会社の決算期は会社設立時に決定するものですが、実際に事業が軌道に乗り始めてから「決算期をもう少し後にしておけばよかった」などと思う人も少なくないようです。
なぜなら、決算のタイミングが資金繰りに影響したり、うまくいくと税金対策になったりするので、決算期をいつにするかは実は意外と重要なことなのです。
決算期は変更することができます。しかしむやみに変更するものでもありません。
この記事では、決算期を変更する場合の手続き方法や変更する際に考えるべきポイントを詳しく説明します。
決算期を変更するにしても一回ですむように、決算期を変更するときのポイントをしっかりと把握しましょう。
このページの目次
決算期は、法人であれば会社の都合に合わせて設定することができ、事業を開始してからも自由に変更することが可能です。
では、そもそも決算期を変更する必要があるのはどのような場合でしょうか。
会社を立ち上げる際にしっかり検討して決算期を決めたという方が多いと思いますが、中には「キリがいいから」とか「ちょうど設立から1年後に設定した」など、あまり深く考えずに決めてしまったという方もいるようです。
そういった方は、もしかすると間違った決算期の設定で大きく損をしているかもしれません。
繁忙期と決算期がかぶっている場合、決算作業で本業がおろそかになり、本来得られたはずの売上を逃してしまいます。
また、大きな売上がでる期間の直後に決算期を設定していた場合、節税対策のための十分な期間をとれず、損をしてしまっている可能性があります。
このような事例に自分が当てはまらないか、決算期を上手に設定することができているかをしっかりと確認することをおすすめします。
では決算期を変更し、適切に決算期を設定するとどんなメリットがあるのでしょうか。
まず一つ目は、節税対策になるということです。
具体的に説明すると、例えば決算期の直前に大きな利益が見込めることがわかったとします。すると、利益を獲得してから決算までは残りわずかな時間しかないため、効果的な節税対策を行うことができず、結果的に法人税の税率が高くなってしまったなんていうことになりかねません。
この場合、法人税を余計に払わずに済む方法が「決算期の変更」です。
決算期を大きな売上がでる時期の前に変更します。すると、次の決算期まで1年近くあるので、その間にしっかり節税対策を行うことができるのです。
二つ目には、決算業務がしやすくなるという点です。
決算期には棚卸しや必要な書類の用意など決算業務にかなり手間がかかります。
例えば、繁忙期の直後に決算期を設定していた場合、基本的に繁忙期は忙しいので、繁忙期に決算に関わる事務作業に手がかかってしまい、本来の事業の方がおろそかになってしまうなんていうことにもなりかねません。
このような場合も、決算期をずらすことで問題を解消できます。
三つ目は、資金繰りを行いやすくできるというメリットです。。
例えば、会社の決算日が9月30日だったとします。
予期せず、7~9月の間に大きな売上がでる見込みがあった場合、法人税は決算日の2か月後の11月30日までには納税しなければなりません。
ただし、事業年度が始まって早い段階で決算期を6月に変更したとします。
変更後の事業年度は10月1日~6月末日となり、7~9月分は売上は来期に持ち越されることになります。これにより、11月に多額の納税が発生するのを割けることができるのです。
決算期を変更することによるデメリットはどんなことでしょうか。
決算期は登記事項でないため、手続きは比較的楽です。とはいえ、定款変更などの手続きが伴うのも事実。
決算期変更に手間と時間を費やすことになるというのが、デメリットの1つ目です。
決算期の変更は、決算期を今までより早めることしかできません。決算期を遅らせることはできません。
今期は7月から2月までの8ヶ月間
今期は7月から10月までの4ヶ月間
上の例をみれば分かるように、決算期変更をすると今期は必ず12ヶ月未満になります。
今期が短くなると、それだけ決算までの期間が短くなるので、決算業務の負担が増すことになります。
これが一度ならいいですが、2度や3度も変更するとなると、その負担がいかに大きいかは想像できるのではないでしょうか。
これは会社設立後、1期目あるいは2期目の会社に当てはまることです。
資本金の額が1,000万円未満の場合、基本的には2期まで消費税の納税が免除される決まりになっています。本当は細かな条件によって2期かどうかは変わるのですが、ここでは一旦おいておきます。
注意すべきなのが「2年」ではなく「2期」だということ。
先ほども設立したとおり、決算期を変更すると今期は12ヶ月未満となり、短くなります。
すると、決算期が短くなった分、消費税免除の期間も短くなるということが起こってしまうのです。
自分の会社が今消費税が免除されているのであれば、この可能性を頭に入れておくべきです。
なお、消費税免除の条件は以下の記事で詳しく解説しています。
決算期変更をするかどうか、また決算期をいつに変更するかを判断するにあたって考えるべきポイントを解説します。
決算期と繁忙期が重なっている場合は、決算期を変更を行うことで十分なメリットを得られるといえます。
決算期と繁忙期が重なっていると、せっかくの稼ぎ時に決算事務に時間を割くことになってしまいます。これは大変もったいないです。
繁忙期とずれるように、決算期を変更するとよいです。
もっというと、繁忙期の少し手前に決算期を設定するのがおすすめです。
繁忙期の前に決算期をおくことで、繁忙期の売上が期初に入ってくるため、その後の節税対策を行いやすくなります。
また決算期の2ヶ月の納税をキャッシュリッチな状態で迎えることができるからです。
決算期と繁忙期が重なってしまっているなどの事情がない限り、決算期変更はあまりおすすめしないのですが、もし変更するのであれば「変更後の今期の長さ」に注意しましょう。
というのも、先ほども説明したとおり、決算期変更後は今期が必ず12ヶ月未満になります。
決算期変更を行うタイミングによっては、半年後だったはずの決算が急に翌月になってしまう、なんてことも考えられます。
今決算変更して、決算事務や納税がきちんと行えるのかをきちんと考えてから決算変更を行うようにしましょう。
では、実際に決算期を変更する際の手続きをご紹介します。
決算期を変更する際には、定款に記載している事業年度の変更が発生するため、株主総会の特別決議が必要です。急いで変更する場合は、臨時株主総会を開催します。
小規模な会社や同族企業の場合、わざわざ株主総会は開催せずに議事録だけ作成するという場合も多いです。
議事録には、事業年度の変更を行うにあたり定款を変更すること、それについて株主の異議がないことなどを記載します。
株主総会で事業年度変更の合意を得られたら、定款を変更します。
定款に記載している「事業年度」の項目を変更後のものに書き換えましょう。
ちなみに、事業年度は登記事項ではありませんので、変更登記の申請の必要はありません。
事業年度等の変更を行った場合、国税庁の様式の「異動届出書」を作成し、納税地の所轄税務署へ速やかに提出する必要があります。
その際、異動事項の内容確認のために変更後の定款のコピーを添付します。
決算期を変更すること自体は、手順をきちんと踏めば意外と簡単に行えるというのはご説明した通りです。
ただし、メリットがあるとはいえ、決算期変更にはデメリットも伴います。
変更する際にはしっかり目的を持ち、メリット・デメリットを吟味してから実施することをおすすめします。
画像出典元:Pexels
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