TOP > 経営 > 資本金 > 減資とは?メリットとデメリット、事例をわかりやすく解説!
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経営者であれば、減資には累積赤字の補填や節税効果がある、ということは、おそらく聞いたことがあるかと思います。確かに減資にはそのようなメリットがありますが、その裏でデメリットも存在しています。
そこで今回は、減資のメリットを活かしつつ、デメリットを最低限に抑える方法を詳しく解説していきます。
このページの目次
減資という言葉から想像することができるように、減資とは会社の資金を減らすことです。ここでいう資金というのは会社の資本金のことです。
「会社の資本金を減らす」と聞くと、会社の規模が小さくなってしまうようで、何やらマイナスなイメージがよぎるかと思います。しかし、必ずしもそういうわけではありません。
では、減資とはいったい何の目的をもって行われる手続きなのでしょうか?
「減資とは会社の資本金を減少させること」というのはお分かりいただけたと思いますが、ではなぜ減資しなければならないのか?
その理由として挙げられるのが「累積赤字の補てん(欠損填補)」と「節税」。この2点が減資がおこなわれるほとんどの目的です。
赤字経営を続けている状態の場合、当然その赤字額は貸借対照表に欠損として蓄積されていきます。するとどうなるのか?
銀行などからお金の借り入れが難しくなり、やがては資金調達自体が厳しくなっていきます。
現状、日本の企業のうちほとんどの企業が赤字経営であると言われておりますが、たとえ赤字経営だったとしてもやはり赤字の額が少ないに越したことはありません。
赤字を改善させていくには基本的に売上を増やし、人件費の削減などで経常利益を上げ、そして赤字を減らしていくというのが通常です。しかしそのような方法ではどうにもならないケースも多々あります。
そういう時に減資という方法が取られるわけです。減資をおこなって資本金が減ったとしても、その分赤字(欠損)も減ることになるので決算書の見栄えをよくすることができ、資金調達もやりやすくなるわけです。
IPOの準備である場合も
減資により赤字補填をする狙いは、決算書の見栄えを整え、資金調達をやりやすくすることが主ですが、資金調達の中でもIPOによる資金調達の準備として減資を行う場合があります。
これは利益剰余金の赤字を一掃しておいた方が、配当金目的の投資家の投資意欲を刺激することができるため。
利益剰余金が株主への配当金の原資になるので、投資家は利益剰余金が赤字でない会社に投資したいと考えるのです。
減資がIPO前のシグナルである場合もあるのです。
減資をおこなう理由として、節税目的もあげられます。
現在日本の税制においては、ある一定の資本金を境に優遇税制が異なっており、その一定の額というのが1億円です。
ちなみに資本金1億円以上の場合は大企業、1億円以下の場合は中小企業という扱いになり、優遇税制は大企業に比べ中小企業のほうが圧倒的に多くなります。
たとえば交際費の場合、資本金1億円以下であれば800万円まで経費として落せるが、1億円以上の場合、交際費のうち飲食費の50%以外、原則として1円も認められません。
また、法人住民税においても額が異なり、資本金が1億円以上の場合は29万円、1,000万~1億円までが18万円、1,000万円以下が7万円というように定められています。
つまり、資本金が少なければそれだけ優遇税制が多くなるので、資本金にこだわりを持っていない企業は減資して資本金を減らすというわけなのです。
ちなみに、2015年5月にSHARPが1,218億円の資本金を1億円に減資するという報道があり、当時話題となったことがあったかと思いますが、これがまさしく減資によって税制優遇を受けるのが目的の典型的な例です。
ちなみにこの事で猛烈な批判を受けたSHARPは、結局1億円ではなく5億円にとどめたようです。
このように税金を納める額は資本金の額によっても異なってくるので税金対策としても減資がおこなわれるケースも多々あるのです。
続いて減資のデメリットについてご紹介していきます。
では減資をおこなった場合、どのようなデメリットが生じてくるのか。
そもそも減資というのは元々ある資本金を減らすことですので、当然会社の財産が減少してしまうというデメリットが生じます。
それと同時に、資本金の額が下がると会社の信用度が下がってしまうというデメリットも生じてくる場合があります。
本来、会社の信用度は資本金の額で決まるわけではありませんが、やはり多くの人は資本金の額で会社の信頼性を判断しているのが現状です。
これは、企業の詳細な情報開示があまりされていないというところに原因があります。
たとえば会社のホームページを見てわかるように、ほとんどの会社は会社概要などで資本金が開示されているだけで、会社全体の売上規模や財産状況など細かく情報開示している会社は極めて稀です。
つまり、会社の信頼性などを判断する際の材料は、その会社の資本金の額がもっとも大きな判断材料になってくるわけです。ですので、減資したことによって資本金の額が減ってしまうと、それだけ「信用度が低い」と判断する人も増えてくるという可能性もあるのです。
このように、減資をすることによって得られるメリットはありますが、それによって生じるデメリットも少なからず存在します。
今後、減資をする必要がある際はメリットだけではなくデメリットもしっかり知ったうえで判断するようにしてください。
減資のメリットとして資本金の金額1億円を境に優遇税制が異なってくるということはすでに紹介しました。
ではその優遇税制を活かしつつ、会社の信頼性を著しく下げることのないようにするにはどうしたら良いのか。それには減資した分を資本準備金へと振り替えるといった方法が良いでしょう。
減資は赤字など損失をカバーするなどのために使われる手段ですが、資本準備金に振替えることも可能です。
つまり、資本金が1億円を超えている場合、優遇税制が適応される1億円以下まで減少させ、その剰余金を資本準備金として振替えます。そうすることによって資本金1億円以下の優遇税制が適応されます。
また、会社ホームページなどでは「資本金:〇〇百万円(資本準備金を含む)」という表記にすることによって、見た目の印象も悪くならないので信頼性についても大きく下げることはないでしょう。
さて、これまで減資について解説してきましたが、実際に減資をする際はどのように進めていけば良いのでしょうか?
欠損填補ができ、さらには税金対策にも繋がるとなると、いち早く減資したいと思われるかもしれませんが、減資は社内で話し合って簡単に決められるものではありません。
減資の手順は下記のとおりです。
減資をするには株主総会にて資本金の減少額や、いつから適用させるかなどを話し合う「特別決議」をおこない、まずは資本金の元手を出資している投資家からの承認を得なくてはなりません。
なお特別決議では、株主の議決権の「過半数」を有する株主が「出席」し、出席した株主の議決権の「3分の2」以上が必要となります。会社によってはハードルが高いため注意が必要です。
銀行や仕入れ先などの、いわゆる債権者に対して減資に関する事項を公告し、その債権者から意見を求めなくてはなりません。
また、大口の債権者に対してはそれぞれ個別に催告をする必要があります
資本金の減少額、つまり減資が決定してから2週間以内に管轄する法務局へ行き、変更登記申請を行います。ちなみに、変更登記申請を行う際に必要な登録免許税は3万円です。
以上のように、減資をおこなう際の手続きは、およそ3項目程度で完了します。
しかしながら、完了に至るまでそれぞれのプロセスに想像以上の時間や労力が必要となります。
先程も述べましたが、減資は社内の会議等で簡単に決められるものではありませんし、特に利害関係者への細心の配慮が必要であるということをしっかり覚えておきましょう。
ここまで減資のメリットやデメリットや、そのやり方を解説してきました。どのような意図で減資が行われるのかが、分かったはずです。
ここからは、実際の企業の決算から、具体的な減資の事例をみていきましょう。
「スキルのフリーマーケット」を運営する注目ベンチャー、株式会社ココナラの第6期決算です。
これは減資によって欠損填補、つまり赤字を補填している事例です。
第5期と第6期業績の比較
第6期は7億8,565万円の当期純損失となっています。
通常だと、このまま第5期の利益剰余金△4億7,834万円に、第6期の純損失を積み重ねた△12億6,400万円が第6期の利益剰余金になります。しかし実際は、第6期の利益剰余金は当期純利益と同額の7億85,65万円となっています。
これは第5期から第6期にかけて、減資を行い、資本金と資本準備金を使って赤字を補填したからです。
今後の資金調達を見込んで、決算書を整えるのが狙いだと考えられます。
なお、減資後の資本金は9,000万円であり、節税メリットも受けることができるように工夫されていることが分かります。
名刺管理サービスを提供するSansan株式会社は、近々の上場が噂されています。
3年連続で減資によって赤字を補填しており、この事実からもIPOに向けて準備していることが予測できます。
上の表のように、3年連続で当期純利益と利益剰余金が同額になっています。
毎年、損失が出た分だけ赤字補填を行った結果、このような業績になっています。
今回は資本金を減少させ、累積赤字の補填ができる「減資」について詳しく解説してきました。
繰り返しになりますが、減資というのは大きな損失を出し場合や、赤字が累積してしまった時などに取る手段であり、決して節税だけを目的とした方法ではありません。
「節税できて得だから減資する」などといった安易な考えは、法人としてやるべき行為ではありません。また、減資は会社経営においてどうにもならない時の最終手段であるということを強く認識しておくことが会社の代表としてもっとも重要です。
そういったことを踏まえたうえで、適切な判断をするようにしてください。
なお減資の反対、「増資」については以下の記事にまとめています。
画像出典元:Pixabay