TOP > インタビュー一覧 > 今、スタートアップが「アート×ビジネス」の融合拠点に入居する理由 多種多様な芸術家と起業家が結び付く"職種のるつぼ"京都芸術センターを入山氏が特別取材!【後編:入居企業インタビュー】
京都市都市経営戦略アドバイザー入山 章栄氏
早稲田大学大学院経営管理研究科早稲田大学ビジネススクール(WBS)教授。慶應義塾大学院経済学研究科修士課程修了後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号を取得し、同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。WBS准教授を経て、2019年に現職へ。「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)等の著書のほか、メディアでも活発な情報発信を行っている。
本動画では、「京都の文化芸術×ビジネス【後編】」として入山氏による芸術センターに入居しているスタートアップ企業のインタビューを紹介する。
(【前編】では、京都芸術センターの施設を詳しくご紹介)
京都芸術センターが行っているのは、アーティストだけでなく一般企業も誘致する取り組みだ。
文化芸術とビジネスを結び付け、新しいタイプのイノベーションを起こすことを目的として開始された。
入居した若い起業家たちはどんな未来を想定しているのか、芸術家とビジネスをどう融合させるつもりなのか。
若い起業家たちにインタビューを行った入山氏は、経営学者であり「京都市都市戦略アドバイザー」でもある。
このインタビューから見えてきたのは、入山氏の想像を超えた可能性が京都にはあることだ。
ぜひ動画をご覧いただき、芸術センターの新しい挑戦を知っていただきたい。
【前編】では「不思議な空間」芸術センターの館内をご紹介!
https://kigyolog.com/interview.php?id=222
このページの目次
入山氏と庄司氏
「京都芸術センターは、アーティストとビジネスパーソンがつながる場所になるので、『芸術とビジネスの融合拠点』としての活躍が期待できます。」と入山氏は語る。
入山氏が話をうかがったのは、京都芸術センターに入居中の『株式会社 みたて』 庄司英生氏だ。
『みたて』は、欧米とオーストラリアのミドル富裕層をメインターゲットにしている旅行会社で2014年創業のスタートアップ企業である。
画像出展元:株式会社 みたて公式HP
庄司:プライベートジェットに乗るようなトップ富裕層と、パッケージツアーを利用する一般の人々の間に位置するのがミドル富裕層です。
入山:1回の旅行で100万円くらい消費するのがミドル富裕層ですね。芸術センターへの入居を決めた理由を教えてもらえますか。
庄司:海外の旅行会社の方が自社を訪れる機会があり、無味乾燥のオフィスで仕事をしてるのと、和室で仕事をしてるのでは見え方が違います。
入山:イメージ作りや自社のブランディングのためですか?
庄司:はい、一風変わっていて、日本らしさがあり、歴史があって、かつモダンなところを探していました。
さらに、「ここは昔の名士の方たちが学問の場所をつくるために建てた、という歴史がありますよ」というストーリーを海外の方に語れるメリットもあります。
入山:ミドル富裕層の心を引き付けるためには、「京都には100万円を払う価値がある」と思ってもらわないといけません。
歴史ある建物をみてもらうことが「京都の価値アピール」につながりますが、そのために自分のオフィスを使っているんですね。
庄司:豪華なオフィスはお金を出せば手に入りますが、芸術センターにはお金では買えない歴史や時間をかけてつくられた価値があります。
入山:アーティストとの交流に関してはいかがですか。
庄司:海外ではアートの需要が高いということで、我々も日本のアートツアーを計画していますが、芸術家との交流不足が課題です。
これからたくさんのアーティストと知り合えれば、芸術家と世界の旅行者をマッチングさせることができます。
入山:海外の方にアーティストのスポンサーになってもらう道もありますよね。
庄司:海外では日本よりも芸術の評価が高く投資する額が大きいので、アート作品の売買においても海外のほうが可能性があります。
入山:今年が飛躍の第一歩だと思いますが、抱負を聞かせてもらえますか。
庄司:今は海外の旅行会社の開拓をしている段階です。
入山:今は土台をつくっているんですね。旅行会社をつかわずに自らウェブサイトで調べるミドル富裕層もいると思いますが、海外広報についてはいかがですか。
庄司:ミドル富裕層はあまり自分では調べません。情報量が多すぎて時間がかかるので、信頼している旅行会社に相談します。我々はそういった海外の旅行会社からのリクエストを受け付けています。
たとえば「人間国宝と一緒に焼き物を焼きたい」だとか。叶えるのが難しいリクエストに答えています。簡単で報酬が安いリクエストではなく、依頼数は少なくても難易度が高く報酬も高いリクエストですね。
入山:どうもありがとうございました。これからの活躍を期待しています。
入山氏と炭谷氏
炭谷 翔悟氏は、『学生e-Sports連盟』を京都大学在学中に立ち上げて、現在は理事長を務めている。
eスポーツ大学対抗戦はオンラインで繋がれるので、日本全国の大学が加盟しているとのこと。
しかし、学生が運営している団体ならではの悩みもあるようだ。
画像出展元:学生e-Sports連盟公式HP
炭谷:「eスポーツ大学対抗戦という文化」を、京都から発信したいと思い芸術センターへの入居を決めました。
「手作り感があるとたくさんの人に見てもらえない」という課題があるので、アーティストの方にeスポーツ大学対抗戦の知名度を上げるための「魅せ方」を教えてもらいたいです。
入山:『学生e-Sports連盟』は学生達が運営してるので、「所詮アマチュアでしょ?」という見られ方をしてお客さんが集まりにくいんですね。
炭谷:はい、その世間からの認識を変えるためにプロのアーティストの力を借りて「魅せるeスポーツ」にすることを目標にしています。
入山:具体的には、どのジャンルのアーティストさんを希望していますか?
デザイナーさんに協力してもらって、ブランディングを強化し、「我々がどういった想いで運営しているか」「我々のこだわり」が伝わる大会を開催したいです。
入山:オンライン配信をする際に、コストを極限まで抑えつつ見栄えを良くするためにもアーティストの力が役に立つので相談してみてください。
入山:ゲーム×ビジネスといえば、トラビス・スコットがフォートナイト上でコンサートをして短時間で大きな利益を出しました。
※トラヴィス・スコットが『フォートナイト』で行ったバーチャルライブ『Astronomical』ではグッズの利益も含めて約2,000万ドルを売りあげたと米Forbesが発表。
ゲームの世界でビジネスが行える時代になったので、京都の芸術家がゲームの世界で作品を売買をするなど、いろいろな可能性がありますね。
炭谷:僕は『学生e-Sports連盟』を箱根駅伝のようなものにしたいんです。
入山:日本最大の大学イベントですね。
炭谷:eスポーツのサークルは短期間で廃部になるところが多いのですが、長く続いているサークルは戦略やブランディングが優れていて強い傾向があります。
サークルの歴史をつくれば、eスポーツ全体がレベルアップします。そのためにも、大学対抗戦の知名度を上げないといけません。
箱根駅伝のように、応援してくれるお客さんやスポンサー企業とつながれると、eスポーツ大学対抗戦のビジネスモデルが成り立ちます。
入山:その夢を実現させるために、芸術センターのアーティストと交流してブランディングを強化し、そして面白いことをする予定なんですね。
炭谷:元々収益化を目的にしてない団体なので、ビジネスというよりeスポーツの文化をつくることや人材を育てていきたいです。
入山:ありがとうございました。今後の活躍を楽しみにしています。
入山氏と小谷氏
『株式会社 街ツク』の小谷 真功氏は、「人口の一極集中が日本社会の課題だと思います」と語る。
前職で採用職に就いていた小谷氏は、「若者の多くは東京で就職したがる」と気づいて問題意識をもったようだ。
東京以外にある面白い仕事を知らせることや、人材不足の地域企業の採用支援を行うことで地域の活性化に貢献することが『街ツク』のミッションである。
しかし、まだ明確な事業内容は定まっておらず模索中だという。
「模索中の起業家でも入居できるのが芸術センターの魅力であり、未知の可能性を感じさせる部分でもある」と入山氏は述べた。
画像出展元:株式会社 街ツク公式HP
入山:世の中には、起業したいけれどビジネスモデルが定まってなくて模索中の人がたくさんいます。小谷さんもまだ模索中の段階ですが、模索中の方でも、芸術センターに入居できるんですね。
山本:アーティストもまだ道が定まっていなくて模索中です(笑)
入山:なるほど(笑)模索中の者同士が融合する場所でもあるんですね。小谷さん、芸術センターを選んだ理由を教えてもらえますか。
小谷:”京都”という市が運営している芸術センターに入ることで「信頼できる会社だ」と思ってもらいやすいと考えたからです。
他にも、僕が行うビジネスとアートには通じる部分があると思ったことも理由です。
入山:僕が面白いと思ったのは、まだ事業内容がはっきり決まってない起業家でも入居できるという点です。
牧澤:ただの場所貸しにはしたくないので面談でしっかりとチェックしますが、明確な意思があると判断した場合は模索中の方でも入居できます。
入山:イノベーションは離れている人同士が出会って起こるので、偶然の出会いがきっかけになることがよくあります。
芸術センターには、アートとビジネスを掛け合わせる目的で入居する企業が多いと思いますが、そうではない企業だと偶然の出会いが起こりやすいでしょう。
牧澤:その通りです。「なにが起こるかわからへん」という状態に可能性を感じます。
入居企業を決める際の話し合いでも同じ話題になり、できるだけ決めごとを少なくしようという方針になりました。
「単なる場所貸しにはしない」という条件は絶対に守りますが、「熱い思いがある方」なら入居できます。
入山:小谷さんは熱い思いが十分にありますよね、人間的な誠実さもとても伝わってきました。
シリコンバレーのベンチャーキャピタリストに、投資先を決める際の判断基準を聞いたら、「人柄しかみない。ビジネスモデルはどうでもいい。どうせ失敗するから。でも、人間性が優れている人なら、失敗を何回も繰り返しても最後には何かしてくれるだろう。」と言っていました。それと同じですね。
小谷さんには、これから頑張っていただければと思います。ありがとうございました。
京都芸術センターには模索中の起業家も入居していると知って、入山氏は驚きが隠せない様子だ。
しかも、アーティストたちもまだ模索中の段階。
模索している者同士が結び付けば、既存のビジネスでは考えられないようなイノベーションを起こせる可能性がある。
芸術センターアーツアドバイザー山本氏は「日本画の巨匠と若手起業家がいる不思議な空間だからこそ、新しいなにかが生まれると思う」と語る。
「ここは新しいイノベーションが起きそうな場所」と入山氏も述べた京都芸術センターでは、相談や問い合わせを大歓迎しているという。
京都市文化芸術企画課の事業推進担当課長 牧澤氏は「入居しているアーティストや起業家はもちろん、外の芸術家や企業の紹介もできます」と話した。
ぜひ京都市の文化芸術サイトにお問い合わせいただきたい。
お問い合わせはこちらから
https://www.kac.or.jp/
動画の【前編】も、どうぞご覧ください!不思議な空間の魅力を入山氏が語ります!
https://kigyolog.com/interview.php?id=222
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