TOP > インタビュー一覧 > 今、スタートアップが「アート×ビジネス」の融合拠点に入居する理由 多種多様な芸術家と起業家が結び付く"職種のるつぼ"京都芸術センターを入山氏が特別取材!【前編:施設紹介】
京都市都市経営戦略アドバイザー入山 章栄氏
早稲田大学大学院経営管理研究科早稲田大学ビジネススクール(WBS)教授。慶應義塾大学院経済学研究科修士課程修了後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号を取得し、同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。WBS准教授を経て、2019年に現職へ。「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)等の著書のほか、メディアでも活発な情報発信を行っている。
京都芸術センターアーツアドバイザー山本 麻友美氏
「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」アートディレクター、京都市文化芸術総合相談窓口(KACCO)統括ディレクター等を経て現職。2023年4月より京都芸術センター副館長。これまでの主な企画は「東アジア文化都市2017京都 アジア回廊現代美術展」(二条城・京都芸術センター、2017年)「光冠茶会」(オンライン茶会、2021年)など。研究者と実務家などで構成される「新しい文化政策プロジェクト」のメンバーでもある。
京都市文化市民局 文化芸術都市推進室 文化芸術企画課事業推進担当課長 牧澤 憲氏
11年間の民間企業勤務を経て、2007年4月京都市役所入庁。主に観光振興、産業振興セクションにて、観光振興計画の策定や産業振興施策の立案・事業実施に携わる。2022年4月より現職、各種文化事業の企画・実施を行うとともに、アートとビジネスを結びつけ、新たな価値の創出と発信、文化と経済の好循環を実現すべく、日々奮闘中。
今回紹介するのは、京都市のアーティストを支援する活動拠点である京都芸術センターだ。
ビジネスにおいても文化芸術の役割が注目される中、京都芸術センターではアーティストだけでなく企業も誘致する取り組みを始めている。
京都芸術センターを訪れたのは、経営学者であり「京都市都市戦略アドバイザー」でもある入山章栄氏。
アーツアドバイザーの山本 麻友美氏と京都市事業推進担当課長の牧澤氏による案内のもと、入居中の若手起業家やアーティストの話を聞いた入山氏は「新しいイノベーションが起きそうな場所だ」と述べた。
誰も思いつかないような斬新なアイデアを創出すること、それが京都芸術センターの狙いだ。
【前編(本動画)】では芸術センターの施設案内、【後編】では芸術センターに入居しているスタートアップ企業のインタビューを紹介するので、ぜひご覧いただきたい。
後編はこちら
このページの目次
画像出展元:京都芸術センター公式HP
京都芸術センターは、京都の芸術分野での総合的な振興を目指して2000年4月に開設した。
京都芸術センターの機能は3つあり、1つ目は「芸術家の支援」、2つ目は「アートに関する情報を収集&発信すること」、3つ目は「交流を促すこと」だ。
これまでは、芸術家同士の交流、市民と芸術家の交流が中心だったが、これからはさらに範囲を広げてアーティストと一般企業がつながることも目指している。
そのための第一歩として、アーティストだけでなく一般企業の誘致も開始したのだ。
左から、山本氏、牧澤氏、入山氏
<動画より一部抜粋>
入山:アートとビジネスの融合を試みているんですね。
牧澤:はい、スタートアップ企業をはじめアートに関心があって芸術家との繋がりを求めている企業を募集しています。
入山:最近は『「芸術」と「ビジネス」の融合が大切だ』と僕の周りでも盛り上がってますが、まさにそれを実践されているんですね。
牧澤:センターが持つ機能と企業のニーズをマッチさせて、新たな融合・イノベーションを起こしていきたいです。
入山:こうして我々が話している最中にも、どこかから謎の民族音楽が聞こえてきますが(笑)これこそが融合で、こういったハプニングが大切なんですよね。
牧澤:はい、実は、予期せぬハプニングこそが「アートの世界」なのだと思います。
入山:ハプニングから予想外のなにか(イノベーション)が生まれる可能性がありますからね。
京都芸術センターは、明治2年(1869年)に下京三番組小として開校した元明倫小学校の建物を利用している。
昭和6年(1931年)の大改築により現在の姿になったが、赤みを帯びたクリーム色の外壁、オレンジ色のスぺイン風屋根瓦、緑青色の雨樋が印象的だ。
館内は和モダン&重厚な造りで、よくあるオフィスビルとはまったく違う雰囲気である。
入山:建物の雰囲気がすごいですね。
牧澤:昭和に建てられた建物で地元の方の寄付をもとに非常にお金をかけたつくりになっています。 今こういった建物を建てようとすると金額的なハードルが高いですし、建てようと思う人も少ないでしょう。
<京都芸術センター1Fフロアマップ>
画像出展元:京都芸術センター公式HP
※2階には制作室、大広間、講堂など、3階には制作室、ミーティングルームあり
詳しくはこちら
京都芸術センター1階にあるカフェは、厨房が金氏徹平氏の《tower(KITCHEN)》という作品でできている。
金氏氏は京都市立芸術大学の准教授を務める彫刻家だ。
金氏徹平氏プロフィール
https://www.kcua.ac.jp/professors/kaneuji-teppei/
入山:カフェがあるんですね。
牧澤:カフェはサロン的な役割を果たしています。元々は小学校の教室として使われていた部屋をこのカフェの趣旨に合わせてリノベーションしました。
このカフェは結構有名で、旅行雑誌に取り上げられたこともあります。
情報発信をするための情報コーナーには、京都近郊で展示会などをするアーティスト達が持参したチラシや資料が置いてある。
アートファンから「ここには大体の情報が揃っている」と評判の場所だ。
入山:この時代に紙のチラシというのが、逆に良いですね。
音楽系から美術系まで、たくさんの種類があって、京都に限らず様々な地域のチラシがある…“なんでもある“というのが、良い意味でごちゃごちゃで面白いですね。
山本:こちらが相談窓口で、アーティストや起業家など、芸術関連の相談なら誰でも利用できます。
最も多いのは、「市からどういったサポートを受けられるか」といった相談ですね。
入山:「このジャンルのアーティストと繋がりたい」「借りれる場所があるか」などを起業家が質問できる場所があるのは助かりますね。
図書室には芸術文化関係の本が置いてあり、ギャラリーにはアートコーディネーター等が見つけてきた全国各地のアーティストによる展示会が開催されている。
山本:主にアートコーディネーターが展示会の企画をしていて、入居しているアーティスト以外の作品もたくさん展示しています。そして、どなたでも作品を見に来れる場所です。
今は(2023年2月23日(木・祝)-3月26日(日))、國盛麻衣佳さんとOlectronicaさんの「記憶への手つき」という展覧会をしています。
https://www.kac.or.jp/events/33051/
次はアーティストや起業家が使用する「制作室」の紹介だ。
制作室は、1つの教室を2つに分けてつくられていて、賃料は1ヶ月約8万円である。
牧澤:ここは小学校の教室を半分に区切ってつくった制作室です。手前の部屋には一般企業が入居していて、奥の部屋にはアーティストがいます。
入山:同じ階に起業家とアーティストがいるんですね。謎空間で良いですね!黒板は仕事でつかえるので便利だと思いますし、僕もこの部屋を借りたいです(笑)
芸術センター2階には、日本画家の畠中 光享(はたなか こうきょう)氏が入居しているというから驚きだ。
日本画の巨匠 畠中氏は、芸術センターをどのように活用しているのだろうか。
左から、畠中氏、山本氏、入山氏
入山:芸術センターを選ばれた理由を教えていただけますか?
畠中:家だと狭くて作業しにくいのですが、ここは広くて天井が高くて大きいものを書く時にすごく助かります。
私の作品2点が京都国立近代美術館に入ることになりましたが、その中の1つは芸術センターで描いたものなので、とってもありがたいです。
入山:素晴らしいですね。美術館に収蔵される作品がここから生まれています。
畠中:僕は若い人も同世代だと思っています。なにかを好きになったり、年をとるのは同じですからね。長い歴史の中でみたら、20歳も30歳も年が離れている人でも同世代にみえるはずです。
入山:芸術センターには、世代の違う人だけでなく違うジャンルの芸術家もいて、今度はビジネスパーソンも入居されますが、そういった方との交流も楽しみにされてますか。
畠中:他分野の方と交流することに抵抗はないですね。ただ、僕がもったいないと思うのは、若いアーティストが絵を描く準備を十分にしていないことです。僕は準備を先にしておいて、制作室に来たら必死で描きます。
山本:先生が若いアーティストのお手本になっています。
入山:近くに先生がいて「芸術との向き合い方」を見せてくれるのが、若いアーティストや他分野の方にとても勉強になると思います。
山本:また交流会を企画していますので、その際は先生、よろしくお願いします。
畠中:こちらこそ、よろしくお願いします。
入山:貴重なお話をありがとうございました。
画像出展元:京都芸術センター公式HP
日本画の巨匠と若い起業家が同じ建物にいることを肌で感じ、入山氏は芸術センターに新たな可能性を感じたようだ。
芸術センターに関心がある方は、ぜひ京都市の文化芸術サイトからお問い合わせいただきたい。
お問い合わせはこちらから
動画の【後編】も、どうぞご覧ください!若手起業家のインタビューは必見です!
https://kigyolog.com/interview.php?id=223
入山:京都芸術センターはすごいですね、まさにカオスです。
山本:今日はご紹介できませんでしたが、若いダンサーや劇団、画家なども入居しています。
入山:同じ建物に日本画の巨匠とまだ事業が定まらず模索中の青年もいる、謎の空間ですよね。
山本:そんな不思議な空間だからこそ、新しいなにかが生まれるのだと思います。
入山:スタートアップだけでなく、大企業の戦略会議室などもあったらさらに面白いかもしれませんね。
牧澤:今は企業の新規申し込み受付は行っていませんが、入居しているアーティストや起業家と接点を持つことはできます。
入山:つながりをつくればイベントの開催もできますよね。
牧澤:入居中のアーティストだけでなく、外のアーティストとも繋がれますし、他の企業様と繋がるためのお手伝いもいたします。
入山:芸術センターは、新しいイノベーションが起きそうな場所ですね。
山本:芸術センターは「るつぼ」というコンセプトでつくられました。だから、いろいろなものが混ざり合って新しいものができることを期待しています。
入山:興味がある方は、ぜひお問い合わせください!
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