプラクティスを学び、実践的なスキルを習得する |
HDI認定資格を取得するためには、公式のトレーニングプログラムに参加する必要があります。
専門的なカリキュラムを提供しており、参加することで資格試験に向けた準備を進めることができます。
トレーニングの種類によっては、オンラインで受講することも可能です。
ヘルプデスク業務の中でキャリアアップを目指すためには、さらに専門的な技術を学び、知識を深める必要があります。
CCNA(Cisco Certified Network Associate)は、シスコシステムズ社が主催するCisco認定資格の中の1つです。
5つのグレードがあり、CCNAの難易度は初級レベルになります。
グレード | 資格名 | 特徴 |
エントリー | CCT | ネットワーク機器の基本的な設定・修理・トラブルシューティングスキルを証明する |
アソシエイト | CCNA | ネットワークの基礎的な知識や設定スキルを証明する |
スペシャリスト プロフェッショナル |
CCNP | 中級~上級のネットワーク知識を証明する |
エキスパート | CCIE | ネットワーク技術のエキスパートレベル |
アーキテクト | CCAr | ネットワークインフラ設計の最上級資格 |
ネットワークインフラの構築やトラブルシューティングのスキルを証明できるため、ヘルプデスク業務での高度な問題解決能力が求められる場面で役立ちます。
CCNAに関する参考書は多く出版されていますが、2020年2月の改訂により出題範囲が大きく変更されているため、改訂前の参考書は購入しないように注意してください。
「Ping-t」など、Webサイトでのオンライン学習も有効です。
ネットワーク設定やトラブルシューティングの実践的な演習を行い、模擬試験を通して試験形式に慣れるようにすると良いでしょう。
LinuC(Linux Professional Institute Certification)は、LPI-JapanというNPO法人が主催しており、Linuxシステムの管理能力を証明する資格試験です。
Linuxの資格には、下記2種類があります。
LPIC (Linux Professional Institute Certification) |
世界中で実施されているLinux技術者認定試験 |
LinuC (Linux技術者認定試験 LinuC) |
日本国内向けの資格 |
LinuCの試験では、レベル1〜レベル3までが用意されており、受験者にはスコアや合否判定と併せて合格基準・項目別スコアも知らされます。
Linuxは、サーバー管理やネットワーク環境において広く使用されているため、ヘルプデスク業務でもLinuxの知識は役立つでしょう。
LinuCの勉強には、Linuxの基礎から応用までを網羅した教材を使って独学で行う方法と、LPI-Japanがアカデミック認定校とした教育機関で学習する方法があります。
その他に、LPI-Japanが行っている無料の技術解説セミナーを活用する方法も有効です。
ヘルプデスクで活躍するためには、資格以外にもスキルや知識の習得が必要です。
ここでは、特に重要となる6つのスキル・知識について解説します。
ヘルプデスクでは、報告書の作成や問い合わせ内容のデータ化などを行うため、PCスキルが必須です。
WindowsやMacの基本操作に加え、PCのセットアップ・トラブルシューティングができる能力が求められます。
多くの企業で使用されているMicrosoft Office製品(Word・Excel・PowerPoint・Outlookなど)の操作スキルも重要です。
基本的には、頻繁に使用する機能を理解していれば問題ありませんが、業務効率化を図るために必要となるExcel関数・マクロ・VBAといったスキルを求められるケースもあります。
ヘルプデスク担当者として、ネットワークに関する基本的な知識は必須です。
ネットワーク接続のトラブルやインターネットに関連する問題が発生した際には、迅速に対応できる能力が求められます。
特に、IPアドレス・サブネットマスク・ルーティングといったネットワークの基礎的な概念に関する理解が必要です。
さらにネットワーク機器(ルーター・スイッチ・ハブなど)の仕組みや役割についても知識を持っていることが重要です。
ヘルプデスクでは、自社製品やサービスに関する深い知識を持つことが求められます。
多くの企業では、用意されたマニュアルに基づいて対応を行いますが、迅速に最適なサポートを行うためには自身の深い理解が欠かせません。
担当する範囲に応じて日々学習し続けるようにしましょう。
ヘルプデスク担当者には、コミュニケーションスキルも必要です。
顧客の知識レベルに関わらず、スムーズに情報を伝え、問題を迅速に解決するためには、専門用語や技術的な内容をわかりやすく伝えるスキルが求められます。
問い合わせの中にはクレームが含まれることもありますが、顧客の声に耳を傾け、丁寧なコミュニケーションを心がけることで、信頼関係の構築に繋がります。
コミュニケーション能力と併せてビジネスマナーの習得も必要です。
電話やメールでの対応時に、相手に失礼のない対応をすることは、企業全体のイメージを守るためにも重要です。
社内・社外に関係なく、お互いが気持ち良くコミュニケーションを取るためにも、ビジネスマナーは身につけておきましょう。
ヘルプデスクは、ITシステムやサービスの基礎知識を学びながらキャリアを積み上げていくことができる職種です。
例えば、下記のようなキャリアパスがあります。
テクニカルサポート | より専門的な技術サポートを行う |
システムエンジニア | システムの設計・開発・運用など、より高度で技術的なスキルを必要とする |
インフラエンジニア | サーバーやネットワークなど、ITインフラの構築や運用管理に関わる |
ネットワークエンジニア | ネットワークの設計・構築・運用・トラブルシューティングに特化する |
サーバーエンジニア | サーバーの管理・運用・セキュリティ対策に関わる |
フロントエンジニア | ウェブアプリケーションのユーザーインターフェースの設計・開発を担当する |
バックエンドエンジニア プログラマー |
システムやアプリケーションのサーバーサイドで動作するプログラムやロジックを開発する |
最初は一次対応のみ担当するというケースから始まることも多いですが、業務や資格取得を通して、必要な知識やスキルを深めていけばキャリアアップに繋げられます。
企業でのAI(人工知能)導入が進む昨今、ヘルプデスク業務にも大きな変化が訪れています。
特にチャットボットや自動応答システムの普及により、問い合わせに対する応答速度が大きく向上しました。
AIツールは質問に対して即座に回答ができるため、オペレーターの負担を軽減し、24時間365日サポートを提供することが可能となります。
AIはあくまで補助的な役割であり、最終的な問題解決には人間の知見やスキルが欠かせませんが、ヘルプデスクの業務効率を大幅に向上させてくれるでしょう。
ヘルプデスクとは何か、役立つ主な資格と勉強方法、求められるスキルや知見について解説してきました。
技術的な問い合わせに対応しながら、知識とスキルを高めていけば、より専門的な職種へのキャリアアップに繋げられます。
現在は、AIの導入が進み、業務の効率化が進んでいる一面もあるため、ヘルプデスクに興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。
画像出典元:O-DAN
サービスデスクとヘルプデスクの違いは?業務内容の比較や「SPOC」の役割を解説
ヘルプデスク業務を効率化する方法とは?今すぐ使える施策や役立つツールも紹介
テクニカルサポートの仕事内容とは?活かせるスキルや「きつい」と言われる理由を解説
【問い合わせメールの返信文例集】書き方と基本ルール
社内FAQシステムとは?設置メリット5つと上手な活用ポイント
カスタマーサポートとは?仕事内容や適性、顧客満足度アップの秘訣
社内ヘルプデスクとは?役割や設置メリット・導入方法について紹介
ヘルプデスクをアウトソーシングするメリットとは?費用相場も解説!
顧客対応の質が満足度の決定打?状況別対応方法と重要ポイント
ヘルプデスクとは?業務内容・スキル・やりがい・将来性を徹底解説!