起業を考えている方、またはすでに法人登記を終えてほっとしている方は自社の業種に許認可が必要かどうかの確認はお済でしょうか。
申請が下りるまでの期間、必要書類、申請先など、予め確認をしておくと安心です。
また、法人でないと許可されない業種もあります。まずは個人事業主ではじめようと考えている方は特に注意が必要です。
本記事では、許認可が必要な業種とその手続き方法について解説しています。
このページの目次
許認可とは、特定の事業を行うために行政機関に対して手続きを取って得る許可(規制の意味もある)等のことをいいます。
許認可が必要な業種で手続きをしないで営業をしていると刑事罰を科されることがあります。
許認可といわれる名称には、許可・認可・免許・承認・認定・検査・登録・届出・報告など数多くあります。
複数種類ある許認可の名称のうち、主なものとその内容は以下の通りです。
種類 | 内容 |
届出 | 届出のみで営業ができます。 |
登録 | 定められた名簿に登録されることが必要です。 |
認可 | 定められた条件を満たすことが必要です。 |
許可 | 内容の審査に合格することが必要です。 |
免許 | 特定の資格を持っていることが必要で、定められた要件を満たす必要があります。 |
共通することはいずれの許認可も管轄の行政機関に届出を行わなければならないということです。
許認可が必要な業種は数多くありますが、そのうち主な業種一覧は以下の通りです。
業種 | 内容 | 許認可の種類 |
美容業 | 美容室の経営 | 届出 |
理容業 | 理容室の経営 | 届出 |
クリーニング業 | クリーニング店の経営 | 届出 |
飲食店業 | レストラン経営 | 許可 |
旅館業 | 宿泊料を受けて人を宿泊させる旅館の経営 | 許可 |
興行場運営業 | 映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設の運営 | 許可 |
墓地経営業 | 墓地等の経営や管理 | 許可 |
業種 | 内容 | 許認可の種類 |
貸金業 | 事業者や消費者を対象に融資を行う(銀行等を除く) | 登録 |
旅行業 | 旅行に関する事業やサポートを行う旅行会社を運営 | 登録 |
電気工事業 | 送電線、配電盤などの電気工事を行う | 登録 |
建設業 | 建設工事の請負、建設会社の経営 | 許可 |
一般産業廃棄物処理業 | 事業活動に伴って生じた廃油、廃酸、廃アルカリなどの廃棄物を適正に処理 | 許可 |
医薬品製造販売業 | 自社で開発した医薬品や他に委託して製造した自社の医薬品などを販売 | 許可 |
宅地建物取引業 | 不動産業のうち売買や仲介といった取引 | 免許 |
業種 | 内容 | 許認可の種類 |
風俗営業 | 麻雀、ラウンジ、パチンコ、ゲームセンター・キャバレー・クラブなどを経営 | 許可 |
中古品販売業 | 中古の衣類や貴金属などの販売を扱う。リサイクルショップなど | 許可 |
質屋業 | 物品を質に取り、金銭を貸し付ける営業 | 許可 |
警備業 | 警察業務とは異なり、利用者の依頼と費用負担により依頼者の生命・身体・財産を守る | 認定 (公安委員会) |
業種 | 内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
米穀類販売業 | 米や雑穀の精米販売 | 登録 | 市区町村 |
酒類販売業 | 酒類の販売、酒屋経営 | 免許 | 税務署 |
職業紹介業 | 人材の紹介 | 許可 | 公共職業安定所 |
一般貸切旅客自動車運送事業 | タクシー、観光バス等の運行 | 許可 | 運輸局 |
上記の1~4の一覧表は主なものの抜粋になります。
この他にも、最初から大きな資金が必要な業種(不動産業や人材派遣業)や一定の事業所面積が必要な業種(製造工場)、法人でないと事業をすることができない業種(有料老人ホーム)もあります。
また、同じ「許可」が必要な業種でも、該当する法律によって期限があったり(道路旅客運送業)、期限がなかったり(他に分類されない卸売業/古物営業)と業種によって異なります。
届け出先が都道府県の場合には、地域によって条例があるため、条件が違うこともあるので注意が必要です。
各担当窓口ごとに具体的な業種を上げながら、必要な手続き方法とリンク先のHPを紹介します。
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
レストランの経営や飲食店、喫茶店、弁当販売など | 許可 | 保健所 |
許可を受けるには衛生管理責任者と防火管理者の資格が必要です。意外にも調理師免許はなくてもかまいません。
工程 | 備考 | |
1 | 事前相談 | ・施設の平面図を持参 ※取り扱う食品によって必要な設備が異なります |
2 | 許可申請 | ・営業開始日の2週間前までに申請 ・提出窓口は生活衛生課窓口 ※食品衛生責任者を決めておきます(他店舗との兼任は不可) |
3 | 設備検査 | ― |
4 | 許可証交付 | ― |
食品衛生法 第52条
また、地域によっては食品衛生法に定められた業種以外にも市区町村の条例で許可申請が必要な場合があります。
たとえば、長崎県佐世保市の場合、表の下の方に「長崎県食品衛生に関する条例による許可業種」とあります。このような点は各都道府県によって異なるので、よく確認しましょう。
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
美容室、理容室の経営 | 許可 | 保健所 |
個人経営、法人経営ともに保健所の許可が必要です。
平成28年4月から、一定の要件を満たすことによって美容室と理容室を同一の場所で開設することが可能になりました。
工程 | 備考 | |
1 | 事前相談 |
・施設の平面図などを持参 |
2 | 許可申請 | ※開設の届出から営業開始まで1週間程度必要 |
3 | 設備検査 | ― |
4 | 許可証交付 | ― |
美容師法・理容師法
東京都福祉保健局|美容所の開設に関する基準等について
設置する設備にかなりの費用がかかるので、設備を作ってから営業許可が下りなかったとなると大変です。工事着工前の事前相談は欠かせません。
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
クリーニング店の経営 | 届出 | 保健所 |
実際にお店でクリーニング業務を行う場合も、取次店の場合も届出が必要です。
無店舗取次店とは、クリーニング所を開設しないで、洗たく物の受取及び引渡しをする場合です。
取次店ではクリーニング師はいなくても営業できます。
クリーニング師とは:
クリーニング師は『クリーニング業法』に基づいてクリーニング店でアイロンがけ、しみ抜きなどを行う者で必ずクリーニング店に有資格者が1人必要です。洋服や着物を解かずに原型のまま丸洗いや染み抜き作業を行う現場に必ず一人いなければなりません。 染色補正だけを行う店舗は該当しません。
引用:ウィキペディア
工程 | 備考 | |
1 | 事前相談 | ・届出前(工事着工前)に保健所へ相談 ※クリーニング所(一般)については、消防、建築、都市計画、廃棄物の各担当行政機関にも併せて相談してください |
2 | 許可申請 | ※検査後、事務処理に1週間程度かかることがあるため、日程に余裕を持って届出してください |
3 | 設備検査 | ― |
クリーニング業法 第2条
クリーニング所を開設するためには、構造基準及び衛生管理の基準に適合することについて、保健所長の確認が必要です。
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
不動産業のうち売買や仲介といった取引 | 免許 | 都道府県免許 |
不動産業のうち、売買や仲都道府県免許介といった取引を行う業務で、街で見かける不動産屋さんの多くが該当します。
宅地建物取引士という国家試験の資格を有した者が在籍する必要があります。
店舗が同一都道府県内のみの場合は都道府県に許可申請を行い、他県にも支店がある場合には国土交通省の許可が必要になります。
事業開始時の資金は1,000万円以上必要です。
工程 | 備考 | |
1 | 事前相談 | ― |
2 | 許可申請 | ・大臣免許、都道府県知事免許ともに提出先窓口は、各都道府県宅地建物取引業免許事務担当課 ・提出書類一覧 |
3 | 設備検査 | ― |
4 | 許可証交付 | 免許有効期限は5年 ※引き続き継続する場合には更新手続きが必要です |
宅地建物取引業法 第3条
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
旅行業、旅行代理店の経営 | 登録 | 都道府県 |
報酬を得て旅行代理店の業務や個人で特定の人から依頼されて観光業務を行う場合には、観光庁長官又は都道府県知事に登録を受ける必要があります。
旅行業者等は、業務の範囲により、第1種旅行業者、第2種旅行業者、第3種旅行業者、地域限定旅行業者、旅行業者代理業者に区分されます。
登録を行う行政庁も異なります。
業務範囲が細かく分かれいるので、注意が必要です。
旅行業法 第2条及び第3条
民泊
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
民泊 | 届出 | 都道府県 |
旅館・民宿
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
旅館・民宿の経営 | 許可 | 都道府県 |
平成30年6月15日より民泊事業者は住宅宿泊事業者としての届出を行えば、住宅を宿泊サービスに提供できるようになりました。
民泊の届出形態としては3種類あります。個人、管理者、仲介業者です。それぞれ根拠条項が異なり、届出先が違います。
届出先は都道府県知事(政令指定都市の場合は各市など)です。各自治体でも条例を設けている場合があるので、実際に民泊を行う場所の法令を確認するようにしてください。
180日以上の営業をおこなう場合には、保健所を窓口として旅館業法の許可を得る必要があります。
旅館業の許可は各都道府県によって取得の要件が異なっているので、注意してください。
住宅宿泊事業法 第3条他、旅館業法3条
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
酒類の販売 | 免許 | 国税庁 |
酒類の販売免許は販売先や販売方法によって区分されています。通信販売小売業、一般種類小売業、酒類卸売業などそれぞれ手続きが分かれています。
お店を構えて、WEB販売もするには両方の免許が必要なこともあります。先に取得している免許によって手続きが異なります。
酒税法 第9条
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
リサイクルショップ | 許可 | 警察署 (公安委員会) |
中古の衣類や骨董、古物、貴金属などを取り扱うリサイクルショップをイメージしていただけるとわかりやすいです。開業する場合には、古物商許可申請が必要です。
申請先は業務を行っている店舗を管轄する警察署の防犯課や生活安全課です。
問い合わせの場合には、警察署の通常の電話番号にかけて内線でまわしてもらうとよいでしょう。
WEB上で取引をする場合もこの許可は必要です。その場合、法人や個人事業主の場合は登記上の本店の所在地、個人の場合は自宅の最寄りの警察署が申請先になります。
古物営業法 第3条
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
運転代行 | 認定 | 警察署 (公安委員会) |
運行代行業は、他人に代わって自動車を運転する役務を提供する業種です。
飲酒運転を避けるために始まった業種ですが、車社会となっている地方では今ではかかせない業種です。
顧客の自動車を運転するり場合は「第二種自動車運転免許」が必要になります。
自分がお酒を飲まないような方は向いているかもしれません。初期費用があまりかからないでしょう。
個人と法人で必要な書類が異なりますので、注意してしてください。
不明点については最寄りの警察署にお問合せ下さい。
自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律 第4条
業務内容 | 許認可の種類 | 申請先 |
労働者派遣業・職業紹介業 | 許可 | 労働局 |
事業所を管轄する都道府県の労働局で許可申請をします。
事業開始予定の2~3カ月前までに申請するようにします。派遣元責任者の講習を受けておく必要もあります。
派遣をすることができない職種もありますので、事前に確認をしておきましょう。
労働者派遣法 第5条第1項
営業をするにあたって、業種により許認可が必要になります。
法人登記が終わってから許認可の申請が通常の手順ですが、設備・備品の購入にあたり基準に該当する必要がある場合は事前相談を勧めていることもありますので、起業の計画の段階から手続きの有無を確認しておくのが効率的です。
事業の内容によっては複数の許認可が必要となるため、自社の事業にどの許認可が必要か判断するのは素人では難しい場合も多いです。申請漏れを防ぐためにも、各主務官公署または税理士などの専門家に事前に相談することをオススメします!
なお、税理士の探し方・選び方については以下の記事で解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
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