国主導の働き方改革による影響で、副業や兼業を容認する動きが活発になっています。
副業や兼業は、取り組み方によって従業員と会社の両方にメリットがあるため、今後さらに広まるでしょう。
今回の記事では、副業や兼業のメリットや注意点、具体的な導入事例を紹介します。
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「副業」「兼業」は、言葉が似ていますが意味はそれぞれで多少異なります。
副業と兼業の違いは以下の通りです。
多くの人は、会社に通う形で「本業」に就いているかと思います。
副業とは、会社などの本業を持つ傍らで別の仕事に取り組むことを指しています。
本業に時間を投下しメイン収入を確保しつつ、隙間時間を用いて副業で稼ぐ、というイメージです。
副業の場合、本業と比較しても「稼ぐ金額や費やす時間が少ない」というケースが多いでしょう。
副業は、本業のサブ的立ち回りである意味合いが強いです。
一方で、兼業は「同程度の職務を同時並行して取り組む」という意味合いで使われることが多いです。
例えば「会社員として働きつつ自分の会社も立ち上げる」などのケースが兼業に該当します。
兼業の場合、本業と比較しても「収入や時間に大きな差がない」というケースが多いでしょう。
副業と兼業の使い方には、厳密な決まりがあるわけではありません。
あえて副業と兼業の相違点を挙げるのであれば「仕事に対するスタンスの違い」が考えられます。
副業の場合、あくまでも本業がメインで「隙間時間に収入の補強として取り組むもの」という捉え方をする人が多いです。
一方で、兼業の場合は「メインの仕事が2つ以上ある」という捉え方をする人が多いです。
「本業以外で会社を立ち上げ事業成長に向けた戦略を練る」というのは、隙間時間ではなかなかできません。
しかし時間がかかる分、軌道に乗れば「お小遣い程度」といわず大きな収入の柱になることも期待できます。
副業・兼業には「会社員として働く」という前提があります。
一方でフリーランスの場合は、特定の企業や組織に所属せず個人事業主として仕事を請け負う働き方です。
フリーランスは会社員ではないため、基本的に自身の稼働量が減ってしまうと収入の大幅な減少につながります。
しかし、自分の時間をすべて事業に投下できるため、会社員よりも収入を大きく伸ばせる可能性も秘めています。
「副業や兼業を選ぶか」「フリーランスを選ぶか」については、自分の得意分野や目指す収入などを基準に決めるとよいでしょう。
副業や兼業は、本業以外に仕事を行う必要があるため、多少なりとも本人に労力がかかります。
労力がかかる中でも副業や兼業が増えている理由として、以下の2点が挙げられます。
「モデル就業規則」とは、厚労省が発表している働き方に対しての方針をまとめた文書を指します。
従来のモデル就業規則には「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言があり、副業などに消極的でした。
しかし、2018年1月にモデル就業規則が改定され、副業や兼業を許容する方針に変更されています。
モデル就業規則は2021年4月にも改定されていますが、副業や兼業を認める考え方に変わりはありません。
国として本業以外の働き方を推奨する動きが活発になったことで、副業や兼業にチャレンジする人も増えているといえるでしょう。
本来であれば、ひとつの会社から十分な給料を受け取って生活できることが理想です。
しかし、日本の賃金上昇率は約30年間ほぼ横ばいで、先進国の中で下位クラスといわれています。
日本を含めた主な国の具体的な実質賃金伸び率(1991年〜2019年)は以下の通りです。
英国:1.48倍
米国:1.41倍
フランス:1.34倍
ドイツ:1.34倍
日本:1.05倍
参考:賃金・人的資本に関するデータ集
賃金の上昇が期待できない中、本業一本で生活するのは現実的に苦しい人も多いでしょう。
そのため、生活の苦しさを打破するために副業や兼業という形でサブ的な収入を得ようとする人が増えていることも事実です。
副業や兼業をするメリットは以下の通りです。
本業以外にも仕事を確保するので、必然的に収入が増えます。
現在の日本は賃金上昇が見込めない上、年功序列の考え方も根強いため「給料が上がるのは何年も勤続してから」というケースが多いです。
本業だけでは収入アップが見込めない中、副業や兼業で収入を増やせるのは大きな魅力です。
特に副業や兼業の場合は、自分の努力次第で収入の上げ幅を増大させることも可能。
本業以上の収入を得られる可能性もあるため、大きく稼ぎたい人にとっては夢があるといえるでしょう。
本業一本で働く場合、関わる人物や得られる経験は必然的に限られます。
定年まで会社員として働けるのであれば、会社関係の関わりだけでも問題ないかもしれません。
しかし現在は、定年まで働ける保証はなく、自ら新しい経験や知識を増やしていくことが必要になりつつあります。
副業や兼業で新しい業界の知識や人脈を得ることで、視野が広がり、他の選択肢も考えられるようになります。
様々な選択肢を持つことで、より自分にマッチする転職先の発見につながるかもしれません。
視野を広げ、自分の価値観や考え方を改善することは、本業への取り組み方にもよい影響を与えるでしょう。
副業や兼業では、本業とは別ジャンルの仕事に取り組むことがあります。
例えば「本業は営業・副業はアフィリエイトサイト運営」などのケースです。
副業で別ジャンルの知見を溜めることはスキルアップにつながり、将来的な自分の選択肢を増やすことが期待できます。
本業とは別ジャンルの知見を溜めてスキルアップができれば、自分ができる業務の幅が広がったり、転職先の選択肢も増やせるでしょう。
場合によってはスキルと収入を伸ばして本格的に自分の事業を立ち上げることも可能です。
スキルを磨くことで自分の可能性を広げられるというのは大きな魅力といえます。
副業や兼業は収入やスキル面でよい影響を与える一方、以下のようなデメリットもあります。
副業や兼業するのであれば、本業と合わせて時間を使わざるを得ません。
稼働時間が増えるため、無理をすると過労で心身に悪影響を与える可能性がある点に注意しましょう。
いくら収入が増えても、心身に悪影響が出るほど長時間働くことは避けるべきです。
体調を崩してしまえば、収入を自由に使う時間も確保できませんし、場合によっては心身の治療に使わなければならないケースもあるでしょう。
心身に悪影響が出れば、本業のパフォーマンスも低下する可能性が高いです。
きちんと休息を取らず働き続けていたら集中力は保てません。
本業へのパフォーマンスに悪影響が出ると、会社での立ち位置や今後の出世などに響くこともあります。
別の側面から考えると、副業や兼業の収入が大きくなりすぎて本業へのやる気を失うケースもあり得ます。
会社員として給料を受け取っている以上、企業に求められているラインを突破する気持ちは持っておきましょう。
副業や兼業で「年間20万円以上」の所得を獲得している場合は確定申告が必要です。
会社員の場合は、年末調整や日々の給与からの差し引きによって適切な税金額に調整されています。
しかし副業や兼業で発生した収入については、会社側での支払い手続きはできません。
住民税も別途で支払う必要が発生します。
確定申告を忘れると追徴課税となる場合もあるので、年間20万円以上の稼ぎがある人は注意しましょう。
従業員に対して副業や兼業を認めることは、会社側にもメリットがあります。
副業や兼業をしている人の中には、以下のような考えを持つ人もいます。
上記のような従業員の希望を受け入れる会社は、社員にも好印象を与えます。
会社に対して好印象を抱いてもらえれば、従業員の離職率低下も期待できるでしょう。
加えて、副業や兼業を容認している会社は従業員の選択肢を増やしているため、外部からのイメージアップにも繋がります。
外部からの印象が上がれば、副業をしたい優秀な人材が入社してくる可能性も高まります。
ひとつの会社内で獲得できるスキルや経験には限界があります。
会社としても、従業員の視野が広がり、本業でのパフォーマンス向上につながることは理想といえます。
副業や兼業では従業員が別ジャンルの仕事に挑戦できるため、溜めた知見を会社での仕事に生かしてもらうことが期待できます。
会社としては、従業員の育成につながるうえ、自社の売り上げ向上にも期待でき一石二鳥です。
従業員は副業や兼業に取り組むことで、新たな人脈や情報を得る場合もあります。
従業員の広げた人脈が自社の事業と親和性が高い場合、新たなコラボを生み出すこともあるでしょう。
また、新たな情報を得たり経験をした社員から、いつもとは違う意見が出れば、マンネリ化していた事業や業務が活性化し始めるかもしれません。
本業以外の仕事を認めることで最終的に会社の利益につながるのであれば、組織としても嬉しいですよね。
副業や兼業は企業にもメリットはありますが、以下に注意しなければなりません。
働く場所が増える以上、従業員の労働時間および健康管理にも気を付けなければなりません。
副業や兼業は従業員の意思で行うため、完全な管理は物理的に不可能です。
しかし、厚生労働省が公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」においては、副業や兼業も含めて企業側にある程度の管理義務が存在します。
従業員の健康状態を加味し、状況に応じて労働量の調節をするなど、個人に合わせた配慮は欠かせないでしょう。
また管理義務に加えて、労働基準法第38条において定められている「1日8時間・1週間で40時間」の規約も守らなければなりません。
労働時間は、本業と副業・兼業を合算した時間となるため、オーバーワークになっていないか管理する必要があります。
場合によっては、企業と従業員の間で「36(サブロク)協定」を結び、時間外労働を可能とするための合意を得ることが必要になるでしょう。
職務専念義務とは、「仕事中は本来の業務に集中すべきである」と定めたものを指します。
明確に法律で縛られるわけではありませんが、意識としては当然「本業の間は本業に集中する義務」が果たされなければなりません。
しかし、副業や兼業による疲労から従業員が本業に集中できない可能性もあります。
場合によっては、本業の時間を副業や兼業に充てる人がいるかもしれません。
上記の行為が必ず法律違反というわけではありませんが、仕事を掛け持ちすると本業に集中してもらえないリスクもあるでしょう。
企業によっては、副業や兼業を始める前に従業員が会社へ申請するケースもあります。
制度があれば会社としても従業員の動きを把握できるため安心できるでしょう。
申請された副業の内容を見て、自社とのコラボなどを考えられる可能性もあります。
ただし、制度を運用する際は従業員への周知が必要です。
制度として備わっていても従業員に周知されていなければ、後からトラブルに発展しかねません。
すべては難しいかもしれませんが、可能な限り従業員の副業先での状況は把握すべきです。
例えば悪質なケースでは、従業員が本業で培った機密情報を副業先で転用するケースも考えられます。
組織の機密情報を活用して自分の副業における利益を生み出すのは道義に反する行為です。
万が一外部へ機密情報が漏れ出せば、会社の責任問題にも発展します。
大きなトラブルを防ぐためにも、可能な限り従業員の副業状況は把握しておくべきでしょう。
時代の流れを受け、下記のように副業を解禁している企業も増加しています。
画像出典:ロート製薬公式サイト
ロート製薬株式会社は創業100年を超える老舗企業ですが、新しい時代の流れに合わせて副業も推奨しています。
社外での挑戦はもちろん、社内においても「社内ダブルジョブ」という制度で従業員のスキルアップを支援しています。
社内ダブルジョブでは、就業時間内に複数部署の業務を兼任できる制度です。
ある意味「社内での副業」を認めることで、従業員のスキルアップが期待できます。
画像出典:「コニカミノルタ株式会社」公式サイト
コニカミノルタ株式会社では、「イノベーション創出のための兼業・副業の解禁」を活用して副業や兼業を容認しています。
会社へ申請し内容が認められれば、スキルアップの名目で他社での勤務も可能になります。
会社のためにスキルアップしたい従業員を後押しできる素晴らしい制度といえるでしょう。
画像出典:「株式会社エンファクトリー」公式サイト
株式会社エンファクトリーは、「専業禁止」を会社として掲げている珍しい組織です。
もちろん「必ず副業しなければいけない」とカッチリ縛られているわけではありません。
ただ、会社としてパラレルワーカーを後押しする制度を設けており、「自分で稼ぐ力」を身につけることを積極的に推奨しています。
働き方改革の流れもあり、副業や兼業は今後も多くの人に浸透していくでしょう。
従業員側・企業側共にメリットも大きいため、「新しい考えだから」と否定せず積極的に導入すると、自分の成長や自社の発展につながります。
画像出典元:pixabay、unsplash
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