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ビジネスプランを検討する際に活用されるフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」。
新規事業を考える際、収益化の仕組みづくりは必須。その仕組みづくりを検討する際や、既存事業の見直しなどに利用されています。
ビジネスモデルキャンバスを使うことで、事業全体を可視化できるようになるからです。
本記事では、いま注目されている「ビジネスモデルキャンバス」について、概要から各項目の意味、事例、活用方法、そして作成のコツについて解説しています。
いま何かしらのビジネスアイデアがある方や、これから新事業を興そうと考えている方にとって、綿密なビジネスプランを練り上げる際に役立つ内容です。
このページの目次
フレームワークには、SWOT分析や3C分析など多種多様なものがあります。ビジネスモデルキャンバスも、その一つ。
ここでは、ビジネスモデルキャンバスとは何かといった概要から、リーンキャンバスとの違い、利用するメリットについて解説しています。
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの構造を視覚的に把握できるフレームワークです。
アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールによる共著『Business Model Generation(ビジネスモデル ジェネレーション)』(2012年日本発売)の中で紹介されたことで、注目されるようになりました。
9つの項目(要素)に分類して、各項目が互いにどんな関係性にあるのかを可視化します。
1枚の図に起こすことにより、見えていなかった部分が見えるようになるため、プランの穴が見つけられるようになります。
リーンキャンバスとは、ビジネスモデルキャンバスと同様に、ビジネスモデルを1枚の図に起こしたものです。
こちらは、エリック・リースというアメリカの起業家による著書『THE LEAN STARTUP(リーン・スタートアップ)』(2012年日本発売)内で提唱されたフレームワークです。
リーン(LEAN)とは、「無駄がない」を意味する言葉。リーンスタートアップとは、限られたリソースの中で無駄なく効率的に起業や新規事業を立ち上げることを指しています。
リーンキャンバスは、そのための設計書であり、ビジネスモデルキャンバスよりも顧客要素によりフォーカスしたものになっています。
ビジネスモデルキャンバス | コスト要素にフォーカス |
リーンキャンバス | 顧客要素にフォーカス |
ビジネスプランを練る際には、ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスを使い分けて全体像を把握するといいでしょう。
なお、リーンキャンバスの作り方についてもっと知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
ビジネスモデルキャンバスのメリットには、次の7つが挙げられます。
1. ビジネスモデルを俯瞰して見られる
2. 競合他社や競合ビジネスとの違いが把握できる
3. ビジネスモデルのウィークポイントや詰めの甘い部分が把握できる
4. ビジネスモデルにおける顧客視点と企業視点の均衡性を図れる
5. 描いたビジネスモデルが新たなアイデアのトリガーになる
6. ビジネスモデルの要素を体系化できる
7. ビジネスモデルの描き直しが容易にできる
ビジネスモデルを描くとき、その全体像を俯瞰してみることは、とても重要なポイントです。
自信を持ってプレゼンをしても、クライアントや協力会社からプランの穴を指摘されることがあるように、視点が異なれば見えるものも違います。
俯瞰してみることは、ビジネスモデルを客観視するということでもあります。たとえば、顧客視点と企業視点では、ビジネスモデルに対して持つ価値が異なります。
「これはとても良いアイデアだ」と思うものであっても、訴求する相手によっては「何かが足りない」と価値を感じてもらえないこともあります。
ビジネスモデルキャンバスで全体像を俯瞰すれば、ビジネスモデルの弱い点・甘い点・ズレなどを見つけることが可能です。
また、描いたモデルを起点に、新たなビジネスアイデアに繋がることもあります。
ビジネスモデルキャンバスには、9つの項目があります。それらは相互に関連しており、またブロックごとにも関連しています。
ビジネスモデルキャンバス上の項目を構造で見てみると、次のような3つのブロックに分けることができます。
ビジネスモデルにとって重要な柱となる「価値提供」。この項目を軸に、他の項目が配置されています。
左側には価値提供を実現するためのバックエンド部分。右側にはマーケティングに関わる要素に当たる項目があります。
これらの活動を支えるのが、資金の部分です。アクションにあたり、どの段階でどれだけのコストがかかるのか。
それをコスト構造として考えつつ、収益の流入・流出も併せて考えねばなりません。
事業の場合、支出構造が一般家庭の家計のようにシンプルではありませんから、フェーズごとに考える必要があります。
番号 | 項目名 | 意味 |
1 |
顧客 |
「誰に売るか?」 |
2 |
価値提供 |
事業の価値に相当する。顧客にどんな価値を与えるのか。 |
3 |
販路 |
顧客に届けるための価値提供ための経路。小売店販売か、WEB上のサービスかなど。 |
4 |
顧客との関係 |
直接的・間接的・継続的・一時的など、どんな関係性を顧客との間に持つか。 |
5 |
収益の流れ |
料金、登録料など「誰から」「いくら」「どのように」お金を受け取るのか。 |
6 |
資源 |
価値提供を実現するために必要となる資源。ヒト・モノ・カネ・情報で考える。 |
7 |
主要な活動 |
価値提供を実現するための活動内容。販売、製造、WEBサービスなど。 |
8 |
協力者 |
価値提供を実現するために必要となるパートナーは何か。小売店、製造請負先、資源提供先など。 |
9 |
コスト構造 |
価値提供を実現するために、どこにどんなコストがかかるのか。人件費、広告宣伝費、開発費など。 |
各項目を埋めることにより、ビジネスモデル全体の構造やビジネスの流れが見えるようになります。
既存事業をビジネスモデルキャンバスに落とし込んでみると、自身のビジネスアイデアをフレームワークに転記する際の参考になるでしょう。
コンビニエンスストアのウリは「必要な時」に「必要な物」が「手軽に購入できる」こと。
そのためには、必要な時に必要な物が揃っていなければなりませんから、高頻度での配送が必須となります。
また、取り扱う商品は、日用品や飲食料品といった日常生活に関わる物品。届ける相手は、一般消費者である個人客です。
顧客に商品を届ける経路は、店舗による販売。顧客との関係は、セルフサービスになります。こちらは、企業視点で見れば「直接対面による接客」です。
客自身が店舗内で商品を選んだのち、レジにて接客・会計を行うからです。
このように、一つ一つ項目を埋めていくと、各々の関連性が明確に浮かび上がってきます。矛盾している部分があれば、それは改善ポイントとして解決策を考えるきっかけになります。
docomoやau、Softbankを含め今やさまざまな通信キャリアが存在します。
これらモバイル通信会社のビジネスモデルを「ビジネスモデルキャンバス」に書き起こしてみると、上図のようになります。
加入者には法人顧客もいますが、基本的には一般顧客が対象のサービスです。サービス内容は主に、モバイル端末を通しておこなう音声通信・データ通信・コンテンツ配信の提供です。
これらのサービスを受けたい客は、販売代理店や直営の販売店を通して加入手続きを行います。サービスは、各通信会社が持つネットワークを介して供給されます。
コストがかかるのは、上述したネットワークや各種サービスのメンテナンス、サービスの認知度や好感度向上のためのマーケティングの部分です。
サービス内容を知ってもらわなければ、顧客獲得には繋がりません。
あらゆる場所で宣伝広告活動が繰り広げられているのも、サービスを認知する人を増やしたり、サービスへの興味を持ってもらうためです。
これらのコストは、加入者が支払う通信料金や付随するサービスへの課金といった収益が資金源になっています。
多重構造になっているビジネスモデルも、紐解いて見れば、いずれも関連しているものだということがわかります。
協力先が複数にまたがる場合でも、ビジネスモデルキャンバスを使えば、その関連性が一目瞭然です。
ビジネスモデルキャンバスを効率的に作っていくには、コツがあります。
ビジネスモデルの中核となる「価値提供」、その価値を届ける相手「顧客」、価値提供の実現方法「活動」。
これら3つを明確にするだけでも、構想しているビジネスモデルのイメージが掴みやすくなります。
そのうえで、他の空いている項目も埋めていきます。このとき、番号は気にせずに埋められるところから埋めていきましょう。
項目を埋めるとき、手が止まってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、埋まっている項目と関連している部分に着目します。
関連している項目の双方向から考えるようにすると、何が適切なのかアイデアを見つけやすくなるでしょう。
全ての項目が埋められたら、項目間の関連性を一つ一つ説明できるか、実際に口に出してみましょう。
説明ができない、説明内容に矛盾が生じるような場合、論理的にどこかが破綻していると判断できます。つまり、関連性があると言い切れない状態です。
実際にビジネスプランをアクションに移す際、先の矛盾点が問題点として浮かび上がってきます。
ビジネスモデルキャンバスが、事業全体を俯瞰できることはすでに述べた通りです。このほかにも、ビジネスモデルキャンバスにはさまざまなシーンで活用できることをご紹介します。
ビジネスを取り巻く環境は、その時々の外部要因によって変化し続けます。ずっと同じやり方を続けているうちに、実は事業に課題が生じていたということも少なくありません。
たとえば、事業スタート時には少なかった競合が増えていたり、業界自体が衰退したりといったケースもあります。こうしたとき、経営者は事業をどのように舵取りしていくかを再検討すべきです。
ビジネスモデルキャンバスに既存事業について書き起こすことにより、見落としていた課題や以前にはなかった問題点を把握することが可能になります。
上記にも関連するところですが、改善点の立案などをする際、整合性がなければ、他の項目との間に矛盾が生じます。
たとえば、従来は法人向けに展開していたビジネスを個人事業主向けに展開するようシフトする場合では、いくつかの項目を見直す必要性が出てくるかもしれません。
ビジネスモデルキャンバスに起こしてみて、各項目間の整合性を確かめてみましょう。
ビジネスモデルキャンバスは、既存事業の見直しに役立つという点についても言及してきましたが、言い換えれば既存の競合モデルを分析するのにも使えるということです。
競合の事業をビジネスモデルキャンバスで可視化することによって、相手のウィークポイントをあぶり出せます。そこからどのように差別化を図ればいいのか、その方法が見つけやすくなります。
ビジネスモデルキャンバスは、新規事業のビジネスプランを練るだけでなく、競合モデルの分析、既存事業の課題点の把握などさまざまなシーンで活用できるフレームワークです。
もっとミクロな視点で考えれば、現状の組織改革にも使えるでしょう。
これから新事業を始める方や、組織改革を目指す方、新たなビジネスプランを練っている方はぜひビジネスモデルキャンバスを活用してみてください。
画像出典元:Unsplash、PEXLES、StockSnap