スタートアップが資金調達をする際に、投資ラウンドはまず必ず知っておくべき知識といえます。投資ラウンドについて正しい理解を持たずに投資交渉をしてしまえば、投資家からも勉強不足という印象を抱かれてしまうかもしれません。
しかし、弊社がこれまで多くの起業家支援をするなかで、間違った認識をもってしまっている人も案外多いです。またコロナウイルスの影響など、時期によって資金調達相場は移り変わるものです。
この記事では、スタートアップの成長段階をあらわし、自社の資金調達の相場を知る助けにもなる「投資ラウンド(資金調達ラウンド)」を解説します。
今回は、業界の大まかな相場観を記事にまとめたので、目安として参考にしてください。
このページの目次
はじめに「投資ラウンド」という言葉の意味から解説していきたいと思います。
投資ラウンドとは、
「投資家」にとっては投資先の段階
「企業」にとっては資金調達の段階
を把握する上で目安となる考え方を意味しています。
投資ラウンドが変わるということは、資金調達の金額が大きく変わるということ。そして、それはすなわち会社の価値が大きく変わることを指しています。
スタートアップにとって会社の価値が大きく変わるタイミングは、仮説が検証されたタイミングです。
例えば、プロダクトリリース前だった状態から、プロダクトリリースして一定のトラクションが発生している状況に変われば、「このプロダクトにはニーズがある」という仮説が検証されたことになり、それだけそのスタートアップが成長する可能性は大幅に高まったといえるでしょう。
このようにスタートアップの成長は非連続であるポイントで投資ラウンドが変わると考えるとわかりやすいです。
以下の表は具体的な投資ラウンドの各段階の特徴や資金調達金額の相場を示しています。弊社の創業者が実際に多くの起業家の資金調達相談を受けたり、実際に携わりながらまとめたものです。(2019年10月最終更新)
画像出典元:Yusuke Kurishima「スタートアップの資金調達相場を語る」
エンジェルとは起業前のアイデア段階のことを表しています。
実際のビジネスがスタートしているわけではないため多くの資金が必要になる場面も少なく、調達金額も数百万円、多くて1,000万円程度となります。
起業の準備段階であるため、研究・調査費、会社設立に使われることが多いと言えます。
アイデア段階でプロダクトがあるわけではないため、人物を見て投資する投資家やインキュベータなど(open network lab、EAST VENTURES、Skyland Ventures等)から資金調達をすることになるでしょう。
シードはまだ完璧ではないものの、最低限の価値提供ができるプロダクトをリリースした後という状況です。
チームある程度できており、事業を前に進めることができることは検証されました。
トラクションはほぼないため、実際にニーズがあるサービスなのかはまだ分かりません。
主にシード投資を行うベンチャーキャピタルから出資を受けることが多くなるでしょう。
プロダクトがリリースされているものの、軌道に乗っている状態ではないです。α/β版のサービスやプロダクトを用いて、事業が市場で通用するのか仮説検証を行っていきます。
Post-Valuation(資金調達後の時価総額)は3億~10億円と、市場規模やトラクションの状況によって大きく変動します。
シリーズAは、Product Market Fitが実現したタイミングです。
正式にプロダクトがリリースされ、明確な実績がでており、それが市場で選ばれることが証明されました。
売上を拡大するために人件費や、さらなる設備投資、マーケティング費用も必要となる時期となります。
この段階では必要となる資金も大きくなるため、資金調達の規模は億単位になってきます。
シリーズBは、事業が軌道に乗り安定化し、会社がより大きくなっていく段階となります。
マーケティングや人材に投資することで、事業を成長させることができると検証されました。
調達金額も大きいため、複数のベンチャーキャピタルからの出資や各種融資の組み合わせで資金調達を行うことも多くなります。
会社によって、シリーズCやシリーズDを経て、上場直前期のプレIPOを迎えます。
既存事業は安定的に成長を続け、上場後の会社の成長を見据え、新規事業の開発に乗り出しているような状態です。
この章ではベンチャーキャピタルから出資を受けることによるメリット・デメリットについて解説していきます。
ベンチャーキャピタルについてですが、大きな特徴として出資金を返済する必要がないことが挙げられます。
これはベンチャーキャピタルが、出資という形で上場前の企業に資金と引き換えに株式を受け取り、投資先の株式上場に伴う株式売却もしくは買収による投資金額の回収、という手法をとっているためです。
メリットとしては
多くのスタートアップを支援してきた経験を活かしアドバイスがもらえるだけでなく、顧客紹介や人材紹介の面で支援してくれるVCも最近はあります。
また特定の業界に強いVCもあるので、特殊な業界であれば、そのようなVCから出資を受けることは大きな助けになるでしょう。
VCとしても投資した企業が成長・成功すれば大きな利益(キャピタルゲイン)を得ることができるので、経営サポートを行うことは理にかなっています。
また、知名度の高いVCから出資を受けることは、ある種お墨付きを得るようなことになるので、会社の信用につながるというメリットもあります。
返済義務のないお金だとしても、VCからお金をもらうわけではないです。
VCは投資先のスタートアップが成長し、キャピタルゲインを得られることを期待して投資しています。
そのため、VCから資金調達した場合、短期での急成長を志向することになります。
リスクをとらず、安定的に企業を成長させたい場合は、VCからの出資を受けるべきではありません。
また、出資と引き換えに企業の株式を渡すことになるので、保持率によっては経営の自由度に影響を及ぼす可能性もあります。最悪自分でつくった会社なのに、代表をやめさせられるようなことも起こります。
そのため、そういった事態を防ぐためにも、VCから出資を受ける場合には資本計画をきちんと立てることが重要です。
自社に最適な出資を受けるには、無計画にアプローチをするのではなく自らの立ち位置やラウンドを把握することが重要になってきます。
今回の記事で、投資ラウンドの理解を深めていただきスムーズな資金調達の助けになれば幸いです。
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画像出典元:pixabay
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