TOP > ビジネス基礎 > ビジネススキルor教養 > PDCAとは?|意味やメリット、失敗要因、回すコツ、事例を簡単に解説
PDCAは、品質管理や生産管理、経営管理などの場面で用いられるマネジメント手法の1つです。
事業を成長させるためにもPDCAを「しっかりと回す」ことが重要です。しかし、業務改善の基本でありながらうまく回らないことがよくあります。
この記事では、PDCAの意味やPDCAサイクルの基本的な知識、PDCAの成功事例、メリット、効率的に回すポイント(コツ)のほか、うまく回らない原因や改善方法を解説します。
このページの目次
PDCAとは、品質管理や生産管理などにおける継続的な業務改善のためのマネジメント手法のことです。
Plan・Do・Check・Actionの4つの段階で構成され、各段階の頭文字を取って「PDCA」と呼ばれています。
Plan【計画】 | ①業務の計画を立てる |
Do【実行】 | ②計画をもとに業務を実行する |
Check【評価】 | ③実行した業務を評価する |
Action【改善】 | ④改善点がないが検証し、次の計画に活かす |
引用元:デジタル大辞泉(小学館)
この4つの過程を順番に行い、Action(改善)の後は再びPlan(計画)から取り組みます。このサイクルを継続的に行うことで製品の質などを向上させるフレームワークのことを「PDCAサイクル」と呼びます。
提唱者のデミング博士が日本に紹介したことで各企業がマネジメント手法として取り入れました。その後日本の製造業において高品質な製品が作られるようになり、世界的な競争力を高めていきました。
現在、PDCAサイクルは、品質管理や生産管理にとどまらず、経営管理や行政、プロジェクト単位の現場で活用されるなど、ビジネスの現場に広く浸透しています。
トヨタ自動車は品質管理にPDCAを導入し、社員の品質意識、原価意識、問題意識の向上に成功。デミング賞(総合的品質管理の世界最高ランクの賞)を受賞しています。
国際基準として通用する品質マネジメントシステムの規格「ISO 9001」や環境マネジメントシステムの規格「ISO 14001」にもPDCAは取り入れられています。
ここからは4つの段階について詳しく見ていきましょう。
「Plan」では目標を設定し、その目標を達成するための仮説を立てて、計画をつくります。
計画を立てるときに必要なのは、「目標(目的)」とそれを実現させる「方法(やり方)」、スケジュールです。
考える際に、5W1Hを用いて具体的にイメージすることが肝心です。
誰が(Who) | 担当者 |
いつ(When) | 期日、実施日、期限 |
どこで(Where) | 場所 |
なにを(What) | 具体的な施策 |
なぜ(Why) | 施策を行う理由 |
どのように(How) | 施策を行う方法 |
売上、品質、問い合わせ数、顧客満足度、といった目標を数値で設定することで、克服すべき課題や向かうべき方向が明確になります。
①で設定した目標を達成するためには何をすべきなのか、どのような手段があるのか、顧客データや競合調査など社内外を問わず情報を収集し、目標を実現するための具体的な方法に落とし込みます。
誰が(担当者名)、いつ(期日)、何をするべきなのか、など具体的なスケジュールを立てプロジェクト内で共有しましょう。
「Plan」で計画を立てたら、その計画通りに実行に移します。
実行するうえで大切なことは、結果を必ずデータとして残しておくことです。
時間や数字(数値や数量など)といった計測できるものを定量的に記録しておくことにより、結果を公正に評価することができます。
実行する際は、のちに結果を検証することに意識を持つことが大切なポイントです。進捗報告も定期的に行い進み具合を共有することが重要です。
「Check」の段階では、「Do」で行った施策の結果を検証・評価します。
目標が達成できたか、達成度はどうだったか、単純に結果が良い・悪いといった評価以外にも、計画を実行するうえでの問題点がどこにあるか、改善できる点はあるのかといった検証(調査・分析)も併せて行います
このときデータがあれば、検証における具体的根拠を示す材料になり、論理的で公正な評価を下すことができます。
「Action」では、「Check」で行った検証結果から改善すべき点を見つけ出し、改善案を練ります。
改善策を考えるときには、再び計画すること(Plan)に意識を置いて考察することが重要なポイントです。
たとえば、実行した計画そのものを今後どうするかも含めて考えることも大切です。
・計画を続けていくのか
・計画を改善して実施するのか
・計画を止めるのか
計画を立てると、それを実施することに固執してしまうことがあります。時に、その執着が失敗を生むこともあります。
最初の計画に拘わらず、柔軟な視点を持つことが真の改善に繋がっていきます。
Plan→Do→Check→Actionの1サイクルが完了したら、改善案を次のPlanで実行する計画を立て、実行に移すというサイクルを継続して行います。
サイクルが完了するごとに、確実に前回よりも良いものができあがり、サイクルを繰り返すたびにブラッシュアップされていく好循環が生まれます。
世界の自動車メーカーとして知られているトヨタ自動車は、PDCAの導入により品質向上に成功し業績を大きく伸ばし続けています。
ここではトヨタの取り組みを紹介します。
トヨタは、自動車、製品、サービス、組織、経営、オペレーションシステムも品質管理の対象としており、マネジメントの基本にPDCAサイクルを掲げています。
顧客の期待に応える製品を生み出す工程においては、下記の手順で顧客の要望に応える製品を作っています。
P:企画や開発
D:設計など製品の作り込み
C:顧客への生産・販売
A:顧客の声を聞く
↓
P
品質には下記の2つの特徴があると捉えており、常に変化する顧客の要求に応えるために継続的に改善を続けています。
①品質の善し悪しの基準は顧客である
②品質はバラツキがあり変化する
(参照元:トヨタ財団)
このようなPDCAサイクルをまわすことで、品質を改善し、問題を解決することで、業績を延ばすことに成功したのです。
数値化した目標を設定し、それを実現させるための方法を錬ってから実行に移すため、やるべきことが明確になり、ムダな作業を省くことができます。
施策を実行してもやりっ放しでは効果があったのかどうかがわかりません。
PDCAサイクルなら、施策の効果を検証するため、目標が何割達成できたのか、なぜそのような結果になったのか、施策のどの部分が悪かったのか、という改善すべき点が見えやすいという利点があります。
その際、各担当者が誰なのかも明確なので、誰にどのような改善指示を出すのかという管理が容易となる点も大きなメリットです。
企業が勝ち残っていくためには、より良いサービスを提供し続ける必要があります。
競争が激しい現代では、サービス・製品の改善スピードを上げる必要があり、それを実現することができる体制作りが不可欠です。
PDCAサイクルを導入することで、改善から再計画までの流れもスピーディーに行うことができ、継続的に改善し続けるというチームを作りあげることができます。
4つの段階それぞれにおいて、PDCAを効率的にまわすポイントをまとめました。
・Plan(計画)を立てるときは、実現できそうな目標を数値で設定し、顧客データなどを元に、具体的な方法を考え抜く。
・Do(実行)では、計画がスケジュール通りに進んでいるのか、進捗報告を定期的に行う。
・Check(評価)するときは、結果をデータで振り返るとともに、目標達成において何が足りなかったのかを明確にする。
・Action(改善)案を出すときには、今回の取り組みで足りなかった点を挙げ、すぐに再計画を立てられる形に落とし込む。
1サイクルで終わらせてしまうのではなく、継続してサイクルをまわしていくことが重要です。そのため、各段階でスムーズに工程が進むように意識しながら回していきましょう。
計画をしっかり立てることで、Do→Check→Actionの工程を効率的に回すことができますので、計画作りは念入りに行いましょう。
現在の状況についてしっかりと把握していないと、ズレた目標や課題を掲げてしまうことになり、思ったような効果は得られないでしょう。
実際の現場で製品を確かめて、事実やデータに基づいたものを調査し何が問題なのか、何を目標とすれば良いのかを考えることが重要です。
目標を達成するために解決すべき課題について、「なぜそのような問題が起きているのか」という原因を徹底的に追求しなければ、課題にダイレクトにアプローチできる答えは見つけることができません。
解決策を考えるときには、まず原因を突き止めることに注力し、その上で何を実行すべきかを挙げていきましょう。
PDCAサイクルを滞りなく実施するには、サイクルをストップさせる要素を取り除くことが重要です。
その要素をリストアップしましたので、PDCAを回す際の参考にしてください。
ベンチャー企業には少ないかもしれませんが、古い伝統や考えを重んじ、変化を受け入れることを拒否する勢力が多いと、改善どころか計画さえも上手くいかなくなります。
この場合は、根回しするなどして反対勢力の数を減らすのも一案でしょう。
慎重派といえば聞こえが良いですが、前例がないことを受け入れられない勢力がいる場合には、PDCAの結果得られた改善案を実行できない場合があります。
十分な「評価(Check)」によって見つけた課題に対しても、凡庸な改善しかできないようでは良い結果は得られません。
組織の場合、業務改善自体が目的になってしまうことがあります。PDCAをきれいに回し、素晴らしい改善案を出していることは、戦略的で優秀だという評価を受けやすいからです。
しかし、改善案を出すことにばかり時間をかけていては意味がありません。質だけでなくサイクル数も大事にしましょう。
経営陣や各組織の幹部クラスでPDCAを導き出したら、それらは組織レベルや社員レベルで共有するようにしましょう。
共有できていないと、一見PDCAが上手く回っているように見えても、きちんとデータが取れていない、改善計画通りに実行できていないといった事態が起こる原因になります。
なお、試行錯誤により確実に改善を重ねていくPDCAは、環境や状況の変化への対応が遅れるという弱点があります。
特に事業環境が目まぐるしく変化するスタートアップにおいて、PDCAは十分に機能せず、もはや時代遅れとまで言われています。
そこで近年登場した、PDCAに代わる新たなメソッドがOODAです。
以下の記事では、戦場生まれの「即応性」が強みのメソッド「OODA」について解説しています。スタートアップ経営者はぜひ読んでみてください。
PDCAサイクルは、品質管理や生産管理などにおける継続的に業務改善を行っていくためのフレームワークです。
手順を理解し、4つの段階それぞれについて理解を深めることで、効率的に回すことができるでしょう。
現状の課題を解決する手段として効果が期待できるものですので、業務改善を行うなら導入を検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:ペイレスイメージズ、Unsplash