経理は企業の運営に欠かせない業務ですが、多くの企業が人手不足に悩んでいます。
この課題を解決するためには、経理業務の人手不足がなぜ起こるのかを知り、それに対して的確な対策を打つ必要があります。
この記事では、経理の人手不足の原因、それによる影響、そしてその解決策などを詳しく解説します。
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経理の人手不足は、いくつかの複合的な原因によって発生します。
日本全体で労働人口が減少傾向にあるなか、経理職の人材確保も難しくなっています。
特に若年層は人口自体が少なく、経理職を志望する人も多くないため、採用は一層困難です。
また、地方の中小企業の場合、都市部への流出も人材確保のハードルを高くする要因になっています。
経理業務には、簿記や会計に関する専門的な知識が求められます。
即戦力となる経験豊富な人材は引く手あまたで競争が激しいため、確保するのは簡単ではありません。
一方で、未経験者を採用して育成するのにも多大な時間とコストがかかるため、中小企業にとっては大きな負担となります。
経理部門は売り上げに直結しない「間接部門」のため、採用が後手に回ってしまう傾向があります。
特に中小企業では、営業や開発など「直接部門」の採用が優先され、経理部門の人材不足が深刻化しやすい傾向にあります。
企業運営における重要性に対して、軽視されがちなのが現状といえるでしょう。
若年層の働き手不足から、担当者が高齢化し後任が決まらないまま退職を迎えてしまうケースも増えています。
長年培ってきた経験や知識を持つベテラン経理担当者が退職してしまうと、業務の質が低下するだけでなく、ノウハウの継承も困難になってしまいます。
経理業務は、締め日や決算期などの繁忙期には、業務負担が集中しがちです。
人手不足の状況ではそうした負担がさらに倍増し、長時間労働や過重労働につながりやすくなります。
残業や休日出勤が増えると、担当者の疲弊につながり、最悪の場合退職の原因となることもあります。
経理の人手不足は、会社全体の運営にも悪影響を与える可能性があります。
人手不足が常態化すると、経理担当者一人当たりの業務量は増加し、負担が大きくなってしまいます。
結果として、残業時間の増加や休日出勤の常態化、精神的なストレスなど様々な問題が生じ、最終的には休職・退職などにつながることもあります。
人手不足の状態では、目の前の業務に追われてオペレーション改善や人材育成などに時間を割くことが難しくなります。
結果として、経理部門全体のスキル・生産性低下につながったり、そもそも業務を担える人材がいなくなったりという危機的な状況に陥る可能性があります。
業務が特定の担当者に集中し属人化すると、ミスや不正のリスクが高まってしまいます。
本来であれば、ひとりの担当者に業務が集中しないよう、複数人でのチェック・カバーが可能な体制を作らないといけません。
人手不足による経理業務の遅延やミスは、経営判断の遅れや企業としての信頼性低下、さらには競争力の低下を招きかねません。
正確な経理処理や財務諸表作成ができなければ、経営者は適切な経営判断を下すことができず、資金調達にさえ影響が出てくる可能性があります。
経理の人手不足を解消するには、大きく分けて2つの方法が有効です。
まず最初に考えられるのは、人材を補充するという方法です。
採用・育成や外注といった具体的な手段をご紹介します。
競争率の高い経験者人材ではなく、経験の浅い人材を採用し社内で育成する方法。
採用のハードルが低めであることと、長期的な視点で人材を育成できるのがメリットです。
一方で、社内研修制度や教育体制の整備など、育成体制を整える必要があります。
経理業務を外部サービスに委託する方法です。
専門的な知識を持つ人材をすぐに確保できて、即効性のある解決策になるでしょう。
経理BPOサービスを提供する企業は多数存在するため、自社のニーズに合ったサービスを選ぶことが大切です。
経理BPOを利用するメリットは、効果がすぐに出ることと、スキルのある人材を確保しやすいことです。
一方で、社内にノウハウが蓄積されないことや、人材やサービスによってはコストがかさむことがデメリットです。
必要な期間だけ人材補充をしたい場合は、人材派遣を活用するという選択肢もあります。
BPOと比べて、よりスポットで依頼ができ、柔軟に人員を確保できる点が特徴です。
特に繁忙期のみ人材を確保したい場合や、急な欠員が出た場合などに有効です。
人材派遣は、必要な期間だけ人材を確保できる、採用コストを削減できるのがメリット。
一方で、派遣期間が終了すると人材がいなくなってしまうこと、社内にノウハウが蓄積されないことがデメリットです。
業務の見直しやシステム利用によって業務を効率化して人手不足を解消するという手もあります。
既存の経理業務のフローを見直し、無駄な作業を削減したり、自動化できる部分を見つけたりします。
経理業務はマンパワーに頼る部分や属人化している部分が多くなりがちなので、ここを見直すだけでも一定の効率化を実現できるでしょう。
請求書や領収書などの紙書類を電子化することで、作成・共有・保管などの手間を減らすことができます。
また、保管スペースの削減や検索性の向上につながるのも特徴です。
なお、システム導入の際は電子帳簿保存法に対応したものを導入する必要があります。
ペーパーレス化のメリットとしては、担当者の業務負担や共有の手間を減らせることが挙げられます。
一方で、システムの導入コストや移行のための手間がかかり、一時的に負担が増す可能性があることがデメリットです。
担当者の手作業からRPAに移行することで、定型的な作業を自動化し、作業負担を軽減することが可能です。
RPAツールによって対応できる業務が異なるほか、業務分析やシナリオ作成などの準備が必要になることには注意が必要です。
RPAは自動化による業務効率化やヒューマンエラー・コストの削減を実現できるのがメリットと言えます。
一方で、導入コストがかかるほか、事前の設計・設定やメンテナンスなどが必要になることがデメリットです。
経理・会計システムを導入することで、各種帳票や書類の作成・入力作業を自動化し、集計作業の効率化が可能になります。
ツールにもよりますが、クラウド型のシステムであれば月額数千円程度で利用でき、さらに初期費用も抑えることができます。
経理・会計システムの導入は、比較的安価で利用できるうえに、幅広い業務を効率化できることがメリットです。
一方で、既存の運用からの切り替えの手間がかかることや、操作に慣れるまでやや負担がかかることなどがデメリットです。
経理部門の人手不足は、労働人口減少や専門知識の必要性など、複合的な原因で発生しており、放置すれば企業運営全体に支障が出てしまいます。
解決策としては、未経験人材の育成や外部サービスの利用、さらにツール導入による業務効率化などが有効です。
画像出典元:o-dan