人事との関係が深い「労働法」の見直しにより、働き方改革関連法の改正が進む中で、新しい制度にキャッチアップするのに苦労している中小企業が増えています。
そんな中で注目されるのが人事業務のアウトソーシングです。
この記事では、人事のアウトソーシングのメリットとデメリットを検討するとともに、おすすめのアウトソーシング会社をご紹介します。
人事のアウトソーシングとは、給与計算、採用などの人事業務を外部の専門家に委託することです。
会社には、本業の製造部門や販売部門以外に、組織運営のための間接部門が必要です。
間接部門でもっともリソースを費やすのが人事業務で、その業務内容は次のように多岐にわたります。
人事にもっとも関係が深い法律は「労働法」ですが、労働法とは労働基準法や労働組合法、男女雇用機会均等法、最低賃金法などの総称です。
「働き方改革関連法」という言葉があるように、近年はこれらの労働関係法の見直しが盛んでひんぱに改正されています。
2020年からは中小企業でも時間外労働に上限が設けられました。
また、法律の文面だけでなく、その解釈や運用についても新たな指針が提示されています。例えば、有給休暇は「認める」から「取らせる」ものになりました。
人事部がこのような法改正を知らなかったという言い訳は通用しないので、常に最新の制度にキャッチアップしておく必要があります。
人事のアウトソーシングとは、このような多岐にわたり、専門的な知識が必要な業務の一部またはすべてを外部に委託することです。
人事業務をアウトソーシングすることで、製造や販売など会社の看板業務に専念することができます。
とくに中小企業では、優秀な人材を間接部門である人事に回すと、コア業務の戦力が落ちる可能性があり、効果的なリソース(ヒト・モノ・カネ)の活用とは言えません。
かといって、お金をあつかう人事業務をすべてパート社員に任せるわけにも行かず、結局経営者の負担が増えることになりがちです。
長年人事を担当していた職員が退職して社内に詳しい人が誰もいなくなる、という事態もアウトソーシングすることで避けられます。
中小企業では、募集してもなかなか良い人が見つからないのが実情ですし、運よく採用できたとしても業務の引き継ぎに多大のエネルギーを要します。
先ほど述べたように、労働関連法令や社会保険制度はひんぱんに改正されるので、人事担当者はつねにそれをキャッチアップしておかなければいけません。
人事をアウトソーシングすることで、関係法の改正を知らずに法令違反を犯してしまうというリスクを回避することができます。
従業員にとっても、会社が最新の法制度に基づく労務管理を行なっているという安心感が得られます。
社内に人事業務のスタッフを抱え、給与計算などの管理システムを導入するよりも、これらをアウトソーシングすることで経費の削減になる場合があります。
人事業務を外部に委託すると、当然ですが社内に人事業務に詳しい人がいなくなり、社内にノウハウが蓄積されません。
例えば、採用業務までアウトソーシングすると、本当に自社にマッチした人材を採用できない可能性があります。
採用方針を根本的に見直す必要が生じたときに、どこから手を付けたらよいか分らないという事態になるかもしれません。
委託していた外部会社が倒産する、あるいは何かの事情で撤退したときも「お手上げ」の状態になりかねません。
人事業務はマイナンバーなど社員の個人情報をあつかう仕事なので、それをアウトソーシングするのは一定のリスクが伴います。
実際には、個人情報を持ち出して悪用するのは社内の人間というケースが多いので、契約書を取り交わしてアウトソーシングする方がリスクは低いとも言えますが、個人情報を外部に預けることになるのは事実です。
アウトソーシングする会社を選ぶときは、料金だけでなく、その点の信頼性も確認しなければなりません。
アウトソーシングすることによって減らせる社内要員の数や、契約メニューによっては、以前よりもかえってコスト高になる場合があります。
社内の人材を本業に専念させるメリットは人件費だけでは判断できませんが、経費的にはアウトソーシングしたから安くなるとは一概には言えません。
人事業務をアウトソーシングする際に考慮しなければいけないのはどのような点でしょうか?
アウトソーシングの目的がコスト削減なのか、人材の本業への集中なのか、あるいは最新の制度への正確な対応なのかを明確にしておきましょう。
委託する範囲も、ワンストップで業務全般を委託するのか、給与計算など業務単位で委託するのかによって、業者の選び方が違ってきます。
また、社員研修をアウトソーシングするといっても、外部に委託できるのは社会人としてのマナーを教える新人研修や、コンプライアンス研修などで、中核業務についての教育ではありません。
研修に限らず、委託業務のどの範囲までアウトソーシングできるかを、契約前によく確認しておく必要があります。
委託する会社を選ぶときは、料金だけでなく、どのような会社の業務を請け負っているかという実績を見て、自社との相性や信頼性を判断する必要があります。
サービス内容も、アウトソーシングする目的に沿ったものかどうかよく確かめてから契約しなければなりません。
現在運用している労務関係のシステムと委託会社のシステムの調和も要確認事項です。
とくに、一部社内で行なわなければならない人事業務があるときは、連携がスムーズにいかないと、かえって業務が煩雑になる可能性があります。
エイチアールワン株式会社は2002年の設立以来、200社を超える企業へ人事業務アウトソーシングサービスを提供しています。パナソニック、花王など大手企業の受託実績も豊富です。
従業員数は約600名で、東京・大阪・沖縄にオフィスがあります。
本社:東京都 中央区築地5-5-12 浜離宮建設プラザ
公式ページ : https://www.hrone.co.jp/
株式会社ネオキャリアは2000年に採用支援会社としてスタートし、ITサービス、業務アウトソーシング・サービスなどに業容を拡大した急成長企業です。
従業員数は3,790名(2020年3月31日時点)で、全国に34ヵ所の拠点があります。
本社 : 東京都新宿区西新宿1-22-2 新宿サンエービル
公式ページ : https://www.neo-career.co.jp/
大阪ガスビジネスクリエイト株式会社は大阪ガスグループの人事・総務の効率化プロジェクトから生まれたアウトソーシング会社です。
グループの人事管理の15年間の実績から、質の高いサービスが受けられます。
一連の業務を専属担当者が対応し、クライアントの「第二の人事部」として人事給与業務全般をサポートします。
本社 : 大阪府 大阪市西区京町堀1-4-16 センチュリービル
公式ページ ; http://www.isupport.jp/
パソナ株式会社は、人材採用をメインに多角的な事業を展開するパソナグループの中核企業です。
人事業務のアウトソーシングサービスでは、「最適な業務体制」の構築を支援するアウトソーシングを目指しています。
東京都千代田区大手町2-6-2
公式ページ:https://www.pasona.co.jp/clients/solution/outsourcing/
株式会社 トライアンフは、人事の制度設計やアウトソーシングを中心に、社員研修、採用、人材紹介などを支援する人事ソリューションの専門会社です。
1998年の創業で、社員数は175人(2019年現在)、これまで3000社以上の契約実績の90%以上のリピート率を誇っています。(同社HPより)
本社:東京都 渋谷区東3丁目16-3 エフ・ニッセイ恵比寿ビル
公式ページ : https://www.triumph98.com/
人事のアウトソーシングによって、自社の人材をフル活用する効率的な経営を目指すことができます。
アウトソーシングを検討するときは、依頼する専門会社とよく協議して、委託範囲や組織の再編成について最適なソリューションを追及する必要があります。
画像出典元:pixabay