経費で落とせるもの20科目!経費計上のメリット・デメリットも解説

経費で落とせるもの20科目!経費計上のメリット・デメリットも解説

記事更新日: 2023/04/21

執筆: 高浪健司

事業収益を得る目的で支払ったお金は、基本的に経費で落とすことができます。

しかしながら、なんでもかんでも経費で落とせるわけではなく、勘定科目に沿って適切に処理しなければなりません

経費について正しく理解し、賢く使うことで節税対策につながり、企業存続にも有効です。

本記事では、経費で落とせる20科目を紹介すると共に、経費で落とすメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説していきます。

経費で落とせるものとは

経費には一定の規定があり、きちんと計上することで節税につながる一方で、税務署からペナルティが課せられる可能性もあります。

経費について正しく理解することは、企業活動をおこなううえでとても重要です。

経費への理解を深め、適切な経費計上を心がけましょう。

そもそも経費とは?

経費とは、事業をおこなう際に必要となる費用のことです。

たとえば、出張時の交通費や宿泊代は経費になりますし、商品の仕入れにかかった費用、文房具といった消耗品なども経費として計上できます。

業務遂行に必要となる費用はさまざまで、かかった経費はそれぞれ勘定科目ごとに管理しなければなりません

「経費で落とす」の意味

ビジネスの場において、「経費で落とす」という言葉をよく耳にするかと思います。

この「経費で落とす」とは、「仕事のために使ったお金を、経費として計上する」といった意味です。

たとえば、クライアントと仕事の打ち合わせを兼ねて、カフェで飲食したとしましょう。

このような飲食は、仕事の打ち合わせを伴ったものなので、かかった飲食代は経費で落とせます。

しかしながら、これが単に食事をすることが目的となる場合は経費で落とせません。

なぜなら、業務上の飲食ではなく個人的な食事であり、生活費となるからです。

判断基準は事業運営に関係あるかどうか

「これは経費として認められるのか認められないのか」など、経費になるか否かについて、判断に迷うケースもあるでしょう。

経費としての判断基準は、章タイトルにもあるように、その支出が「事業運営に関係しているかどうか」です。

同じ飲食をした場合でも、事業関連性があれば経費になりますし、プライベートで事業関連性がなければ経費になりません。

このように、「誰と、どのような目的で飲食したか」などの理由によって、経費になるかならないかが変わります。

経費計上においては、税務署から指摘された場合、事業との関連性が明確に説明・証明できることが非常に重要なのです。

経費で落とせるもの20科目

支払いを経費で落とした場合、それぞれ勘定科目ごとに仕訳しなければなりません。

仕訳で使う勘定科目は、実に200科目ほど存在するなど、とても多くの種類があります。

以下は、経費で落とした際によく使う、20種類の代表的な勘定科目です。

経費に分類される代表的な勘定科目
地代家賃 接待交際費 租税公課 給与賃金
水道光熱費 旅費交通費 修繕費 消耗品費
通信費 広告宣伝費 福利厚生費 外注工費
減価償却費 損害保険料 会議費 支払い手数料
新聞図書費 荷造運賃 雑費 寄付金


どのような費用なのか、内容をそれぞれ解説します。

1. 地代家賃

店舗やオフィス、倉庫など、事業をおこなうために借りた土地や建物の賃料です。

自宅の一室をオフィスとする場合、家事按分をおこなうことで、家賃・水道光熱費・通信費などの費用を経費で落とせます。

2. 接待交際費

得意先や仕入れ先といった、事業関係者に対する食事や謝礼・お中元・お歳暮などの費用です。

事業とは関係のない人との食事や、1人あたり5,000円以下の会食、個人的なお中元・お歳暮などは、これに当てはまらないので注意が必要です。

3. 租税公課

事業に関連する税金の支払いや、行政機関への手数料など公的な費用を計上する勘定科目です

租税とは

国や地方公共団体に納付する税金のことで、対象となるおもな税金は、以下のとおりです。

租税の対象となる代表的な税金
不動産取得税 固定資産税 自動車税(軽自動車税)
登録免許税 印紙税 消費税(税込方式)
事業税 事業所税 都市計画税

公課とは

国や地方公共団体から課せられる交付金や会費などの公的な負担金で、おもに以下のものが対象です。

公課の対象となるもの
  • 住民票や印鑑証明書、納税証明書など、各種証明証の発行手数料
  • その他、行政サービスに対する手数料
  • 商工会や同業者組合などの会費もしくは組合費 など

4. 給与賃金

従業員(パート・アルバイト含む)の給料や、残業代など各種手当の支払いを経費処理する際に使う勘定科目です。

ただし、雇っている従業員が家族の場合は、一般の従業員ではなく「専従者」となるため、原則として経費計上できません。

家族の給与を経費で落とす場合は、「事業専従者」とすることで可能となります。

5. 水道光熱費

事業をおこなううえで必要とされる、水道代・電気代・ガス代などの利用料を経費で落とす際に使います。

ただし、自宅兼事務所の場合、経費にできるのは、原則として業務で使用した水道光熱費だけです

そのため、使用した分をプライベートと業務とで分ける必要があり、それぞれ分けることを家事按分といいます。

家事按分の割合については、とくに法律で基準が定められているわけではありません。

仕事で使用した日数や時間などで、基準をみずから明確にしておくことが必要です。

6. 旅費交通費

出張など、通常の勤務地以外で業務をおこなう際にかかる交通費や宿泊費を、旅費交通費として経費で落とせます。

出張中の交通費・宿泊費・食事代・手当など、旅費交通費に該当する範囲は広いですが、いずれも社内の旅費規程に基づいて処理しなければなりません。

なお、通勤や移動など、近距離の移動の場合は、旅費交通費ではなく交通費に該当するため、混同しないようにしましょう。

7. 修繕費

建物や機械など事業用資産の原状回復、あるいは維持管理のための支出を、修繕費として経費で落とすことができます。

修繕費として認められるのは、あくまで通常の維持管理もしくは原状回復に関してです。

建物の用途変更による模様替えや、機械の性能や品質を高める部品交換など、資産価値を増加させるような支出は、修繕費として認められません。

8. 消耗品費

耐用年数が1年未満、あるいは取得価格が10万円未満の備品を購入した際、消耗品費として経費で落とすことができます。

コピー用紙や文房具などの事務用品、ペンチやドライバーなどの工具類、パソコンやタブレットといった精密機器も10万円未満であれば消耗品です。

9. 通信費

業務で使用しているインターネット回線や固定・携帯電話など通信に関する費用で、切手代や郵便代・書留代など郵便料金も含まれます

自宅兼事務所の場合、仕事とプライベートで共有するケースがありますが、家賃按分と同様に割合を計算し、事業用のみを通信費にしましょう。

10. 広告宣伝費

不特定多数の消費者に対し、商品やサービスを宣伝するために必要となる費用です。

チラシやパンフレット・テレビCM・インターネット広告・新聞・屋外広告のほか、ホームページの制作費なども広告宣伝費として計上できます。

11. 福利厚生費

給料や賞与とは別に、企業が従業員のために支払う費用のことです。

おもに社員旅行や忘年会、新年会などのレクリエーション費用や、健康診断、通勤費などが福利厚生費として該当します。

なお、福利厚生費として経費計上する際は、

  • 福利厚生の目的に沿った内容であること
  • 内容が常識の範囲内であるほか、妥当な金額であること
  • 全従業員が平等に利用できること

このように、一定の条件を満たす必要があります。

12. 外注工費

業務委託など、外部に仕事を発注した際に支払う費用のことを指します。

たとえば、Webサイトの制作やシステム開発を依頼したり、清掃業者に社内の清掃を依頼したりするなどの費用が体表的です。

外部に仕事を発注した際、取引先が個人事業主やフリーランスの場合は源泉徴収をおこなう必要があります。

なお、取引先が法人の場合は、源泉徴収をおこなう必要はありません。

13. 減価償却費

車両・建物・機械など固定資産を取得した際、かかる費用をその年の経費にせず、耐用年数に応じて分割で計上するときに減価償却費が使われます

減価償却費にできるのは、原則として耐用年数が1年以上で取得価格が10万円以上、さらに価値が減少していく固定資産が対象です。

14. 損害保険料

オフィスや店舗、営業車両など、事業用のモノに対してかける保険料を、損害保険料として経費で落とせます。

経費にできる保険料としては、「火災保険・地震保険・自動車保険」が代表的です。

一方、事業者本人の生命保険や、自宅兼事務所ではない自宅の火災・地震保険、プライベートで使用する車両の自動車保険は経費にできません。

15. 会議費

社内の会議や取引先との打ち合わせなどでかかった費用を、会議費として経費にすることができます。

経費にできるのは、会議をおこなう会場の使用料や、会議で使う資料・消耗品、弁当などの飲食費が代表的です。

なお、費用が1人あたり5,000円以上になると会議費ではなく交際費になります。

会議費と交際費は混同しやすいので気をつけましょう。

16. 支払い手数料

事業運営で発生する、代金の振込手数料や、税理士・弁護士へ支払う報酬などを、支払い手数料として経費で落とせます。

具体的な費用としては、「振込手数料・仲介手数料・報酬(相談料)・登録手数料・解約手数料」などが代表的です。

その他、支払い手数料として経費処理できる費用は多岐にわたります。

17. 新聞図書費

事業に関連した書籍や新聞、雑誌などの購入で発生した費用を、新聞図書費として経費で落とすことができます。

事業活動に役立てるための有料サイトの登録料・会員費や、人材育成に使用するためのDVDの購入費なども対象です。

事業運営に関係のない書籍などの購入は、新聞図書費で計上できません。

18. 荷造運賃

商品などの発送にかかる発送費用や、荷造りで必要となる梱包資材費用を、荷造運賃として経費で落とせます。

荷造運賃は原則として消費税の課税対象です。

しかしながら、商品を海外に発送する場合は免税となり、消費税の対象外となるので注意してください。

また、荷造運賃は「消耗品費・通信費」と混同しやすい科目でもあるので、経費処理をおこなう際は気をつけましょう。

19. 雑費

業務上の費用で、どの勘定科目にあてはまらない場合に雑費として処理します。

費用が少額で、一時的かつ重要度の低い場合に用いられるのが一般的です。

たとえば、年一回程度の清掃依頼やクリーニング代・ゴミの処分費用・お礼代・少額の解約違約金などに使われています。

一時的ではなく、今後も高い頻度で使うと思われるものに対しては、勘定科目を新しく作成するようにしましょう。

20. 寄付金

組織や団体に対して見返りを求めず、金銭や資産を相手に贈与する際に用いる経費です。

なお、寄付金には一定の制限が設けられており、種類に応じて全額経費になるものと、一部が経費になるものとが定められています。

日本赤十字社(財務大臣指定のもの)など、国または地方公益団体に対する寄付は、全額経費の対象です。

一方で、認定NPO法人や政治団体などへの寄付は、一定の限度額までが経費となります。

寄付金は種類ごとに「全額経費・一部経費」が異なるほか、損金算入限度額の把握も難しいため、迷ったら専門家に相談するようにしましょう。

経費で落とすメリット

事業に必要となる費用を経費で落とすことで得られる最大のメリットは節税対策です。

なお、経費のメリットは、個人事業主と法人とで少し違いがありますので、それぞれのメリットを見てみましょう。

大きなメリットは節税

利益が上がると、それに伴い納める税金も上がります。

税金の対象となるのは、企業の収益ではなく、あくまで利益に対してです。

収益から経費を差し引いた額が利益となるため、経費の額が増えるほど利益は下がります。

つまり、経費で落とすことによって利益が減少し、納める税金額も安くなるので、結果的に節税につながるというわけです。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、事業に関連する支出であれば金額に上限なく、すべて経費として計上できるのが大きなメリットです。

法人に比べ、経費にできる範囲は狭まりますが、経費を適切に計上することで、支払う税金を安く抑えられます。

ただし、事業の売上に対して経費の金額が多すぎると、税務署調査の対象となる可能性があるため、収益とのバランスを保つことが重要です。

法人の場合

個人事業主に比べて経費化できる範囲が広く、節税効果も大きいところがメリットです。

とくに、自身の給与や賞与などもすべて経費にできるところは、法人ならではのメリットといえるでしょう。

また、賃貸物件(自宅)を社宅扱いにすることで、家賃の大半を経費にできたり、福利厚生費を経費にできたりと、さまざまな費用が経費にできます。

事業利益が増えるほど、法人の節税メリットは大きいです。

経費で落とすデメリット

節税効果という大きなメリットがある一方で、経費で落とすことによっていくつかデメリットもあります。

以下は、経費で落とす際に考えられる3つのデメリットです。

領収書の管理や保存など

経費として処理した場合、領収書やレシートなどの書類を保管しておく必要があります。

保管期間は、基本的に領収書を受領したときから7年間です

領収書がないと経費であることの証明ができず、場合によっては追徴課税を課せられる可能性も否定できません。

経費で落とす機会が増えるほど、管理や保存も煩雑になってくるため手間がかかり、紛失などのリスクも発生しやすくなります。

経費が膨らみすぎて赤字になることも

前述のとおり、経費が増えることによって節税につなげることができます。

しかしながら、経費は損金ですので、経費が増えれば出費も増えるということ。

つまり、経費が膨らみすぎると、たとえ節税につながったとしても、赤字になってしまう可能性もあるのです。

赤字決算が続くと金融機関などからの信用がなくなり、融資が受けられなくなるなど、倒産のリスクが高まります。

経費としてふさわしくないと脱税を疑われる

さまざまな支払いを経費で落とすことによって節税対策にも有効です。

しかしながら、あまりに多くの経費を計上したり、経費としてふさわしくないものまで経費に計上したりしていると、税務署から脱税を疑われる可能性があります

経費で落とす場合は、経費として適切であるかをきちんと判断しながら、おこなうようにしましょう。

経費で落とす時の注意点

経費で落とす際は、さまざまなことに注意しなければなりません。

なかでも、以下の4つは、経費で落とす際、とくに注意すべき点ですので、きちんと確認しておくようにしましょう。

不正計上はしない

実際には経費を支出していないにも関わらず、あたかも経費を支出したかのように装い、会社に経費を計上するのは詐欺行為です。

経費の不正行為でもっとも多いのが、交通費や接待費だとされています。

経費の不正計上をしない・させないためにも、経費の扱いに関するルールを設定し、周知徹底に努めることが重要です

領収書等の管理をする

領収書やレシートは、商品・サービスに対して金銭を支払ったことを証明する非常に大切な書類です。

なお、領収書やレシートの保管期間に関しては、法人の場合で7年間、個人事業主の場合で5〜7年間と定められています。

電車やバスの運賃や、自動販売機で飲み物を購入した場合など、領収書が発行されないケースもあるでしょう。

そうした場合は、出金伝票を作成して保管・管理するのが好ましいです。

経費計上のタイミング

会計処理の「現金主義」か「発生主義」かによって、経費計上におけるタイミングが少々異なります。

タイミングの違いとしては、以下のとおりです。

現金主義

商品・サービスの受け取りに関係なく、支出が発生したタイミングで経費の計上がおこなわれます。

発生主義

1. 商品を購入した場合
代金の支払いに関係なく、注文した商品が納品されたタイミングで経費として計上します。

2. サービスを受けた場合
商品を購入した場合と同様で、サービスを受けた場合も、サービスの提供が完了したタイミングで経費として計上します。

3. クレジットカード決済の場合
クレジットカードで決済をしたタイミングで経費の計上をおこないます。
クレジットカードの引き落としが翌月であっても、経費計上は、あくまで決済したタイミングです。

このように、会計主義によって経費計上のタイミングも異なりますので、適切なタイミングで計上するようにしましょう。

確定申告をしよう!

個人事業主やフリーランスの場合、事業所得(収益から経費を差し引いた合計金額)が、年間48万円以下であれば、確定申告する必要はありません。

それ以外の確定申告の義務がある場合は、期限内にきちんと確定申告するようにしましょう。

確定申告の期限までに申告や納税を済ませないと、加算税や延滞税など申告漏れによるペナルティが課せられることがあるので注意が必要です

経費でよくある勘違い

経費を利用するためには、経費について正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、経費に関してよくある勘違いを2つ紹介するので、きちんと確認しておきましょう。

お金が返ってくるわけではない

経費で落とせば、お金が返ってくると勘違いしているひとが多いようです。

会社員の場合、業務で支払った費用は全額返金されますが、これは会社が支払っているだけで、会社に対して返金される制度ではありません。

つまり、経費で落とせば落とすほど会社からお金が出ていくということで、お金が返ってくるわけではないのです

領収書をなくしたら経費は出ない?

業務に関係する支払いを経費で落とす場合、基本的に領収書やレシートなどの支払いを証明する書類が必要です。

しかしながら、ときに紛失してしまうこともあるでしょう。

万が一、領収書を紛失してしまった場合でも、出金伝票に「支払先・日付・但し書き・金額」を記録することで、経費として計上することが可能です。

まとめ

経費で落とすということは、「業務のために支払ったお金を、経費として計上する」ことです。

経費で落とすことで利益が減少し、結果的に節税につながります。

しかしながら、経費には「落とせるもの・落とせないもの」があり、なんでもかんでも経費にできるわけではありません。

経費処理を適切におこなわないと税務調査の対象となり、ペナルティを課せられる可能性もあるため注意が必要です。

「経費で落とす」ということの意味を正しく理解し、賢い企業経営を目指しましょう。

画像出典元:O-DAN

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