「トリクルダウン」という経済用語を聞いたことはありますか?
トリクルダウン(Trickle Down)というのは元々「滴り落ちる」という意味です。
「滴り落ちる」様子から経済学では「裕福な人がより裕福になれば、その分富が貧しい人にも滴り落ちる」という意味で使われることがあります。
今回は、そのトリクルダウン理論の概要や賛成派/反対派の議論を紹介します。
さらに、関連する事例や今後の日本においてトリクルダウンは成り立つのかを考察していきます。
このページの目次
トリクルダウンというのは「滴り落ちる」という意味です。
経済学では「裕福な人がより裕福になれば、その分富が貧しい人にも滴り落ちる」という意味を持つ「トリクルダウン理論」として使われたりします。
「理論」とありますが、実際にはトリクルダウン自体の効果は不透明かつ状況によって大きく異なるため、「仮説」として表現されることも多いです。
トリクルダウン理論に対する議論についてもこの後詳しく紹介していきます。
「トリクルダウン(trickle down)」という表現は「徐々にあふれ落ちる」という意味で、大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となる」とする仮説である
トリクルダウン理論を理解する上では「シャンパンタワー」を用いて説明されることが多くあります。
シャンパンタワーはグラスを数段重ね、上からシャンパンを注いでいきますが、一番上のグラスがシャンパンで満たされるとどうなるでしょうか?
グラスからシャンパンが溢れ、こぼれたシャンパンがその下の段にある複数のグラスに注がれていきます。
その段にあるグラスも満たされると、さらにその下の段にあるグラスにシャンパンが注がれていく...といったような構図となります。
これを経済理論にあてはめたものが「トリクルダウン理論」です。
シャンパンタワーの「段」は豊かさの層を意味します。
所得の高い富裕層がより上段に位置し、その下にいくほど貧困層が位置するようなイメージです。
所得の高い富裕層からこぼれたシャンパン(お金)を、貧困層が受けとめる、という皮肉でもあります。
シャンパンタワーで「グラス(階層)」と「シャンパン(お金)」の流れを表しているのです。
この点を踏まえれば「裕福な人がより裕福になれば、その分富が貧しい人にも滴り落ちる」というトリクルダウン理論が示す意味合いがわかるかと思います。
トリクルダウン理論の大まか意味を理解した後で気になるのはその「効果」です。
経済効果にトリクルダウン理論が有効かどうかについては、賛成派と反対派にわかれています。
一概に「トリクルダウン理論はどのような状況でも優れている」と主張することは難しいと思われます。
むしろ、「トリクルダウン理論は開発途上国のような進展過程にある国においては一定の効果はあるものの、日本を含めた先進国ではあまり効果はなく、社会格差を広げるだけだ」という意見も多いです。
なぜ社会格差を広げることになるのかというと、これもシャンパンタワーで考えるとわかりやすいかと思います。
上段のグラスにシャンパンが注がれても、それより下のグラスになかなかシャンパンが滴らない場合や、滴ったとしてもすべてのグラスが平等に満たされないような場合があり得るため、格差を広げるだけとも主張されているのです。
トリクルダウン理論に関する正解はないものの、その意味やどのような場合に有効となるかを自分で考えてみることが大事かと思います。
続いて、トリクルダウン理論に関する議論を簡単に紹介していきたいと思います。
トリクルダウン理論をめぐっては、アメリカのロナルド・レーガン大統領の経済政策(レーガノミクス)について、支持者と非支持者による議論が生まれた歴史もあります。
ただ、あまり馴染みのない方も多い点、本記事では政策内容よりもトリクルダウン理論の概要を理解してもらうことを重視している点をもって、もう少し馴染みのある「アベノミクス」を取り上げてみたいと思います。
当時の安倍政権が掲げた経済政策のことを「アベノミクス」といいますが、アベノミクスはトリクルダウンであったとか、トリクルダウンではないといった議論が過去にされていました。
結果的にどちらなのかは今回の趣旨から外れるので考察しません。
しかし、安倍首相が2015年1月28日参議院本会議にて以下のような発言をしたことがありますので引用してみます。
「現在の我が国においては、長引くデフレからの脱却と経済再生の実現が喫緊の課題であります。我々が目指しているのは、いわゆるトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現であり、地方経済の底上げであります。このため、政労使による賃上げの促進などの取組や地方創生などにも取り組んでいるところであります。今後とも、三本の矢の政策を更に前に進めてまいります。」
安倍首相の発言では「アベノミクス=トリクルダウンではない」との認識のようです。
ただ、法人税減税などの政策を通じて企業利益を底上げし、それを賃金上昇という形で従業員に還元すること等の側面をもって、トリクルダウンとも言われていたのかもしれません。
いずれにしても、このように国の政策にはそれがトリクルダウン理論にもとづいているかどうかといった議論がまれになされるので、その観点からもトリクルダウン理論を知っておくと便利でしょう。
ここまでトリクルダウン理論の概要や議論について紹介してきました。
最後に「トリクルダウンを実現する理論的な方法」と「トリクルダウン成立に必要な最低条件」の2つについて紹介しておきたいと思います。
繰り返しになりますが、トリクルダウンは「裕福な人がより裕福になれば、その分富が貧しい人にも滴り落ちる」という仮説です。
では具体的に「どうやって裕福な人をより裕福にするか?」という点を最初に紹介します。
結論からお伝えすれば、トリクルダウンを実現するための(理論的な)方法として最もわかりやすいのは「富裕層に対する減税」や「法人税減税」があげられます。
富裕層に対する減税は、富裕層の可処分所得を増やすこととなり、国内投資の活発化や経済循環を通じて(最終的に)貧困層も豊になると考えられています。
法人税減税も同様に、企業の利益拡大を通じて雇用者の給与向上が見込まれ(最終的には)経済循環を通じて貧困層も豊かになると考えられています。
ただ、これらの方法が取られたから「トリクルダウン理論」にもとづいた政策をしているわけではない点に留意してください。
最後に、トリクルダウンが成立するための最低条件を紹介しておきます。
トリクルダウンを理論的に実現する方法として「富裕層に対する減税」を紹介してきましたが、実は成立するための要件を満たしていないために、経済格差を広げるだけ等と言われることがあります。
富裕層に対する減税をすることで「富裕層の可処分所得を増やすこととなり、国内投資の活発化や経済循環を通じて、(最終的に)貧困層も豊になる」と紹介してきましたが、「おかしい」と感じた部分はありませんでしたか?
富裕層の可処分所得が増える点はいいと思いますが、その後必ずしも「国内投資」をするとは限らない点が問題となります。
自分の立場に置き換えて考えてみればわかるかと思いますが、可処分所得が増えたからと言って必ずしも「投資」や「消費」をするとは限りません。
また、グローバル間での資本移動が自由となっている現代において、増加した可処分所得分を「国内」に再投資する保証もどこにもありません。
こういった点も踏まえ、日本をはじめとした先進国においては「そもそもトリクルダウン理論は成立しないのではないか」と主張されることも多いのです。
今回は、トリクルダウン理論に関する基本的な意味や議論を中心に紹介してきました。
先進国ではトリクルダウンの効果はないというのがメジャーな主張かもしれません。
これから発展する途上国やその他の場面で(考え方として)使える可能性もあります。
これを機会にトリクルダウンの基本的な意味だけでもおさえるようにしてみてください。
画像出典元:Shutterstock
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