TOP > インタビュー一覧 > 起業から半年で資金調達に成功! 株式会社Srush 〜セールステック業界に革命を起こす〜
先日、起業からたった半年で資金調達を成功させた注目のセールステック企業「株式会社Srush」。
Srushというのは「Sales Rush」の略。
「ゴールドラッシュという言葉がありますよね。新しく金が発見されたところに、人々が押し寄せることを言います。
それと同じで、『営業担当者がもっと営業に行ける世の中にしたい』という思いが込められています。」
そう語るのは株式会社Srushの代表取締役である樋口 海氏。
コロナ禍において対面コミュニケーションが減少し、営業の課題が浮き彫りになってくるこの時代にセールステック革命を巻き起こそうとしている。
今回は、そんな樋口氏に取材し、起業の裏側や資金調達の実態について伺った。
プロフィール
樋口 海/ 株式会社Srush 代表取締役
10年間の営業経験から「第一想起を得ること」の重大さに気付き、そこから今のサービスを作るに至りました。
NTTで働いていた頃も、製造業向けソフトウェア企業を作った頃も、基本的に競合が10~15社くらいいる業界でずっと働いてきました。東京のNTTで営業を担当していた頃は、RFP (注:発注者が開発提案をするように開発者に対して求める依頼書) が出たら15社くらいのコンペが当たり前の世界だったんです。
その中であるとき、RFPが出た時点で実はもう競合他社に負けていると気づいたのです。お客様は、RFI(注:情報提供依頼書)→RFP→RFQ (注:見積依頼書) の流れでベンダーに依頼をしますが、RFPが出てしまった時点でお客様の第一想起を得られていないということになるからです。
従って、第一想起を得てRFIを依頼されなければその時点で競合他社に負けているということになります。
それは、10年間でお客様との関係をたくさん築いてきたからです。
私はお客様と関わるのが好きで、営業そのものが大好きです。実際、NTT時代はほとんど会社に出社せず週5日くらいはお客様のところに行っていました。そうこうしていると何気なく「この案件・情報について知りたいんだけど、樋口さん何か知ってる?」と相談されるようになりました。
この様に「困ったときにまず相談する人」になった結果、案件も自然に頂けるようになり、私が15社のベンダーに対してRFIを作る様になりました。この第一想起を得たことで案件は勝手に降ってくるようになり、10億円という案件を受注をすることもできました。
営業は基本的に、「この商品買ってくださいよ」と売り込む印象ですが、私の中ではそれはあまり意味がないことで、お客様に相談される関係であって初めて提案ができると思っています。
10年の法人営業経験を通して、この第一想起される信頼関係をお客様と作ることが営業にとって一番重要だということを学びました。
はい。初めて起業をしたときは、製造業向けの原価計算ソフトウェア企業を大学院時代の知り合いと作りました。COOとして共同創業して、プロダクトを開発し、営業し、顧客も増え、資金調達も順調に進みました。でも、さぁこれから拡大していくぞ、というタイミングでこの企業から抜けることにしたんですよね。
理由はいくつかあるのですが、営業の在り方に疑問を感じたことが主な理由です。
自分の会社を作って、営業してみたら、自分が一番大事にしていたお客様との信頼関係の構築が出来ませんでした。そのプロダクトは営業無しでは売れないようなプロダクトだったので、お客様との信頼関係の構築が非常に重要なのですが、その関係構築を後回しにして販売してしまった結果、解約などが当然のように発生していました。
最初はスタートアップのスピード感にのまれたからだと思っていたのですが、大企業であるNTTにいたときにも組織の大きさにのまれ、同じような経験をしていたことを思い出したのです。
つまり、企業規模が問題なのではなく、お客様との信頼関係を契約前の段階から築いていたかどうかが、契約が長さを決めるのだと1回目の起業を通して気づいたのです。契約してからの関係構築だと遅いんですよね。
そして、「営業担当者がお客様との関係構築を最優先に考えられる世の中にしたい」という自分が本当にやりたかったことに気付き、2回目の起業を決意しました。
目指している世界は、競合他社との差別化ができていない企業が「〇〇といえば(企業名/担当者名)」という第一想起を得られる世の中です。
それを実現できるようなサービスを我々は提供しています。
具体的には、お客様と担当者の関係をスコアリング (点数化)して、お客様のエンゲージメント (お客様との信頼関係) を可視化することでいつでも受注できる環境を整えます。
エンゲージメントが高い状態こそが、第一想起を得やすい状態です。
今まで営業は、売上のようなKPIをずっと追っていました。しかし、コロナ禍のように人となかなか会えない状況で、今までのように案件や利益だけを見て仕事をしていたら、お客様との関係が遠のき、案件の切れ目が縁の切れ目になってしまいます。
この状況を作り出したのはセールステックなのではないかと考えます。というのも、ほとんどのセールステックが案件管理がメイン機能だからです。それを使ううちに営業は、お客様を案件としか見なくなり、人として見なくなってしまったのです。
従って、我々はこの会えない状況の中だからこそ、お客様を案件として見るのではなくて人として見て信頼関係を構築をするためのお手伝いをしております。
具体的に作っているのは、カレンダーインターフェイス (カレンダーを起点とした)の機能です。
今までのセールステックは比較的管理者目線が多かったのですが、我々は担当者にとって使いやすいインターフェイスを追求しています。そこで集められたデータを元に、担当者とお客様の関係をスコアリングしています。
営業担当者はカレンダーを多用するので、カレンダーを起点にメール、日程調整、名刺管理、そして乗り換え検索ができると便利なはずなんです。
例えば、オンラインミーティングを設定すると、自動で相手にzoomのリンクが飛び、名刺管理も、顧客情報をインポートし登録して頂ければ、先方のオフィスの住所も自動で登録され、更に自動で乗り換え案内もしてくれます。
このように営業にとっての利便性を高めた上で、お客様のエンゲージメントをスコアリングします。
カレンダーを起点に日程調整・名刺管理・エンゲージメントのスコアリングを全て自動でしてくれる
まだ起業して1年しか経っていないということもあり、特別大きい失敗は無いですね。
特に、ファイナンス面では前回の起業の経験もあって戦略的にできました。しっかりと金融機関から融資を受けて、ベンチャーキャピタル (VC) からも調達し、足りない分は補助金にも申し込みました。
人事面に関してもしっかりと考えられたと思います。特に、共同創業者でありCTOの山崎さんとの出会いがSrushにとってとても大きかったです。彼との出会いはyenta (イエンタ)というビジネスマッチングアプリでした。山崎さんは元々あるベンチャー企業のCTOをやられていた方でした。私自身は前の会社でCOOをやっていたので、COOとCTOで相性が良さそうだということですぐに意気投合しました。
更に山崎さんとは、共通の思いがあったことも大きいと思います。
私も山崎さんも前職で働いていた会社では、意思決定の基準がプロダクトでした。そこで2人の中で共通して感じていたことが、「意思決定の基準を人に持っていきたい」ということでした。
つまり「もっと人を大事にする会社を増やしたい」という点で共通のビジョンがあったことが、山崎さんと一緒に会社を立ち上げた決め手でした。
我々は、2019年11月に設立して2020年12月にプロダクトをリリースしましたが、資金調達自体は2019年5月に完了していました。
従って、5月の時点ではプロダクトもまだ無い状態だったんです。
それなのになぜ我々が資金調達できたかと言うと、今回が2回目の起業だったからだと思います。すでに人脈があり、どうすれば投資家の皆様に刺さるのかといった起業のノウハウが分かっていました。
更に、10年間の営業経験も活きたと考えています。というのも、起業家と投資家の関係も結局は、お客様との関係のようなものです。従って、投資家と接する際には、お客様と築くような関係構築を心がけました。
あとは基本的なことですが「いつ・誰が・なぜ、そのビジネスをするのか」という5W1Hや「どう伸ばしていくのか」を明確に伝えることです。
例えば、私の場合は「営業を10年やっている樋口海という人がこのコロナ禍でお客様との関係が見えなくなった今、セールスエンゲージメントツールを作ります。営業担当者にとって使いやすい機能を開発することで、担当者にも使われ、データを集めることができます。そのデータを使って、顧客との関係性を数字で可視化するという今までできなかったことが実現できます。だからこのサービスが必要なんです。」といった具合です。
このように5W1Hを明確に伝えたことが投資を受けることができた1つの理由ではないかと思います。
そもそもプロダクト自体が無かったので、ベータ版の製品開発をしてユーザーの感触を知りたいというのが第一の目的です。
そして、12月にベータ版がリリースされて、ベータ版はある程度完成してきていますので、第二の目的であるユーザーの獲得に使っていく予定です。
次回の資金調達する頃には正式版に向けてもっと営業担当者が使いやすい機能を実装していきます。私自身が次に実装したい機能は、商談前後の効率化なんです。商談するための準備には実際物凄い時間がかかります。
従って、次回の正式版では、アジェンダや商談記録の自動作成なども検討しています。
あります。SFA/CRMとの連携やエンゲージメントツールで分析したスコアからわかる、お客様の潜在的な心理に対して適切なアクションを自動でする、ワークフローオートメーション (業務の自動化)を考えております。
例えば「お客様の関心が下がっているときにミーティングの日程調整が自動でされる」とか「信頼が下がっているときに資料が自動で先方に送られる」といったアクションです。ここまでできるような機能があればとても営業の仕事が楽になりますよね。
起業したいと考えているのであれば、まずは自分と近い起業家の話を聞くことだと思います。今だったら2018-2019年頃に起業をした人の話を聞くことです。特に、2019-2020年に資金調達のプレスリリースを出した企業ですとより良いと思います。
というのも、7~8年前に起業した人たちの話を聞いても、当時とは環境が全く違うのであまり参考にならないからです。
そして、爆速で成長していない企業の話を聞くことがおすすめです。というのも、いきなり爆速成長している企業の話を聞いても世界観が違いすぎて、参考にならないことが多いからです。
とにかく、起業したいと思ったら自分と近い人たちの話を聞きに行くことから始めて欲しいです。
もし周りにそのような人がいなかったら、私に聞いていただいても構いません!(笑)
ただ、起業する人は能力が高くて過信家が多い。そのような人たちは、人の話を聞くだけではやっぱりダメで、実際に自分で痛みを味わわないと学べないこともあります。実際、私も1回目の起業のときは自分の能力を過信し、多くの失敗を経験したことで色々なことを学びました。そして今Srushではその学びを活かして、同じ轍を踏まないようにしています。
ーこれからの成長が楽しみですね。ありがとうございました!
株式会社Srush HP:https://www.srush.co.jp/
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