密室空間を面白く。新たなエレベーター広告の形に挑んだ学生起業家のこれまで。

密室空間を面白く。新たなエレベーター広告の形に挑んだ学生起業家のこれまで。

記事更新日: 2019/03/11

執筆: 狐塚真子

株式会社東京 羅 悠鴻 氏

株式会社東京 代表取締役CEO。東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻。現在は就職活動を辞めて休学中。

「エレベーターという密室空間を心惹かれるものにしたい」。そんな思いから大学を休学し、会社を立ち上げた株式会社東京の羅氏。

エレベーター専用テレビ「東京エレビ」などの画期的な商品を提供しており、ビジネスモデルにはかなりの定評がある。

Startup List(スタートアップリスト)を運営する弊社栗島が 起業までの道のり、そして資金調達の実態について深堀りしていきます。

プロジェクトベースで始まった広告事業

栗島

まずは株式会社東京の事業内容について教えて下さい。

エレベーター広告をしています。「東京エレビ」「東京エレビゴー」というエレベーター専用のテレビを設置して動画コンテンツを配信することで、広告収入などを得ています。エレベーター専用のテレビ局を作っているイメージですね。


これが 東京エレビ。磁石で装着できるので取り外しも簡単だ。

動画配信以外にも使い方があって。タブレットのカメラを利用すれば、外付けの防犯カメラとしても機能できます。

栗島

なるほど。それは考えましたね。

外付けの防犯カメラを付けようとすると、配線の問題で50万円くらいかかってしまうんです。

栗島

えっ!そんなにするんだ。

でもタブレットの場合は無線なので無料で設置することができます。

栗島

そもそも羅さんはなぜエレベーター広告の事業を始めようと思ったのですか?

大学3年生の時、よく使う建物があったんですが、そこのエレベーターの中に掲示板がありました。チラシが貼ってあっても「読まないだろうな」って思っていたんです。

でも毎日通っていると意外と興味が湧いてきて。しまいにはチラシを見て別の学科のセミナーに出席するまでに至りました。

 

「密室空間の中で、暇な時間って結構持て余してるな」と思ったのがきっかけですね。

栗島

なるほど。中国で流行っているものを逆輸入したのかと思っていました。

そうではないですね。中国には時価総額が2兆円くらいのエレベータ―の広告会社が既にあったので、「上手くいったらやろうぜ」くらいのプロジェクトベースで始まりました。

栗島

すでに成功事例があるし、市場性もあると思ったわけですね。

はい。当初はエレベーター全面に張り紙をしようと思っていました。

例えば、エレベーターの中をアルプスの風景のように変える。そうすれば飲料水の会社から広告費がもらえるだろうと考えたんです。

 

ビジネス経験 0 からの起業

「主人公感」を求めて

栗島

事業のアイデアが浮かんでからは、どのような活動をしましたか。

当時、ビジネス経験が全くなかったんです。まずはオーナーさんに交渉するところから始めました。大学3年生の時ですね。

意思決定が早そうなので 小さいビルが多そうな銀座に私服で行ったんです。名刺もないので学生証を持って、紙に絵を書いて事業内容を提案しました。

栗島

すごい行動力ですね(笑)。

不動産の業界交流会にも参加しましたね。

基本断られたんですが1社だけOK を出してくれました。ただビルがすぐに取り壊される予定だったので施工は叶いませんでしたが(笑)。

栗島

そうだったんですね。

大学院に入ってからは就活とかもしてたんですけど、「何か違うな」という思いがありました。「主人公感」が欲しいなと思って。

栗島

「主人公感」?

会社のインターンに参加していたんですが、トップの人なのに「孫正義さんのファンです」みたいな話をしていて。会社のトップに立つ人には「俺のキャリアは~」くらいオラオラしてる人であって欲しかったし、自分もそれを目指していたんです。

栗島

違和感を感じたわけですね。

はい。

そんな時、デザインに強いサークルの同期がプロジェクトを手伝ってくれることになりました。それで休学を決心しましたね。

エンジェル投資家からの出資

 
 
 

 

 

栗島

休学してからはどのような活動をされていたんですか?

最初のうちはテレアポをやっていたんですが、断られたときに心が痛むので3件くらいでやめてしまいました。代わりにFacebook のMessengerを使って不動産関係者に連絡をとりました。

栗島

なるほど。職業を検索できますもんね。

そうなんです。送った中の一人がエンジェル投資家の方で、事業を応援してくれたので登記をしました。そこから計4名の方にエンジェル投資をして頂きましたね。

栗島

投資家の方からはどこが評価されたと感じていますか?

ビジネスモデルが良いと言われましたね。

栗島

ちなみにその時って、プロダクトはどのくらい出来ていましたか?

ベースの部分だけ完成していました。

あとは「声が大きい」と言われたので存在感があったんですかね。ただ、初めてだったということもあり出資の話がまとまるまで2~3ヶ月くらいはかかりました。

 

無料という強み

栗島

羅さんは Startup Listを使って営業しているイメージなのですが、どのように活用されていますか?

投資家さんやサイネージを設置する会社の方に Messenger を使ってやり取りしています。

昔やっていたFacebook でのアプローチだと単純な迷惑メールになってしまいましたが、StartupListであれば起業家も投資家も互いに興味があって登録しているわけなので話がしやすいです。

栗島

実際にStartupListを通じて繋がった企業はありますか?

プロフィールに「エレベーター広告」と書いてあるのですが、それを見て 東京建物さんの方からアプローチしていただきました。一緒に実証試験をやらせていただいています。

栗島

東京建物さんからは、どこを評価されたと思いますか?

無料でプロダクトを設置出来るところですかね。サイネージ自体、日本の場合は高くて 中国で5万円のものが日本だと100万円位します。

しかもシステムが受託開発的な感じなので、安値ではおろせない。

でも僕らの場合は、中国の工場で発注しているから安価で作れるし、広告モデルだから無料で設置できるんです。

栗島

今までは売り切り型のモデルだけだったんですね。

どこの不動産会社さんもサイネージを置いてみたいという気持ちはあるはずです。でも効果が家賃収入に目に見えて直結するわけじゃないし、値段も張る。

けれど本音ではやってみたいとは思っていただけるようなので、僕らはそれをほとんどノーリスクで提供しているんです。

 

今後の意気込み

モノと情報が膨大に生み出されている今の時代、どんな人でも無理なくそれらを扱えるような世界にしたい思っています。

「エレベーターから地球を手ぶらに」していきます!

 

取材者プロフィール

栗島祐介

プロトスター株式会社代表取締役CCO (Chief Community Officer) 早稲田大学商学部卒。アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、当社を設立。HardTech領域の起業家支援コミュニティ「StarBurst」の運営総括、起業家・投資家の情報検索サービス「StartupList」の運営を行う。
狐塚真子

この記事を書いたライター

狐塚真子

津田塾大学英文学科に在学。趣味は映画鑑賞、ダンス、旅行、ライブに行くこと。

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