withコロナ時代にシリアルアントレプレナーが起業する理由

withコロナ時代にシリアルアントレプレナーが起業する理由

記事更新日: 2020/05/25

執筆: 吉田ひかる

以前も起業ログのインタビューに応じてくださった宮地俊充氏が、新しい顔で起業ログの記事に再び登場!

これまでに、エンジェル投資家・シリアルアントレプレナーとして活躍してきた経歴を持つ彼が、なんとこのwithコロナ時代に起業をしたのだ。

今回は、様々な壁のあるこの時期に彼が起業を決意した背景に迫った。

プロフィール

宮地俊充

青山学院大学を卒業後、監査法人、M&Aファーム、ITベンチャーのCFOを歴任。2011年にオンライン英会話スクールの株式会社ベストティーチャーを創業。2016年にSAPIX YOZEMI GROUPに売却、2017年12月に代表取締役社長を退任し、その後、エンジェル投資家として投資活動、音楽活動等を行う。2020年5月にwithコロナ時代に合った自宅フィットネスサービスを提供する株式会社Boot homeを設立。

 

コロナ時代に起業を決意したきっかけ

ーまず、以前経営していた企業を売却したことを踏まえて、どのような経緯で起業したのかをお聞かせください。

今まで自分で経営していたベストティーチャーという会社を2016年に売却しました。その後、投資活動をしながら、自分の趣味である音楽活動等を行っていました。その後、活動がひと段落したところでメンバーと共によりテクノロジーに寄せたエンタメ事業を探していたのですが見つからなかったんですね。

そんな中、2020年2~3月くらいにコロナが流行し始め、投資家や起業家の間では「スマホ以来の革命だ!」という話をするようになって、だんだんと自分でも改めて起業したいという気分が高まりました。要は、色んな人との話で知見が高まっていきこれならイケるのでは?というビジョンが見えたという感じですね。

 

ーなるほど。では、この事業のアイディアはどのようなタイミングで思いついたのでしょうか?

自分はもともとジムに通っていたのですが、コロナのせいでジムも行けないし子供も小さいのでリフレッシュの時間が必要でした。そこでzoomでやっているようなオンラインヨガレッスンを見つけて、妻に受けてもらったんです。

すると、面白いことに気がつきました。

仕組みを見ると、昔自分がやっていたオンライン英会話にそっくりでした。英会話と違い、オンラインフィットネスは創生期だからだと思いますが、もっと洗練できると思いました。そして、ヨガだけではなくダンスエクササイズや筋トレ、瞑想などもできる総合型のオンラインのフィットネスクラブを作ったら良いのではないかという結論に至りました。

またこの事業には、”stay at home “という世界共通で発生しているペインがあることで、グローバルな市場を狙える可能性もあると思いました。本来、グローバルに展開する場合はローカライズしていく点が難しかったわけです。しかしwithコロナの状況では、家にいることは日本人もアメリカ人もインド人も変わらないので、それほどローカライズする必要がないのでは?というのが当初の仮説でした。そしてこの事業には、自分たちがこれまでやってきたオンライン教育やネットエンタメの強みも生かせると思います。

 

ーもともと事業を探していたこともあって実行に移せたのですね。とはいえ、コロナ時代での起業は壁も多いと思います。起業のモチベーションはどこにあったのでしょうか? 

前の会社をExitした後に、ご多分に漏れずエンジェル投資活動をしていました。もちろん、株主として全力支援しましたし、株をいただいている者として責務を果たしたいと思っているのですが、本心を見つめて直してみると自分がベンチャーを経営している時ほどの興奮はできていませんでした。

今更ですが、自分はサポーティブな性格ではなく、自分で会社を立ち上げる方が向いていると思いました。

4月上旬に先ほどのアイディアを思いついて、コロナの自粛ムードで沈んでいた自分のテンションが一気に上がり、2~3日で企画書を作成しました。

そして、「どこのポジショニングが良いのか」「どういう風に市場を取っていけば良いのか」などを調査していくうちに、この事業の勝算がみえました。

ーこの「ガチ層」と「とりあえず層・休眠層」はどのように違うのでしょうか?

筋トレに関して言えば、コンテストなどに出るような方で、器具を使って鍛える必要のある人ならばジムに行かないと厳しいと思いますが、今回の事業ではオンラインでも価値提供できる「自重層」を狙っています。

また、ヨガは常温バージョンとホットバージョンがありますが、ホットバージョンは施設がないとできないので常温でもやりたい層を狙っています。

 

ー今のところ総合型ということですが、重点領域はあるのでしょうか?

会員の予約状況によって重点領域とするカテゴリーを作る予定ではありますが、予約状況の様子を見ながら、顧客に合わせてフェーズごとに決めていこうと思っています。

 

信頼しきった仲間と自身の経験を総動員した走り出し

ー企画書を作成してからはどのように動いていったのでしょうか?

企画書ができたらすぐに一緒に働きたい方に声をかけてきました。コロナ時代は業務がほとんどリモートです。

対面で面談をして、オフィスで一緒に働くことはできません。お会いしたことのない方を最初のチームに入れるのはリスクが高すぎるので、今まで一緒に働いたことのある方や、パートナー企業でご一緒したことのある方のみに声をかけました。

 

ーでは、現在はどのようなチームで事業を行っているのでしょうか?

現在のチームメンバーは14人です。内訳は、COO、CTO、デザイン・エンジニアチーム、マーケティングチーム、映像チーム、フィットネスのプログラムごとの監修者ですね。また、トレーナーやインストラクターは別途集めていきます。

 

ーそうなんですね。では、そんなフィットネス事業のユニークポイントを教えてください 。

はい。この資料を見てもらえるとよくわかると思います。

1つ目の特徴としては、特化型ではなく総合型を狙っているところですね。コナミスポーツさんなんかに近いイメージです。

2つ目の特徴は、英会話スクールを経営していた時に世界60ヵ国のマネジメントしてきた経験を生かして、世界中からトレーナーを集めます。

また3つ目に関しては、これまでエンタメに関する事業を行ってきた経験を生かします。

 

ーこれまでの経験がかなり生かされていますね。このサービスをローンチするのはいつ頃でしょうか?

7月の下旬を予定しています。トレーナー、コンテンツともにリリース時点から質に拘っていきます。

 

事業・組織・財務の三位一体で確実な成功を狙う

ー今まで起業家、投資家という順番で両方のキャリアを積んできましたが、再び起業家として活動する際に、客観的に見て今回の起業を成功させるためにどこが重要になると思いますか?

一番重要な点と言うと難しいですね。というのも私の理論は、事業・組織・財務の三位一体で成り立っているんです。事業に関しては、どこまでいってもプロダクトの質なのでwebサイトの改修やトレーナーの研修に力を入れていきます。また、財務に関しては、どれだけ資金調達ができるかが要になります。

なぜかと言うと、withコロナ時代ではCVCや事業会社が撤退してしまうかもしれないという懸念もありますし、勝ちそうなスタートアップに投資が集中し勝敗が大きく分かれるようになると思います。

組織に関しては、オフラインで人に会うことができないこともあって新規採用の難易度が高いです。でも一応、私はこの業界に10年くらいいて、各職種ごとにイケてる友人がたくさんいるので、初めて起業する方よりは優位なのかなと思っています。

この3つは関連しているので、良い循環に入れば、驚くほど伸びると思っています。

 

ーなるほど。では財務に関しては、リリースの7月までには資金調達はされるのでしょうか?

そうですね。最速でプロダクトをリリースしてマーケティングを広げる必要があるので、もちろん予定しています。

 

ーそんな宮地さんの集大成でもある本事業の最終的なゴールはIPOとM&Aのどちらなのでしょうか?

IPOです。コロナ明けも伸び続ける事業だと思っているので。

ベストティーチャーを経営していた時もIPOを狙っていたのですが、先行してレアジョブさんが上場されたこともあり、なかなか難しかったです。

でも今回の事業の場合、まだ競合が3社くらいしかおらず、個人トレーナーや施設型ジムがとりあえずオンラインサービスを提供しているような状況なので巨大な競合はいないと言えますね。

自分の強みを存分に発揮でき、タイミングもここしかありえない。まさに今挑戦すべき領域だと思っています。

 

ーでは、最後に今後の事業の展望や野望を教えてください。

アメリカにせよ、日本にせよ、コロナの影響で既存の市場が変質しつつあります。

そこがチャンスだと思っていますし、こんなガラガラポンは滅多にありません。

事業を広げて、フィットネスクラブとして成功した暁には食事サポートやトレーニングウェア、音楽などのD2C展開や福利厚生などのBtoB事業も考えています。

 
 
ーちなみに、どのタイミングでどれくらいの規模感を目指しているのでしょう?

最短で事業計画を組んでいるので、4期か5期で上場する計画で今動いています。売り上げも、上場時点では数十億〜数百億台をイメージしています。

 

ーサービスとしてはどういったマネタイズ案を考えているのですか?

月額制ですね。ビジネスとしても読みやすいですし、フィットネスサービスなので月額制が最適だと思っています。

 

ーこれからの展開が楽しみですね。本日はありがとうございました。

吉田ひかる

この記事を書いたライター

吉田ひかる

慶應義塾大学経済学部出身。いろんな人と出会って話をするのが好き。

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