リストラ・人件費削減の昨今でも積極的に採用強化!プラント業界異例の「働き方改革」で社員増・若返りをはかる大分の柳井工業

リストラ・人件費削減の昨今でも積極的に採用強化!プラント業界異例の「働き方改革」で社員増・若返りをはかる大分の柳井工業

記事更新日: 2020/05/11

執筆: 編集部

新型コロナウィルスの影響を受け、リストラ、採用取り消し、人件費削減を実施する企業が多い中、積極的に採用活動をしている会社がある。

大分に本社を置き、国内・海外のプラントメンテナンスに従事する「柳井工業」という会社だ。

昨今のプラント業界は、国内製造機の設備投資の活性化や生産設備の増強などで案件は急増しているにも関わらず、人材の不足が深刻な課題となっている。

きつい、きたない、きびしいという3Kのイメージが強いせいか、若い人材が採用できない、後継者が育たないという課題を抱えている。

「現場で働く人にやりがいと価値を感じられるプラント業界をつくること」を使命に、待遇の改善や積極的な情報発信を行っている、柳井工業常務・2代目代表の柳井寿栄氏に話を聞いた。

プロフィール

柳井寿栄(やない ひさよし)

1985 年生まれ。大分県立大分上野丘高校、立教大学経済学部卒業後、野村證券に勤務した後、 2009 年に有限会社柳井工業に入社。現在、社長に代わり全体の指揮を執っている。 プライベートでは妻と 1 児(長男)の父。Twitter :@yanai_eng/ Note : https://note.com/kesesi 

有限会社柳井工業

1981 年に現社長・柳井寿朗氏が創業。
回転機のメンテナンスに特化したことで順調に売り上げを伸ばす。
経営理念に「私たちは確かな技術力と信頼で応えるエンジニア集団です」を掲げ、 日本企業の海外進出が進み、日本製プラントのメンテナンスが必要となる中、プラント業界の支えとなるグローバル企業を目指す。

 

受注は増え続けるのに人材が不足しているという大きな課題

-御社の事業内容を教えて下さい。

プラントといっても一般的にあまりなじみがないですが、工場設備、生産設備一式のことです。

柳井工業ではその機械装置(プラント)の定期的なメンテナンスを請け負っており、2年に1回又は4年に1回など計画的に実施しています。

この定期修理工事では、機械装置を長期的に停止し、徹底的に悪い個所を見つけ修理をしています。  

大分を中心に千葉、四日市、延岡など全国の工場の現場で作業を展開しています。

プラント内には様々な機械装置がありますが、柳井工業はその中でも発電機・タービン等の回転機のメンテナンスを行っています。

そのため、回転機に関しては多くの知識と経験を持っています。

この定期修理工事や回転機に特化したメンテナンスで競合も少なく、まさにブルーオーシャンなのです。

しかしながら、当社だけでなく業界全体として、高齢化し、人材(特に若い層)が不足しているという大きな問題を抱えています。

入社のきっかけは創業者である父の病気の発覚

-証券会社勤務から、柳井工業に入社された理由は?

大きなきっかけは、2008年社長である父の病気の発覚でした。

ステージ4の胃癌で、医者からも「もう助からないかもしれない」と通告されました。

就活の時「若手からぐんぐん成長できる会社で切磋琢磨したい」と思い選んだ企業、野村証券で働いて2年目に入ったところでした。

仕事はきついながらもようやく色々覚えてきて「よし、これから頑張るぞ」と意気込んでいた時でした。

しかもプラント業界の仕組みすらわかっていなかったので、とても悩みました。

「迷ったら茨の道に行け」

その時尊敬していた支店長に悩みを打ち明けるとこんな言葉をかけてくれました。

「いいか。人生で悩んだ時は辛い道を選べ。楽な道を選んだら大成しない」

シンプルな言葉でしたが、ガツンと心に響きました。

その結果、大きな会社に守られて生きていくよりも、親の会社を引き継ぎ自分の力で経営していく方が険しい道のりになると考え、柳井工業に入社することを決めました。

「なんとかなるだろう」と思っていましたが、辛い日々が待ち受けていました・・・。

人材不足の原因は業界全体の鎖国状態!?

生まれて初めてのプラント業界で、私が配属されたのは石油化学プラント。

当時の印象はとにかく「キツイ・暗い・汚い」の3Kでした。

現場作業中は話すこともままならず、常に緊張感に溢れ、気を抜くことさえ許されない。古くて汚い機械。誰も笑わない休憩所。

「この人たちは何が楽しくて仕事をしているんだろうか」この業界に足を踏み入れて最初に感じたのはこれでした。

「自分が社長になったら会社や現場の雰囲気を変えよう!こんなに価値のある素晴らしい仕事をつまらなくするのは辛い。楽しんでやろう」

と意気込んだのは今でも覚えています。

実際に働いている職人さんは、みんなプライベートでは明るく楽しい人達ばかりでした。

この原因はどこから生まれてくるのか。それは業界自体が鎖国状態だったからなのです。

「なんでうちが培ってきた技術を人に教えなきゃいけないんだ」

「職人は口を動かさず手を動かすべきだ」

「計測工具に触れるなんて10年早い」

「お客様は神様だ。お客様が言っていることが全てだ」

「1日は24時間あるんだ」

まるで戦後直後の日本にいるかと思うほどに昔ながらの風潮がそのまま残っていました。

この状況では若い世代の人が飛び込んできても仕事の面白さに気づく前に去っていきました。

「この状況が果たして現場のためになっているのか、本当にお客様のためになっているのか・・・」

ただ、諸先輩方に文句を言っても、培ってきた経験・技術・こだわりがあるので聞き入れてもらえるわけがありません。

 

私は仕事をするたびに、お客様、現場監督、棒心、作業員・・どのような立場にいる人にもこのような話をし、心を開いてもらえるように努めてきました。

どの業界でもそうですが、大事なのはお互いの理解と誠意です。

誠意を持って話していくうちに認めてもらい、心を開いてもらえました。

そうなれた後は早かったですね。

私は現場の環境や働く人たちの待遇を改善することに取り組みました。

やりがいがもてるよう、業界で先陣をきっての「働き方改革」

-どのような取り組みをされたのですか?

他業界では珍しくないのですが、この業界の古い体質を改善するよう以下のことを導入しました。

  • 高給

  • 業界内でも高い報酬制度

  • 必ず一人1部屋+食事つき
    これまで当たり前だったのは出張先で2人部屋3人部屋でした。しかしそれでは仕事後も休まらないので必ず一人部屋を確保するようにしました。

  • 育成期間を長期的に設けている
    「見て覚えろ」ではなく、一人前になってもらうために育成期間を十分に確保。

  • 職人のフリーランス化の推進
    雇用形態は社員でもフリーランスでも可、1人1人に合ったワークスタイルを推進しています。

  • 待遇の見直し
    業界初の「給与テーブル」を導入(今までの年功序列を払拭し、職人やエンジニアのスキルを客観的に判断し給与が上がる仕組み)
    ・平均残業10時間以下(繁忙期の土曜日出勤を除く)
    ・長期休暇取得

これにより、社員数11名・平均年齢49才(2019年7月)だったのが、従業員20名・平均年齢42才(2020年4月)と社員数が増え、また若い人が増えております。

ただ、まだまだ足りません。

 

これからもTwitternoteで若い世代を中心に発信を続けていきます。

少しでもご興味のある方はぜひご連絡下さい。

「プラント業界をよりよくする」ことを使命に

-最後に、これからの展望をお聞かせ下さい

今は世界中が困難な状況を乗り越えようとしていますが、乗り越えた先には海外での展開を強化していきます

なぜかというと、海外のプラントの殆どが日本製だからです。

当社は日本のメーカーが造った回転機に関して多くの知識と経験を持っています。

そのため今後は都市部の海外展開に対応できる優秀な人材を採用し、リモートワークで当社の業務を行ってもらいたいと考えています。

お客様に信頼されるグローバル企業に成長すること、それから

「機械エンジニアを誇りに思える仕事にする」

「プラント業界をよりよくする」

このことをミッションとして、改革と発信を続けていきます。

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