TOP > インタビュー一覧 > 借金200万・資本金1万円?! 崖っぷちを救ってくれた「副業」を本業に変えた男が提案する、これからの働き方
●株式会社シューマツワーカー CEO 松村 幸弥氏
ソーシャルゲーム会社に勤めたのち、2016年に株式会社シューマツワーカーを設立。サービスリリースから1年半で、登録者は約5,000人、クライアント企業も累計170社以上となる。急成長する副業市場のリーディングカンパニーを目指す。
長時間残業や人手不足の解消のために、従来の働き方を改めようという動きが強まってきてきている昨今。しかし実際に社員の副業や兼業を認めている企業は全体の4割ほどです。
副業したい人と企業のマッチングサービス『シューマツワーカー』を運営する松村さんはこの現状をどのように捉えているのでしょうか?副業で活躍する人材の特徴や、松村さん自身の壮絶な経験について伺いました。
ーまずは起業の経緯について伺いたいと思います。
松村 : 僕は某ソーシャルゲーム会社に新卒で入社したんですが、入社して3年くらいたった時にふと思ったんです。「あまりゲーム好きじゃないな」って。
エンタメは好きだったけれど、ゲームもそれほどやってこなかったなと気づきました。しかも、その会社にいた時は会社に引きこもって作業をしていたので、他の業界のことは全く分からなかったんです。だから外に出たいという思いがありました。そんな時に「意識の高い朝活」の存在を知ったんです。
ー何ですかそれ。気になります。
松村 : 恵比寿のシェアハウスに、12人くらいで集まって、1人が読んできた本の要約をもとにディスカッションするんです。しかも集まるのは大手企業の若手社員ばかり。「何それ意識高い!とりあえず行こう!」と思って次の回に参加しました。
当時、僕は長髪でピアスをつけて、日焼けもしていたんですが、明るく挨拶をしたら冷たい視線で見られましたね…
そんな時、ある1人の男の子が登場してきて会場がざわついたんです。彼は、同い年の起業家でした。「大手企業に勤める彼らも一目置くような起業家ってどんな人物なんだろう…」と思って話を聞いてみると、やはり自分とスケールが違いました。
松村さん
社長さんなんですね。やっぱり起業をするとお金持ちになるんですか?
松村さん、なめるな。僕はお金持ちになるために起業したんじゃない、世界を変えるために起業しているんだ。
「会社の中で仕事ができるかどうか」という次元でしか物事を考えていなかった自分との差に驚きましたし、とにかくかっこよくて。その場ですぐ「僕も起業する」と彼に言いました。
後日、テックファンド(起業家向け技術投資プログラムを運営)を紹介してもらい、起業の方法が分からない人達に対してレクチャーをしてくれるプログラムに参加しました。その時にできたのが社食コレクションというサービスです。「近所の飲食店を社員食堂にしよう」というものですね。
会社員をやりながら仲間集めやエンジニアを探したりと、1年ほど起業の準備も進めていました。企業からのお問い合わせを沢山もらったり、べータ版を作ってテスト導入した際も利用率が高かったので「いける」と思いました。
事業を本格的に進めていくために去年の1月末に会社を辞めたんですが、実は資本金が1万円でした。しかも貯金は20万円、色々あって借金も120万円あって。一回赤字になったら終わりですよね。
しかも資本金1万円だと銀行も日本政策金融公庫もお金を貸してくれないんです。僕はVC受けするタイプの人間ではないので彼等からも出資してもらえなくて…だから自分で資金を工面しながら進めるしかありませんでした。「社食コレクションがようやくリリースできる!」という喜びの反面、不安も大きかったです。その時に「僕一人で完結する事業をやろう」と思ったんです。これがシューマツワーカーの事業について考え始めたきっかけですね。
ーなるほど。ここで初めてシューマツワーカーの構想に至るわけですね。
松村:そうですね。社食コレクションのことをいったん忘れて「自分は何がやりたいのか」「自分の経験をいかせることは何か」をもう一度考え直しました。
松村:実は、スタートアップ業界に入る前、社会人2年目のときに詐欺にあっているんです。
渋谷のバーで「俺はお金持ちになりたいんだ!」と話をしていると悪い人がいっぱい寄ってきたんです。最初は断っていたんですが、ある時「これは本物だ」と思うものにとうとう出会ったんです。投資信託運用会社にお金を預けておくと運用してくれて、100万を預けておくと毎月お金が入ってくるシステムでした。最初のうちはちゃんとお金が入ってくるので安心していましたね。その後、カードローンで2社から100万ずつ合計200万の借金をしましたが… 綺麗に無くなりました。
ー典型的な、ポンジ・スキームですね。
松村:毎月利子だけで3万円ずつ返しても、200万は減らないという状況が続きました。「社会人2年目でこれはしんどいな」と思い、副業をしようと真剣に悩んでいたんです。
でも当時、ネットで「副業」「副収入」と検索しても、「副業=怪しい」といった内容の検索結果しか出ませんでした。「子供を大学に入れたい」「年末年始にハワイに家族で旅行に行きたい」など理由は様々ですが、お金に困っている人は世の中に沢山いるはずです。お金があったら選択肢が広がって人生が豊かになりますし、お金を得るために自分のスキルを生かす副業ってすごく有効な手段であるのに、なかなか良い案件と出会えない状況でした。
その後、色々な人とスタートアップで知り合うと、副業で手伝ってもらってるという会社が多く存在するという事を知りました。だから「僕が良質な副業案件を集めてきて、副業したい人と繋げるプラットフォームを作ろう」と考えました。
ーどのように事業を始めていきましたか?
松村:当時、エンジニアには受託開発と同時にシステムの開発をやってもらう一方、僕自身は社食コレクションのために飲食店の飛び込み営業と企業開拓を行っていました。飲食店の飛び込み営業を14:00~15:00に行っていたので夜の時間が空いてたんです。
とりあえず、シューマツワーカーのLP1枚とお問い合わせフォームを作りました。wantedlyに募集掲載を出している東京のベンチャー企業で、尚且つ社員数20人以下の会社を500社くらいエクセルでまとめて営業メールを送りまくったんですよ。そしたら3~4社から返事が返ってきました。そこで知り合いのエンジニアに「副業しませんか?」と紹介をしたところ、2月にいきなり5人分の売上が発生したんです。
次の月も同様に営業メールを色々な企業に送っていましたが、3人しか紹介が出来ませんでした。副業案件を紹介する友達がもういなかったからですね。だから社食コレクションの準備をしながら夜はエンジニアの勉強会に行って、シューマツワーカーの営業をする…という毎日を送っていました。エンジニアやデザイナーたちが集まる飲み会にも参加しましたね。
ー営業って嫌われるじゃないですか。どのように行っていたんですか?
松村:その時はエージェントほど副業は嫌われなかったですね。ただそれを目的で来ているっていうニュアンスを出してしまうと嫌われるので気を付けていました。
売上も徐々に伸びてきたので、紹介フィーをストック型に切り替えようと思い、サイトもペライチではなくて、ログインをして案件一覧からお問い合わせができる機能を作りました。
いざプレスリリースを打とうと思っていた矢先、「食べチョク」というサービスを運営する秋元さんがリリースを打ったのですが、それがかなりバズって。彼女と面識もあったので、バズりのコツを聞いたら「Facebookに投稿したところ皆さんが拡散してくれた」と教えてくれました。「これを自分から起こさせればいいんだ!」と思ったので、自社のPRタイムズを出す前日に「僕、明日この時間にシューマツワーカーのリリースを出すから絶対にいいねとシェアをして下さい!」と影響力のある人や友人にお願いしましたね。
ー実際どのくらい伸びましたか?
松村:およそ800人からいいね!がきました。それまでシューマツワーカーの知名度は低く、紹介する人も自分で頑張って探していたのに、初めて300人オーガニックで入ったんです。
去年の8月には「副業マップ」を作ってリリースを出しました。テッククランチの記事が3,000シェアくらいされ、登録者も更に300人程増えました。
ーPRに力を入れたおかげですね。
松村:そうですね。去年の9月のタイミングで日本政策金融公庫からお金を貸りることができました。2月から8月までは自転車操業で、借り入れもないし資本金1万円、貯金20万円の状態だったのですが、ようやくですね。
しかも広告をかけ始めたら、去年12月に単月黒字化したんです。副業の市場は伸び続けているので、この市場で一気に取りに行って、上場企業を目指していこうという話になりました。「目先の金はいらないし、どうせだったら面白いことをしたい」という話になったので、栗島さんにVCを紹介していただき出資してもらいました。
ー時間はどのくらいかかりましたか?
松村:11月くらいから動き始めたので、1ヶ月半ほどです。
ー結構早いですね。どこを評価されたと思っていますか?
松村:既に粗利益が200万/月を超えていますし、単月黒字化しているのにまだシードであるという事だと思います。副業市場もこれから伸びていきますからね。
ー調達した資金の使い道は何でしょうか?
松村:まずは人員強化ですね。現在は業務委託の人も含めると25人くらいの人が関わっている組織になりました。あとは開発や引っ越しの費用等に充てています。
実際に社員の副業兼業を認めている企業は全体の4割ほど。松村さんはこの現状をどのように捉えているのでしょうか?
ーそもそも、なぜ全ての企業で副業は認可されていないのでしょうか。
松村:「副業をすることによって、本業が疎かになってしまうのではないか」「働きすぎて体壊すのではないか」という不安要素があるからだと思います。
IT企業に多いのですが、自社の採用力や従業員満足度に問題がある企業の場合は、副業を解禁することによってそれらの問題を解決することができる一方で、他の会社の方が魅力的に映ってしまうという場合もあります。難しいところではありますが。
ーなるほど。これまで副業で働く会社に転職する人はどれ位いらっしゃいましたか?
松村:数百件あるうちのの2件ですね。
ー普通に転職するのとあまり変わらないですね。
松村:そうですね。そもそもITの人材って転職のスパン短いですし。
メルカリの人もよく副業をしていますが、彼らはメルカリのことが好きですし、副業をしながら働けるのが理想の形になっているんです。
ー彼らはお金には困っていないはずですよね。あえて副業をする目的は何だと思いますか?
松村:「他の環境を見て自分の学びにしたい」とか、「スタートアップで、自分がどれだけ貢献できるか・実力を発揮できるのか試したい」という人が多いです。あと意外と多いのですが、副業すること自体が目的の人もいます。
ーそうなんですね。なぜそういう思考に至るんでしょうね…
松村:フリーランスに近い立場でも、ちゃんと通用する・稼ぐことができるという事実が欲しいんです。承認欲求に近いんですね。副業している人を集めた飲み会をたまに行っていますが、副業したい人はかなり我が強い人が多いです。
ー実際に現場で活躍できる人はどういう方が多いのですか?
松村:スキルの高いエンジニアであったとしても、副業先だと評価されないみたいなケースもあるので、副業に必要な適性があると感じています。
例えば、コミュニケーション能力があるかどうか。普段のコミュニケーションだけでなく、チャットやミーティングでの会話も大切です。仕事ができる人は次のアクションまでその場で決めることができます。そうすれば会議の質も上がりますよね。
プロダクトの課題まで考えて業務をこなせている人、オーナーシップをとって仕事ができる人も活躍できている印象です。また、副業も楽しいことばかりではないのでストレス耐性があるかどうかも重要です。
ーそういった性質があるかどうかは、事前に見極められていますか?
松村:副業を紹介する前に面談をしているのですが、これからはスキル以外の部分を点数化できるようにしていきたいですね。そのうえで、副業に必要な能力みたいなものを一緒に伸ばしていくことができたら良いですね。それらのスキルがあったら、本業でも活躍できるはずです。
ー副業しようとしている人にとって、何が一番障壁になってしまっているのでしょうか?
松村:「副業の人に対しての業務の切り出し方」や「どういう仕事が副業に向いているのか」といったノウハウが世の中に無いことだと思います。
緊急度や重要度、ビジネスモデルや業種よって、誰に任せるべきかは変わってくると思うので、それを探して発信していきたいと思います。知られていないことを知る状態にすることがまず障壁を越える第一歩かもしれないですね。
最近は大手のクライアントも増えているんですよ。人事と手を組んで、社内向けの勉強会を行うのも良いかもれないですね。
津田塾大学英文学科に在学。趣味は映画鑑賞、ダンス、旅行、ライブに行くこと。
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