228億の衣類を救え! 廃棄処分を良しとする服飾業界にメスを入れる

228億の衣類を救え! 廃棄処分を良しとする服飾業界にメスを入れる

記事更新日: 2019/03/11

執筆: 狐塚真子

株式会社ウィファブリック 福屋剛氏

関西外国語大学卒業。国内繊維・テキスタイル卸トップシェアの商社・瀧定大阪にて約10年間、企画・生産・販売に従事。
2015年3月、株式会社ウィファブリック設立。

「アパレルが衣類を燃やすことはかっこ悪いことなんだと啓蒙しなければ。」

そう語ってくれたのは 株式会社ウィファブリック 代表取締役社長の福屋剛氏だ。
近年、ファストブランドの台頭などにより衣類廃棄の問題は深刻化する一方だが、福屋氏はこの問題を見過ごさなかった。

福屋氏が代表取締役を務めるウィファブリックでは、企業・法人間で在庫を売買する繊維・ファッション業界のフリマサイトSMASELLを運営している。このサービスにより、デッドストックによって生じるコスト・時間・環境負担の問題を解決しようという。

先日行われた ピッチイベントStarBurst DEMODAY #5でも、見事 優勝を勝ち取った福屋氏。今回のインタビューでは その注目のビジネスモデルと共に起業までの経緯、そして知られざる資金調達の裏側までを詳しくインタビューしました。

残った商品を見捨てたくない

ー ウィファブリックを起業したきっかけは何だったんですか?

僕は約10年間、繊維商社でものづくりに携わってきました。大量にものを作って、それが残ってしまったら 買取業者さんに二束三文で叩き売ったり、産廃業者さんにお金を払って廃棄処分してもらっていたんです。そんな無駄の多い業界を変えたいという思いで、2015年に会社を退職し、起業をしました。

最初はRDF(アールディエフ)っていうプロダクトブランドをやってたんですよね。糸や生地など、廃棄されてしまうものを無くすためにデザインで再生させよう、というブランドなんですね。

それをずっとやっていて、メディアに取り上げられるようになったんですが、「うちの生地残ってるよ」とか「製品が残ってるから引き取ってくれ」っていう連絡が殺到したんです。でも全部うちが買い取ってたら、倒産しちゃうじゃないですか。だからお断りしていた案件もあったんです。

でも、それって僕たちが解決しようと思っていた課題と向き合ってないっていうことに気付いて。本当に必要としている人に届けていくためにプラットフォーム化してしまおうということでSMASELL(スマセル)を立ち上げたんです。

商品を見捨てずに流通させているという点では、その機能をしっかり果たせているのではないかと思っています。

サービスのリリースはタイミングが重要

確か SMASELLの事業って、ラクーンや伊藤忠さんなどの上場企業が一度挑戦して諦めた領域だと思うんですけど。なぜ今改めてこれに挑んだんですか。

当時 彼らが事業をやっていたのはちょうど10年ぐらい前の話なんですけど。当時との一番大きな違いは やはり、スマホが台頭してきたということ。
これからの時代は、スマホで商品を検索して仕入れるということが当たり前になるのではないかと考えて、敢えてローンチしたわけです。

サービスには とっつきやすいタイミング/とっつき難いタイミングがあると思っていて。タイミングってすごく大事だと思うんですよ。

「フリマ」っていうキーワードはメルカリさんがある程度浸透させていったと思うんですけど。メルカリも、その時期を見計らってスマホで使いやすいユーザービリティに特化しているわけですよね。そういった時代背景を考えてみても、今なのかなと思いますね。

SMASELL(スマセル)について

通常流通価格の80%オフで商品を提供

ここで改めて福屋さんにSMASELLの事業の説明をしてもらった。福屋氏が我々に示したのは「228億」という数字。

福屋

「228億」って、これ 何の数かお分かりになられますか?

栗島

これが 廃棄されている衣類の数ですか?

福屋

おっしゃるとおりでして。もうズバリ、世界中で毎年捨てられていってる繊維製品の廃棄枚数ですね。

こうした不動在庫、いわゆるデッドストックによって生じるコスト・時間・環境負担の問題をSMASELLで解決していきます。

画像出典元:SMASELL公式HP

ーSMASELLの仕組みを教えてください。

在庫を処分したい出品者さんと特価商品を必要とするバイヤーさんをオンライン上でグローバルにマッチングをかけています。通常流通価格の80%オフ以上の特価商品が流通していて、リアルの売買と同様にサンプル取り寄せなどの条件の交渉もできるようになっています。

これがSMASELLのバイヤー画面です。アパレル・ファッション・インテリア・ライフスタイルなどのカテゴリの他にも、生地や付属類からも検索ができます。

画像だけでは品質や風合いが分からないといった場合には、「サンプル取り寄せ」という機能があるので、品質に納得した上で数千枚~数万枚という大きな単位で仕入れることができます。

交渉機能もあるので、価格であったりとか数量っていうのを出品者にダイレクトに交渉することも可能です。

販路開拓ツールとしても機能

ーSMASELLに登録しているユーザーはどの位いるんですか?

大体1,700ユーザーくらいですね。

取引の際、口座を開設する必要がないので最短5分で売買ができますし、買取業者さん以外にも 小売店や百貨店・GMS・ディスカウントストア・リサイクルショップなど様々な業態の方がいるので新規販路開拓のツールとしても捉えることができると思います。

出品者側を見てみると、いわゆる業界のトップ10に入るような企業に続々登録いただいています。
買い手側も ディスカウントストアや、百貨店など多くの企業が登録して下さっていますので、バイイング・パワーもあります。リサイクルショップに関しては、売上高1位~10位までの企業全てがSMASELLに登録されているんです。

これまで、メーカーさんのレディースアパレルの商品がディスカウントストアに160万ぐらいで成約したり、商社の生地がアパレルメーカーに150万ぐらいで成約したりという実績があります。

 

ー利用者の業界の開拓はどうされたんですか?

最初はリファラルで紹介してもらっていたんですけど、口コミとかテレビの影響も多分あると思うんです。

最近は『ガイアの夜明け』に出演したのですが、反響が大きくて。放送後、1週間で300社くらい問い合わせがきました。

様々な業界との連携、そして海外へ

ー事業拡大のために、どんな業界の方々と連携をされていますか?

今まで物が届かなったような場所に届けるために色んな業界との連携を図っています。

例えば、SNS業界だと インフルエンサーの方に弊社のサイト内から商品をピックアップしてもらって、百貨店などにポップアップショップを開いたり。

介護業界の場合、「おしゃれしたくても、なかなかできない」という方のために、施設に居ながらでも洋服が買えるような仕組みを作ろうとしたり。

物流業界でいうと、海外向けの売買が今かなり進んでいるという背景があるので出品者の負担を減らすために、松菱さんと提携しています。商品の集荷からパッキングリストの作成、インボイスの作成、現地への配達までを一貫して行うような代行のデリバリーサービスもさせていただいています。

ファッション業界の価値観をぶち壊しにいく

ーSMASELLでは環境問題の解決にも貢献できるということですが。

ベンチャーピッチだと、CO2の話とか出ないじゃないですか?
この領域がビジネスにおいてどれほど重要か、みんな意外と分かっていないと思うので詳しく教えてください。

冒頭に申し上げた228億枚もの廃棄されている繊維製品を原料原価ベースで販売できるようになった場合、プラス10兆円もの新しい市場を作り上げられるだけでなく、マイナス4,100万トンものCO2を削減することが可能になっています。

このことは、大手アパレルや大手商社も非常に弊社の事業に共感いただいてて。徐々に環境問題に対してムーブメントが起きている感じがします。

現在は、アパレルメーカースピンズさんと一緒に中国に大量に残っている生地を有効活用しようと動いています。

アパレルだと made in china が まだまだ多い状況でして。現地に残っている生地を現地の縫製工場に送り込んで、裁断縫製してから日本に引いてくるという、最短ルートで物を作る方法を採用しています。原価率が下げられるし、しかもサスティナブルな物作りが可能になるんです。

そうして出来た製品にはこのタグを付けさせていただいています。

「reduce CO2 emissions」の文字が

Tシャツ1枚を再流出させると大体600グラムぐらいのCO2を削減できます。そういう取り組みで作られた洋服なんですよ、と消費者にアピールできるような下げ札をアパレルさんに支給させていただいています。 

「安くていいもの」というだけではなくて、「社会的な意義のある商品体系を届けている」ということを僕らから推奨させてもらっています。

環境問題に対する意識は、日本も徐々に変わってきてはいますが、ドイツなど欧米の方が圧倒的にあるように感じます。海外展開は僕たちもマストでやらないといけないと考えています。これって日本国内だけの問題じゃないので。

 

ー海外展開については足掛かりはできているんでしょうか。

経済産業省からシリコンバレーに派遣していただいたんですが、そこでプラグアンドプレイさんに出会いまして。現地のアパレルさんを紹介してもらったり、オランダでアディダスやグッチさんとかとファッション業界のサステナビリティに関してディスカッションをしてきました。

まずはアジア圏内でトップシェアを取りたいなと思っています。というのも、日本の洋服ってやっぱアジア圏内の人にはサイズ感的に丁度良いんですよね。

しかも、日本のアパレルってアジア圏の人たち結構好きで。例えば、トレンドギャップの原因で日本で去年廃番になった物とかでも、東南アジアとか台湾とかに持っていくとハマるんですよね。全然新鮮なものとして着てもらえるんです。

この取り組みはある種、啓蒙活動みたいなところもあって。欧米のハイブランドとかも、残った衣類を「ブランドを守る」という名目で燃やしているから、それが当たり前になってきてたんですよね。

福屋

「それ自体かっこ悪いことやってるんです」っていうことを僕たちがちゃんと啓蒙していかないと、多分業界自体は変わらない。

栗島

つまり、廃棄を当たり前にやっていたら、ダサいことをしているブランドだよって言えるわけですもんね。

福屋

そうですね。

消費者もそれに気付いたら、ブランドに対するもロイヤリティも薄くなっていくじゃないですか。

栗島

確かになあ。

ウィファブリックはただのB2Bフリマの会社じゃなくて、ファッション領域の価値観自体をぶち壊しにいって、新しい循環型の価値観を展開しようとしているわけですね。

資金調達について

ウィファブリックのビジョンが見えてきたところで、取材は資金調達の話に。

ー株主の方々というのは、どういったかたちで関与されてる感じですか?

銀行系は紹介が多いですね。彼らも膨大なネットワークを持っているので、大企業さんなどを紹介してもらっています。KLabさんは全体的にという感じですかね。

サービス部分のKPIの進捗や後売りなど、ゴリッと入ってやってもらっています。ベクトルは古着を出品してもらったりとか。

紹介に関しては多くの会社がやってくれるので非常に助かっています。色々な企業に補ってもらいながらやっている、というイメージですかね。

 

ー各ラウンドで、どこが評価されたと思っていますか?

シードはSMASELLのコンセプトとあとメンバーだけですよね。紙切れ1枚しかなかったんで。
OSAP(大阪市ベンチャー企業支援プログラム)の時代に、お互いどんな人か把握できていたのも大きいと思います。

その後に1回ブリッジファイナンス(次のラウンド前の繋ぎ投資)をしています。次のシリーズAを調達するまでに資金がショートするということは分かっていました。「そのために資金調達がしたい」ということ話していたら、前からずっと声を掛けていだいていたレジェンド・パートナーズやベクトルからもう一度声をかけていただきました。

 

ーなるほどな。シリーズAで一番注目されていた部分はどこだと思いますか?

前回ラウンドからどれぐらい伸びがあったか、ということだと思います。

その裏付けのために、「登録者数これだけ伸びてます」とか「業界のトップ10の企業がこれだけ入ってます」とかお話しましたね。あとは、月額100万前後にトラクションも出てるというところも見てもらいました。それでCROOZさんにリードになってもらいました。

 

ーここがリードを決めたらあとの方々はそれに乗るか反るかで決めたっていう感じですかね?

まさにその通りです。
実はシリーズAの段階で「投資したい」って言っていただいてる企業が30社ぐらいあって。僕らはその中で一番うまが合って、しかもシナジーがあるCROOZさんにお願いしたんですね。やっぱり銀行系が入ってるっていうのはプラットフォーマーとして非常に安心感があるんでフォロー投資をしていただいています。

シリーズAは半年くらいかかりましたね。やっぱり出資者の方としゃべってみないと分からない部分もあったりするので。

 

ーちなみに、調達した資金の使い道を教えて頂きたくて。シードの場合は、事業のSMASELLを作る開発費ですか?

はい。ブリッジのところは、次のマイルストーンを達成するために、事業実績を作るためのつなぎ資金とかですね。

今回のシリーズAでいうと、採用をガンガン行って、事業に必要な広告を打つとか、営業体制を作るための資金にしました。
次のラウンドもそうですが、やはり人に一番投資しているので。そういう意味では、ほぼ人件費ですよね。

今後の資金調達については、来年2月に5億の資金調達を考えています。まずは2022年に上場し、流通で65億、売上で13億を目指しております。

 

ー最後にSMASELLの今後のミッションについて教えて頂けたらと思います。

我々は、企業の抱える在庫を廃棄することなく資源とみなし、必要とする国・企業間の資源をグローバルにシェアすることで、これからの環境のため人類の未来のために、持続可能な循環型社会を創造していきたいと考えております!

 

狐塚真子

この記事を書いたライター

狐塚真子

津田塾大学英文学科に在学。趣味は映画鑑賞、ダンス、旅行、ライブに行くこと。

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