企業にとってどのように資金調達を行うか、というのは極めて重要な課題ではないでしょうか?
資金調達の手段は多岐にわたりますが、いずれの場合も自社の成長段階を把握することはよりスムーズな資金調達の助けになるでしょう。
この記事では投資家向けの概念として米国で使われはじめた由来をもつ「投資ラウンド」について解説していきます。
この記事を読むことで、それぞれの言葉の意味や事業の成長度、期待できる調達金額との関係が理解できるでしょう。
このページの目次
はじめに「投資ラウンド」という言葉の意味から解説していきたいと思います。
投資ラウンドとは、
「投資家」にとっては投資先の段階
「企業」にとっては資金調達の段階
を把握する上で目安となる考え方を意味しています。
以下の表は投資ラウンドの各段階を示しています。
企業と一口に言っても、設立当初の小規模な段階からIPO直前の大規模な場合までその大きさは様々です。
当然、企業規模が変われば必要となる資金も大きく変わってきます。
そのため、企業の成長段階によって投資や資金調達を行うときの目的や金額が変わって来ます。
投資家側にとってはスタートアップ企業がどのような段階にあるのかをわかりやすく示す役割を果たしています。
企業側にとっては、ラウンドによって投資家にアピールするポイントやアプローチする投資家が異なってきます。
そのため、投資ラウンドは投資家・企業双方にとって重要な指標となるでしょう。
シードとは起業前の段階を表しています。
実際のビジネスがスタートしているわけではない為、多くの資金が必要になる場面も少なく、調達金額も数百万円程度となります。
起業の準備段階であるため、研究・調査費、会社設立に使われることが多いと言えます。
シードの段階ではエンジェル投資家やベンチャーキャピタル、シードアクセラレータから出資を受けることが多くなるでしょう。事業がスタートしている訳ではないので、事業計画や構想をしっかり練ることも重要となってきます。
アーリーは起業直後の段階です。
ビジネスがスタートしているもの、軌道に乗っている状態ではないため赤字経営の場合も多いです。運転資金や設備投資、人件費などの先行投資として出費がかさむ時期と言えるでしょう。
この段階ではベンチャーキャピタルのほか、国や金融機関、自治体の創業支援制度を利用して資金調達を行うことも視野に入れましょう。
創業時に活用できる制度の一例として、日本政策金融公庫の新創業融資制度が挙げられます。
こちらの記事では新創業融資制度だけではなく、資金調達の相場についても解説されているので、是非ご覧ください。
シリーズAは、事業が本格的に動きはじめ顧客が増え始める段階です。
製品・サービスがリリースされ、売上を拡大するために人件費や、さらなる設備投資、マーケティング費用も必要となる時期となります。
この段階では必要となる資金も大きくなるため、資金調達の規模としては数千万程度の規模になるとされます。
この段階であれば、ベンチャーキャピタルからの出資を受けやすい段階になってきていると言えるでしょう。
事業規模の拡大に伴い、ベンチャーキャピタルのみならず、金融機関からの融資などの資金調達の選択肢も増えてきます。
シリーズBは、事業が軌道に乗り安定化し、会社がより大きくなっていく段階となります。
この段階では会社規模もある程度大きくなり、より充実した設備や優秀な人材が求められるため、調達金額も大きくなり数億円規模となってきます。
事業開始段階のシリーズAを乗り越え、安定した事業が行われているためベンチャーキャピタルからの注目度も高まり、融資を受けられる可能性も高まります。
調達金額も大きいため、複数のベンチャーキャピタルからの出資や各種融資の組み合わせで資金調達を行うことも多くなります。
シリーズCでは、IPOやM&Aを意識する段階となります。
企業としては安定期に入っていますが、全国や海外展開などの更なる事業拡大や買収のために多額の資金が必要になることもあります。
その際の調達金額としては数億円から十数億になる場合もあります。
*VCはベンチャーキャピタルの略
上記の表は各ラウンドでアプローチすることが想定される出資者や資金調達先の一覧です。
しかし、アーリーだからクラウドファンディングは利用できない、シードだから補助金・助成金が利用できないという訳ではありません。
ぜひ上記の表をもとに資金調達先の参考にして頂ければと思います。
上の表では資金調達の方法としていくつかの例を挙げました。
中でもベンチャーキャピタルの存在感はシード〜シリーズCの幅広い範囲に及んでいます。
この章ではベンチャーキャピタルから出資を受けることによるメリット・デメリットについて解説していきます。
ベンチャーキャピタルについてですが、大きな特徴として出資金を返済する必要がないことが挙げられます。これはベンチャーキャピタルが、出資という形で上場前の企業に資金と引き換えに株式を受け取り、投資先の株式上場に伴う株式売却もしくは買収による投資金額の回収、という手法をとっているためです。
メリットとしては
ベンチャーキャピタルとしても投資した企業が成長・成功すれば大きな利益を得ることができるので、経営サポートを行うことは理にかなっています。
これは経営の経験に乏しい創業メンバーにとっても大きなメリットと言えるでしょう。
また、ベンチャーキャピタルから出資を受けたこと自体が信用の付与になり、他のベンチャーキャピタルや投資家からの出資を受けやすくなる可能性も高まります。
企業側にとっては出資金を返済する必要がない点は大きなメリットではありますが、決してメリットばかりではありません。
デメリットとしては
経営の自由度が低下する
ベンチャーキャピタル側は出資と引き換えに企業の株式を取得しているため、保持率によっては経営の自由度に影響を及ぼす可能性もあります。
ベンチャーキャピタル側としても利益をだす必要があるので、企業側に成果が求められることは留意しておく必要があります。
資金調達の場では各投資ラウンドによってアプローチする投資家や金額が大きく変わってきます。
自社に最適な出資を受けるには、無計画にアプローチをするのではなく自らの立ち位置やラウンドを把握することが重要になってきます。
今回の記事で、投資ラウンドの理解を深めていただきスムーズな資金調達の助けになれば幸いです。
画像出典元:pixabay
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