BPOは、企業が本来の業務に集中するために、業務プロセスすべてを外部業者に委託する経営戦略です。
多くの企業が、業務効率化やコスト削減、専門性の高い人材確保などの目的で、BPOを導入しています。
この記事では、BPOの概要やメリットなどを導入の成功事例とともに解説します。
このページの目次
BPOとは何か?アウトソーシングとの違いを明確にし、BPOの需要が高まっている背景について解説します。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、「企業の業務プロセス全体を外部に委託する」経営手法で、アウトソーシングの一種です。
BPOのおもな目的は、専門性の高い業務を効率的に行うことです。
たとえば、人事・総務・経理・コールセンターなど、専門知識や経験が必要とされる業務にBPOを導入すると、自社はコア業務に集中できます。
一方、アウトソーシングは、「特定の業務を外部に委託する」経営手法です。
アウトソーシングのおもな目的は、コスト削減とスピードアップです。
たとえば、Webサイト制作やデータ入力など、単発的な業務や人材が必要とされる業務を外部へ委託し、自社の業務負荷を軽減します。
BPO | アウトソーシング | |
委託範囲 | 業務プロセス全体 | 特定の業務 |
目的 | 専門性の高い業務の効率化 | コスト削減、スピードアップ |
BPO市場は、株式会社矢野経済研究所の調査によると、近年右肩上がりに成長しており、2022年度には約4.7兆円規模に達しています。
BPO市場規模拡大の背景には、以下のような企業の経営課題があると考えられます。
企業は、これらの課題を解決するため、BPOの活用を積極的に検討していく必要があります。
今後、BPO市場はさらに拡大していくと予想されており、企業にとってますます重要な役割を果たしていくでしょう。
この他にもコンサルタントや社内の情報システム整備をするシステム部門などもBPOの対象となります。
これらの部門は、専門的な知識やスキル、人材確保が難しい企業においては業務負荷が大きくなりやすい部門なので、委託することで、社内のリソース確保やコア業務への人材投入ができるようになります。
前章でも少し触れましたが、BPOを導入することで自社にとってどんなメリットがあるのかを具体的に見ていきましょう。
企業としても、収益の高い業務に注力したいところ。現実には付随業務が多く、コア業務に集中できないという従業員は多く存在しています。
そこで、ある一連の分野をBPOを利用し、コア業務に集中できる環境を整えることができれば、業務の効率も各段にアップします。
もちろん、委託料金はかかりますが、コア業務の効率をあげることで、生産性や収益アップは勿論、無駄な人件費や人材確保の必要もなく、総合的にみてもコストを削減する事ができます。
BPOで委託するのは専門分野に特化した事業所なので、高い専門スキルが活用できるということ。
専門的な知識をもったスタッフに一任できるので、会社も、より高いレベルの技術やスキルを活用する事ができるようになります。
前述しているように、高い専門スキルを活用できれば、品質向上とリードタイムの短縮が可能に。
顧客から何か要望が来た場合でも、エキスパートに任せた方がスピーディーかつ高いクオリティで対応する事がきるので、顧客満足度は必然的にアップします。
業務効率の向上やコスト削減など自社で得られるメリットの大きいBPOですが、下記のようなデメリットも考えられますので、頭に止めておきましょう。
BPOで、ある分野一連の業務を業務を外部に委託すると、その業務に関するノウハウは自社内に蓄積されません。
将来的にBPOを解除したり、BPO業者を変更する場合、スムーズな業務移行が難しくなります。
コア業務や将来的にコア業務になる可能性のある業務はBPOに委託してはいけません。
また、業者との契約内容をよく確認し、ノウハウ共有に関する取り決めがあるかどうか確認しましょう。
選定した業者のセキュリティ意識が低いと、会社の信頼を落としかねない大きなトラブルに見舞われる事も考えられます。
後述しますが、業者選定の際には、プライバシーマークなど情報の取り扱いの規格しているかどうかもチェックし、判断材料の一つとしておくのもよいでしょう。
上記の事例はいずれも上場している大企業で、従業員数も多くその分業務プロセスも複雑なため、BPOの難易度は高いです。それにも関わらずBPOに成功できたのは、各事例のポイントにも記述しましたが、以下の点を重視してBPOを進めたからだと言えます。
・BPO導入前に業務プロセスを改善
・複数のBPO業者を比較検討し、最適な業者を選定
・KPIを設定し、定期的に成果を測定
・BPO業者と密に連携
・セキュリティ対策を徹底
BPOは、企業のコスト削減、業務効率化、人材確保などに役立つツールです。これらのポイントを参考に、自社に合ったBPO活用方法を検討してみてください。
BPOサービスの選定ポイントは以下の4つです。
BPO業者は、各業務の専門家ともいえます。しかし、業者によって抱えているノウハウは異なります。
自社にとって負担になっている業務を得意分野として受託しているサービス業者を選ぶようにしましょう。
まずは自社の課題をより具体的に洗い出し、業者の専門性とマッチングさせて選定していくのが良いでしょう。
BPOにはセキュリティリスクが存在します。
情報漏洩などのリスクを回避し、安心して業務を委託できるBPO業者を選びましょう。
以下のような点を確認すると安心です。
どんな業務をBPO業者に委託するか、業務領域や選定するBPO業者によって、かかる費用は異なります。
委託にかかる費用が、自社で対応する際の人件費を下回るのであれば、委託するメリットがあると考えていいでしょう。
まずは、委託したい業務で現状どれくらいの人件費がかかっているのか算出する必要があります。そのうえで、複数のBPO業者から見積もりを取ってみるといいでしょう。
委託先の業務品質が一定のレベルに達していないと、顧客満足度が低下してしまう恐れがあります。
自社が委託する業務に関する事例だけでなく、同業種・同規模の企業での導入実績があるか確認しましょう。
顧客満足度調査の結果などを参考に、顧客からの評価も確認する必要があります。
BPOの契約形態には「準委任契約」と「請負契約」の2種類があります。
準委任契約は、「業務の遂行」に重点を置いた契約です。
受託者は、善意の管理者として業務を行い、作業過程について責任を負います。
たとえば、コールセンターやコンサルタント業務など、成果を明示しにくい業務は準委任契約で行います。
ちなみに、「準」がつかない「委任契約」は、法律に関わる業務で用いられます。
請負契約は、「成果物」に重点を置いた契約です。
受託者は、注文者に対して特定の成果物を納品する義務を負います。
たとえば、設備工事やWebサイト制作など、成果物がはっきりしている場合は請負契約で行います。
準委任契約 | 請負契約 | |
目的 | 業務の遂行 | 特定の成果物の納品 |
成果物 | 明確ではない | 明確に定義 |
責任 | 最終的な責任は発注者 | 受託者 |
報酬 | 業務量や時間に基づく | 成果物に基づく |
適している業務 | 業務内容や進捗が変化しやすい業務 | 成果物が明確に定義できる業務 |
BPOの導入を成功させるためには、単に最適な業者を選ぶだけでは不十分で自社側でいかに最適な段取りで必要な情報を業者側とやりとりできるかが重要です。
この章では、BPOの導入を成功させるためのステップと、各ステップ毎に細分化された具体的なタスクを解説します。このステップに沿って、各ステップに割り当てられたタスクを遂行することで、自社のBPO導入を成功に近づけることができるでしょう。
目的の明確化
BPOを導入する目的(コスト削減、効率向上など)を明確にします。目的が明確であることで、導入プロジェクトの方向性が決まり、適切な業務範囲の選定が可能になります。
委託範囲の特定
どの業務プロセスを外部に委託するかを決定します。この段階では、コア業務とノンコア業務を識別し、効果的なアウトソーシングが可能な業務を選択します。
要件定義
提案依頼書には、自社の具体的なニーズ、業務の要件、期待する成果、スケジュール、予算などが含まれます。このドキュメントは、外注先に対する期待 を明確に伝え、提案を受ける基礎となります。
評価基準の設定
提案を評価するための基準を定義し、適切なBPOパートナーを選定するプロセスを整理します。
様々なBPOサービス提供者を比較検討し、自社のニーズに最適なサービスプロバイダーを選定します。サービスの品質、費用、専門性、セキュリティ対策、サポート体制などを評価基準として考慮します。
情報交換
選定したサービスプロバイダーとのヒアリングを通じて、具体的な業務内容や期待する成果について話し合います。この段階で、双方の理解を深め、プロジェクトの成功に必要な詳細情報を共有します。
調査と分析
BPO業者は、提供するサービスの範囲と品質を確定するために、必要な調査や分析を行います。
ソリューション提案
外注先は業務分析の結果に基づいて、最適な業務プロセスと改善策を提案します。このプロセスでは、プレゼンテーションやデモを通じて提案内容を確認できます。
プロセスの構築
合意された提案に基づいて、外注先は新しい業務プロセスの構築を行います。これには、マニュアル作成、システムの設定、人材の配置などが含まれます。
実装とテスト
構築された新しい業務プロセスは、実際の運用環境でテストされます。この試験運用はシステムやプロセスが設計通りに機能することを確認し、必要に応じて調整を行います。不具合が見つかった場合は、本運用前に修正を行うことが重要です。
本運用の実施
試験運用を経て、新しい業務プロセスの本運用を開始します。この段階では、業務プロセスをスムーズに運用し、期待される結果を達成することが目標です。定期的なモニタリングと改善活動を通じてBPOの効果を最大限に高めることが重要です。
BPOサービスは、自社がコア業務に注力するために活用するアウトソーシングの一つです。外部委託することによって、自社課題の改善を図り、収益性を高めることが可能です。
サービス提供業者は多岐にわたり、それぞれの業者によって得意とする業務領域が異なります。
選定時には、自社が外部委託できる業務領域を洗い出しておくことが重要です。ここが甘いと、導入してから求めていたサービスとのズレを感じる要因になります。
本記事参考にしていただき、ぜひ自社に合ったBPO業者を見つけてください。
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