労働人口の減少が見込まれている日本社会において、限られたリソースをいかにうまく使うかは、どの企業にとっても大きな課題といえるのではないでしょうか。
そんな中、組織のスリム化や経営の効率化に有益と考えられるのがアウトソーシングの活用です。
アウトソーシングを導入することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
アウトソーシングのメリットやデメリット、加えて導入のポイントや注意点を紹介します。
おすすめのアウトソーシング会社も併せて紹介するので、ぜひこちらも確認してください。
このページの目次
アウトソーシング(outsourcing)=外部(out)の資源を活用すること(sourcing)
アウトソーシングとは、外部の労働資源を活用して企業の業務に活用することです。
もともと社内で行っていた業務の一部あるいは全部を切り出して、完全に独立した外部の企業や個人に委託します。
アウトソーシングを活用することで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
アウトソーシングを活用すれば、自社で人材を育成したり人を雇ったりする必要がありません。
業務のプロセスを丸ごと専門性の高い業者に任せられるため、低コストで高品質なサービスを受けられます。
例えば、アウトソーシングが有益とされるのが、IT関連の業務です。
近年は自社システムを運用し顧客サービスに努める企業が増えています。しかしシステムの保守・運用には専門的な知識が必要な上、コストもかかります。
加えてIT業界はトレンドが変わりやすく、担当社員はスキル向上や新たな技術獲得など、大きな負担を強いられることがしばしばです。
企業経営に必須とはいえ、自社でIT関連の業務を遂行していくことは非IT企業にとっては大きな負担となるでしょう。
そこで有益なのが、こうした一連のIT業務を外部の専門業者に委託することです。全体的なITコストを削減できる上、担当者の負担も軽減できます。
最新の知識とスキルを適正なコストで入手でき、企業は競争力を維持したままコストカットできるのです。
ルーティン化した業務についてアウトソーシングを行えば、そのぶんの人材や時間をコア業務に振り分けられるというメリットもあります。
企業として運営していくと、主業務とは別の負担も増大していくものです。例えば会計や庶務、IT関連の業務などはコア業務とはいえませんが、経営していく上では不可欠といえます。
しかし、「効率的経営」が追求される昨今、コア業務以外の負担が大きいのは望ましいこととはいえません。
できればこの部分の負担やコストをカットして、本業に注力したいと考える企業は多いでしょう。
このようなときアウトソーシングを活用すれば、自社の労働ソースをコア業務に集中させることが可能です。
不要な部分をそぎ落とし強みのある分野に注力できれば、これが企業全体の生産性や競争力のアップにもつながります。
その分野に特化したアウトソーサー(アウトソーシングにおける受託側の企業または人)は、経験と実績を積んだプロフェッショナルです。
自社で業務を行うよりもスピード・クオリティとも満足のいくものとなるでしょう。
とくにIT系の分野の場合、プロと素人の差は歴然です。トラブルが発生したときなどはリカバリーも早く、それが結果として企業全体の質や評判のアップにもつながります。
企業の社員を教育しただけでは、やはりその道の専門家には太刀打ちできません。優秀な外部リソースがあるのなら、それを活用しない手はないでしょう。
アウトソーシングの導入を検討することは、企業組織の見直しをするきっかけとなります。
アウトソーシングを活用する際、「どの業務をどこまで委託するか」は重要なポイントです。業務に必要な工程、人員、業務内容など全てを洗い出すこととなるでしょう。
こうした洗い出しを綿密に行えば、「企業としてどの業務に注力すべきか」「無駄にリソースをくっていたのはどの業務か」が分かります。
コア以外の部分はアウトソーシングに任せたりカットしたりすることで効率的な組織を構築できるようになるのです。
外部のリソースを有効活用できるのがアウトソーシングのメリットですが、ときにそれがデメリットとなることもあります。
アウトソーシングでは、どのようなことがデメリットとみなされがちなのでしょうか。
「外部に業務を切り出す」という点から、まず懸念されるのが情報漏洩リスクです。アウトソーサーのセキュリティ体制によっては、大切な情報が外部の目にさらされる可能性があります。
また、アウトソーサーそのものが悪質だった場合は、業務によって知り得た情報を他企業に流したり別の案件に流用されたりすることもあるかもしれません。
このほか、情報を扱う者が意図的あるいはミスにより情報を書き換えたり数値をいじったりする可能性もあります。
基本的にアウトソーサーは信用が第一ですから、こうしたリスクは低いという人も多いでしょう。
しかし、どんなに高いセキュリティシステムや体制を持っていても、悪意のある人やミスが出る可能性はあります。
「アウトソーシングによるリスクはゼロではない」と考えて、対策を講じておくのがベターです。
アウトソーサーの見極めが悪かったりうまく意思疎通ができなかったりなどした場合は、かえって業務の生産性が低下することも考えられます。
本来いったんアウトソーサーに委託した業務は、アウトソーサーの責任で遂行されます。このときアウトソーサーのスキルが不足していた場合は、トラブルやミスが頻発するかもしれません。
トラブル対応やミスの修正に時間やコストがかかれば、結果的に業務負担が増える可能性があります。
また、納品された業務のクオリティが著しく低いときは、結局自社で処理・対応しなければなりません。
この場合社内の貴重な労働リソースが必要となり、社員への負担は増大することとなるでしょう。
外部のリソースを活用してばかりいると、内部に必要なリソースが蓄積されないというデメリットもあります。
特に専門性の高い業務を外部に丸投げすると、自社には全くノウハウが残りません。今後インソースに切り替えることがあった場合、ゼロからの対応を迫られるでしょう。
また、自社のノウハウが外部のアウトソーサーに蓄積されていった場合、その企業が倒産したりサービスから撤退したりしたときなどに困ります。
ノウハウゼロの状態は企業にとって高リスクです。万が一を考えて「アウトソーサーに任せつつ自社もうまく関わる方法」を検討・実施しなければなりません。
アウトソーシングによって企業の生産性を高めることができますが、導入の祭は注意したいポイントもあります。
特に業務の選定は重要なポイントなので、きちんと確認しておきましょう。
アウトソーシングをうまく導入するためには、アウトソーサーと委託企業とが共通意識を持つことが必須です。
「どの業務を」「どのように」こなしてほしいかが明確でなければ、どんなに優秀なアウトソーサーを選定しても、望む効果を得るのは難しいでしょう。
まずは企業の業務で不足している部分を明確にし、どのような形で業務遂行してほしいかをアウトソーサーに伝えます。
このとき不可能だと言われれば、他の業者をあたったり別のアプローチを検討したりせねばなりません。希望に合う業者を選べるよう、候補は複数ピックアップしておくのが望ましいでしょう。
ただし、アウトソーサーはその道のプロ。相談して無下にはされることは滅多にありません。アウトソーサーの意見を聞くと、専門家の見地から有益な情報をもらえることがあります。
一般的に、アウトソーシングを活用しやすいのは次のような分野であると言われています。
ただし、アウトソーシングの活用形態は一つではありません。
その分野にノウハウがなかったり経験がなかったりする企業は「業務全体を切り出して任せる」という形で委託した方がよいかもしれません。
一方で、特定分野だけに弱点や人的リソースが不足しているなら、その部分だけを切り出して任せる方が社内にノウハウを残せます。
どのような形がよいかは企業によってさまざまです。アウトソーシングを活用する際は、現在ある労働リソースと外部リソースのバランスをどうするかきちんと検討しなければなりません。
アウトソーサーを決める際注意したいのが、ほとんどの企業は「お試し」期間を設定していないという点です。
アウトソーシングの場合、初めから企業に合わせて人員を配置したりシステムを構築したりする必要があります。
アウトソーサーにかかるコストや業務負担は大きく、後で「やっぱり他の企業に委託する」と言われてしまうと、大赤字となるのです。
それでは、委託側はどのように「良質なアウトソーサー」「悪質なアウトソーサー」を見分ければよいのでしょうか。
アウトソーサーを選定する際注意したいポイントを紹介します。
アウトソーサーに委託する理由として、「コストカット」を期待する企業は多いのではないでしょうか。
この場合、アウトソーシングによって「現在よりもコストダウンできるか」は非常に重要なポイントです。
候補に挙がっているアウトソーサーから見積りをもらい、自社のシミュレーションと比較してみましょう。
ただしこのとき、トータルコストだけに注目してはいけません。内訳にもきちんと目をとおしどこにどのようなコストがかかっているのか確認してください。
「安さ」を売りにする企業の多くは、人員や工程などどこかを削っているはずです。あまりに安すぎる場合は、品質の低さが懸念されます。
「その道のプロ」を謳っていても、すべての業務に精通しているとは限りません。
営業文句にはよいことが書いてあっても、実際は経験が少なかったり不慣れだったりするケースはあるものです。
アウトソーサーのクオリティを測るには、次の点に注意してみてください。
アウトソーサーのクオリティに関しては、実際のところ「やってみるまで分からない」のが現実です。
しかし、スキルや実績を見ることで「大ハズレ」を引く確率はぐっと抑えることができるでしょう。
委託する業務の内容によっては、重要な情報をアウトソーサーに提供せねばなりません。
「アウトソーサー側のセキュリティ対策はどうなっているのか」「セキュリティ環境はどうか」という点は必ずチェックしておきたいポイントです。
どのようなセキュリティシステムを導入しているのかはもちろん、施設の堅牢性、機密の保管方法まで分かることが望ましいでしょう。
また、セキュリティの緩さや意識の低さは社員にも表れます。担当者と話していて「頼りないな」「いい加減だな」など思うことがあれば、そのアウトソーサーは避けた方が無難かもしれません。
一口にアウトソーサーといっても、その種類はさまざま。専門分野もまちまちで、どの業者を選べばよいか判断するのは難しいものです。
そこでここからは、特にニーズの高い【バックオフィス業務】を専門とするおすすめのアウトソーサーを選りすぐって5社紹介します。
自社の条件にマッチしそうなものがあれば、積極的に活用してみましょう。
・低コスト
・あらゆるバックオフィス業務を網羅
・オンラインアシスタントがチームで対応
・PLAN20(実働時間20時間/月)
・4.7万円~/1カ月
経理、人事、総務、WEB運用など幅広い専門業務に対応しているのが「オンラインアシスタント フジ子さん」です。
こちらに業務を委託すると、専門のアシスタントチームが付きます。顧客はメール、チャット、電話などで必要なとき・必要なだけ業務を依頼できるのです。
また、それぞれのチームを編成するのは専門のプランナー。顧客の要望をくみ取って最適なメンバーを選びカスタマイズしてくれます。
無料トライアル期間がある上、コストは業界トップクラスの低価格。「すぐに人手が欲しい」「ついでにこの業務も頼みたい」などのニーズにも臨機応変に対応してくれます。
・採用倍率1/100の優秀な社員のみが在籍
・業界大手の安心感
・翻訳・バイリンガル業務にも対応
・BASIC(6カ月プラン・実働時間30時間/月)
・10万6,000円~/1カ月
「メルカリ」「Chatwork」など数多くの有名企業を顧客に持つのが「Caster Biz」。
経理、秘書、人事、WEB運用、オフライン業務といった通常のバックオフィス業務から、翻訳・バイリンガル業務まで幅広く対応してくれます。
また、デザイナーやエンジニアといった専門性が高い分野に対しても別サービスで依頼することが可能です。
導入時のお試しサービスはありませんが、料金を一括払いすると5%の割引を受けられます。
またサービスの利用に不安がある人のため「導入コンシェルジュオプション」も完備。1カ月5万円で経験豊富なコンシェルジュが業務の切り出しをサポートしてくれます。
・専門の「コーディネーター」がヒアリングから導入サポートまで対応
・厳しい試験をクリアした約100名の秘書スタッフが業務を遂行
・テレアポ、アンケート回収、デザイン制作など幅広くカバー
・ライトプラン(実働時間10時間/月)
・3万5,000円~/1カ月
「スーパー秘書™」は、顧客それぞれに専属のコーディネーターが付くシステム。業務内容や時間に最適な人材をプロの目線でマッチしてくれます。
メンバーは厳しいスキルチェックや顧客対応の訓練を受けているので、意識の高いプロフェッショナルばかり。一般的な秘書業務のほか、デザインやセミナー開催などにも対応します。
月々のコストは低価格ですが、対応時間は少なめ。また導入時には初期費用として10万円が必要な点にも留意しておきましょう。
・豊富な導入実績
・営業・コールセンターにも対応
・24時間・365日対応
・要見積り
あらゆる人材リソースを提供してくれるのが「株式会社ネオキャリア」です。企業が持つ課題に合わせたさまざまな提案を行い、フルカスタマイズサービスで対応します。
依頼できる業務は人事、労務、経理、秘書といった通常のバックオフィス業務のほか、営業やコールセンター、Webサイトの制作など多岐に渡ります。
顧客には大手企業も多く、業界老舗ならではの安心感アリ。ただし料金の提示は見積りを受けてからとなります。
・バックオフィス業務に関連するほぼすべての業務に国家資格保有者が在籍
・英語、中国語、韓国語等にも対応可能
・世界150カ国以上400超の拠点のネットワーク
・要見積り
グローバルに展開中の企業をサポートしてくれるのが「汐留パートナーズグループ」。公認会計士、税理士、弁護士などあらゆるプロフェッショナルを取りそろえクライアントニーズに応えます。
ありとあらゆるバックオフィス業務にワンストップで対応できるので、「あれもこれも」と委託したいことが増えたときも安心です。
また、必要であれば導入時にコンサルティングを受けられるのも魅力。業務フローを整理しながら、効率的な体制確立のアドバイスを受けられます。
コア業務ではない部分をアウトソーシングすることで、企業は経営のスリム化や効率化を図ることができます。
人員やコストがかかるルーティン業務、非コアかつ専門性の高い業務については切り出しを行い、外部のリソースを活用するとよいでしょう。
近年はバックオフィス業務をアウトソーシングに頼る企業が増えています。
そのぶんアウトソーサーもたくさんありますが、企業によって得意分野やクオリティはまちまちです。コスト面の違いも大きいですから、業者選定については十分に慎重を期してください。
このたび紹介した5社は、コスト・クオリティに定評のある企業ばかりです。自社のニーズや業務と照らし合わせ、マッチするものを検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Unsplash、Pixabay