「自信なんていらない」サイボウズ青野慶久の「素直な心」のススメ

「自信なんていらない」サイボウズ青野慶久の「素直な心」のススメ

記事更新日: 2019/04/15

執筆: 篠田侑李

就活シーズン真っ盛りであり新社会人も多いこの季節。新元号が発表されたこともあいまって、新たなステップを踏み出そうとしている方も多いはず。

しかしそんな時に心をよぎるのが、自分に自信があるか、これからやっていけるか、という不安。

そこで今回は元号発表日に、サイボウズの青野社長に「自信」についてお話を伺いました。

一般的に、社長は自信がある、というイメージがあるかもしれませんが、青野社長から返ってきたのは意外な答えでした。

プロフィール

青野慶久

愛媛県出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)へ入社。1997年に2人の同僚と共にサイボウズを設立。2005年4月より代表取締役社長。

自信は、いらない。

僕は、自信は要らないと思いますよ。

例えば、「僕は走るのが得意で自信があります」という人がいるとします。
その人に、「100メートルを10秒で走れる?」と聞いたら「いやそこまで自信はないです」と言います。
そこで「じゃあ30秒で走れる?」と聞けば、「それは余裕で走れます。」と答えると思います。

このように、「走ることに自信がある」と言っても、そのゴール=物差し を変えてしまえば、人は自信があったりなかったりします。

つまり、所詮、自信というのは決めたゴールに対する相対的なものでしかありません

大切なのは、自分がどのくらいの速さで走れるか、自分の能力を知っておくことです。それを自信に感じる必要はないと思います。

サイボウズでも、新卒採用では自信の有無ではなく、「チームワーク溢れる社会を作る」という理想ににどれだけ共感してるかを大きな判断基準にしています。

例えば、野球部に人を入れるにも、走ることに自信があるけど野球をやりたくない人は部に入れません。入れた方も入部した方もお互い不幸になるので。

その一方で、「自信はないけど、野球が好き」という人であれば入部してもらいます。沢山練習をしたら上達して、その人のはまりどころが見つかるかもしれません。

嘘をつくから見透かされる。素直にいよう。

分からないなら、分からないで良いと僕は思います。

就活生や新社会人は、まだ20そこらの年齢です。分からないという事がマズイ事と捉える人も多いと思いますが、僕は逆に、その年齢で『俺は自信がある。このやり方で行く』と言っている人の方が疑ってしまいます。「なぜ君は20そこそこで人生悟ってるんだ?」って。

就活の面接でも自信があるように見せようとする人がいますが、「あ、こいつ大きく見せようとしているな」と見透かされるはずです。面接官はプロですから。

僕は、「自信がある」というのは、その人の個性の一つでしかないと思っています。

ですから、無理に自分にない個性を出そうとせず、正直でいるべきだと思います。「自信がないんですけど…」と言われても、「お〜君は正直者だな〜」と思うだけなので。

自分の自然な姿を理解していて、分からないことは分からないと言える、僕の尊敬する松下幸之助*(*松下電器=現パナソニック 創業者。経営の神様と言われる)の言葉でいえば、「素直な心」を持っている人の方が、僕は良いと思います。

この「素直な心」は、働く上でも非常に重要です。サイボウズでも大切にしている「公明正大な精神」の基になっています。

嘘をつかないこと、隠さないこと。また困っている時に「困っている」と声を上げることも大切です。
素直に言ってくれない人は、全部自分一人で抱えてしまうのですごく一緒に働きにくいです。無理に「大丈夫です…」と言われると、周りはどうしたら良いか悩んでしまいます。

会社はチームワークであって、個人戦ではありません。だからこそ、嘘をつかない人、そして分からないことは「分からない、自信がない」と言いきれる人の方が僕は一緒に働きたいと思います。

ネガティブは必ずしも悪いものじゃない。

できないことを、めちゃくちゃポジティブに「やります〜!」と言われても困りますよね。できないことはできないと、気付くべきだから。

ポジティブさが歓迎される世の中ですし、楽観的な人を見ると明るくて元気になるけれど、そのポジティブさ故に自分の力量を見誤る人は沢山います。
例えば、イケイケな感じの人は調子のいい時は上手くいっているように見えるけど、ちょっと逆風が吹くとポキッて折れてしまうことがあります。

大事なのは、今、自分が置かれている状況と、どこを目指したいのかを、冷静に落ち着いてみること。無理なことを無理だと言えることは、決してネガティブな事ではありません

松下幸之助が、「雨が降ったら傘をさす」(雨が降れば、素直に濡れないために傘をさす)と言いましたが、これがどれだけ難しいことか。雨が降っているのに傘をささない人は結構います。「傘を差したらおかしいんじゃないか」と思ったり。

同様に、人は「バカにされたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」と色々なことに恐れを感じながらも、「よく見せたい」「褒められたい」という感情を持ちます。

僕は彼らに「そういう感情は置いておけ」と言いたいですね。自分の目的地に向かうためにまず何をしたら良いのか冷静に考え、行動に移すことのほうが大切です。成功する起業家も、これができる人です。

「覚悟」とは何か知ろう。

実は僕自身も以前はイケイケのタイプでした。
でも以前会社がどうしようもない状況に追い込まれた時に初めて、「あ、もう格好つけるなんて無理だ」と悟り、周りのせいではなく全て自分の責任として捉える覚悟を決められました。

それ以来、覚悟ができなくなったらもう社長を降りる時だと考えています

散々追い詰められて、それでも心が折れない人は、自分で覚悟を身に付けていくのだと思います。でも、追い詰められる状況で折れない心を持つというのは、なかなか難しいことで、みんながみんなできることではありません。

ですので、就活生や新社会人には、「覚悟」というものが世の中にある、ということを知っておいてほしいと思います。素直な心があって、覚悟を決めるという心がまえが、世の中にあることを。

しかもこの心構えは、意識し続けなければ定着しません。

僕もこの「覚悟」というものに気づいてから3年間は心の中に定着しませんでした。
気を緩めるといつの間にかまた人のせいにしていて、そこで、「悔しい。全部僕の責任だ!」とまた自らを戒めて意識するのです。

覚悟というのはトレーニングをしていると筋肉みたいに鍛えられます。

素直な心で覚悟を知り、冷静に物事を見極め実行する。これができていれば、自信についてなんて考えることもなくなると思います。

 

篠田侑李

この記事を書いたライター

篠田侑李

テキサス大学オースティン校で映画・メディア・インテリアデザインを学ぶ。趣味は旅行、食べ歩き、そぞろ歩き。都内46道府県アンテナショップ制覇が目標。

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